5スレ>>401

 『Nightmare』



「……ん?」

 なんとなく違和感を感じて目を覚ます。
 確か俺は、いつもどおりバトルして、勝って…
 その後適当に皆と談笑して、昼寝したんだっけ…?

「…っ! 頭いてぇ…」

 寝起きのせいか妙に頭が重い。
 そのまま汗で湿った髪をかき上げようとして……腕が縛られていることに気がついた。

「……は?」

 混乱する。
 なんで俺は縛られている?
 心当たりは……俺には無い。
 と、そのとき、部屋の扉が開いて誰かが入ってきた。
 今気がついたが、ここは俺の部屋のようだ。

「ご主人様、目が覚めたんですね」
「デル!?」
「はい、どうかされましたか?」

 デルは俺に柔らかな笑みを向け、こちらに歩み寄ってきた。
 良かった、こいつは無事だったか。

「ちょうどいいところに来た、すまんがこの縄を何とかしてくれ。縄が食い込んで痛いんだ」
「わかりました。お任せください」

 デルは自分の爪で縄を切ってくれた。
 助かった。俺がそう思った次の瞬間。

 カチャリ

 俺の腕は再び拘束されていた。
 今度は手錠で。

「ふふっ、これなら痛くありませんよね」
「デル…どういうつもりなんだ」

 ワケがわからない。
 なんで彼女が俺を拘束する?
 悪戯? それにしては度が過ぎている。
 こういう悪戯はホウならやりかねないが、デルはしないはずだ。

「いえ、ただ私は…ご主人様と二人っきりになりたかっただけですよ?」

 そういって俺に抱きついてきた。
 確かに、最近あまり相手してやれなかったから二人になりたいのは…まぁ、仕方ないが。

「しゃーないな…わかった、今日だけだぞ」
「いやです」
「…は?」

 ちょっと待て。嫌ってどういう…

「これからずっと。永遠に私たち二人だけです」
「他の娘なんていらない。ご主人様は私だけのものです」
「みんな『処分』しましたから、誰にも邪魔はされませんよ」

 嬉しそうにデルは語る。
 その一方で、俺はデルの豹変振りに唖然としていた。
 彼女は仲間を「いらない」とか言うような娘ではなかったはずだ。
 というか、そもそもこの状況は彼女が…?
 俺はさっきの彼女のセリフの中で一番気になった所を問いただすことにした。

「おい、デル…」
「何でしょう、ご主人様?」
「『処分』って、どういうことだ?」
「え? そのままの意味ですけど」

 そのままの意味?
 と、そこで気づいた。
 彼女の服から俺の服に……赤黒い液体が移ってきたことに。
 今まで気づかなかった。彼女の着ている服は真っ黒だから。

「まさか…お前」
「ふふっ、5人も『処分』するのは大変でした…」
「なん、で」
「だって、邪魔なんです。ご主人様と二人になるには」

 そう言って膨れるデル。
 いつもなら可愛らしいと思うであろうその仕草が、今は恐ろしく感じる。

「ところでご主人様…」
「な、なんだよ」
「……どうして、私以外の娘のことなんか気になさるんですか!?」
「っ!?」

 いままでの柔らかげな表情から一変、怒った顔で俺を問い詰めるデル。
 俺が言葉に詰まると、彼女は不機嫌そうに視線をそらす。

「答えられないんですね……そうですか」
「……」
「でしたら…お仕置きです」

 彼女はそういうと、俺の右膝に顔を寄せ…

 間接を思い切り 噛 み 砕 い た。

「い…がっあああああああああああああ!?!?!?!?!」
「ガブ……あむあむ…ぺろっ」

 余りの激痛に悲鳴を上げる。
 それでもなお、彼女は俺の膝を噛み、舌で舐めて抉り、血を、肉を、骨までも、頬を上気させて味わっている。

「うふふっ、おいしい……」
「―ゥ!――――ッ!!!―――――ァ………」

 ありえ無い。
 なんでだ。
 どうしてこんなことに。
 きっとこれは悪い夢だ。
 そんな思考も激痛に飲まれ、とうとう俺は意識を手放した――――――














 ―――タ――――

 ―マ―ター―――――――――

 ―――マスター!――――

「マスター、しっかりして、マスター!」
「………はっ!?」

 飛び起きる。
 ここはどこだ?
 …俺の部屋だ。
 手足は…自由。
 右膝は……なんとも無い。

「マスター、だいじょうぶ? すっごいうなされてたけど…」
「メリィ? ああ…大丈夫、なんでもないよ」

 メリィは心配そうに俺を見ている。
 俺は安心させるように、彼女の頭をなでてやる。

「わわ、マスター?」
「心配させて悪い…ちょっと、悪い夢を見てたんだ」
「悪い…夢?」
「うん…」
「どんな夢だったの?」
「あー、実はな…」

 俺は覚えている限りの内容をメリィに話してやった。

「…って内容だったんだ」
「そ、それはまた…」
「でも、夢って深層意識の発現って言うし…俺ってデルのことそんな風に見てたのかと思うと…」

 最低だ、と思う。
 小さいときからずっと一緒にいた、妹のような娘がそんなことするはずが無い。
 でも夢で見たというのはそう思ってるということで…

「はぁ……」

 落ち込む俺。
 メリィの方を見ると、何故か難しい顔をして何かを考えているようだ。

「……まさか!」
「メリィ?」
「…多分、マスターは悪くないよ」
「へ? どうして?」
「実はマスターが寝た後のことなんだけど…ホウちゃんが一回、マスターの部屋に行ったの」
「……まさか」

 ホウは、大人しそうに見えて一番の悪戯好きだ。
 ちなみに、あいつのパーティー内での役割は催眠術からの多様な攻撃。
 そして、今回のこととあいつの使える技を考えると…

「俺に『悪夢』をかけやがったなホウの奴…」
「恐らくね…」
「…メリィ」
「なーに、マスター?」
「お仕置きは任せた。俺は疲れたから、もっかい寝る…」
「おっけー、任せて。おやすみなさい、マスター」

 メリィはそういって部屋から出て行った。
 俺は再びベッドに横たわる。

「…もう二度と、あんな夢見ませんように」

 離れた部屋から聞こえてくる電撃音と悲鳴を子守唄に、俺は再び眠りについた。






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・あとがき

 どうも初めまして、曹長とかいうものです。
 とりあえずはなっからヤンデレネタってどうなのよ? とか思いつつも浮かんだネタがこれだったので衝動で書いてしまいました><
 だってー、ウチのヘルガーってば性格「ヤンデレ」なんだもんさー。
 …次回書くことがあったらこうはならないと思います、多分。



 最後に。デンリュウは俺の嫁。ヘルガーは義妹。

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最終更新:2008年06月18日 03:07
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