自傷少女の放課後風景

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午後四時四十二分。 人々が笑いながら道を行き交い、店員は声を張り上げて接客している街。 五月蝿いけれども、明るい雰囲気の街。 の、路地裏。 「姉ちゃん・・・俺はただ純粋に、デートをしようと思ってるだけだぜ?」 「そんなに怯えるなよ、ガハハハ!!」 「ひ・・・っ」 げひた笑みを浮かべる、数人のDQN(または不良)が、学生服の少女を取り囲んでいる。 不良たちはゲラゲラと笑いながら、路地裏の壁まで少女を追い詰めていた。 彼女はただひたすら怯え、今にも泣き出しそうである。 速く言えば、少女はタチの悪いナンパをされていた。 少女の容姿は・・・艶のある黒髪をショートにして、大きな団栗眼を涙で揺らしている。 白いセーラー服も相まって、さっぱりとした、清涼感のある雰囲気の少女だった。 一方不良たちは・・・モヒカンにしてるヤツやら、黒の混じった金髪をしてるヤツなど・・・まあ、まともなのがいないのは確かだ。 「なあ、行こうぜ」 ダミ声を無駄に響かせながら、少女に手を出そうとする不良。 「い、嫌です!」 少女はその手を払い除け、無理矢理にでも不良たちを突破しようとするが。 「おっと!」 不良はその身体を受け止め、更には俵担ぎで少女を持ち上げた。 「よっしゃ、このまま俺の家にでも行こうぜ」 不良が発する冗談に、どっと笑う悪童たち。 対して、少女はサーっと顔を青くする。 「・・・・・っ」 この世には、神も仏も居ないのか。 少女が絶望感に打ちひしがれた、その時。 「ま、・・・・・・待ってください・・・・・」 か細い、女の子の声が聞こえた。 不良たちが、少女が、声のした方向を向く。 居所は、不良たちの背後。 そこには―――三つ編みの少女が立っていた。 栗色の三つ編みが、彼女の垂れ目に良く似合っている。 そして何より―――不良に絡まれている少女と、同じ制服。 「何だ、てめぇ」 不良の一人が因縁をつける。 すると、三つ編みは懇願するように。 「・・・その子を・・・お願いです、その子を離してください」 その言葉に、不良の一人がぎゃははと笑う。 「『してください』って・・・する訳ねえだろ!どうせならもっと強く言えよ!」 それに同調するかのように、周りもぎゃはぎゃはと笑い出した。 まるで、カエルの輪唱である。 不快な笑いが、街の片隅で響いた。 しかし。 その合唱は、いつまでも続かなかった。 ざくり。 肉が切れる音がした。 「・・・・え?」 不良の一人が笑うのを止め、呆然と腕を見つめる。 その様子に気づいた別の不良が、そいつに声をかけた。 「どうしたケンヂ?何が・・・」 「お、おれの・・・」 ケンヂと呼ばれた不良は、ぶるぶると震えながら答えた。 「俺の腕から・・・・血が・・・」 「はあ?」 声をかけた不良が、訝しげにケンヂの腕を見る。 すると、彼の腕には。 小さな傷が一本の線を書いて、血を滴らせていた。 あまりにも彼が蒼白とした表情だった為、不良が拍子抜けする。 「なんだよ、何かで切っただけじゃねえか?」 と、からかおうとした時。 傷の線が、更に伸びた。 「・・・・え?」 不良が驚くと、彼が「うわあああっ!」と悲鳴を上げた。 そして、叫んだのである。 「どんどん・・・どんどん広がっていくんだよ、傷が!!」 次の瞬間。 「うおっ・・・!何だコイツ!!」 別の不良から、悲鳴が上がった。 ケンヂに声をかけた不良が、嫌な予感を抱えながら聞く。 「ど、どうした!?」 「この垂れ目女・・・っ!自分で自分の腕を切ったぜ!!」 不良が彼女を見ると。 三つ編みの彼女が―――ナイフを、自分の腕に突き立てていた。 (まさかこいつ・・・!自分の傷を・・・!) 不良が冷や汗を垂らす。 そして、彼の推測は当たった。 「私の能力は、相手と傷を共有します」 彼女がさっきのおどおどした態度から一変、凛々しい表情になり。 「その子を話さなければ、私と一緒に死んでもらいますよ!」 そう叫び、自らの喉に刃を向けた。 「こいつ、やべえ・・・」 一人が怯えながら呟いた言葉に、一斉に周りも賛同する。 そして、少女の身を解放すると、どこかへ飛んで行ってしまった。 * 「・・・・大丈夫ですか?ウヅキさん」 逃げる不良たちを見つめながら、三つ編みの少女が声をかけた。 「私は平気だけど・・・トモエちゃん、血が・・・」 ウヅキと呼ばれた少女が、トモエの身を案ずる。 トモエの腕から、だくだくと血液が流れ出していた。 よく見ると、彼女の腕に無数の傷跡が走っている。 新しいものから、古いものまで。 「私は平気ですよ」 彼女は笑って答えたが、声が震えている、目に涙を浮かべている。 痛みを堪えているのだ。 ウヅキに心配させない、それだけの為だけに。 「・・・・ありがとう、トモエちゃん」 ウヅキが深々とお辞儀をすると、トモエは困ったように笑った。

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