5スレ>>449


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 季節は夏、時刻は真昼間ならぬ真夜間の12時。その日の夜は珍しくも蝉が鳴いている。
 カントー地方・タマムシシティの萌えもんセンターの一室に灯りがついていた。
 そこが病院であるとはいえ年中無休というわけはなく既に営業時間は終わっている。
 つまり灯りがついているのはトレーナー達の宿も兼ねている個室という事になる。

「ふぅ………」
 
 灯りの付いたその部屋で溜め息を吐いたのは虫タイプ萌えもんのモルフォン。
 荷物の整理をしていた彼女は、荷物を周囲の大小様々な種類のバッグに纏めていた。

「お疲れ様、モルフォン」
「!!うわ!!」

 と、そこへ何も無かったはずの背後から突然の声。
 深夜であることを忘れ大声を出しながら振り向いて声の主を確かめる。

「ってヨノワールさんじゃないですか。驚かさないで下さいよ」
「人を驚かしたがるのは僕達ゴーストタイプ萌えモンの本能みたいなものだからね」

 長い灰色の髪で紅色の片目を隠し中世的な顔を持つゴースト萌えもん・ヨノワール。
 彼女(一人称が「僕」であるが女性)もまたパープルの萌えもんメンバーの一人である。

「どうしたんですか?何処かに出掛けているのかと思っていましたが」
「それでも退屈でね。それで君は起きてたみたいだったから暇つぶしに見ていたんだ」
「……もしかして、ずっと?」
「うん。それでも暇であることは変わりなかったけど」
「…………」

 それはそうだ。人が黙って整理整頓をしている姿を見続けて何が楽しいものか。
 しかしこういったサマヨールの『変人さ』は周知の事実なのかモルフォンは何も言わない。

「とりあえず私は寝ますね。明日の準備も終わったんで」
「ああ御休み。……蝉が五月蠅いから耳栓をするといいぞ」

 確かに、今は夜だというのに外では蝉が鳴いており薄壁を突き抜け部屋まで響いている。
 専門家曰く蝉は外の気温が高いと昼だと勘違いして夜中でも鳴く事があるらしい。

「耳栓はいいですよ。私、蝉の声って嫌いじゃないんです」
「ふむ?僕にとっては五月蠅いだけなんだが……同じ虫としての事か?」
「あ、いえ、違います。蝉の声には……色々な思い出があるんです」

 するとヨノワールは口を閉じると紅の眼でモルフォンを見つめた。
 そこに筆舌できない異様さを感じ「ヨノワールさん?」と名前を呼んでみると、

「……成程。パープルと出会ったのが、ちょうど蝉が鳴く頃であったと」
「!!ヨ、ヨノーワルさん!!人の心が読めるんですか??!」

 どうやら当たりだったらしい。
 ちなみにメンバーでヨノワールのみが「マスター」ではなく呼び捨てで呼ぶ。

「ゴーストタイプとは一般的に思念の塊が自我を持った存在だぞ?
 他人とは言え同じ思念の塊である『心』というものを読む事ぐらい容易い」
「そうなんですか?……知らなかったです」
「気に病む事じゃ無いさ。最近では『心』を読めるゴーストの方が珍しいらしいし」

 これもちなみにだがサマヨールの年齢を知る者はメンバーの中で誰一人いない。
 いつも誰かが聞く度に「永遠の十七歳だよ」と適当な感じに返されてしまうからだ。

「まぁ年齢とかそんな事はどうでもいいとして」

 ずい、とモルフォンの顔に紅の眼を近づけるヨノワール。
 何でも見透かすような瞳で見つめられ顔がますます赤くなるモルフォン。

「な……何ですか?」
「興味があるな。君とパープルの『馴れ初め』ともいえる物語」

 同時に、にたぁーと子供が浮かべるような笑みを溢す。

「心を読んでもいいんだが……それでは淡々としていてつまらない。
 是非とも君の口から聞きたいな。あんな男に真面目な君が惚れた理由を」

 しばらく沈黙が続く。しかしモルフォンはゆっくりと口を開き

「別に……いいですけど」

 そう答えた。心を読まれ勝手に人の思い出を知られるというのも嫌な話であるからだ。
 
「やった。これで少しは暇が潰せる」

 かの駄目主人(パープル)同様、混じりっ気の無い本音を歯に布を着せる様子もなくヨノワールは言う。
 
 しかしそれも慣れており(かの駄目主人の御蔭で)モルフォンは特に気にした様子もなく、
 右手の親指を顎の先に触れさせ何かを考えているような仕草をとった後で

「確かにマスターと初めて会ったのは丁度この季節の昼間……なんです」




 コンパンだった頃、草むらで泣いていて、そこへマスターが現れて

『僕はこの季節が嫌いだ。太陽が暑苦しい上に蝉が五月蠅い声をだしている。
 それと同じくらい泣いている奴というのも嫌いだ。鬱陶しい事この上ないからだ。
 今の君を見たせいで夏の暑さと蝉の五月蠅さと君の涙の鬱陶しさとで苦しみが三倍になってしまった。どうしてくれる』

 そう言われて余計に涙が出てきた。けれどそれこそが、旅の始まりだった―――気がする。




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『登場人物紹介』

『ヨノワール』―――パートナー2、姉貴。
風来坊。「何となく」という理由でメンバーに入ったゴーストタイプの萌えもん。
パープルとは負けず劣らずの変人且つ自分勝手で彼とは唯一の互角の存在。
それだけでなくメンバー最強であり同時に心を読める等と何かと高性能である。



      
 

 
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