5スレ>>357


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ヤマブキシティ・西ゲートを出て数分歩いた先にある大都市・タマムシシティ。
ヤマブキシティと並ぶ大都市として有名な街。
アパート、カジノ、旅行会社などなど、様々な施設がある中、何と言っても有名なのが、カントーいちの品揃えを誇るタマムシデパート。
カントー地方の名産物、商品が集約するこのデパートの客足が衰えることなどは滅多にない。
数年前までは萌えもんを悪事に利用する組織「ロケット団」の存在によって治安が乱れていたものの、
最近になって何者かがロケット団の根城を発見、壊滅したことによって治安が回復しつつある。
(後にタマムシシティのロケット団アジトを壊滅させたのは、現カントー地方萌えもんリーグチャンピオンであることが判明する)
                         ――タマムシ旅行会社より配布されていたパンフレットより                            


――雑踏の中を歩くのは嫌いだ。
人の足音、話し声が俺の耳に纏わりついて全身をかき乱す。
それはあまりにもしつこくて、不快。
だから俺が今、こうやってタマムシシティの街中を歩くのは正直言って避けたいところ。
本来ならば手短に散策を終え、他へ移るはずであったが、予定が少し狂い、しばらくここに留まることとなってしまった。
というのも、
「ジュペッタ! またはぐれたらどうするんだ……って! 人の話を聞け――――ッ!」
タマムシデパート二階。
俺は大型連休ということも相まって大勢の客で賑わう中を掻き分けながら、一人ではしゃぎ回るジュペッタを追いかけていた。
周りには所狭しと立ち並ぶ沢山の品物。
ジュペッタはそれらを興味深そうに眺めては先に行き、手にとってみては先に行き。
浮遊していることもあり、雑踏で進めない、などということは無いため、雑踏の中を歩く俺との距離は確実に離れていった。
そして、
「……元気なのはいいことだと思うけど、なんでアイツは学習してくれないだ……いつもいつも」
再びジュペッタとはぐれてしまった俺は、愚痴と共に大きな溜息をつく。
相変わらず俺の耳につきまとう不協和音が、滅入った俺の心を、更に深い闇へと追い込んでいった。


- episode 6-a 後編  first day ~滴~ -


俺はベンチに腰掛けていた。
気が滅入っているせいか、完全にジュペッタを捜す意欲を喪失してしまったのだ。
「……落ち込んでも仕方ないよな」
そう言っている割に、俺の声のトーンは完璧に下がっていた。
そんな自分を奮い立たせるために、力強く頬を叩く。
痛みが走るも、少しだが滅入った心が晴れたような気がした。

恐らく、こんなとんでもなく広くて、暑苦しいほどに人がいる場所でジュペッタを捜すのは、
ヤマブキシティの時よりも困難を極めるだろうと予測する。
迷子のお呼び出しをすればそれほど苦労しないと思うが……それは俺のプライドが許さない。
俺とジュペッタが共に暮らすようになったあの日。
己の力でジュペッタを護る、面倒を見ると決意したのだから。
その決意を貫き通そうとする意志は、七ヶ月経った今でも衰えることはない。
「よし、それじゃあ……やるか」
立ち上がって、雑踏の中へ再びその身を投じる。
ジュペッタの捜索、それが最優先事項。
もはや不協和音など耳に入らなかった。


そんな俺の強い意志とは裏腹に、ジュペッタはあっさり見つかった。


――三階、アクセサリー売り場。
「……あれって……ジュペッタか?」
あまりにも早い彼女の発見に、俺は幻かと目を擦った。
しかし、視線の先にいたのは黒フードを被り、白銀の髪を覗かせる見覚えのある少女。
幻でないと分かると、俺は早足で彼女の下へと向かった。
雑踏の中、縫うようにして。俺の肩と誰かの肩がぶつかるも意に介さず。
「ジュペッタ」
肩を叩く。
驚いた表情で振り返ったジュペッタは、俺だと分かると笑顔を見せた。
「……何か買いたいものでも見つかったか?」
俺の問いかけに、彼女は手に握っていたペンダントを俺に差し出した。
特に派手な装飾も施されていない、いたってシンプルなペンダント。
中心には滴の形をした小さな白い真珠があしらわれていた。
「へー……綺麗じゃないか。付けたらきっと似合う……」
そう言いながら手にとって値札を見た俺は、ペンダントと不釣合いな値段に少々たじろいだ。
「……」
言葉を失う。
そんな俺を心配そうに見るジュペッタ。
「……心配しなくても大丈夫。ちょっと予想外の値段に驚いただけだから。このくらい平気平気」
そう、今回は何かあったときの為に多めに金を持って来たのだ。
毎月貰う給料で一ヶ月を過ごすので精一杯だというのに何故金がある? などと言われそうだが、
俺はこの二年間、給料の少しを貯金にあてつづけていたのである。
数千円という少ない金額ではあったが、二年間続けたお陰で数十万円ほど貯まっていた。
塵も積もればなんとやら……だ。
金を持ってきて良かったと安心して、俺はジュペッタと共にレジへ向かった。
「これ……お願いします」
いらっしゃいませ、と快活な声をした店の人に、さっきのペンダントを渡す。
彼女は俺とジュペッタを交互に見て、
「もしかして、彼女へのプレゼントですか?」
唐突にそんなことを口走った。
俺の思考が一瞬凍りつく。
そして、再び思考が回りだし、俺の気が一気に動転した。
「か、彼女!?」
「ええ、随分と仲がよさそうに見えたので……」
何もしていないというのに一体どうやって仲がいいとなど思ったのか……
「い、いや、俺とジュペッタはそんなんじゃ」
「そんな、とぼけないで下さいよ~。この時期になるとよくカップルが訪れてくるんですよ?
中でもこのペンダントは人気商品で、若いカップルに大人気!
彼氏彼女へのプレゼントとしてお勧めの一品を購入しようなんて、カップル以外考えられな……」
「違う! 断じて違う! 俺とジュペッタは恋人同士じゃなくて、なんというか……日陰者同士で共鳴し合っているというか、
同居している仲だというか……というかジュペッタ! お前も何か言い返して……」
店員の誤解を晴らすために、俺はさっきから黙りこくっているジュペッタに救援を求めた。
が。
「///」
ジュペッタはカップルと言われてまんざらでもないかのように、頬を赤らめ、はにかみながら俯いていた。
「何故否定しない!?」
再び店員に視線を戻すと、笑顔で俺の方を見つめていた。
(もはや何を言っても無駄か……)
「……あの、会計を」
「分かりましたー」
俺は袋に包まれたペンダントを店員から受け取ると、足早にその場を立ち去った。
しばらく歩き続けたあと、俺は立ち止まって溜息をついた。
「……はあ」
僅か数分の出来事で疲れがどっと押し寄せてきた。特に精神的に。
「カップル……か」
店員の言葉が頭から離れない。
「なあジュペッタ……俺たちって端から見れば恋人同士に見えるのかな?」
さっきから頬を赤くしているジュペッタに問いかける。
答えは返ってこなかった。
その代わり、

ぎゅ。

俺の腕へ抱きついてきた。
「ッ!?」
突然のことに鼓動が一気に速まる。体が熱くなる。
「ど、どうしたいきなり!?」
俺を見上げたジュペッタの表情は、顔を赤くしながらも幸せそうだった。
店員からカップル、と言われて嬉しかったのだろうか。
俺は言われてみて嬉しいというよりは驚いたのだが。俺たちがそういう風に見えるということに。
嬉しいと思えるジュペッタの気持ちが、俺には理解し難かった。
「え、あ、ちょ、ジュペッタ……周りの人、見てる」
遠回しにジュペッタに離れるよう催促する。
しかしジュペッタは一向に離れる様子を見せない。
逆に俺にどんどん密着してくる。
俺の言葉を理解していないのか、それとも理解しているもしていない振りをしているのか。
恐らく後者だろう。何故かそんな気がする。
「……仕方ないな」
調子が狂うも、幸せそうなジュペッタを見るとこっちも心なしか幸せになっていった。
「もう少し見て回ってから……帰るか?」
ジュペッタは俺を見て大きく頷いた。
そんな彼女が可愛らしくて、自然と笑みがこぼれる。

――雑踏の中を歩くのは嫌いだ。
人の足音、話し声が俺の耳に纏わりついて全身をかき乱す。
それはあまりにもしつこくて、不快。

だけど、ジュペッタと一緒にデパート内を散策したときは、雑踏の中が不快とは感じなかった。


――屋上。
ベンチに腰掛け、俺達は今にも沈もうとしている夕日を眺めていた。
「随分と長居しちゃったな」
俺を椅子代わりにして座っているジュペッタに話しかける。
もっとも、浮遊しているから、座ってはいないのだが、浮いているのか浮いていないのかの瀬戸際を浮遊しているため、
遠目で見ると座っているように見えるということになる。
「それに……色々買っちゃったしな」
足元にはキズぐすりであったり、謎の文様が描かれた綺麗な石であったりと、
旅行に訪れた者が買うようなものではない品物が袋詰めにされていた。
「ところでジュペッタ、コレ……いつまで続けるつもりだ?」
ここでようやく俺の方を振り向くジュペッタ。
少し悲しげな表情をしていたので、俺は慌てて釈明する。
「いや、こうされるのが嫌というわけじゃなくて……ただ恥かしい……ってのが」
嫌じゃないと分かると、それ以降は聞かずにジュペッタはまた前を向いた。
「……」
小さく溜息をつく。
そして視線を夕日へ移した。
橙色の夕日は半分が建造物や山々に隠れ、空は微かに藍色を帯びている。
不意にカラスの群れが上空を通過した。
夕日に向かって飛ぶ黒色の鳥は、今俺の目に映るどの物体よりも目立っていた。
「……綺麗だな」
そして何だか……寂しい。
そこまでは口に出さずに呟く。
ジュペッタはこの風景をどんな気持ちで見ているんだろうか。
この位置からは彼女の表情は見えないため、その気持ちは推測できない。
カップルと言われて嬉しがったり、いきなり俺の腕に抱きついてきたり。
そして今、夕日を眺めるジュペッタの気持ち。
それらもやがて、理解できる日が来るのだろうか。
俺たちが本当の意味で信頼しあって、互いに互いのことを隠すことなく暮らしていける日が来るのだろうか。
そんな日が来ることを願って、俺はジュペッタに離れるよう催促した。
嫌がったジュペッタだったが、そろそろ宿泊先に行かなきゃいけないということを告げると、渋々了承して、再び俺の腕へ抱きついてきた。
俺は恥かしさで顔を赤くするも、離れるようジュペッタに言うことが出来なかった。
何故だかは自分でも分からない、きっと――――幸せなのだろう。
こうやってジュペッタと一緒にいられることが、ジュペッタをこんなにも近くで感じられることが。

一日目が終わる。
思えば時間の大半をタマムシデパートの散策に費やしてしまった。
だけど、その時間は無駄ではない。
だって、こんなにも心が満たされ、ここを去るのを惜しんでいるのだから。

――明日もいい日であるように。
空に輝きだした一番星にささやかな祈りを送って、俺達はタマムシデパートを後にした。









――――――――――――――――――――
第六話前編の後編。買い物話。
相変わらずの執筆スピードの遅さ、あと二回残ってるよ。

タマムシデパートは無駄にでかい。
ジャ○コみたいな感じという俺設定。
そして使いまわし、なんか後半は流れるようにキーボードを叩いたらこんな文章に。

七ヶ月前たった今でも~の件は、
出逢い話で明らかにする予定です。
もしかしたら六話中編と一緒に投下するかもです。
それ故に遅い執筆スピードが更に遅く。

遅いのは推敲とかしているからではないという。


拙著ながら最後まで見てくださり、ありがとうございました!
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