5スレ>>422

ある旅人達の話。

「…まったく、マスターの方向音痴にはいつも困っちゃうわね。」
「おかしいなぁ…。ちゃんと地図を見て歩いたのに…。」
「ま、マスター。あの…地図が逆さまだよ?」
「…仕方ない。ここで一晩野宿だな。ホエルオー、寝袋出してくれ。」
「あうぅ、私を無視しないでくださいぃ…。」
ご主人様の一言で、私達は足を止め、一晩の暖を取ることになった。
私の右隣にご主人様が、左隣には命より大事な相方―ライボルトがごろんと横になる。

私達は今、旅の途中。長い長い、海沿いの道を歩いていた。
私のご主人様と、私のとても大事なライボルトとね。
でも、道に迷っちゃって、気がつけばどこだかわからない林の中。
あげくに目印もつけてなくて、出口もわからず…。仕方なく野宿をする羽目になった、というわけ。
…本当は野宿とか嫌いなんだけどね。マスター、あとでお仕置きしておかないと。

……………

マスターが寝付いちゃった後、私とライボルトは草むらにねっころがって、木々の間から見える夜空を眺めて、ただぼーっとしていた。
「ねぇ、ライボルト。」
「ん、何?」
私が呼びかければ、彼はすぐに答える。本当に素直で、かわいい子…。
私達萌えもんは、みんな女の子みたいな見た目をしている。でも、中身まで全員女の子なわけじゃない。
ライボルトは、見た目や仕草は女の子だけど、中身は立派な男の子なんだ。
「…疲れたね。」
「…うん。」
二人で意味のない会話を交わす。でも、そんな言葉でも飽きることはない。
彼の仕草、言葉、表情、何を見ても、聞いても、飽きないんだから不思議よね。
これが俗に言う「恋」ってやつ…?って、何考えてるんだろう、私…。

「…あれ?…なんだろ。何かくるよ。」
ライボルトがねっころがったまま、空を指差した。
小さい光の玉が、だんだんと大きくなって、近づいてきている?
「…萌えもんかな?」
「さぁ…?光の玉みたいな萌えもんなんていたっけ?」
野生の萌えもんだったら、私達は戦わないといけない。だから、普通は警戒をしなくちゃいけない。
でも、私はなぜか危機感なんて感じなかった。たぶんライボルトもそうなんだろう。
…不思議な光の玉は、私達の目の前まで降りてきた。どこからか、声が聞こえる。

「…うふふ、仲むつまじいこと…。あなた達みたいな、両想いの組を見るのはとても気分がいいわ。
 そんなあなた達にお似合いの、素晴らしい贈り物をあげる。大事にしてあげてね…。」

そんな言葉が聞こえたかと思うと、ふっと光の玉は消えてしまった。
「…ねぇ、…今の、何?」
「…うーん?…わかんないや。」
私達は起き上がって、辺りを見回す。光の玉がやってきた痕跡もなければ、飛び去った痕跡もなかった。
「…ねぇ、ホエルオー。何持ってるの?」
「え…?あ。」
私の両手の中には、いつの間にか小さな卵が抱かれていた。

……………

「うん?どうしたんだい、それ。」
マスターが不思議そうに声をかける。そりゃそうよね。昨日はこんなものなかったもの。
「うふふ、私でもよくわかんない。」
「何だよそれ。勝手にどこかで拾ってきたのか?」
「そうじゃないけどね、うふふ。」
思わず笑いがこぼれる。…今の私、絶対に変な人ね。
でもうれしいんだもの。仕方ないよね。だってこの中には…。
「ねっ、ライボルト?」
「うん、だね。」
「何なんだいったい?」
私達の、大事な大事な、子供がいるんだもの。それこそ、天から授かった…ね。

卵が、少し、ほんの少し、動いた気がした。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

※端書
萌えもんが卵を産むところが目撃されていないのは、誰かが卵を与えているからである。
…はい、私論ですね。でもいいじゃないですか、ロマンチックで。
小ネタなのであまり煮詰めていません。勢いで書いたので、拙い部分があっても許してください。
と、言い訳を残しつつ。
駄文ながら最後までお付き合いくださってありがとうございます。

書いた人:蛾

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最終更新:2008年05月24日 21:35
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