5スレ>>426


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セキチクシティ。
 南側には遠浅の海が、北側にはサファリゾーンが広がる、観光の町。
 シオンタウンを発ったアキラ達一行は、セキチクを目指しつつ道行くトレーナーとの対戦をしていた。

「はっはっはー! ウチのドードリオの動きを捉えられるか!?」
「は、速いっ…!」
「落ち着けメリィ、捉える必要なんて無い…近くに来たら放電だ!」
「わかった!」

 影分身を展開し、高速移動でメリィの周囲を回る鳥使いのドードリオ。
 だがピンポイントで狙えないなら、範囲攻撃で巻き込めば良い。

「う~…りゃあぁーーーっ!!!」

 バリバリバリバリバリッ!

「「「あべべべべべべべべべべぼぼぼぶ!?」」」

 器用に腹話術分も悲鳴を上げて沈むドードリオ。
 案外余裕なのかも知れないが、立ち上がれない時点で勝負は決していた。

「やった…勝ったよマスター!」
「よしよし、よくやったぞメリィ」

 駆け寄ってくる彼女を撫でてやるアキラ。

「それにしても…疲れただろ?」
「え? そんなこと無いけど」
「んなはず無いだろ。さっきからずっと戦いっぱなしだし…お前結構傷だらけだぞ」

 確かに彼女の姿は、多数の擦り傷や泥汚れでボロボロに見える。
 それもそうだろう。シオンタウンから先は釣り人や鳥使いが多く、殆どのトレーナー戦で彼女は引っ張りだこだったのだ。

「まぁ、体は疲れてないけど…確かにそろそろ休まないと電気が足りないかも」
「よし、それじゃ…あの原っぱで一旦休憩しよう」



 『ツイン・ウェイ(前編)』


 原っぱにレジャーシートを敷き、アキラ、デル、メリィ、ホウの4人はのんびりと日向ぼっこを楽しんでいた。

「んー…」
「お日様が気持ちいいです…」
「なんだか眠くなってきたよ…」
「………zzz」

 約1名既に眠りに落ちているが、それも無理は無いだろう。

「ゲンは外に出ないのか?」
『オレは太陽が嫌いなんだ…必要無けりゃ呼び出すのは日が沈んでからにしてくれ』
「…なんだか一生の半分は損してる気がしますよ」
『うっせー、オレは幽霊萌えもんだからいいんだよ!』

 と、その時だった。

 ピリリリリッ!

 アキラのポケギアが単調な電子音を鳴らした。

「ん?…あ、兄さんからメールだ」
『あ? アキラにゃ兄貴がいんのか?』
「うん、とっても強くてとっても優しいお兄さんだよね」
「そうですね。私たちより先に、私の姉さんと旅に出られたんです」
「前に会ったのは…カントーに行く前に、ヨシノシティの実家に帰ったときだったっけ」

 3人が話すのを他所に、アキラはメールの中身を確認する。

「何々…『ちょっと後ろ見てみろ』? 何だってこんなメー…」

 アキラは内容の通りに後ろを振り返り、硬直する。

「ど、どうしたんですか?」
「な、な、な、な…」
「な?」

 言葉になってない言葉を発しながら視線の先を指差すアキラ。
 デルとメリィはその先を見て…やはり硬直した。

「え…」
「うそっ…」

「よ、久しぶりだなアキラ」
「デルとメリィも、お久しぶり。元気にしてた?」

 そこに居たのは正真正銘、アキラの実の兄であるヨシタカとパートナーであるヘルガーのヘルであった。

「なんで兄さんとヘル姉がここにいるのさ!?」
「いや、何でっていわれてもな」
「そうよね、私たちは新婚旅行の途中であなた達を見つけただけだし…」

 新たに爆弾を投入するヘル。再び硬直するアキラ達。

「ちょっと待ってくれヘル姉。新婚旅行ってどういうこと?」
「え、新婚旅行って言うのは結婚したばかりの夫婦が…」
「ね、姉さん、ご主人様が聞きたいのはそういう言葉の意味じゃないと思うんだけど…」
「ああ、そっか。まだお前らには連絡してなかったっけか」

 ヨシタカはそう言うと、左手を出してみせる。
 それに合わせ、ヘルも自分の左手を出して見せた。
 二人とも薬指に、全く同じ趣向のリングをはめている。

「こ、これって…もしかして」
「結婚指輪…ですか?」
「そーゆーことっ。ね、だーりん♪」
「おいおい、流石に人前でそれは恥ずかしいからせめて『よっしー』にしてくれよ」
「どっちにしろ恥ずかしいだろ…じゃなくて! え、マジでか!? ドッキリとかじゃなくて!?」
『………(展開が激しすぎてついていけねぇ)』
「zzz…」

 突然の報告に混乱するアキラと、ピンク色の空気を醸し出し始めたヨシタカとヘル。
 その一方でデルとメリィは驚きのまま言葉も出ず、ゲンは蚊帳の外、ホウは相変わらず暢気に寝こけていた。
 今日も、世界は平和である。




「しっかし、旅してる間に結婚するとはね…」
「別にいいじゃないか。前々から考えてはいたけど、旅してたら指輪代も結婚資金も十分すぎるほど稼げたんだ」
「……いったいどんな旅したらそんな稼げるんだ」

 場所は変わってセキチクシティ。
 アキラとヨシタカは二人でサファリゾーンへと足を運んでいた。
 手持ちの皆は、今頃海のほうで海水浴を楽しんでいるだろう。

「つーか、折角の新婚旅行なのに俺なんかと居ていいのか?」
「いいんだよ。ヘルが『久しぶりなんだから今日くらい兄弟で遊んで来い』ってさ」
「なるほどね…」
「それに、あいつもデルやメリィ、ホウと遊びたかったんじゃないか?」
「それもそうか…じゃ、気兼ねなく楽しむかな」

 珍しい萌えもんを探し、時には捕獲する二人。
 歩きつかれたら釣りをして、ミニリュウが釣れて二人で驚き。
 そして彼女もあっさり捕獲するヨシタカの腕にアキラは更に驚く。

「…すげー、ラッキーやケンタロスだけじゃなくてミニリュウまであっさりかよ」
「何、相手の目を見れば大体捕まえ時か否かはわかるさ。ま、運の部分もあるけどな」
「目を見ればって…どんだけすごいんだよ兄さん」
「はは、このくらいできないとリーグのチャンピオンはつt…げほげほ、目指せないぞ?」
「え、兄さんもチャンピオン目指してるの?」
「いや、昔の話さ。今目指してるのは…幸せな家庭さ」
「惚気るなって…ところでさ、旅行って今までにどんなとこ行ってきたの?」
「そうだな…いろんな所に行ったが、この前はナナシマ諸島だった」

 幸せそうに思い出を語るヨシタカ。
 1の島でともしび山に登り、温泉に入ったこと。
 2の島でとても強いお婆さんと戦ったこと。
 3の島では森で森林浴を楽しみ、4の島では洞窟の滝が美しかったこと。
 5の島では素敵なリゾートでゆっくり過ごし、6の島と7の島では遺跡の探索が面白かったこと。

「…とまぁ長々と語ってしまったが、機会があったら自分で行ってみるのが一番だろうな」
「あははっ、機会なんてあればいいんだけどね…」
「………」
「………」

 会話が途切れ、場に微妙な空気が流れ出す。
 アキラが何か葉なしを振ろうと考えていると、先にヨシタカが切り出した。

「なぁ、アキラ」
「何?」
「…お前、まだ決めてなかったのか?」
「…何の話さ」
「とぼけんな」
「……」

 言葉を発しないアキラに、少し厳しめの口調でヨシタカは問う。

「いつまで、彼女たちを待たせる気だ?」
「……兄さんにはわかんないよ、俺の気持ちなんて」
「僕はエスパーじゃないんでな、たとえ実の弟の思ってることだってわかる自信はない…言ってみろ、相談くらいなら乗ってやる」
「………」

 一呼吸置き、アキラは話し始めた。

「俺…どっちを選べばいいか、わかんないんだ」
「……」
「正直な話、好きかって聞かれたらどっちも好きだと思う」
「……」
「好きだから、傷つけたくない…だから、選べない」
「……」
「選ぶと、選ばれなかった方は傷つくだろ。そんなことで、今の関係を壊したくないんだ」
「……アキラ」

 黙って聞いていたヨシタカが口を開く。

「馬鹿かお前は」
「なっ、馬鹿って何だよ馬鹿って!」
「言葉通りの意味だ。何を考えてるかと思えば…はぁ」

 呆れたように溜息をつくヨシタカ。

「いいか? お前、彼女たちを傷つけたくないって言ったな?」
「……ああ」
「じゃあ聞くが、今の彼女たちの心…無傷だとでも思ってるのか?」
「……」
「そう思ってるんだったらお前は本物の馬鹿だ……いいか、恋する乙女ってのはな、想い人からの返事があるまでずっと心をすり減らしてるんだぞ」
「……」
「傷つけたくない? 違うだろ。お前は『自分が傷つきたくない』んだろうが!」
「っ! それは…」

 意識していなかったが、図星だったのだろう。
 アキラは言葉を詰まらせる。

「全く、我が弟ながら情けない…」
「…兄さんにはわかんないだろ! ヘル姉とずっと両想いで、二人だけだったんだからさ!」
「ああ、僕に板ばさみの苦痛はわからないな。だが…」
「だが何だよっ!」
「…逃げることの苦痛は、よく知ってる」
「!」

 ヨシタカは思い出すように語りだした。

「お前たちの目からは昔から…それこそラブラブに見えたかも知れんが、想いが通じ合ったのは昨年の話だ」
「昨年って…まさか、俺たちが旅に出た後!?」
「ああ。実は、恥ずかしくて答えを返すのが遅れてな…返事したとき、すごい勢いで泣かれたよ」
「えっ…」
「『いつまで待たせんのよ、ばかっ』てさ…それ見て僕は後悔したよ。なんでもっと早く返事してやれなかったんだろうってな」
「兄さん…」
「…二人とも、大分前からお前のことを好いていたはずだ。これ以上二人を傷つけるかどうかは、お前次第だぞ」
「…わかった」
「…後悔しない答えを出せよ」
「ああ」
「よし…そろそろ時間だが、お前はどうする? 僕はヘル達の様子を見てこようと思うけど」
「…先に、部屋に戻るよ」
「そうか…じゃな。応援してるぞ」

 そう言い残し、立ち去るヨシタカ。
 アキラは二人のことを想いながら、どう答えを出すべきか考えるのだった。 




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