5スレ>>432


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 ファミレスを利用する。
 旅をしていく中で、意外とその利用頻度の高さに驚いた。
 ……多少怠けてたりするところもあるんだけど。
 そして今日も、僕らはファミレスへと足を踏み入れた。

『何を頼む……?』
「あ、私はお腹がすいていないので要りません」
『お昼もまともに食べてないのに……もう深夜だよ?』
「す、空いてないものは空いてないんです!」

 具合が悪いようには見えないし、どうしたんだろうか。

『どこか調子悪いの?』
「いえ、そういうわけではないんです」
『なら少しくらい食べたら? ほら、ニーナの好物もあるよ』
「……お腹……空いて……ない、んです……」

 言葉がぶつ切りになる。
 本当に体の調子は大丈夫なのだろうか、ちょっと心配。
 でも、何度も言ってるんだし、そうなのだろう。
 ウェイトレスを呼び、頼むのはニーナの好物と、

『……お握りくらいは、食べれるよね?』

 尋ねるとややの間の後に頷きが返ったので、追加。
 注文してから料理が到着するまでの時間は結構退屈するものなのだけど……。
 ニーナの様子がおかしいことを気にしているうちにあっという間に過ぎ去った。
 いただきます、をして目の前の料理に手を付け始める。

「……」
『……!?』

 開始一分をまたずして、ニーナの前からお握りが消え去った。
 ……正直、半分くらい残すかなぁ、とか思ってたけど。
 まぁ、残さず食べてくれたならそれでいいか。

「……」
『……(もぐもぐ』
「……」
『……(もぐもぐ』

 半分ほどお皿を開けたときだったか、

『……(もぐもぐ』
「……(チラ」

 視線を感じた。正面から。
 注意をニーナのほうにやると、頻繁に視線がこちらを向いていることに気付いた。
 ……。

「……(チラチラ」

 窓の外を見たり、店内を見回したり、視線をバラしながら、時折料理に目を向ける。
 と思えば、背負った荷物の中身を探ってみたり、使うつもりのない調味料を手にとったりして、料理へ目。
 挙動不審。
 本人は気付かれていないつもりなのだろうけど、この通り、筒抜けである。
 料理を口元に運んでから、すぐには食べないでいると、

「……(じー」

 控えめな視線はいつの間にか凝視へと変わっていた。
 そのままの状態を保っていると、ごくり、とニーナの喉が鳴った。
 慌てて水を飲んで誤魔化したりして、やはり本人は気付かれていないと思っているようだ。
 ……。

「……(じー」

 ……気になる。というかうずうずしてきた。

『――(ばっ!』

 突然のタイミングで僕は顔を上げてニーナを見る。
 料理にばかり気のいっていたニーナは反応するのが遅れるが、それでも気付かれないようにと動いた。
 結果、額に手を当て、そのまま肘をテーブルについた、『考える』ポーズになる。
 そんな無茶な反応をした後でも構わず視線が飛んでくるのがニーナの心を代弁している。
 とてもおかしくて、つい頬が緩んで、ニヤついてしまった。

「……マスター」
『何?』
「なにか……楽しんでませんか?」

 料理ばかりと思っていたが、ちゃんと周りのことも把握している様子。
 楽しんでるような楽しんでないような、と曖昧に返事をして、
 ……そろそろ意地悪するの終わりにしよっかな。

『ねぇニーナ』
「はい?」
『食欲ないニーナに言うのもアレかな、と思うんだけど』
「……」
『僕もうお腹一杯で……残り、食べてくれないかな? 残すのもちょっと悪いし……』
「……えぇと、食べられる範囲でならいいですけど」
『有り難う! 少しでも食べてくれるなら十分だよ』

 ずい、とお皿をニーナの方へと寄せる。
 ニーナは仕方ありませんね、と言いつつ箸を取って、料理を食べ始めた。
 始めはゆっくりだったが、次第にペースが上がっていく。
 普段の早さを取り戻す頃には、ニーナの表情は嬉しそうなものに変わっていた。
 ……へへ。
 自然と笑みが浮かぶ。
 好きなものを美味しそうに食べる姿、それを見るのは僕の楽しみの一つだ。
 意地悪をして反応を見る、そんなことよりももっと大好きな。
 ニーナにはまだ当分教えるつもりのない、そんな密かな楽しみである。





 で、結局。
 ニーナは料理を綺麗に平らげて、そうしてから僕がじっと見ていることに気づいた。
 言い訳をあれこれと考えていたようだけど観念して、本当の理由を話してくれた。

「仕事が減ったのもあって、少し体重が……」
『そのくらい気にしないのに』
「マスターが気にしなくても私は気にするんです! ただでさえ……(ごにょごにょ」

 もうちょっとだけ、ニーナを信用して、仕事の分担を考えることにした。
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