5スレ>>421

「ここがシオンタウンか…」
『しずかなまちですね』
「で、あの大きな塔が萌えもんタワーかぁ…」
『『~~♪』』

俺の名前はリン、しがない萌えもんトレーナーだ。
姉さんのホウオウ、無口なユレイドル、アンノーン達(×1000)と旅をしている。
そんなこんなでシオンタウンまでやって来た訳だが…

「違います!!」

何か騒ぎが起こってるようだ…





「しかしね、実際に見た人が居る訳だし…」
「見間違いです!確かにおじいちゃんのお墓はタワーにありますけど、化けて出るような人じゃないです!
 そんなに言うなら調べてみればいいじゃないですか」
「それは山々なんだが…調べようにもなぁ…」
「どうしたんです?」

ただ見ていただけだったが、気になって話しかけてみた。

「あなたは?」
「ただの通りすがりの萌えもんトレーナですが…言い争っているように見えたので」
「あ…そう見えましたか…これは失礼を」
「それで…何を話していたんです?」
「外の方にお話するような話でもないんですが…まぁいいでしょう
 …最近、萌えもんタワーで幽霊騒ぎが起こっているんです」
「萌えもんタワーで? それって日常の事だって聞いたことがありますけど…」

萌えもんタワーには大量のゴースト萌えもん達が住んでおり、彼らのイタズラなどで日常的に幽霊が出るそうだが…

「まぁそうなんですが…今回は少し違いまして…」
「と、言うと?」
「今回目撃されたのが…フジ博士の幽霊なのです」




詳しい話はこうだ。
数日前、タワー最上階付近にてシオン住民が幽霊を見かけたそうだ。
そしてその幽霊の姿は、数年前亡くなり、遺言によりタワーの最上階に葬られたフジ老人―萌えもん研究家のフジ博士―に瓜二つだったらしい。
それを聞いた他の住民が調査をしようとした所、気がついたらタワーの入り口で倒れていたり、寒気がして引き返さざるを得なくなったりしたらしい。
その事を彼女―フジ博士の孫―にその事を知らせたところ、彼女が怒ってしまい、さっきの光景に繋がる。

「本当にフジ博士なのかを確認しようにも誰も辿り着けていなくて…
 しかも、日を追うごとに進める階層が低くなってきているんです」
「そうなんですか…」
「おじいちゃんは化けて出るとは思えないんです…でもそれを確認することもできなくて…」
「・・・・・」


「ねぇ、どうするの?」

姉さんが聞いてくるが…答えはきまっている。

「でしたら、俺が調べて来ましょうか?」

困っている人を放って置いてのうのうとしているような育て方を俺はされていないのだ。





そんな訳で萌えもんタワーに入ってみたわけだが…

「これは…」
「何か…ビリビリ来るね 人払い…かな?」
『あんまりいいきぶんはしないです・・・』
「~~~…」

これは入れないわけだ…タワー内部に人払いがかけられている。
普通の人は科学全般を信じきってるためにこう言う迷信的なものには弱くなってる…入れないのも当然か。
だが俺は腐っても神社の子、これ位なら…
落ち着いて、集中しながら、ゆっくりと…

「一 二 三 四 五 六 七 八 九 十 布瑠部 由良由良止 布瑠部…」

体が軽くなるのを感じる、どうやら成功したみたいだ。
今の?まぁ軽いおまじないみたいなもんだ。

「さてと…行くか」
「えぇ…人払いまでして何をしているのか確かめに行かなきゃね」
『いやなきぶんもとれたし、いけますっ』
「~~~♪」

そのままの勢いのまま一気にタワーを駆け上がる。
途中で気がついたことだが、どうやらタワーの人払いは萌えもんにも影響しているらしい。
さっきからここに住んでいるはずのゴースト萌えもんたちを全く見かけていない。
本当に何をしているんだ…





―萌えもんタワー最上階―
今までの場所とは違い、少し狭い場所だ。
それ以外の道をさえぎるように墓石が並び、道のようになっている。
そしてその道の向こうには―

「誰ですか…? ここには入らないよう結界を張ったはずなんですが」

一人の女性がいた。
長く伸びる銀色の髪と赤い瞳
纏う服は濃い紫色のローブと三角帽子…
一般的な姿よりもかなり大人びているような気もするが…あれは萌えもん―ムウマージだ。

「人払いだけならよかったんだけどな…幽霊騒ぎはどうかと思うが」
「幽霊…? そうですか…」
「? 貴女じゃないの?」
「えぇ…私がしたのは人払いのみ。 幽霊騒ぎなど起こした覚えはありません」
「え…じゃあ…」
「恐らく目撃された幽霊というのは、正真正銘のフジ氏の霊でしょうね…私の邪魔をするために」
「何?」

そこで彼女の表情に気づく。
光を失ったかのような瞳―あれは何かに絶望した顔だ。

「萌えもん研究者として高名だったフジ氏が、何故こんな場所で眠っているか知っていますか?」
「…一応聞いたよ」




それはタワーに登る前。

「おじいちゃんは萌えもんの遺伝子研究においての先駆者でした。
 しかしもう一つの顔もあった」
「顔…?」

フジ博士の孫に話を聞いたときの事。

「非合法組織の援助の下、ポケモンや人間を強制的に萌えもんにする研究をしていたんです」
「何だと!?」

それは衝撃的な言葉だった。

「萌えもんがかつてポケモンであったことは有名な学説です。
 だが、『なぜ』は兎も角『どうやって』進化したかについては謎でした」
「そうね…でもそれは今でも謎のはず…」
「はい…ですが、おじいちゃんは非合法研究の末、萌えもん化に成功したんです」
「そんな事が…?」
「えぇ…その事はおじいちゃんの死後、遺品の整理の途中で出てきたコレで分かりました」

そう言って彼女が取り出したのは古ぼけたノート

「これはおじいちゃんの手記です。
 これの記録によれば、ポケモンや人間を実験体として、一部完全とも言える成功体も完成したそうです…」
「完全…それは…」
「まぁ、大抵は知能だけだったり、見た目だけだったり…そんな萌えもんばかりだったそうですが」

逆にそれでは始末が悪い…無理やり実験体にされたポケモンや人間の事を考えると気分が悪くなる。

「では何でそんな研究者がこのシオンに…そして萌えもんタワーに葬られたんですか?」
「研究所はその後、とある萌えもんの暴走により崩壊し…そのとき初めて自分がした事の重さに気づいたそうです
 そして、死した萌えもんを弔うこの町に移住し、トレーナーに捨てられた萌えもんなどを引き取り
 育てながら、毎日タワーの慰霊をしていました」
「懺悔…だったんでしょうね」
「えぇ…」




「それなら話が早いですね…彼が何をしたのか知っているのなら」
「…その口ぶりからすると…」
「えぇ、私はその実験体。
 ベーズは人間、形はムウマージの『成功体』です」

普通よりも大人びた姿の答えがそこにあった。

「研究所崩壊後、私たちは混乱に乗じて逃げました。
 そんな私たちの抱いた思いは一つでした―私たちをこんな姿にした人間に復讐を―
 まぁ、私はそんなことどうでも良かったんですが…仲間達の為に協力しました」

当然だろう…彼らは被害者だ。
だが、そんな萌えもんが居たことも、何か事件の話も聞かない。

「…復讐の準備を整え、始めようとしたときに仲間達は『崩壊』しました―比喩ではなく事実として
 強引な実験で生み出された『失敗体』は寿命まで著しく短かったんです…
 復讐を果たすことなく、仲間は次々病に倒れ―残ったのは私を含めた僅かな『成功体』のみとなりました…」
「そんな…」
「フジ氏はそんな私たちの事を知っていたようでした。
 彼は知り合いを介して私たちの邪魔を何度もしてきましたし…」



「…フジ氏は自分の研究が広がることを恐れていました」
「あぁ…それも知っている。フジ博士の孫が持っていた手記に書かれていたらしい」
「彼は晩年、研究記録の最重要部分を除いたものを自らが信頼する人間に託しました」
「それなら…」
「しかし…その記録も盗難や遺産整理のゴタゴタでいくつかが闇に流れてしまっています。
 そして…それと最重要部分が無くとも時間さえあれば…」
「強引な人造萌えもんが作れる…と?」
「えぇ…そうです。
 そしてその最重要記録―それは、この墓石の中に隠してあるんです」
「な!?」
「まぁ、途方も無い時間がかかりますがね
 最重要部分があればすぐでしょうが…普通は気づきにくい場所ですし、フジ氏の墓となれば人目にも付く。考えたものです」
「じゃあ、何でアンタはこんな事を?」
「…数週間前です。
 私は手に入れた情報を元にとある研究施設を襲撃しました…」

何の話だろう…と思ったが…話の流れからするとまさか―

「えぇ、お察しのとおり、フジ氏の研究成果が一部漏れていたんです。
 絶望しました…また私たちのような存在が生み出されるのかと…
 見た目にも力でもヒトを超越してしまった体
 かと言って萌えもんかといえばそうでもない…私たちは半端者なんです。どちらの場所でも生きられない」
「…」
「そんな私たちにとって、この世は地獄でした
 …いや、終わることの無い煉獄―罪の炎に焼かれ、復讐の炎を燃やし―そして半ばで命の炎を枯らし深淵へと落ちていく…」

彼女の言葉には深い悲しみがこもっている。

「そんな果て無き煉獄を上るのも…もう疲れてしまいました…
 せめて私たちのような存在が二度と生まれない事を願いますが…いつかは再び扉は開かれるでしょう…
 この場所の封も完全ではない…いつかは見つかってしまう…だから」

彼女は無線機を取り出し―

「作戦を開始してください」

そう言った。

「外に居る私の仲間に連絡しました。
 数分後には仲間の砲撃でこの場所は瓦礫に埋もれるでしょう…」
「…アンタはどうする気だ?」
「…フジ氏の残したものを消し去ります
 記録も、『私も』含めて全て」

そんなことだろうと思った…コイツはこの場所と一緒に最初から心中する気だったんだ。
人払いをして住民に被害が及ばないようにしてまで…

「煉獄の頂上には登りきることは出来ませんでしたが…せめてこの塔の上から天へと旅立ちたいと思います。
 …急いでこの場から逃げてください…まだ多少の余裕はあります」

そう言って、ムウマージはさらに奥へと消えた。

「…姉さん」
「あの子を助けるのね」
「あぁ」
「ふふ…それでこそ私の弟よ!」
「まぁな、それに」

俺と姉さんは目を合わせつつ―

「「目の前の困ってる人を放ってのうのうとしていられる様な育てられ方(育て方)はしてないさ(わ)」」

声を合わせた。

「うんうん…私たちは先に降りているけど…気をつけてね」
「・・・・・」
「どうしたユレイドル?」
『・・・なにをいってもいくことぐらいは、もうわかっています・・・でも、ぶじにかえってきてください』
「あぁ、当たり前さ」




「何ですか、早く逃げないと危ないですよ」

ムウマージは最奥、フジ博士の墓石の前に居た。

「嫌だね。崩れるかもしれない階層にいるヤツを避難させないと」
「…何を考えているんです?」
「お前を連れて、逃げる」
「結構です、お帰りください」
「お前が降りるならな」
「…私はこの場で終わりにすると決めたんです…邪魔をしないでください」

ムウマージの目が鋭くなった―

「もし邪魔をするなら…って目だな」
「えぇ…」

一歩足を進める…彼女の掌が上がった。

「何故邪魔をするんです…フジ氏といい人間は…」

「なぁ」
「…何ですか」
「アンタ、人間の復讐なんてどうでもいいって言ってたけど、嘘だろ」
「何を言って…」
「アンタには見えていないからさ…人の想いってやつが」

彼女の言葉…そしてフジ博士の孫の話、それで彼が願った事がわかった。

「フジ博士はお前らに復讐をやめて欲しかったのさ、だから全力で邪魔をした」
「…身勝手ですね、生み出したのは向こうだと言うのに…」
「だから、さ。
 折角自由の身になったんだ、自由に生きて欲しかった…親心だったのかもな」
「……何を今更」
「それにな…博士の孫から聞いた話なんだが…」



「おじいちゃんは…此処に着てからは寿命の研究をしていました」
「寿命の?」
「萌えもんは人間よりも遥かに長い寿命があります
 萌えもんの遺伝子を調べて、寿命を延ばす研究をしていたのではないかと…」
「…その成果は?」
「目処は立っていたみたいです。でも完成前に…」
「そうですか…」



「な…何…を?」
「フジ博士は寿命の研究をしていた、おそらくお前の仲間を救うつもりだったんだろう」
「そんな…事…信じられるわけ」

―突然の轟音―

「何だ!?」
「…始まった…みたいですね」

更に轟音―
そして強烈な振動が始まる。
その揺れにより倒れ始める墓石…そして、フジ博士の墓石も…ん?

「墓石の下に…?」
「…え?」

―もし、この文章を読んでいるのが私の以前の研究目当てであるなら…
 諦めたまえ、私の手元に残していた記録は処分した。
 そして、もし…もしもこれを読んでいるのが私の生み出したものであるのならば…
 この墓石の中に、萌えもん達の寿命を延ばすための研究データが入っている、持って行ってくれて構わない。
 出来れば完全な物を渡したかったのだが…私の寿命のほうが足らなかったようだ。
 このデータを役立てて欲しい…そして、出来るなら復讐などと言うことは考えず、キミ達が望むことをして欲しい。
 無理やりに産み出しておいておこがましいかもしれない…だが、私は切にそれを願う

 願わくば…私が産み出した子供たちに幸あらんことを  フジ―

「な…」
「墓石の下か…隠し場所としてはいいかも知れなかったが、誰にも気づかれなかったみたいだな」
「わたし…たちは…?」
「随分と愛されてたみたいだな…」

ムウマージの中の何かが崩れるのが見えたような気がした。
ふらふらと足元がおぼつかなくなっている―っておい、この状況でこれは…
その瞬間、ムウマージの近くの壁が吹っ飛び―その衝撃で彼女が外に投げ出された!

「っ!?」
「くそっ!!」

一気に駆け寄り、彼女をキャッチ…したはいいが俺も壁際だった。

「くっ…待ってろ、すぐに引き揚げてやる」
「…もういいです…離して下さい
 …これも罰です…このまま私も深淵で罪を償い…」

「っ馬鹿野郎!! 死んで罪が償えるとでも思ってんのか!?
 償いたいと思ってんなら何が何でも生きやがれこの阿呆が!!」

…とは言うが…かなりキツい…

―しかし、無常にも―
 ―弱くなった足場が崩れて―
  ―二人そろって外へ…―


「「「~~~~~~!!!!!」」」

その瞬間、何かが纏わり付いて空中でキャッチされる。
そして、何かに絡め取られた。

「よっし、成功!
 もうちょっとだけ頑張って、すぐにこっちに戻るから~」
「「「~~~~!」」」
「・・・・・っ」
「頑張って!もうちょっと!」

見れば、被害が余り及んでいない少し下の階層で叫んでいるのは―姉さんだ。
どうやらこの事態を想定して、準備をしていたらしい。
よく見れば今浮いているのは、アンノーン達が必死に支えているから、巻きついているのはユレイドルの触手だ。
まぁ、何というか。

「めちゃめちゃだけど…助かったのかな?」

そう話しかけたが、ムウマージは返事をしない。
よく見ると―

「気絶してら…」

だけど…その表情には、さっきまでの暗いものは見えなかった。





この事件の結末は―
タワー最上階は完全に崩壊。修復にはしばらくかかるそうだ。
幽霊についてはしばらくして住民が調べたところ、まったく見かけなかったということで、見間違いという結論が下された。
ムウマージの仲間は見つからなかった。
ムウマージ曰く「始めから逃げるよう指示した。行き先はわからない」だそうだ。
そして、そのムウマージは―

「さて、次の街はドコに行こうか?」
「そうねぇ…今度は西かな?」
『にしなら、ヤマブキシティでしょうか?』
「そうねぇ…迷うなぁ…」

「で、何で私が同行することに?」

俺たちの一行についていく事となった。

「文句言うなって…苦労して保護観察まで持っていったんだからな」
「それで貴方と一緒ですか…」
「まぁ言うな。それに俺としても…
 壮大な自殺未遂やらかした女を放っておけなくてな」

その一言に、ムウマージの顔が赤くなり、慌てて帽子を下げて隠す。

「ま…まぁ、私の身柄を引き受けてくれたんですから、感謝しないといけませんかね…
 ともあれ…」


「よろしくお願いしますね、リン」



あとがき???
長いよ…そして独自設定走りすぎだよ…
ムウマージ、好きなんです(ぇ
ウチのは一般的な『魔女っ娘』というよりは『魔女』ってイメージになってますが…
さぁ次は…ユカルートかな?

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最終更新:2008年05月24日 21:36
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