1スレ>>707


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   ―――前書き―――


どうみても長編フラグです本当にry
ここまでやる気上がってる事自体数年ぶりで、萌えもんには本当に感謝しています。


広げた風呂敷がかなりでっかくなりそうで怖い気配ですが、仕様と勢いと妄想の産物ということで……。
それでは、書き上げてから意外と長い事に自分でびっくりした本編をどうぞー







   ―――Majestic Shellworks02―――


「つっ……痛……」
わずかばかりの空中浮遊を終えて地上に叩き付けられた瞬間、どうやら僕は気絶していたようだった。
大きな怪我は無かったのは良かったものの、やはりぞっとしないものはある。
ふと周りを見渡すと少しばかり時間が経ってしまったようで、日が次第に傾きかけていた。
パルシェンの姿は無くどうやらそのまま家へと戻ってしまったようらしい。
「あの馬鹿……訓練しないままで誰が一番損をすると思ってるんだ……」
誰もに言うでもなく、僕は草原の片隅でぽつりと呟いていた。
……と、唐突に緩やかな陽射しが遮られた。ふと見上げると、そこには先ほど
離れた所で戦っていた黒服の―――というか黒タイツの―――男性がそこに立っていた。
「なあ兄ちゃん。ちょっと顔貸してぇや?」
特徴的な訛り言葉が殊更に彼の胡散臭さを際立たせている。
僕は彼の底意地が悪そうな笑みを向けられて、嫌な予感を拭い去る事が出来ずにいた。
太陽が次第に橙色に辺りを染めて行く中、空の片隅に赤い鳥のような影を見たような気がした。


山吹色へと変わり行く街の往来の真ん中を、私は音が出るほど強く踏み締めて歩いていた。
「あの馬鹿……実際戦うのが一番早い事が何故分からないんだ……!」
ひとりごちても返事をする者はいない。他人でも止め様が無いほど怒っている事を察したのか、
まるでどこぞの聖書に記された故事のように人の波が形作り、道を開けていく。
私は戦略的な意味合いを除いて『威嚇』というものはあまり好きではない。力ある者が
調子に乗っているのが手に取るように分かって不快なのだ。
だから私は今自分でしている事が自身にとって不快であるし、何よりそれを止められない自分が
更に嫌いだった。しかもそうした自己嫌悪の連鎖は何処までも私を苛(さいな)み続け、苛立ちは
増す一方だった。
(私の事を思ってくれているのはありがたい。だが……!)
『怠けているからろくに氷系の技も覚えられないんだ』
その言葉は他でもないアイツだからこそ許す事が出来ない。
アイツは私が氷の力をろくに扱えない事、そしてそれに強いコンプレックスを抱いて
いる事をよく知っている。殴り飛ばしたのもこれが最初じゃない。
アイツは誰よりも私を理解し、助けようと努力し、いつも見てくれている。
だからこそ。私はアイツの言葉が許せないのだ。
「はあ……」
自然とため息が出る。アイツと共に生活するようになってから私自身もため息を
つく機会が増えたような気がする。
(やはり……身近な人の癖は伝染(うつ)るものなのだな……)
そう思うと、今日のアイツはいつにも増してため息が多かったような気がする。
よくよく考えれば確かに最初からやる気を見せなかった私にも非がある話ではあった。
「あの言葉は許せない。 だが……」
私にも非があるとするなら、こちらから顔を合わせる理由になるのではないか。
顔が緩みそうになる。だが先ほどまで周囲の怯える気配や訝しげな視線を思い出し、
なんとか顔を引き締めた。
「っと……ふう……」
(危ない危ない、このままではまるで変人ではないか……)
自宅へ向かう大通りのど真ん中で自身の感情を周囲に撒き散らしていた事を思い出す。
(何をやっているんだ、私は……)
改めて自己嫌悪しつつ、居辛さもあって速やかに今居る場所から離れようとしたその出先。
「あーっ!居たーっ!!」
「ん? なんだ……?」
とてもよく通る高い声が、夕暮れの大通りに響き渡る。
辺りの人々も、いったい何の騒ぎか、とそちらを見やった。
視線がその声の主に注目する最中、その声の主―――朱い髪の鳥娘―――が私の目前へと
降り立った。
「な、なんだ。 私に何か用か?」
「ねえねえ、キミはアレだよね、アレアレ!」
「ア、アレ? アレとはどれのことだ?」
無闇に代名詞が多く、私はその一言では彼女の言葉を理解出来ずにいた。
「アレだよ、アレ! さっきあそこに居た!」
更に高く声を張り上げる鳥娘―――野次馬曰くピジョンという種の娘らしい―――の声に、
更にギャラリーの視線が私に集まっていく。
流石にそろそろ居辛さの限界に到達しそうになった私は、とにかく出来る限り速やかに
彼女と意思疎通を行い、さっさとこの場を離れようと思った。
「とりあえず落ち着いてくれ。オマエは何が言いたいんだ? 初めから分かるよう言ってくれ」
「ああ、もう……急がないと危ないっていうのに!」
さっさと分かってよ、と言わんばかりに地団太を踏む少女だが、どうやら野次馬の人たちも
彼女の言葉がよく分かっていないようでなんとなく安心した。
「さっきね、あなた、草原に居たでしょ? 男の人と一緒に」
「あ、ああ。確かに居たが」
そう言った瞬間。やあねえ最近の娘は、とか、あんなキツい性格が男が居るのか、とか、
後で声かけてみようかと思ってたのに、とか野次馬がボソボソと騒ぎ始めた。
マズい。この状況は非常にマズい。
さすがに私もこの街に住んでいる身であるため、街を歩くたびに後ろ指を指されるような
事には絶対にしたくない。
「一緒に居たのは私の同居人だが。それはいいとしていったいどうしたというのだ?」
自ら軽くフォローを加えつつ―――何故か場が余計にざわついたが―――彼女に本題を問うた。
「その一緒に居た男の人がね、変な黒づくめに殴られてたんだ!」
―――え?
「手紙を運んでいたらあなたのお友達? の男の人にその怪しい黒づくめが声をかけてたんだ」
同時に周りが、ざわざわ、と断片的な情報を言いまわしている。
「あまりに怪しいからちょっと見てたらね、いきなりドカッ! って!」
通りすがりの主婦曰く、黒づくめとはまさかロケット団の奴じゃないか。
帰宅途中のサラリーマン曰く、奴等は平気で犯罪を起こしている連中だ。
遊び帰りの学生曰く、中には目をつけられて行方不明になったマスターやモンスターもいるらしい。
―――アイツとは、もう、会えなくなる?
「ボールからモンスターも出そうとしてたから、ちょっとヤバイんじゃないかなあ、って」
―――思考が回らない。腕が寒い。足が震える。
「あまりにびっくりして、それで誰か呼んで来ようと思ったらちょうどあなたがここに」
―――でも、それ以上に、彼の居る草原へと行かなくてはいけない、と。
「それで助けるの手伝ってもらおうと……って、えっ!?」
―――思った時には既に、私は全力でさっき歩いた道を全力で逆走していた。
後ろから、嬢ちゃん頑張れよ、とか、恋人のピンチを助けるのが女の役目よ、とかいう言葉が聞こえてきた。
一部反論したくはあったが、今は何よりも、
(出来れば、何も悪い事の無いままであってくれ……!)
と、逸(はや)る気持ちを抑えて走るのに必死であった。
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