5スレ>>440

 セキチク萌えもんセンター。
 そこのアキラ達が借り受けている部屋で、アキラは一人考えにふけっていた。

「メリィか…デルか…」

 考えるのは勿論二人のこと。
 どちらをパートナーとして選ぶか…どちらの想いに答えるか。
 改めてそれぞれのことを考え、結局は同じ考えに至るというループができあがっていた。

「後悔するなと言われたが…どっちを選んでも後悔しそうだ」


 『ツイン・ウェイ(後編)』


 ベッドに転がり、再び思考の海に潜り込むアキラ。
 目の前にある道は二つ。
 デルを選ぶか。
 それとも、メリィを選ぶか。
 その二つしか道はないとわかりつつ…アキラは選ぶことができないでいる。

「現状維持…は、今と変わらないし」

 結局のところ、アキラが望むのはそれであった。
 今の関係が最も心地いい。
 だが…二人にとっては、答えを待つ苦痛の時間。

「兄さんの言うとおりだな…俺は自分が傷つきたくない、意気地なしだ」

 声に出して認めるが、それだけでは何も進展しない。
 …とその時、部屋の扉が開く。
 アキラが振り向くと、そこに立っていたのはホウであった。

「…寝てた?」
「いや…ちょっと、考え事」

 アキラはベッドから起き上がり、椅子に座るように促す。
 ホウは勧められたとおりに腰掛けると、唐突に話始めた。

「…デルとメリィの事?」
「…なんで、わかるんだ?」
「今君が悩むことと言うと、それしかない」
「…ったく、お前に隠し事はできないな」

 普段くだらない悪戯ばかりしているが、ホウはこう見えて結構聡い。
 …聡いからこそ、ある意味あくどい悪戯を仕掛けるのかもしれないが。

「恐らく、同じ考えで回ってると思って来て見た。話くらいなら聞ける」
「そこまでわかってるのも凄いというか恐ろしいというか」
「…ボクは君たちの関係を客観的に見ているだけ。多分ヨシタカ兄さんもそう思っている」
「まぁいいか…じゃあ、話すよ」

 アキラは今の自身の考えを飾ることなく話し出した。
 デルかメリィ、どちらかを選ぶことができないこと。
 今の関係がもっとも自分にとって心地がいいこと。
 だが、それで二人の心をすり減らすのも何とかしたいということ。
 一通り話すと、アキラは一つため息をついた。

「…ダメだな、俺は。我侭で、欲張りで、優柔不断で…ほんとにどうしようもないダメ男じゃんか」
「…でも、君の心はただの自分本位の考えだけではない」
「……」
「君は優しい。選べないのは、選ばれなかった方への愛情が彼女の重荷になるから」
「そんなこと、考えてないぞ」
「考えてなくても。それから…この状態を望んでいるのは、君だけじゃない」
「…え?」
「…君の目から見て、二人はいがみ合っているように見える?」
「いや…とても仲良くしていると思う。それこそ、本当の姉妹みたいに」
「それが答え…道は二つだけではない。君の思いを、そのままぶつける。それだけでいい。
 君に覚悟があるのなら、それが君の本心からの言葉なら…問題ない。きっと受け入れてくれる」

 ホウはそう言うとゆっくりと席から立ち上がる。

「お、おい! どういう意味だよ、それは!」
「言葉通り。あと、行動は早いほうが良い。じゃ」

 そう言い残してホウは部屋から出て行った。
 残されたアキラは再びベッドに横たわり、ホウの言葉の意味を考える。

「道は二つじゃない…本心をぶつける…か」

 アキラの本心。
 今のような関係を、そのまま続けたい。
 その上で、出すべき答えとは。

「…今夜、二人と話そう」





 時間は流れ、日付も変わろうかという時間。
 デルとメリィは、アキラに呼ばれて彼の部屋を訪れていた。

「大切なお話って、何でしょうね?」
「さあ…私には心当たりは無いけど」
「まぁ、話していてもわかりませんし…行きましょう」
「そうだね」

 会話をやめ、メリィはインターホンを押した。

「…マスター、起きてる?」
『ああ…来たか。今開ける…』

 シュン、という音と共に扉が開き、アキラは二人を招きいれた。

「「お邪魔します」」
「ん…二人とも、ベッドに座ってくれ」

 アキラの言うとおり、二人はベッドに腰掛ける。

「…俺、お前たちがずっと俺のパートナーになりたいって思ってるの…知ってて目を背けてたんだ。
 俺がいて、メリィがいて、デルがいる。俺は、今の距離が一番良かった。だから、答えなんか出さないのが一番いいって思ってた」
「「………」」

 尋常ではないアキラの雰囲気に、二人は姿勢を正す。

「でもさ、今日…兄さんに言われたんだ。何時まで逃げてるんだって。
 俺、自分の気持ちだけで二人をずっと待たせて…苦しませた。だから今夜、答えを出そうと思った」
「え…!?」
「それって…」
「でも、無理だったよ…やっぱり何度考えても、二人のどっちかが居ないなんて考えられなかった」
「マスター…」
「では…どうするんですか?」

 アキラは少し躊躇ったような素振りを見せ、ゆっくりと話し始めた。

「…まず先に謝っとく。今から俺は、男として最低な事を言うと思う。本当にすまない。
 でも、全て俺の本音だ。だから聞いてほしい…いいか?」
「いいよ」
「…わかりました」
「ありがとう。じゃ、言うぞ…俺は、これから先もずっと三人で一緒にいたい。
 だから、『どちらか』をパートナーには選べない…」
「っ!」
「そう、ですか…」
「だから…『二人とも』俺のパートナーになってほしいんだ!…だめか?」
「「……はぁ」」

 アキラの答えに絶句する二人。
 二人は顔を見合わせると、大きなため息をついた。

「…そうやって、ご主人様は辛い選択から逃げるんですね」
「う゛」
「今の関係が一番だからどっちも、っていうのは欲張りじゃないかな?」
「それは…ごめん」

 二人からの言葉に、何も言えないアキラ。
 だが二人はそれ以上は言わずに、アキラの傍まで寄った。

「ですけど…私たち、ご主人様のそういうところも含めて全部、大好きなんですよ…」
「選べないのは、優しいからだもんね。二人ともなんて言えるのは、勿論覚悟あってのことでしょ?」
「デル…メリィ…」
「実は私たちも…三人が一番だって思ってたんです」
「うんうん。誰かが欠けるなんて、やっぱり嫌だよ」
「そ、それじゃ…!」
「はい…」「うん…」
「「今後とも、よろしくお願いします!」」

 ぺこりとお辞儀をする二人。
 アキラは感極まったのか、そのまま二人に抱きついた。

「…デル!メリィ!」
「きゃ!」
「わぁ!」

 そのまま後ろのベッドに倒れこむ三人。
 アキラは二人を一度に組み敷いたまま、言うのだった。

「…二人とも、愛してるぜ!」





 …翌朝。
 アキラは、両腕の痺れを感じて目を覚ました。

「……んぁ?」

 半分寝ぼけた頭のままで、右腕の状況を見る。
 と、そこには黒髪の半裸の少女が心地よさそうに寝息を立てていた。
 反対側を見てみると、やはり金髪の少女が半裸で眠っていた。

「すぅ…すぅ…」
「くー、くー…」
「………あ、そっか。夕べは…」

 そこまで口にしてアキラは顔を赤くする。
 あの「愛してる」の後、三人疲れて眠りにつくまで存分に愛し合ったのだ。

「…これからが大変なんだろうけど、責任は取るからな」

 そう言って彼女たちの鼻先に軽く口付け、アキラは再び眠ることにしたのだった。

「これからも、よろしくな」





 この後三人が起きてきたのは太陽もそこそこ高く上った頃であった。
 アキラは二人をそれぞれの部屋へと返した後、コーヒーを淹れてロビーを訪れる。
 そこにはホウの姿があった。

「よ、おはようホウ」
「おはよう…夕べはお楽しみ?」
「ぶほっ!」

 いきなり確信をついてきた発言にアキラは思わず噴出す。

「……きたない」
「げほっ、いきなりそんなこと言うからだ!っていうか、なんでそんなこと聞くのさ!?」
「ボクの部屋まで聞こえてきた…安心していい。ヘル姉さん達もよろしくしてたから聞こえてないと思う」
「そんなことは聞いてないからな…つーか、兄さんたちの様子までわざわざばらすなよ」
「…性分だから」
「難儀だなオイ」

 そこに部屋からヨシタカが現れる。

「ようアキラ。夕べはお楽しみ…」
「兄さんまで言うなあああああああっ!」
「ははは…後悔しない答えは、出たみたいだな」
「まぁね…俺はどっちの道でもない、道なき道を行くよ」
「うん、その覚悟があれば大丈夫だろう」
「兄さん」
「…なんだい?」
「…サンキュ」
「どういたしまして…っと、メールだ」

 マナーモードにしていたのか、ポケットからポケギアを取り出すヨシタカ。
 そしてメールの内容を確認すると、軽くため息をつく。

「はぁ…この旅行も一時中断だな」
「兄さん、どうかしたのか?」
「ああ、ちょっとトレーナー協会の方から協力要請が来てな…シルフカンパニーは知ってるな?」
「うん、カントーではトップの萌えもんグッズメーカーだっけ」
「そうだ。んで、そこの本社がヤマブキシティごとロケット団に占拠されてるのも知ってるよな?」
「まぁね…あんまりニュースは見ないけど、それくらいは」
「協会曰く、警察との共同作戦の目処がついたらしい。僕は本社内部に侵入して、社長の救出にあたることになった」
「本社への侵入!?」

 さらっと言ってのけるヨシタカに、びっくりするアキラ。

「ちょっ、それって危ないだろ!何で兄さんが!」
「なに、協会からの指名さ。それに、ロケット団の下っ端如きに僕がやられるとでも思うかい?」
「そうは思わないけど…心配だからさ」
「大丈夫だ、安心しろ…そうだ」

 ヨシタカは何か思いついたらしく、鞄から便箋を取り出して手紙を書く。
 そして書きあがった手紙に封をすると、アキラに渡した。

「その手紙を、クチバにいる『萌えもん大好きクラブ』の会長に渡してくれ。
 内容は、ロケット団から保護した萌えもんの一時受け入れ先としての依頼だ。
 本当は僕が行こうと思ってたんだけど、少し頼まれてくれるか?」
「うん、そのくらいなら構わないよ」
「よし、それじゃ頼んだ。僕はもうそろそろ行くとするよ…またな」
「ん、また」

 ヨシタカはヘルを呼びに部屋へと戻っていった。
 アキラもまた、デルとメリィを呼びに自室へと向かうのであった。




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・後書き

 前回の投稿から大分経ってしまいました。曹長です。
 いやぁ、今回は難産だった^^;
 恋愛系の話は多数読んでいても、実際に書くとなるとかなり大変ですね…

 さて、アキラ達が選んだのは二つの道のどちらでもなく『どっちも選ぶ』という新しい道でした。
 執筆初期段階ではデルには涙をのんでもらう予定でしたが…書いてるうちに二人とも可愛くなってしまって(ォィ
 ちなみにこれ以上嫁を増やす予定はありません…ええ、予定の上では(ぇー

 それでは、また次回作でお会いしましょう。

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最終更新:2008年06月07日 10:59
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