5スレ>>438


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「…嘘だろ」

大混乱のスタジアムの中央で、鎧をまとったまま突っ立っている萌えもん。
そして、そいつにより壁や地面に叩きつけられた、プテラ・フライゴン・バタフリー。とにかく、ボールに3人を戻す。
カンナのパルシェンやオニゴーリも、すでに戦闘不能となってボールに戻っていた。

「くっ…」
「どうしたクリム、その程度かよ!?」

あの時、謎の萌えもんが開けた穴から現れた俺の実の兄、カルマ。あいつは勝ち誇った笑みを浮かべて、
挑発するかのように両手を広げた。

「面白くねぇ、面白くねぇな!仮にも俺様の弟ならもうちょっと歯ごたえがあってもいいだろ?
 …まぁ、いいや。やれ、『μ2』」
『……………』

鎧のバイザー越しに輝く青い目が、こちらを捕えたと思った瞬間。俺は見えない力に首を絞められ、
空中に浮かんでいた。

「かっ…!」

息ができない状況で、必死に頭を回転させる。
既にフーディン・ライチュウ・フシギバナ・キュウコンはカンナとの戦いで消耗しきっている。
プテラ・フライゴン・バタフリーも戦闘不能。実質戦力はシャワーズだけ。
だが、そのシャワーズではあの萌えもんに太刀打ちできない。


フライゴンのドラゴンクローを空中に浮遊してかわし、プテラの破壊光線を片手で弾いて撃ち返す。
遠近ともに、奴の防御は完璧だ。念力の壁を無視できるバタフリーの眠り粉も、あの鎧が通さないらしい。
そして、以前にも受けたあの強烈な念力。フーディンでさえ及ばないあの力に勝つ方法がない。


シャワーズが今でて行っても、確実に倒される。わざわざ其処までさせるわけにはいかない。

(っくそ、ここまでか…!?)

そう思った瞬間――俺の頭上を、2つの影が走った。

「カイリキー、メガトンパンチ!」
「ゲンガー、シャドーボールだよ!」

俺の眼前に飛びだしたゲンガーのシャドーボールが、謎の萌えもんを襲う。
いくつもの影の弾丸は複雑な軌道を描いて襲いかかった。が、全て障壁に阻まれる。

「おおおおおおおおぉぉっ!!」

しかし、そちらに意識がいった瞬間に、カイリキーがとびかかって念力の壁に拳を叩きつける。
目にもとまらぬ連続の攻撃。念力の壁を少しずつ押し込んでいく。
同時に、俺の拘束が解かれた。とうやらミュウツーも攻撃を解除せざるを得ないらしい。

「何やってんだよ『μ2』、なぎ払え!」
『―――――っ!!』

叫びとともに、謎の萌えもんの右手が振るわれてカイリキーとゲンガーを後退させる。
だが、それすらも布石でしかなかった!

「カイリュー 破壊光線」

謎の萌えもんが攻撃に動いたとほぼ同時、その真上から白い輝きが叩きつけられた!
プテラのものをはるかに上回る破壊光線がバリアを押しつぶし、鎧に罅を入れ始める。

そして、閃光が広まり、治まった瞬間――謎の萌えもんが纏っていた鈍色の鎧が音を立ててはがれおちた。

太陽を知らないような白い肌と、冥い闇の色をした瞳。カイリューを念力で吹き飛ばして無人となった観客席に叩きつけたその萌えもんは、
ふと首をかしげた。

「……コレがない方が…力、使える…」
「まずい、拘束具が…っ!?」

何かつぶやいたカルマの体が、ミュウツーの念力で持ち上がる。

(自分のトレーナーを…!?)
「…嘘つき………人間なんて、みんな、一緒…」
「ま、まて、みゅうつ…」

最後まで言い終わる前に、首の骨が折れる嫌な音がした。さらに絶命した体を壁に勢いよく叩きつける。
…あれでは、まともな形で遺体も残りそうにはない。

一方で、謎の萌えもんは空中に浮かんでいた。ゆっくりと高度を上げながら俺達を一瞥し、
そして空の彼方へと消え去っていった。

「…助かった、のか…?」

何が何だか分からないが、とりあえず命拾いはできたようだ。
と、座り込んでいる俺に手を伸ばす人がいた。

「立てるかい」
「ああ、なんとか…」

その男の手を借りて俺は立ち上がる。彼はボールを掲げてカイリューを回収した後で、俺に向きなおって告げた。

「現・カントーリーグチャンピオンのワタルだ。先ほどの萌えもんについての話がある。
 一緒に来てくれるかな」



      * * *


案内された広い…会議室らしきところに俺達は立っていた。
ボールは7個を事務員に預け、回復施設へ先に送ってもらっている。手元にはシャワーズだけ。
そして、その部屋の思い思いの場所に椅子を置いて腰掛けている人間が十人ほど。何人かは見た顔だ。

俺の対戦相手だった四天王カンナ。先ほど乱入して、俺を助けてくれたシバ、キクコ。
そして、正面奥に座っている人間に目をやった。彼は軽く片手をあげてくれたが、俺は混乱でまともに返事もできない。
禿頭にサングラス姿の老人。カントー・グレンジムリーダーのカツラ。

「これで全員だ」

ワタルが俺の後ろで発言した。彼は適当なパイプいすを見繕って座り、俺にも座るように眼で示す。
俺もその辺にあった椅子に座った。

「まず、ここにいる全員…大会の実行委員会、我々四天王、他にも数名、皆に共通の疑問があることでしょう。
 あの乱入してきた萌えもんはいったい何なのか。カツラさん、説明を」
「……そうだな」

カツラが大きくため息をつき、それから話し始めた。

「まずは、あの子の事を話す前に我々の経歴を話さねばならん。ワシと…シオンタウンのフジは、
 かつて研究者として活動していた。目的は、幻の萌えもん『ミュウ』を産み出す事だ」

――ミュウ。俺も名前だけは知っている。この世界のあらゆる萌えもんの遺伝子を持つといわれる、
本来存在してはならないイレギュラー的な萌えもん。小さな体からは想像できないほどの力を持つと噂されているが、詳細は一切不明。

「我々の研究チームはミュウのまつ毛の化石から、その体を復元しようとした。萌えもん屋敷の地下でな。
 …だが、足りないものがあまりにも多すぎた。資金、設備、人手…」
「そこに、ロケット団が協力を申し出てきた」

ワタルの声。淡々と事実を話す声だった。カツラはうなずいて、続けた。

「そうだ。奴らは我々の研究の成果を必要とし、そのためのあらゆるものを提供してくれた。
 研究はもっと安全なところに場所を移して続けられ、そして―――1人の萌えもんが生まれた。
 コード・ミュウツー。ミュウの能力を理論上は完全にコピーし、戦闘能力を高めた『究極の萌えもん』だった」

――究極の萌えもん、か。シャワーズ達が聞いたら怒りそうな気もするな。

「だが…完成したあの子を見てワシは恐ろしくなった。
 あまりにも強大すぎるその力と、それを制御するには幼く純真すぎるその心が。
 わしとフジは、二人で研究を止め、脱走する事を考えた。未完成な『成果』を破壊してな」

そして、サングラスを外して両手を額に当て、絞り出すようにカツラは話を続ける。

「だが、ワシにはできんかった。我々の都合で生み出した命を身勝手に消し去ることなど…
 フジの提案に従い、ワシらはそのまま施設を抜け出した…
 ワシらなしではミュウツーは完成しないと考えていたのだ」

「そしてフジは今までの行いを悔いて、シオンで働き始めた。
 ワシは自分のようなものが現れないように、ジムリーダーとして後進の指導を始めた。
 それから数年たった頃だ。ロケット団の施設でミュウツーが完成したという報告がワシの耳に入った。
 そして、同時期にタマムシのアジトが壊滅したとの噂もな」

そう言ってカツラは俺を見た。
…たしかに、あのときタマムシゲームコーナー地下のアジトを俺は叩き潰したっけ。

「それから間もなく、シオンにロケット団が現れたと聞いた。フジを連れ戻すつもりだったのだろう。
 だがワシが助けに行く前に、そのシオンのロケット団、さらにはシルフ社のロケット団さえも壊滅した」

…萌えもんタワーのもシルフ社のも俺だ。
俺以外にもトレーナーが活躍していたのだが…今そいつらはここにはいないらしい。

「そして、間もなくサカキがカントーからの撤退を表明し、ジョウト方面へと向かったと聞いた。
 研究班の中にいた1人から、ミュウツーの研究施設も廃棄されたとな」

――だが、実際はそうではなかった。

「おそらくあの男は、廃棄施設の存在を知ってそこに行き、眠っていたミュウツーを呼び起こしたのだろう。
 ミュウツーはあらゆる点で最強だが…弱点があった。カプセルの中で育ったために、嘘と本当を見分ける知識がなかったのだ。
 故に甘い言葉に簡単にだまされた。あの拘束具も、施設にあった物を言葉巧みにつけさせたのだろう」

それが嘘だから、ミュウツーはカルマを殺した?

(筋は通っていなくもないが…いや、重要なのはそこじゃないか)

「おそらくミュウツーは、自分のいた場所、つまりはハナダ西洞窟の最奥にいるはずじゃ。
 そして、そこにはミュウツーの能力を利用した装置がいくつもある。どれが完成しているかは分からないが――」


その時、リーグ係員の制服を着た男が部屋に飛び込んできた。

「緊急事態です!」



      * * *


「――なんだよ、これ」

ハナダシティは、地獄と化していた。ハナダだけではない。カントー各地の町が同じような状況にあるらしい。

『町の周囲に生息しているはずの野生萌えもんが、一斉に人里に襲撃をかけています!
 原因は不明ですが、モンスターボールに入っている萌えもんには被害がないようです。
 今は、ジムリーダーを中心にトレーナー達が町を防衛しているようですが――』

「…増幅装置か!」

報告を聞いたカツラが呻くのを、その場にいる全員が聞いた。ワタルが問う。

「増幅装置?」
「ミュウツーの力と脳波を増幅し、他の萌えもんの脳に干渉、支配下に置くシステムだ。
 おそらくこれでも未完成だろう――そうでなければ、カントーだけで済むはずがない!」

『ジムリーダーのいる町は今のところ何とか持っていますが、シオンやトキワ・マサラなどの町にはほとんどトレーナーがいません!
 このままでは――』

「わかった」

ワタルの判断は素早かった。全員を見渡し、指示を下していく。

「カンナ・シバ・キクコはそれぞれトキワ・マサラ・シオンの防衛に今すぐ向かってくれ。
 カツラ、あなたもすぐにグレンへ戻ってほしい。
 ここにも人間は多数いる、セキエイの防衛は私が指揮をとろう。
 各職員はリーグ施設内の人間の避難を指示」

…ここで、俺は自分の名前が一切あがっていない事に気づいた。だが、何かを言う前に、二人の職員が俺の両手を掴む。

「なっ―――」
「クリム君、君を一時的に拘束させてもらう」
「どうして!?」

ワタルが俺を見下ろし、言い放った。

「勝手ながら君の経歴を調べさせてもらった。今は亡きミュウツーのトレーナーの弟だと言うじゃないか。
 悪いが、カントーリーグ四天王リーダーの名において、君を重要参考人とさせてもらう」
「!!」

カシャン、という音とともに、俺の両手首に手錠がかけられた。

『マスター!』
「出るな、シャワーズ!」
『ッ!!』

ボールから出ようとしたシャワーズを押しとどめる。ワタルが既にボールを握っているのが見えたからだ。
今シャワーズが出れば、その瞬間にワタルの萌えもんが攻撃をかけるだろう。

「いい判断だ。その萌えもんも君と一緒に拘束させてもらう。抵抗できないように、ボールは預かっておくよ。
 大人しくしていれば、危害は加えない。君にも、シャワーズにも、他の萌えもんにもだ」
「くっ――!!」



 
      * * *



俺達の牢獄となっている宿泊施設の奥まった場所にある一室。閉められた出入り口の扉の向こう側には見張りが立っている。
気付けばもう夕方だった。俺はベッドに座っていて、シャワーズはソファに腰掛けている。
荷物とシャワーズのボールは取り上げられた。万一の際にシャワーズを止めるためだろう。

その気になれば、俺達は簡単にここから出られるだろう。見張りを倒し、シャワーズのボールを奪ってしまえばいい。
もしくはどこか窓からでもこっそり抜け出す手もある。だが、他の7人がどこにいるか分からない。人質同然の状態だ。

――すでにここにきて3時間近い時間が経っている。俺は今までいろいろ考えていたが、ついに結論に達した。ベッドから一度降りる。

「シャワーズ」
「はい…えっ?」
「それに着がえろ。脱衣所を使ってもいい」

クローゼットから取りだしたバスローブを投げ渡す。シャワーズはかなり驚いているようだ…無理もないか。

「ほら、さっさとしろ」
「は、はい」

動揺しているせいか、その場で服を脱ぎ始めるシャワーズ。
…俺はなるべくそっちを見ないようにして、上着とシャツを脱ぎ、部屋のカーテンを閉めた。

「あ、あのマスター?」
「どうした?」
「何をする気ですか?」

バスローブ姿のシャワーズが上目づかいで聞いてくる。…やっぱ可愛いな、こういう時でも。

「寝る」
「………へ?」
「このあと何が起きるか分からないからな。深夜まで起きてて、まともに動けないってわけにもいかないだろ。
 寝れる時に寝ておいた方が後々のためだ」
「そ、それはそうですけど…きゃあっ!?」

うろたえているシャワーズを引きよせ、抱いてそのままベッドに倒れこむ。
実は昼間の緊張状態のせいで少し疲れ気味で、眠い。シャワーズも最初は抵抗していたものの、やがて俺の胸板にしがみつき寝息をたてはじめた。

(…なんか、予感がするんだよな…)

俺も間もなく、眠りの波に流され、飲み込まれていった。



      * * *


「…ん……」

目が覚めると、既に外は真っ暗だった。部屋の時計は23時過ぎとなっている。
俺がベッドを離れてすぐに、、シャワーズもゆっくりと体を起こした。

「ますたー、おはようございます…」
「ああ」

…寝ボケてるな、こいつ。やがて、状況を思い出したのか、あわててあたりを見回しはじめた。

「落ち着け、まだ何も起きてない。…外がやけに静かだけどな」
「そ、そうですか」

夕方の時点では、窓の外からうっすらと萌えもんの鳴き声や戦闘の音が聞こえていた。今はそれがない。
…俺達が寝ていられたって時点で、攻め込まれてはいないようだが。

部屋の出入り口を見る。…寝る前と変化なし。…しかし、食事もなしかよ…キッチンに入ってみる。

「…シャワーズ、冷蔵庫にいろいろあるっぽいが…頼めるか?俺は先に汗を流してくる」
「あ、はい。分かりました」

風呂場に入り、シャワーで体の汗を落として頭をスッキリさせる。
10分ほどだったが、出て行くと既に簡単な食事が用意されていた。…腕を上げたな。

「ありがとう。…食べ終わったらお前も行ってくるといい」
「はい、そうします」

…状況が状況でなければ、これって完全に夫婦みたいだよなぁ、などと思いつつ。
夜食か朝食か分からない食事を二人で平らげた。シャワーズが風呂場に行っている間に、皿を片づける。




      * * *


そして、それから30分もしないうちに ―― 扉の鍵が、開いた。
ノックが二回、そして扉が開き、ワタルが入ってくる。彼は起きている俺達を見て少々驚いた顔を見せた。

「…寝ていると思ったんだが」
「さっきまでは、ね」

ワタルが右手に持っていた物を渡してきた。…俺の旅用の鞄と、シャワーズのボール。そして――

「フシギバナ・フーディン・ライチュウ・キュウコン・プテラ・フライゴン・バタフリー…
 これで全部かな?」
「…治療は?」
「全員すでに全快した。…とにかく今の状況を説明しよう」

ワタルは全員分のボールと鞄を机の上に置き、そしてそこにあった椅子に腰かけた。
その顔には、少々疲れが見える。

「日没に前後して、野生の萌えもん達はほとんどが襲撃を停止、撤退した。おそらくは自分のすみかに戻ったのだろう。
 どうやら太陽の出ている間しか、洗脳は不可能らしい」

…道理で、外が静かだった訳だ。

「人間側の被害も深刻だ。死者はほとんどないが、みな疲弊している。
 それに、また日が昇れば戦闘が再開される可能性が高い。我々は今のうちに防衛態勢を整える事を決定した。
 そこで、君に頼みがある。四天王とも互角以上に渡り合い、伝説の萌えもんを所有したことのある君の実力を見込んでのことだ」

(伝説…ファイヤーの事か)

ワタルはいくつかの資料を見せて、俺に告げた。

「ミュウツーの直接鎮圧、もしくは撃破を頼みたい。不可能なら、増幅装置の破壊だけでも充分だ。
 とにかく、これ以上大きな被害を出すことは絶対に避けたい。失敗した時のために、我々が各地の防衛態勢を整える」
「…なるほど」

本来なら、四天王がミュウツーを止めるべきなのだろう。
しかし、現地のトレーナーを指揮する存在として、指導力のある四天王は欠かすことができない。
その四天王に匹敵すると評価するトレーナーをぶつけ、ミュウツーの行動を鈍らせる…なるほど。

「…君を拘束したのは申し訳なかった。だが、ああでもしないとお偉方がうるさいものでね」
「別にいいですよ、おかげさまでその間にゆっくり眠れた訳ですし」

ワタルが悪戯っぽく笑った。俺も少しだけ笑顔を返す。

「出発は早い方がいい。…どうする?」
「今すぐにでも。移動手段はこっちでどうにかします」

俺は鞄を背負い、ボールを腰にとりつける。




(…これで…これで、全部終わらせる。俺と奴らの今までの因縁に、ここでケリをつけてみせる!)























「…フライゴン」
「なんや?」
「私達、出番ないね」
「しゃーないわな…次回もあんまり出番なさそうやもんなぁ」
「…8人だからねぇ」
「…8人やからなぁ」
ツールボックス

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