5スレ>>347


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一日飛んで、セキエイリーグ四日目、午後…



『なんというフェイント攻撃!ソーラービームと見せかけて、動きの早いギャラドスにしびれごなを浴びせました!
 これぞトレーナーの策略、バトルの醍醐味と言えるでしょう!』

「よし、決めるぞ、フシギバナ!」

「うん!速効魔法(?)発動!『バーサーカーはっぱカッター!』」
「バーサーカーはっぱカッター!?」
「PPをすべて捨て、効果発動!
 こいつは相手を痺れ状態にしたままで、何枚でもはっぱを用意し、それをすべて投げつける技だ。
 そしてその数だけ、このボク…フシギバナは、はっぱカッターできる!
 …要するに、まひで動けない相手をフルボッコだ!」
「ひぃぃっ!?」
「さぁ行くよ、まず一枚目――」

(…ナニヤッテンダあいつ…)






『―― やりました、クリム選手!午前の3回戦キョウ選手、午後の4回戦イブキ選手を下し、
 連戦を勝ち抜きました!まさに破竹の勢い、立ちふさがるものを粉砕☆玉砕☆大・喝・采!!』

(…テンション高いな、実況…)


…まぁ、これで俺も四天王の入ってくるトーナメントベスト8決定戦に参加できるってわけだ。
苦戦こそしなかったが、これまでの敵もそこそこ手ごわかった。油断は禁物だろう。

それに――カルマの事もある。いつ何を仕掛けてくるか分からない以上、警戒は必要だ。
まぁ宿泊施設のセキュリティはそれなりに信用できるし…寝るときは安全なんだけどな。

色々と考えていると、ライチュウがボールから声をあげてきた。

「マスター、あたしお腹すいたー」
「あー…そういやもう日も暮れるし…今日は2戦して忙しかったから昼もたいして食べてないんだっけな…
 まぁ、もう少し我慢しててくれるか?とりあえずみんな汗も流したいだろうし、その後で夕食にしよう」





      * * *





 ―― わたしは、だれ?



 ―― ここは、どこ?



 ―― わたしは、なんのためにここにいるの?



 ―― わからない。けれど、今はどうでもいい。



 ―― なぜか、とても、ねむくて…






      * * *


ソファや椅子、床などに好き勝手に座り、これまた机に所狭しと並べられた夕食を各々とる。
ピザにパスタやサラダ、フライドチキンなど…どこかパーティーのような見栄えだ。
ちなみにこれらは各自の好みを聞いて注文して持ってきてもらった。
これだけの量だと値も張ると思いきや、選手にはかなりの割引がなされるらしい。…なんか釈然としないけどまあいいや。


「…というかそのクラッカーは何だよ。いや、その皿の上のカナッペじゃなくてお前が持ってるやつな、フシギバナ」
「さっきちょっと買ってきたんだよ!四天王戦まで進んだお祝い!」


…よく見ればキュウコンやライチュウもクラッカーを持っているし、水周りにあった冷蔵庫の飲み物の中には、
シャンパンが一つ冷やしてあった。アレも注文したのか。

(…………駄目だ)

たしなめなくてはいけない。まだすべて終わったわけではなく、むしろここからが本番なのだと。
四天王に勝つには、ここで気を抜いてはいけないといわなくては。それがトレーナーたる俺の義務だ…だけど。

「…ほどほどにしとけよ」

怒れない。こいつらは、ホントに喜んでる。自分たちの力がここまで通用することが本当にうれしいんだ。
…こんなに嬉しそうにしてるこいつらの気持ちを折ることなんて、俺にはできなかった。

…あるいは、分かっているのかもしれない。次からはさらに相手が強くなる。
もしかしたら、みんな心の中では戦々恐々なのかもしれない。だからこそ、騒いで、喜んで、気持ちを高める。
次の戦いの緊張にのまれないように。次も勝利するために。

「…フシギバナ」
「なぁに?」
「俺にもそれ、ひとつくれるか?」
「うん!いいよー」

今までの健闘を祝し、そしてこれからの勝利を祈って。
俺はクラッカーのひもを引っ張った。火薬のにおいと、薄い紙テープが飛び出して、ひらひら落ちて行った。





      * * *



『さぁさぁさぁ!やってまいりました、ついに彼らの登場です!
 このカントーでも有数の実力を誇る、カントーリーグ四天王!皆様、お待たせいたしましたぁっ!!
 まず第一試合、氷の女王カンナ選手と戦うのは、ここまで一切の敗北を経験せず勝ち上がってきた強き戦士!
 マサラタウンのクリム選手です!この試合では、今までとは大きくパーティ編成を変えてきています!』

スタジアムに出ると、今までよりさらに大きな歓声がわきあがった。…ちょっと緊張するな…
向かいには、背の高い美女。あれが、四天王カンナか…

『この試合は、こちらのコールするルールに従って所定の数萌えもんを出し合い、複数回の対戦を行います!
 その結果によって、勝敗が決する…小難しいルールはなしの、デスマッチです!』

…まぁいいか。ここで負けるのは少々癪だ。四天王だからと遠慮はいるまい。本気で叩き潰す…!!



『では一回戦を始めます!フィールドは…平地!一対一、シングルバトルです!』

先鋒を誰にするか…ここで勝てれば、勢いがこちらにつくだろう。
出来る事なら、勝率の高いやつを選びたい…と言えば、こいつしかいないな。


「頼むぞ、フーディン!」
「任せておきたまえ、マスター」

「お願いね、ルージュラ」
「うふふ、頑張るわよぉ?期待しててねぇ」

『クリム選手はフーディンを、四天王カンナはルージュラを選択しました!
 どちらも強力なエスパータイプ、これは期待できそうです!』


「あらぁ?可愛い女の子じゃない、お姉さん燃えてきちゃったわぁ…♪」
「氷タイプなのに燃えるとはこれいかに。まあ、本気で行かせてもらうよ」

『合意と見てよろしいですね?それでは――萌えもん、ファイトォっ!!』



試合開始と同時に、俺は指示を出す。相手も全く同じタイミングで動いた!

「フーディン!」
「ルージュラ!」

「「サイコキネシス!!」」



返事はなく、お互いに最初の位置のまま、動いていない。
しかし、戦いはすでに始まっていたのだ。

「………っ!」
「ぅ………!」

無言の念力の攻防。相手に向けて放たれた思念の力がぶつかり合っている。
見た目にはお互いにらみ合っているだけだが、すさまじいまでの頭脳と神経を動員した戦闘がその裏で繰り広げられている。

結果は―――互角!

互いに後方へ飛びのき、体制を整える。

「やるね…!」
「あなたこそ、可愛い顔して意外とやるのねぇ」
「それはどうも…だが、だからと言って油断は禁物だよ!」

フーディンが軽く腰を落とし、拳法家のごとく、拳を腰に引いてかまえた。
―― 以前にも使った『念拳』を使う気か。

「せぇいっ!!」
「覇っ!!」


「なっ!?」

な、なんだ今の?フーディンの放った念拳を…ルージュラが相殺した!?
全く同じ構えをとってやがる…まさか…!

「念拳を返してくるとはね…」
「念とはすなわち『思う力』。拳を意識し、それを飛ばすことによって威力を増強する…
 その考え方は悪くはないわぁ。でもぉ…」

ルージュラの目が妖しく輝く。

「その発想をしたのはぁ、貴方が世界で二番目なのよ」
「…なるほどね…それは参ったな」

フーディンが軽く肩をすくめる。そして、再び念拳の姿勢をとった。

「だが、私も簡単には引けないんでね。私を先鋒に命じてくれたマスターの期待にこたえる義務がある」
「それはおたがいさまねぇ…それじゃ…いくわよ?」

一瞬の停止。そして――激突!

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァァッ!!」
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァァッ!!」

超高速の念の拳によるラッシュ合戦。

2人の速度とパワーは互角…いや…ルージュラの方が若干早い!

「無駄ぁっ!」
「くっ…!!」

ついにフーディンが打ち負け、念の拳が尽きる。ノーガードになった体に、無慈悲な攻撃が放たれた。

「ルージュラ、冷凍パンチ」
「じゃあね、お嬢さん…楽しかったわ、よ!」
「ぐぅぁっ!!」

吹き飛ばされ、転がって大地に倒れるフーディン。

『クリム選手のフーディンが倒れましたぁぁっ!エスパー同士の対決、何が起こったのかよくわかりませんが…!
 はたしてフーディンは立ち上がることができるのでしょうかっ!?』

俺は無意識のうちに、何かを叫んでいた。






吹き飛ばされて、地面に落ちた。腹部が冷たい。冷凍パンチで、内臓を痛めたかもしれない。
…うつぶせになった体を、腕をつかって仰向けにする。ちょっと楽になれた。

「ぐ…………ぅ…」

自分に何か叫んでいる少年と目があった。本人も気づいていないだろうが、彼の顔は泣きそうに歪んでいるように見える。

(全く、心配性だな…)

本当は声を大にして、今すぐ叫んであげたい。
けれど、声は出ない。その代りに、咳とわずかな血を吐きだした。


彼に初めて会った時に何かを感じた。一緒に旅をしていくにつれ、その思いは大きくなっていく。
今思えば、それは恋だったのかもしれない。一緒にいて楽しかったし、彼を男性として意識することも多かった。

けれど、彼は私を選んでくれなかった。…そのことについては、どうこう言うつもりもない。

例え、彼がどのような選択をしようとも、自分は彼にしたがって付いていく。
ヤマブキのジムで彼に同行を申し出たときから、そう決めていたのだから。


(立ち上がらなくちゃ、伝えなくちゃいけない。まだ…まだ、負けてなんかいない!)


―― 大丈夫。私はまだ戦える。だから、心配しないで。

―― たとえ相手がどんな存在であろうと。

―― 君の元に、私が必ず勝利を持っていくから。

―― それが、私を惹きつけて離さない君への、想いの伝え方なのだから!


ほんのちょっと、勿体ないけれど。

(…チャンピオン戦までとっておきたかったけど…仕方がないね)

軋む体を動かし、私は全身の力をつかって立ち上がる――!!






『立った、立ちあがった、クr…フーディンが立ったぁぁーーーっ!!
 冷凍パンチ直撃のダメージは大きいようですが、それに耐えて再び戦闘態勢をとります!
 一体何がそこまで彼女を駆り立てるのか!?』

「…フーディン…」

冷凍パンチの直撃ダメージは決して軽くはない。
アイツはそれでも立ち上がった。…分かっている。俺の、アイツを信じて任せた俺の期待にこたえるために、アイツは闘っているんだ。
だから俺も最後までアイツを信じよう。絶対に目を離さない。フーディンが勝つまで…!

「…行っけえええぇっ、フーディン!!」





「…全く、切り替わりの早いマスターだよ…」
「あれを耐えちゃうなんて、お姉さんびっくりだわぁ?でもぉ…次はないわよ?」
「もとより次を受けるつもりもなくてね。…切り札、使わせてもらうよ!」

次の瞬間、フーディンが ――― 消えた。

「!?」

俺にも何が起こっているのかはよく分からなかった。フーディンが視界から消えたと思った矢先、
取り残されたルージュラが吹っ飛んだのだ。

「くぅ…!」

体勢を立て直そうとしたルージュラが、今度は真横に吹き飛ばされる。
さらに空中に打ち上げられ、連続で複数方向からの攻撃を受ける。

地面に落ちたルージュラ。そして、その正面に、消えていたフーディンが現れる。
その姿は、まるで炎か何かのような赤い輝きを放っていた!

「な、何が…!」
「折角だから教えてあげよう。通常、あらゆる生物の肉体には天然のリミッターが施されている。
 ゆえに、普段生物が発揮できる力は本来の2,30%。しかし、何らかの手段でそのリミッターを解除できるとすれば?」
「まさか、あなた…」

「もちろん一朝一夕で出来ることじゃない。全身に念力を張り巡らせ、それによって肉体のリミッターを解除と同時に強化を行うなんてね。
 充分な準備と訓練がなければ、力加減を間違えて一瞬で体を壊して戦闘不能だ。ついでに言えば全ての力を体に使うから、格闘しかできないというおまけ付き。
 それに、強化の時間も限られている。…できれば、チャンピオン戦までは取っておきたかったのだけれど…」
「馬鹿にしてっ!」

ルージュラが放った冷凍ビームを、再び回避する。よく見れば、フーディンは消えていた訳じゃない。
超高速で移動しているため、ほとんど目に捉えられないだけだ。

『疾い早い速いっ!!TRANS=AMか、クロックアップか、はたまた界王拳かぁっ!?
 フーディンの攻撃に、ルージュラがなすすべもなく追い詰められていきます!』

再びルージュラが空中に打ち上げられる。そして、どんどんと空中に持ち上がっていく。
神速の域に達する連続攻撃。そして、フーディンがルージュラの上へと跳躍した。

「悪いね、コイツで終わりだっ!!」
「甘く見ないでよお嬢さん、私だって四天王の萌えもん、ただで負けるわけにはいかないのよぉっ!!」

空中で、ボロボロのルージュラが右腕に力を集める。あの体で、まだ動くのか!?
ルージュラの拳と、空中から加速するフーディンの右脚。互いの肉体がぶつかり合い、そして――!




ルージュラが地面に落下し、そして一瞬の間をおいてフーディンもスタジアムに着地した。

『な、なんと、なんとおぉぉーっ!!第一戦を制したのは、クリム選手のフーディンです!
 とどめの空中トリプルキックで、見事に四天王の先鋒を退けましたっ!!』

ルージュラがボールに戻ったのを見届けてから、フーディンも片膝を地面についた。
俺の目と、顔をあげたフーディンの目があった。






 ―― 勝ったよ、マスター。



 ―― ああ。…ありがとな、フーディン。


 
 ―― ふふ、礼には及ばないよ?







俺はボールにフーディンを戻す。見れば、すでに目を閉じて意識を手放していた。



『一戦目はクリム選手の勝利となりました!次の試合、二戦目もシングルバトルとなります!』


「…ライチュウ、頼むぞ」
「うん、あたし頑張ってくるね!」

フーディンがここまでしてつかんだ勝利を無駄にするわけにはいかない。
俺達は、なんとしても勝たなくてはいけない――!!







     


      * * *


『…わたしは、だれ?』
「ミュウツー。お前はミュウツーだ。俺達の力の証明であり、俺達の理念の証明であり、
 俺達の強さの証明――それがお前だよ、ミュウツー」

『…わたしは、なぜここにいるの?』
「俺の計画を実行するためだ。お前の力が必要なのさ。
 このリーグを、世界をぶち壊すためになぁ』

『…あなたは、だれ?』
「俺か?俺はカルマって言うんだ。ロケット団の幹部サマさ。
 …おしゃべりはここまでだ。眠れ、ミュウツー。お前の出番ももうすぐなんだからな?」

『――――――』
「クリム…あの日お前は死ぬはずだった。だけど、お前は勝手に生き延びて俺達の邪魔をする…
 報いを受けさせてやるよ。俺とミュウツーが、お前を地獄に叩き返してやる…!!」


























あとがき。


今回の主役はまぁ見ての通りフーディンです。この後ライチュウも書こうと思ったんですが、

長さとモチベーションの問題で延期。次回に割り振っていきます。

この戦闘で何人かにスポットライトを当ててみたいと思います。何人か決めてないけど。

ゴーグルシリーズも終わりが見えてきました…と言っても、気が向いたらまた書くんでしょうけどね。



ここで、ちょっとした解説と言うか自己満足の説明。
フーディンと、主人公(以下ゴーグル)の関係について。


フーディンはゴーグルと初めて会った際に、何か得体のしれないモノを感じて仲間となります。

この話で書かれているように、それは恋愛感情にきわめて近いものです。しかしそれとは似て非なるもの。

フーディンにとってゴーグルは、『自らの存在にとって必要不可欠な存在』ではと思います。


また、ゴーグルにとってフーディンは、『パーティーの中で最も頼れる存在』と考えているようです。

恋愛感情と言うよりは、兄弟姉妹といった感じでしょうか。フーディンの感情というか好意にも気付いているので、

多少色々言われたりされても怒るに怒れないようです。あと普段のサポートなどの事もあるし。





余談ともいえる解説は以上です。

次回でそろそろ展開を変えて行きたいなーと思うのですが…まぁ、がんばります。


読んでくださり、ありがとうございました!次回もお楽しみに!
ツールボックス

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