5スレ>>420


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(ぽかぽかした日中に読むことを強く推奨します)


人間とは潜在的に昼寝を必要とする生き物らしい。
赤ん坊の頃は1日に3回ほど昼寝の時間が設けられるが、それが少し大きくなると2回となり、
やがて1回、そして小学校に上がる頃には夜1回眠るだけで充分となる。
これが成長というものなのだろう。それに学校に行くようになったり、社会人ともなると、
昼寝する事のできない社会的な制約が出てくる。
だが本質的には、人間は1~2時間の昼寝がないと動きが鈍るらしい。
それを考えてみると、トレーナーという職業(?)は気楽なものなのかもしれない。
現に今こうやって、自分の萌えもん達と共にまどろみの世界へと旅立とうとしているのだから。

【春眠暁を覚えず】

春というのは気持ちの良い季節であるとともに、厄介な時期でもある。
季節の変わり目という事で体調を崩しやすく、人によっては花粉症に苦しむ場合もあるだろう。
だが俺にとって最も厄介なのは、知らない間に夢の中へといざなわれていることなのだ。
「ふぁ~…」
やはり心地よい陽気の中で過ごしていると、まぶたは徐々に重くなってくる。
(ダ、ダメだ。まだ寝ちゃいけない)
思わず睡眠欲に身を任せてしまいそうになるものの、頭を振って何とか眠気を追っ払う。
今日はパーティーの皆の健康診断の結果をまとめ、トレーナー協会に提出する書類を書かなければ
いけない日だ。締め切りは明後日。ギリギリまで放置していた俺が悪いといえばそうだ。
もっとも、さっきからずっとこの調子で、あまり作業は進んでいないのだが。
「やれやれ。少し休憩しよう」
どうにも集中力が続かず、コーヒーでも飲んで一服しようと席を立つ。
いつもならここでフシギバナなりサンドパンなりが率先して淹れてくれるのだが、今日ばかりは
それも期待できそうにない。
何故って? 隣の部屋からかすかに聞こえる複数の寝息がそれを物語っているからさ。
「ふぅ…」
安物のインスタントコーヒーを飲みながら、隣の部屋のドアをじっと見つめる。
その中に加わって、心行くまで惰眠を貪る事ができたらどれだけ良いだろう、と考えながら。
皆の安らかな寝顔は確かに癒し効果抜群なのだが、それで書類が書きあがるわけでもなく…。
つかの間の休憩を追え、再びペンを握るため、席の方に戻ろうとする。
ちょうどその時、玄関のドアがゆっくりと開く音がした。
「ん、帰ってきたか」
隣の部屋で眠っていないただ1人のメンバー、オニドリルが買出しから帰ってきたようである。
「……ただいま、マスター」
「あぁ、おかえり。ご苦労さん」
いつも通りのローテンションな声に応答しながら、視線は書類の方に向けている。
オニドリルも俺が忙しいのを承知しているようで、特に気にする事もなく、買出しの品を部屋の棚へと詰めていく。
どれをどこにしまうか完璧に把握しているのも分かっているので、俺も安心して任せていられるのだ。
そうしてしばらく、互いに自分の仕事をこなす時間が流れていく。
さすがに自分の萌えもんの前でだらけた姿は見せられないからな。
先程までの眠気も幾分和らぎ、真剣に作業に取り掛かることが出来た。
それからどれぐらいの時間が経っただろう。恐らく1時間も経ってないんじゃなかろうか。
「んっ、ん゛~あ゛~」
大きな伸びが、俺を苦しめた書類が片付いた事を証明していた。
なんだ、集中すれば案外早く終わる仕事だったんだな。
「…終わったの?」
「おわっ!?」
いきなり隣から覗き込んでくるオニドリルの顔に、思わず驚いてしまった。
隣に座ってた事にすら気付かないとは、よほど集中していたらしい。
「…レディの顔見てビックリするのは失礼」
「ごめんごめん。隣にいたとは思わなくてさ」
少しムッとした表情になったオニドリルも、すぐに元の凛とした表情に戻る。
「もしかして、ずっと見てたのか?」
「…(コクッ」
買出しの品の片付けぐらい、こいつにすればすぐに済む些末な仕事だったのだろう。
「でもなんで声も掛けなかったんだ?」
自分の仕事が済んだのなら休憩なり趣味の読書なりしていれば良いと思うんだが。
「……このニブチン野郎」
ボソッと酷い事を言われた気がするが、あえて聞こえなかったことにしよう。
「とにかく、今日の仕事はこれで終わりだ。あとはフリーだぞ」
書類の提出は明後日だし、買出しも済んでいる。今日・明日は全く予定が無い日ということになる。
「…皆はどうしてるの?」
さして興味もなさそうだが、何となく手持ち無沙汰なのか、そんな質問を投げかけてくる。
俺は書類を提出用の封筒に詰めながら、片方の親指で隣の部屋をクイクイッと指す。
隣の部屋のドアを開け、オニドリルが中の様子をうかがう。
少し見てすぐにドアを閉め、こちらの振り向いたその表情は、心なしか呆れたような顔をしていた。
「…気楽なもんだね」
「まぁそう言うな。この陽気じゃ仕方ないよ」
確かに俺達に引き換え、他のメンバーは安らかな一日を送っている。
同じような働きをしているのに、なお仕事を押し付けられたオニドリルとしては、文句の1つでも言いたいことだろう。
「すまないな。お前以外に完璧に買出しを済ませてくれそうな奴がいないんだ」
サンドパンは主にピカチュウの子守りで忙しいし、フシギバナは専業主婦並みの商品選びで時間がかかるし、
キュウコンとギャロップは酒とつまみで軍資金を使い込むし…。
「…いい。分かってるから」
しれっと言い切るオニドリルだが、やはりちょっと不満そうだ。
うーん、不機嫌なオニドリルは何気に一番対応に困るんだよなぁ。
何をしてほしいのか言わないし、表立って批判もしてこない。その代わり、地味に態度で示してくるのだ。
「ほ、ほら。お前も寝てきたらどうだ? 夕飯までには起こすからさ」
「……(ピク」
お、ちょっと反応を示したぞ。割と好感触だ。
「…マスターは寝ないの?」
「いや、俺は今日の夕飯係だし」
「…だったら私も起きてる」
うむぅ、なかなか手ごわい。
「…マスターも眠そう」
機嫌が悪い中でも、俺を気遣ってくれているのだろう。
それはもちろん嬉しいのだが、一番働いてくれたこいつに休息の時間を与えたいのも確かだ。
「分かった。じゃあ俺もちょっと寝るよ」
こうなったらこいつが折れない事は分かっているので、俺もオニドリルの提案に従う事にする。
そして隣の部屋のドアに手をかけようとすると、服の裾をクイクイッと引っ張られた。
「…そっちはダメ」
「へ?」
予想外の言葉に、思わず体が一瞬止まる。
「…ここで寝るの」
はぁ、さいですか。
「でも寝るにしたって、布団はおろかタオルケットも無いぞ。さすがに体に悪いんじゃないか?」
「…それなら大丈夫」
オニドリルはそう言うと、俺の服の裾をつかんでいた手をおもむろに腰に回してくる。
「お、おい」
体を密着させ、そのままフローリングの床に押し倒される。
「…これなら風邪引かないでしょ?」
なるほど、羽毛布団ってわけか。
確かにこいつは羽の手入れはとりわけ真剣にやってるからな。夜の就寝前にも、最低1時間はかけてるし。
「ああ、確かにあったかいな。感触も良いし」
俺は純粋に、この羽に包まれた心地良さを表現したのだが、こいつは少し邪推したようで…。
「…スケベ」
なんて事を言われてしまいました。
「ちょ、そういう事じゃないぞ?」
「そういう事って、どういう事?」
くっ、こいつ、完全に俺で遊んでるな。
やっぱりどこかで不満の捌け口が欲しかったのだろうか。
「…顔真っ赤だよ」
「そ、そんな事はないぞ? うん、ない」
こいつ、最近キュウコンの影響受けてないか?
「…可愛い」
ああ、オニドリルよ。お前はどんどん大人の女性に近づいているんだね。
でもその方向に進むのは、小さい頃から一緒にいた身としては少し複雑だよ、俺は。うん。
ここは反撃せねば。
「そんな事いったら、お前だって顔がニヤけっぱなしだぞ?」
「…それは嘘。妄言。偽り」
お、動揺したな?
「しかも自分から押し倒すなんて、意外に大胆なんだな?」
「…知らない (///)」
ぷいっ、とそっぽ向かれてしまった。
そんな様子が愛らしくて、自然とオニドリルを抱き締める力が強くなる。
「…う~。寝られない (///)」
「お互い様だろ?」
実際、羽の感触は寝るのに最適だ。
だが目の前に女の子がいるのにすぐ寝れるほど、俺も鈍くはない。
「……」
「どうした?」
ん、少しやりすぎたかな。反撃だからって、怒らせてしまっては意味が無い。
だがこちらを向きなおしたオニドリルは怒っているというより、新たな攻撃方法を見つけたようで…。
「…じゃあ、本当に寝られなくする?」
「なっ!?」
舌をベーッと出してそう言い放つオニドリルの顔は、いつものクールな表情ではなく、
大人の女性のそれでもなく、小悪魔的な悪戯っぽい笑みを浮かべていた。
「…冗談」
「で、ですよねー」
それを聞いて内心ホッとしてしまったのは、甲斐性が無いという事なのだろうか。
「ったく。ほら、寝よう」
「…うん」
反撃が済んでスッキリしたのか、素直に俺の提案に乗るオニドリル。
オニドリルの機嫌が直った事で一安心した俺も、やがて蓄積していた睡眠欲に勝てず、眠りの中に落ちていく。
「…冗談じゃなくて良かったのに」
そうしてまどろみながら聞こえた一言の意味を後日考え、赤面してしまう事になるのだが。

----------------------------------夕方------------------------------------------
「ねぇ、これどういう事かな?」
「さすがにここまで露骨だと、弁護は出来ないわね」
「レッドさん、不潔です…」
「わらわの尻尾で良ければいくらでも貸すぞ? ほれほれ」
「ピカも兄ちゃんと一緒に寝たかったよぅ」

俺達より先に目覚めたメンバー達に集中砲火を浴びせられる。それは別にいい。
でだがオニドリルさん? あなたは何故またそれを俺1人に押し付けますか?
前にもこんな事あったよね? ね?
「まぁ待て。話せば分かる」
『問答無用!!』


「……♪」


【あとがき】
(´・ω・`)お久しぶりの嫁ドリルです。春のまどろみを表現しようと思ったのですが、単なるイチャイチャSSに
なってしまいましたね。本当は4月下旬に上げる予定だったのですが、色々事情があってこの時期に…。
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