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「ワーズワイス・コッペリエル」(2011/12/07 (水) 16:38:39) の最新版変更点
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*ワーズワイス・コッペリエル
――短い白髪。前髪の一束にだけ、黒のメッシュを入れた特徴的な髪色。
赤チェックを基調としたブラウスの胸元には、かわいらしいリボンが結ばれていて。
淡いベージュ色のキュロットスカートに黒いレギンスを合わせ、パステルカラーのパンプスが彩りを添える。
そしてその頭部からは小さな黒い角が生えている、やや幼い少女。
元[[≪R.I.P.≫]]所属、突撃部隊≪四刃(フィーア・シュヴェアート)≫の一人。かつての二つ名は≪影剣≫。
また、≪封翼の影剣≫と表現されることもしばしばある。
一人称は『僕』。性格は極めて冷静、そして寡黙であった。今は普通に喋る。
愛称はワーズであり、殆どこの名で呼ばれる。
同じ元≪四刃≫の[[≪穿光≫のスバル=天ヶ谷 昴>天ヶ谷 昴]]とは組織時代からの仲良しで、現在は昴の家に居候中。
その忌まれし生ゆえに、≪R.I.P.≫時代には『感情』は不要である、と断言していた。
しかし、[[ハニー]]や[[カンナ>黒野 カンナ]]、[[識槻 朔夜]]たちとの交流・戦闘を経て、
『感情』のかけがえのなさを認識。『ともだちが欲しい』という自分自身の根底の欲求に気づかされることになる。
これは彼女が組織を抜けるに至った理由にも大きく関わっており、そのためか最近の彼女はとても表情豊かである。
なお、組織所属時代、彼女は仮面を装着していた。
白い無機質無装飾な仮面で顔を覆った、かなり細身の小柄な影といった容姿である。
左腕の部分にだけ黒い装甲を纏っており、右腕は白い服で覆われて、
胸部には左腕の装甲が延長された鎧、腹部は鎖帷子を纏っている。
そして足も左の部分だけ切り取られたように黒いロング・スカートのようなもので隠されて、
その下の白いズボンと相俟って、全体的に黒と白だけで纏められた特徴的な服装だった。
女性であること、そして人間ではないことを隠していたため、声色を変えて一人称も『僕』だったが、
素の一人称は『私』らしく、感情的になったりするとよく一人称が私に変わる。
最近は自分を偽る必要がないので、割と簡単に「私」と言ったりするが、
やっぱりどうにも恥ずかしいらしく、基本的には「僕」。
ちなみに、おしゃれを抑圧されていたためか、割とおしゃれ好き。
黒いキャップを被り、シンプルな黒いパーカーの下に白のワイシャツ。
2つ連なった指輪のネックレスを首から掛け、白いデニムのジーンズといった服装の時も、たまにある。
これは組織所属時代から変装時に愛用していた服装で、気に入っているらしい。
おまけにやっぱり組織として抑圧されていたためか、甘いものが大好き。
**――『黒き鬼』
彼女の正体は、「人間の母」と「黒き鬼」の間に生まれた、忌まれし「鬼人」である。
それどころか一種の突然変異なのか、人間と鬼の血が齎した、変化なのか。
父である鬼よりも、更に歪で邪悪で醜くて狂暴な、『三本角の有翼鬼』であった。
力を解放していない普段は、角が生えているもののごく普通の可愛い少女の風貌であるが、
ひとたび鬼としての力を解放すれば、額から三本目の角が突き出し、
顔面の眼の下あたりや頬、眉間には、ばぎりと黒い亀裂が走る。
綺麗だった黒曜石の瞳はどんどん肥大化し、眼球全てを漆黒の闇に染め上げる。
特に左腕は、小柄な彼女には不釣合いなほどの、灰色の筋肉が妖しく脈動する、黒い甲殻に覆われた異形に変化し、
最後に腰から歪な黒い翼が生えるなど、お世辞にも可愛いとは言えない魔獣に変貌してしまう。
彼女は一度も父である鬼の顔を見たことがないらしく、
どうやら、幼少時代から――「普通に生きる権利」など与えられず。
文章にするのも憚られるような、吐き気がする程“現実的な”仕打ちを受けてきたらしい。
それがワーズワイスにとってはどうしようもないトラウマになっており、
それは普段の可愛い女の子の状態でも、角を見られるだけで怯えて震え、蹲ってしまうほど。ワーズが角を隠すのは、これが理由である。
そんな彼女を救い出したのが、どうやら≪R.I.P.≫のナンバー2、[[ヴュネルド>ヴュネルド・ダーンヒュライン【R.I.P.】]]らしく、
ゆえに彼女は≪R.I.P.≫に身を寄せていたようだ。
限りなくこの姿を嫌い、忌むべきものとしていたワーズだったが、
『ノクトクルセイド』メンバーの面接時に期せずして再会したハニーに、口論の末この姿を晒すことになる。
この醜悪なまでの変貌には、流石のハニーも恐怖を禁じえなかった。
しかし、それでもハニーは、恐怖に打ち勝ち、ワーズを受け入れる。
幾ら外見が凶悪な魔獣であろうとも、内面はハニーを心配してくれたワーズには変わりないからだ。
ハニーはワーズの醜い「本質」にして「真の姿」の象徴である「左腕」を優しく抱きしめる。
今まで一切の「あたたかさ」に触れずに生きてきたワーズは、
初めて「“自分自身”」を抱きしめてもらうという優しさに触れ、赤子のように大声で涙した。
また、ハニー以外にも、後述する光の国の列車テロにおいて、黒野 カンナにもこの姿を受け入れてもらっている。
ワーズが完全な鬼としての姿を見せたのは、現在この2人だけである。
最近は完全な変貌はせず、身体の一部(特に左腕と、まれに翼だけ)を鬼化させるに留めている。
いくら強力とはいえ、ワーズ自身この忌まれし姿をあまり晒したくないようだ。
ちなみに、ワーズの左腕だけは、通常時でもその皮膚が灰色のままである。
どうやら左腕だけ『鬼』の血が強いらしく、それゆえに左腕だけに強い力を解放することも出来るらしい。
***――おまけ:水羽 琴波
上記の理由から、幼少期よりまともに「女の子」として暮らしてきておらず、
そのため『普通の女の子』というものに強い憧れがあったらしい。
組織所属時、その活動や任務が無い時、たまに変装して街でショッピングを楽しんでいたりした。
この時は当然仮面を外しており、角は帽子で隠していたようだ。
ついでに、ノクトクルセイドメンバーの[[パニー>パニキュレータ]]と共にちょっとばかしエンヤコラした際に、勢いで『偽名』を名乗る。
この際使った『水羽 琴波(みずはね ことは)』という名前が気に入ったのか、変装時はよくこっちを名乗っていた。
なお、名前の由来は『ワーズワイス』を『ワーズ/ワイス』で分解し、
『ワーズ→WORDS(WORD=単語の複数形)→言葉→コトハ→琴波』、
『ワイス→スイワ→水羽(スイワ)→水羽(みずはね)』で、
これを逆にくっ付けて『水羽 琴波』、らしい。
組織を脱退し、自分を偽る必要がなくなったので、現在では普通に女の子らしい生活を楽しんでいる。
しかしこの偽名がとても気に入っているのか、まだたまにこの名前を用いる。
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*バトルスタイル
**――基本戦術
かつて防具は鎖帷子と胸当て、そして左腕を覆う装甲と、
最低限の武装しかしていなかったのは攻撃性と機動性を重視しているためで、
戦闘においては性格や小柄な見た目とは反してかなりのアタッカー・スタイル。
メインウエポンは『ジャマダハル』という特殊な刀剣で、
柄が剣身と平行に作られており、そのため拳からほぼ平行に刃が来る武器である。
これを装甲に覆われた左腕に装備し、右手は隠し持った投擲ナイフなどに使用する。
装甲に覆われ剣を装備した左腕は攻撃の要でありながら防御手段に欠けるワーズにとって防御の要でもあり、
剣技と装甲防御を組み合わせて左腕全体で相手の攻撃を「往なし」、最低限の被弾に食い止めるように使う。
そのため実は攻撃の比率はジャマダハルによる刺突よりも、投擲ナイフや体術の方が多い。
尤も最近は武装ではなく普通の服装をしているため、装甲も帷子も何もありゃしない。
それでもジャマダハルは常備しており、投擲ナイフもいくつか隠し持っている。
だが、さすがに防具が無くては彼女のバトルスタイルは厳しいので、
下記に記す『鬼化(とくに半鬼化)』を積極的に使用していく戦術にシフトした。
**――『鬼化』および『半鬼化』(仮称)
『黒き鬼』としての力を解放することを指す。
鬼としての力を完全に解放した際は、飛行能力に加え単純な破壊力と攻撃速度を手にするため、非常に厄介。
だが体にかかる負担がとても大きいうえ、
ワーズ自身この姿がトラウマに近いコンプレックスになっているため、滅多に使うことはない。
対して、鬼の血が強い「左腕」だけに鬼の力を解放する『半鬼化』は、ワーズ自身の外面はそれほど変わらないため、
通常戦闘においてはこちらの能力を発動することが多い。
左腕が完全な鬼化のような異形に変化することは無いが、明らかに異質と見て取れるオーラが噴出し、
その皮膚だけが、やや甲殻のように硬質化するようだ。
この状態で撃ち放つ手刀は、まるでランスの一撃のような鋭さを誇るという。
また、鬼としての魔力を「黒い火炎」として具現し、大雑把に操ることもできる。
だが、やはり全体として防御力が低いのは共通であり、一発貰えばそこから崩される脆さを兼ねている。
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*≪R.I.P.≫としての足跡(長文注意)
オルガと共に[[水の国]]を襲撃、≪R.I.P.≫の売名行為を行っていた際に、
駆けつけた[[ウェイン>ウェイン【元箱庭メンバー:『断空』】]]、[[プーシュカ>プーシュカ・サクラメント]]、[[サラ]]と対峙。
ワーズはサラを相手取り激闘を繰り広げた。
が、オルガがウェイン、プーシュカの攻撃に討たれ、倒れる。同時にワーズもサラに敗北。
プーシュカに「≪R.I.P.≫と[[ポポル>グレミュール・ポポル]]の情報を提示すれば“良く”してやる」と持ちかけられ、
それを断り、ナイフで自らの首を裂いて自害を図ったが失敗。
その後、『血溜りに溶けて消えた』。
どうやら――≪暴帝≫ポポルの能力により、助けられたようである。
その後、上述の通り砂の国テロでハニー&カンナと交戦したり、
路地裏で怪我を負っているところを[[識槻 朔夜]]に助けられたり、
血に汚れた身体と服を洗うために泉で水浴びしているところを「櫻が夜行」の千歳に襲撃され戦闘したりと、
なんだかんだで≪四刃≫メンバー内、というか≪R.I.P.≫メンバー内でもかなり登場数が多い。
あと、なんだかんだで結構な人数に女性とバレているのはおそらく仕様。
ちなみに昴が入院している当時は、普通の少女の格好に変装してまで彼女のお見舞いに来ていた。
角は帽子で隠しており、同じく見舞いに来ていた[[天ヶ谷 双葉]]と出会った時は、「スバルの友達」と答えていた。
ワーズ自身は昴のことをかなり慕っているらしく、終始彼女のことを心配していた。
自らの上司である[[カーネル>カーネル・フェンダンス【≪四刃隊長≫】]]が昴殺害計画を立てた際は、命令に背いてまでその情報をリーク。
[[リイロ&ファルガ>リイロ=M=ヴェイス&ファルガ]]、[[アストラ&ダハル>アストラ=O=ヴェイス&ダハル]]に「スバルに死んでほしくない」という言葉と共に、彼女のことを託した。
なお、この後に発生した病院襲撃テロに、彼女は参加していなかった。
しかし、[[金の国]]における宣戦布告テロでは同じく≪四刃≫の[[エンジ>エンジ【≪四刃≫】]]と共に出撃。
[[ヴァルトスラット]]と、期せずして再開した朔夜と剣を交える。
戦闘中、人間ではない龍の姿を晒したヴァルトスラットに動揺を示し、
戦闘が過熱するにつれ「人間に溶け込んでいるやつに何がわかる」と言い放ったり、
朔夜にも「夜の者たちの理想郷など存在しない、前提が夜であるなら結局は日に焼かれてしまう」と言われた際、
「それでも僕にはここしか無い」「縋りたいんだ」などと、珍しく感情的になっていた。
戦闘は、ワーズの剣に「悲しみ」を見出した朔夜と、ワーズの隙を的確に突いたヴァルトスラットの勝利に終わる。
「どうして?」と問う朔夜に対して、「どうして、なんて。僕が知りたいのに」と。確かに、見えない涙を流していた。
終了後、やさしい言葉をかけるヴァルトスラットと、手を差し伸べる朔夜に対して閉ざした心を開きかけていたが――
――援軍にかけつけたカーネルらの攻撃により両者は負傷。
ワーズは、半ば強制的に≪R.I.P.≫に回収される結果となる。
だがしかし、光は差し込み始めているのか――?
**――光の国決戦……再会
光の国の物資運搬列車強奪作戦。
≪四刃≫の全ての戦力を投入したこの戦いに、ワーズも参戦。
彼女はそこで、かつて地の国で対峙した因縁の相手、[[カンナ>黒野 カンナ]]と再会する。
ハニー以外では、唯一自らが人の範疇に無いことを知られている相手。
そして、そのことを追求しないでくれていた相手……
ワーズは語る。そのことに関しては、本当に感謝している、と。
だがしかし、今この場で対峙する限り、「戦う」以外の道はない、と。
戦闘は序盤、手数と素早い攻め、更に投げナイフのスキルに長けるワーズがカンナを押す。
しかし、カンナの機転を利かせたフェイントのカウンター攻撃がワーズの能力、ラフューレ・フェルノーアを破壊。
これに体勢を崩したワーズは絶好のチャンスを晒すことになるが、カンナはここに峰打ちを叩き込む。
完全にワーズを捉えた一撃は、峰打ちながらも凄まじい威力を誇ったが、ワーズはこれに耐え反撃。
両者ともに傷を負い、戦闘は一度振り出しに戻るかのように思われた。
だが、言葉を交わすうちに、カンナはワーズを受け入れる姿勢を示す。
これにワーズは、『お前に“私”の気持ちが分かるわけがない』という節の言葉を言い放ち、
仮面を脱ぎ捨て、少女としての全てを晒し、醜い異形の『角』を晒し――
それでもワーズを受け入れる姿勢を見せるカンナの前で、『真の姿――黒い鬼――』を、解放する。
これに思わずたじろぎ、『恐怖』を隠しきれないカンナに、ワーズは攻撃を開始。
人を超越するパワーでカンナを列車内まで追い込むが、ギリギリでカンナが策をめぐらせる。
自身の服を着せた人体模型を「身代わり」とすることで、ワーズの隙を突くことに成功。
絶対の「トドメの一撃」を叩き込むチャンスに――カンナは、バケモノと化したワーズを抱きしめる。
それはワーズにとって、生まれてからまだ二度目の経験――
本質たる自分を抱きしめてもらう、受け入れてもらうということであった。
これに動揺したワーズは、戦意を失い――カンナの優しさに縋ろうとした――瞬間、
自我を失い暴走した[[オルガネラ>アーロン・オルガネラ【≪四刃≫】]]が合流。
ワーズをワーズと認識できず、カンナもろとも攻撃しようとする。
最早戦う力は残っていない二人にとって、絶対の窮地――
ワーズは所持していた転送装置でカンナを逃がそうとするが、その転送装置は一人用。
カンナを逃がすとワーズが逃げられなくなるため、カンナはこれを拒否。
ボロボロの身体で、オルガネラに立ち向かおうとするが――……
――[[哀しい救済>エルヴァレッタ・ウェリルドーシェ【≪四刃≫】]]……ふたりは、命からがら、これを脱する。
意識を失ったカンナが次に目を覚ましたときは、そこは何処かの宿屋であり――
そこにワーズの姿は無かったが、そこには、たったひとこと「Words」と記された『手紙』が残されていた。
それは確かに、ワーズの「変化」を示すものでもあった。
**――中央放送局、想いをぶつける決闘、そして
[[中央放送局]]占拠テロに参加。
同じく、そこに訪れていた朔夜と再会し、一騎打ちを申し込む。
放送局3階テラスの上で烈しい攻防を繰り広げながら、ワーズは自分が人間ではないことを語る。
そして、戦いが激化するうちに、ワーズの感情も昂ぶってゆく。
彼女は語った。今まで、自分と共存できる、と言った人間は多かったと。
しかし、皆、自分が本質たる鬼の姿を解放すれば、恐怖に逃げて行ったという。
生まれた村を迫害の末追い出され、母親を喪い、
たった一人で角と腕を隠して放浪して、やっと築き上げた絆は一瞬の不注意で瓦解して。
そんなことを繰り返すうち、生涯でたった一度だけ好きになった人からも、
化け物と罵られて剣を向けられ――
……彼女は、そんな生活を続けるうちに、どうしても人間を信じることが出来なくなっていたのだ。
しかし、そんな彼女を、朔夜が諭す。
手を伸ばせ、自分で掴み取れ。それを邪魔するものは、全て自分が断ち切ってやる、と。
自分は人間であり、化け物であるお前の気持ちは分からない。
でも、独りでいることは、“さむい”だろう、と。
そうして激戦の果て、ワーズは朔夜に敗れ去り。
倒れ伏すワーズは、ぼんやりと――……考えていた。
異形の自分を受け入れてくれたハニー。殺意を以て接しても、助けてくれると言った朔夜。
そして……――
……この世界は、案外捨てたものでは、ないのかもしれない。
その結論に到った、彼女は。
『
……朔夜
私、……外が、見たい
陽の光の下で……笑いたい……。
』
――と。ついに、はじめて。自分の本心を、口にする。
『
でも、そのために……どうしても、会っておきたい人が居る。
だから、もし……その人と会って。私自身、『答え』が見つけられたら……
そのときは……。……わたしと、……一緒に、…… 遊んで、くれますか? ……――――
』
そんな言葉を残して、彼女は去った。
そしてその日以降、彼女は≪R.I.P.≫からも、姿を消した。
彼女が向かう先には何があり、そしてどんな結末が待ち構えているのか?
それはまだ、誰にも分からない――
**――煌彩剣鏡 ~ ForWords.
[[ノクト・アルカディア]]における[[≪R.I.P.≫]]、[[カーネル>カーネル=アドルフ・レルゼクム]]との最終決戦の数日前。
ワーズは、郊外の小さな山に有る展望台において、[[黒野 カンナ]]との再会を果たす。
≪R.I.P.≫から姿を消して以後、探し続けていた相手。「どうしても、会っておきたい人」の一人……。
ワーズはカンナに組織を抜けたことを告げ、カンナもまた戸惑いながらも嬉しさや安堵を表していた。
何より、その際のワーズは仮面や鎧を外し、普通の女の子のような服装をしていたのだ。
他愛のない、しかし確かな敵同士だったふたりからすれば大切な会話が続く。
だが、ワーズがカンナを探していたのには、それを上回る決意たる理由があった。
『
……カンナ。『あの日』……――僕は、君と戦った
朔夜の時と、同じだ。僕は、全力で君を倒す……殺すつもりだった
≪黒き鬼≫として。全部の力を解放して……倒す、つもりだった
……それでも君は、僕に勝った
僕に勝って、それどころか……あんなにも醜い姿の僕を、受け入れてくれた……
……僕には、まだそれが理解できないんだ
どうしても……なんで君が、あの日。僕を抱きしめてくれたのか
朔夜も、カンナも。自分を殺しにかかってくる相手に、どうして……
……きっと僕は。「それ」が分からなきゃ、前に進めない
光の下に出ることは出来た……けれど、僕が。本物の『僕』を晒して歩くことは、出来ないんだ
……今から君に、無茶苦茶なお願いをする。拒否してくれても構わない
きっと君にたくさんの迷惑をかけるだろうけど、僕は……どうしても、『答え』が欲しい
【何時しか。その語り口調は、途切れ途切れであることを止めていた】
【想いのたけを一気に吐き出すかのように、流暢に語って。そして】
黒野、カンナ
最後に、もう一度だけ。私と、戦って欲しい
【――それでも。瞳の奥に見えるものは、揺らがなかった】
』
『
……本当に、無茶苦茶だよ
【ぽつり、と、ようやく口にした言葉】
守りたいものに刃を向けるなんて、そんなこと──
……ワーズと戦ったら、きっとお互い無傷じゃ済まないよ
その可愛い服だって、ボロボロになっちゃうかもしれない
【紡ぐ言葉は、何かを押し殺すような痛切なものであった】
【──しかし、そこには、はっきりとした否定の意は含まれておらず】
【 目を逸らしたら、いけない 】
【「……でも」】
【そして、次がれる言ノ葉】
でも、その刃が本当に、意味を成すことなら──
──その刃、私に全部受け止めさせてよ。ワーズ
』
……それはワーズにとっての夜明けの序曲"AubadE"
表歴史には語られない、9.5番目の≪R.I.P.≫との戦い――≪ 煌彩剣鏡 ~ Border In The Color. ≫――
戦いは熾烈を極めた。
しかし、そこに以前のような血生臭さは無かった。ワーズの心境に殺意はなく、ただ純然たる決闘だった。
……カンナの最大の一撃、≪ Hat TЯick ≫。それに真っ向から鬼の力で反撃したワーズ。
両者ともに、ほぼ同時に倒れ。決闘は引き分けと成る。
その瞬間、崩れ落ちたカンナの懐より舞うものがあった。
―――――
【上空から、小さな白い破片が風に煽られながら、ワーズの側へ降り落ちてくるだろう】
【それは、一枚の紙切れであった。──もしかしたら、その紙には見覚えがあるかもしれない】
【それは、手紙だった】
【たった一枚の、そしてたった一言だけしか書かれていない手紙】
【〝Wards〟──と】
【ワーズ自身の筆跡で書かれたその文字】
【あの日──ワーズがカンナに送った、あの世界一短い手紙】
【しかしながら、その〝Wards〟のすぐ左横には、こんな言ノ葉が書き足されていた】
【〝For〟】
【──「あなたへ」】
【そんな言霊が添えられて】
【並んだ二つの言霊は、一つの言ノ葉となる】
【しかし、届くかもしれない。そこには二つの意味が込められていることに】
【〝ForWards〟──〝ワーズへ/未来へ〟】
【カンナの願いと。そして決意と。未来を望む希望の全て】
【ワーズに届けようと思っていたあらゆる想いが、そこには綴られていた】
【〝世界一短い手紙〟】
【その返信は、世界で二番目に短い手紙だった】
――――
戦いを経て。
その想いを受けて。
ワーズは、自分自身が探したかったものを見つけた。
カンナが、朔夜が、ハニーが、自分自身を受け入れた理由。
そしてワーズが、カンナたちの想いを理解したいと願った理由。
とても単純で、だからこそ大きな理由。
……ともだちになりたい。
カンナは、その想いを受け入れた。
それを受けた少女はその日、はじめて笑顔を見せたという。
忌まれし生を受け、黒く血ぬられた因果の道を歩んできた少女の先に、確かな未来が開けた瞬間だった。
かくしてワーズワイスは、≪R.I.P.≫と完全に永訣したのである。
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*ワーズワイス・コッペリエル
――短い白髪。前髪の一束にだけ、黒のメッシュを入れた特徴的な髪色。
赤チェックを基調としたブラウスの胸元には、かわいらしいリボンが結ばれていて。
淡いベージュ色のキュロットスカートに黒いレギンスを合わせ、パステルカラーのパンプスが彩りを添える。
そしてその頭部からは小さな黒い角が生えている、やや幼い少女。
元[[≪R.I.P.≫]]所属、突撃部隊≪四刃(フィーア・シュヴェアート)≫の一人。かつての二つ名は≪影剣≫。
また、≪封翼の影剣≫と表現されることもしばしばある。
一人称は『僕』。性格は極めて冷静、そして寡黙であった。今は普通に喋る。
愛称はワーズであり、殆どこの名で呼ばれる。
同じ元≪四刃≫の[[≪穿光≫のスバル=天ヶ谷 昴>天ヶ谷 昴]]とは組織時代からの仲良しで、現在は昴の家に居候中。
その忌まれし生ゆえに、≪R.I.P.≫時代には『感情』は不要である、と断言していた。
しかし、[[ハニー]]や[[カンナ>黒野 カンナ]]、[[識槻 朔夜]]たちとの交流・戦闘を経て、
『感情』のかけがえのなさを認識。『ともだちが欲しい』という自分自身の根底の欲求に気づかされることになる。
これは彼女が組織を抜けるに至った理由にも大きく関わっており、そのためか最近の彼女はとても表情豊かである。
なお、組織所属時代、彼女は仮面を装着していた。
白い無機質無装飾な仮面で顔を覆った、かなり細身の小柄な影といった容姿である。
左腕の部分にだけ黒い装甲を纏っており、右腕は白い服で覆われて、
胸部には左腕の装甲が延長された鎧、腹部は鎖帷子を纏っている。
そして足も左の部分だけ切り取られたように黒いロング・スカートのようなもので隠されて、
その下の白いズボンと相俟って、全体的に黒と白だけで纏められた特徴的な服装だった。
女性であること、そして人間ではないことを隠していたため、声色を変えて一人称も『僕』だったが、
素の一人称は『私』らしく、感情的になったりするとよく一人称が私に変わる。
最近は自分を偽る必要がないので、割と簡単に「私」と言ったりするが、
やっぱりどうにも恥ずかしいらしく、基本的には「僕」。
ちなみに、おしゃれを抑圧されていたためか、割とおしゃれ好き。
黒いキャップを被り、シンプルな黒いパーカーの下に白のワイシャツ。
2つ連なった指輪のネックレスを首から掛け、白いデニムのジーンズといった服装の時も、たまにある。
これは組織所属時代から変装時に愛用していた服装で、気に入っているらしい。
おまけにやっぱり組織として抑圧されていたためか、甘いものが大好き。
**――『黒き鬼』
彼女の正体は、「人間の母」と「黒き鬼」の間に生まれた、忌まれし「鬼人」である。
それどころか一種の突然変異なのか、人間と鬼の血が齎した、変化なのか。
父である鬼よりも、更に歪で邪悪で醜くて狂暴な、『三本角の有翼鬼』であった。
力を解放していない普段は、角が生えているもののごく普通の可愛い少女の風貌であるが、
ひとたび鬼としての力を解放すれば、額から三本目の角が突き出し、
顔面の眼の下あたりや頬、眉間には、ばぎりと黒い亀裂が走る。
綺麗だった黒曜石の瞳はどんどん肥大化し、眼球全てを漆黒の闇に染め上げる。
特に左腕は、小柄な彼女には不釣合いなほどの、灰色の筋肉が妖しく脈動する、黒い甲殻に覆われた異形に変化し、
最後に腰から歪な黒い翼が生えるなど、お世辞にも可愛いとは言えない魔獣に変貌してしまう。
彼女は一度も父である鬼の顔を見たことがないらしく、
どうやら、幼少時代から――「普通に生きる権利」など与えられず。
文章にするのも憚られるような、吐き気がする程“現実的な”仕打ちを受けてきたらしい。
それがワーズワイスにとってはどうしようもないトラウマになっており、
それは普段の可愛い女の子の状態でも、角を見られるだけで怯えて震え、蹲ってしまうほど。ワーズが角を隠すのは、これが理由である。
そんな彼女を救い出したのが、どうやら≪R.I.P.≫のナンバー2、[[ヴュネルド>ヴュネルド・ダーンヒュライン【R.I.P.】]]らしく、
ゆえに彼女は≪R.I.P.≫に身を寄せていたようだ。
限りなくこの姿を嫌い、忌むべきものとしていたワーズだったが、
『ノクトクルセイド』メンバーの面接時に期せずして再会したハニーに、口論の末この姿を晒すことになる。
この醜悪なまでの変貌には、流石のハニーも恐怖を禁じえなかった。
しかし、それでもハニーは、恐怖に打ち勝ち、ワーズを受け入れる。
幾ら外見が凶悪な魔獣であろうとも、内面はハニーを心配してくれたワーズには変わりないからだ。
ハニーはワーズの醜い「本質」にして「真の姿」の象徴である「左腕」を優しく抱きしめる。
今まで一切の「あたたかさ」に触れずに生きてきたワーズは、
初めて「“自分自身”」を抱きしめてもらうという優しさに触れ、赤子のように大声で涙した。
また、ハニー以外にも、後述する光の国の列車テロにおいて、黒野 カンナにもこの姿を受け入れてもらっている。
ワーズが完全な鬼としての姿を見せたのは、現在この2人だけである。
最近は完全な変貌はせず、身体の一部(特に左腕と、まれに翼だけ)を鬼化させるに留めている。
いくら強力とはいえ、ワーズ自身この忌まれし姿をあまり晒したくないようだ。
ちなみに、ワーズの左腕だけは、通常時でもその皮膚が灰色のままである。
どうやら左腕だけ『鬼』の血が強いらしく、それゆえに左腕だけに強い力を解放することも出来るらしい。
***――おまけ:水羽 琴波
上記の理由から、幼少期よりまともに「女の子」として暮らしてきておらず、
そのため『普通の女の子』というものに強い憧れがあったらしい。
組織所属時、その活動や任務が無い時、たまに変装して街でショッピングを楽しんでいたりした。
この時は当然仮面を外しており、角は帽子で隠していたようだ。
ついでに、ノクトクルセイドメンバーの[[パニー>パニキュレータ]]と共にちょっとばかしエンヤコラした際に、勢いで『偽名』を名乗る。
この際使った『水羽 琴波(みずはね ことは)』という名前が気に入ったのか、変装時はよくこっちを名乗っていた。
なお、名前の由来は『ワーズワイス』を『ワーズ/ワイス』で分解し、
『ワーズ→WORDS(WORD=単語の複数形)→言葉→コトハ→琴波』、
『ワイス→スイワ→水羽(スイワ)→水羽(みずはね)』で、
これを逆にくっ付けて『水羽 琴波』、らしい。
組織を脱退し、自分を偽る必要がなくなったので、現在では普通に女の子らしい生活を楽しんでいる。
しかしこの偽名がとても気に入っているのか、まだたまにこの名前を用いる。
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*バトルスタイル
**――基本戦術
かつて防具は鎖帷子と胸当て、そして左腕を覆う装甲と、
最低限の武装しかしていなかったのは攻撃性と機動性を重視しているためで、
戦闘においては性格や小柄な見た目とは反してかなりのアタッカー・スタイル。
メインウエポンは『ジャマダハル』という特殊な刀剣で、
柄が剣身と平行に作られており、そのため拳からほぼ平行に刃が来る武器である。
これを装甲に覆われた左腕に装備し、右手は隠し持った投擲ナイフなどに使用する。
装甲に覆われ剣を装備した左腕は攻撃の要でありながら防御手段に欠けるワーズにとって防御の要でもあり、
剣技と装甲防御を組み合わせて左腕全体で相手の攻撃を「往なし」、最低限の被弾に食い止めるように使う。
そのため実は攻撃の比率はジャマダハルによる刺突よりも、投擲ナイフや体術の方が多い。
尤も最近は武装ではなく普通の服装をしているため、装甲も帷子も何もありゃしない。
それでもジャマダハルは常備しており、投擲ナイフもいくつか隠し持っている。
だが、さすがに防具が無くては彼女のバトルスタイルは厳しいので、
下記に記す『鬼化(とくに半鬼化)』を積極的に使用していく戦術にシフトした。
**――『鬼化』および『半鬼化』(仮称)
『黒き鬼』としての力を解放することを指す。
鬼としての力を完全に解放した際は、飛行能力に加え単純な破壊力と攻撃速度を手にするため、非常に厄介。
だが体にかかる負担がとても大きいうえ、
ワーズ自身この姿がトラウマに近いコンプレックスになっているため、滅多に使うことはない。
対して、鬼の血が強い「左腕」だけに鬼の力を解放する『半鬼化』は、ワーズ自身の外面はそれほど変わらないため、
通常戦闘においてはこちらの能力を発動することが多い。
左腕が完全な鬼化のような異形に変化することは無いが、明らかに異質と見て取れるオーラが噴出し、
その皮膚だけが、やや甲殻のように硬質化するようだ。
この状態で撃ち放つ手刀は、まるでランスの一撃のような鋭さを誇るという。
また、鬼としての魔力を「黒い火炎」として具現し、大雑把に操ることもできる。
だが、やはり全体として防御力が低いのは共通であり、一発貰えばそこから崩される脆さを兼ねている。
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*≪R.I.P.≫としての足跡(長文注意)
オルガと共に[[水の国]]を襲撃、≪R.I.P.≫の売名行為を行っていた際に、
駆けつけた[[ウェイン]]、[[プーシュカ>プーシュカ・サクラメント]]、[[サラ]]と対峙。
ワーズはサラを相手取り激闘を繰り広げた。
が、オルガがウェイン、プーシュカの攻撃に討たれ、倒れる。同時にワーズもサラに敗北。
プーシュカに「≪R.I.P.≫と[[ポポル>グレミュール・ポポル]]の情報を提示すれば“良く”してやる」と持ちかけられ、
それを断り、ナイフで自らの首を裂いて自害を図ったが失敗。
その後、『血溜りに溶けて消えた』。
どうやら――≪暴帝≫ポポルの能力により、助けられたようである。
その後、上述の通り砂の国テロでハニー&カンナと交戦したり、
路地裏で怪我を負っているところを[[識槻 朔夜]]に助けられたり、
血に汚れた身体と服を洗うために泉で水浴びしているところを「櫻が夜行」の千歳に襲撃され戦闘したりと、
なんだかんだで≪四刃≫メンバー内、というか≪R.I.P.≫メンバー内でもかなり登場数が多い。
あと、なんだかんだで結構な人数に女性とバレているのはおそらく仕様。
ちなみに昴が入院している当時は、普通の少女の格好に変装してまで彼女のお見舞いに来ていた。
角は帽子で隠しており、同じく見舞いに来ていた[[天ヶ谷 双葉]]と出会った時は、「スバルの友達」と答えていた。
ワーズ自身は昴のことをかなり慕っているらしく、終始彼女のことを心配していた。
自らの上司である[[カーネル>カーネル・フェンダンス【≪四刃隊長≫】]]が昴殺害計画を立てた際は、命令に背いてまでその情報をリーク。
[[リイロ&ファルガ>リイロ=M=ヴェイス&ファルガ]]、[[アストラ&ダハル>アストラ=O=ヴェイス&ダハル]]に「スバルに死んでほしくない」という言葉と共に、彼女のことを託した。
なお、この後に発生した病院襲撃テロに、彼女は参加していなかった。
しかし、[[金の国]]における宣戦布告テロでは同じく≪四刃≫の[[エンジ>エンジ【≪四刃≫】]]と共に出撃。
[[ヴァルトスラット]]と、期せずして再開した朔夜と剣を交える。
戦闘中、人間ではない龍の姿を晒したヴァルトスラットに動揺を示し、
戦闘が過熱するにつれ「人間に溶け込んでいるやつに何がわかる」と言い放ったり、
朔夜にも「夜の者たちの理想郷など存在しない、前提が夜であるなら結局は日に焼かれてしまう」と言われた際、
「それでも僕にはここしか無い」「縋りたいんだ」などと、珍しく感情的になっていた。
戦闘は、ワーズの剣に「悲しみ」を見出した朔夜と、ワーズの隙を的確に突いたヴァルトスラットの勝利に終わる。
「どうして?」と問う朔夜に対して、「どうして、なんて。僕が知りたいのに」と。確かに、見えない涙を流していた。
終了後、やさしい言葉をかけるヴァルトスラットと、手を差し伸べる朔夜に対して閉ざした心を開きかけていたが――
――援軍にかけつけたカーネルらの攻撃により両者は負傷。
ワーズは、半ば強制的に≪R.I.P.≫に回収される結果となる。
だがしかし、光は差し込み始めているのか――?
**――光の国決戦……再会
光の国の物資運搬列車強奪作戦。
≪四刃≫の全ての戦力を投入したこの戦いに、ワーズも参戦。
彼女はそこで、かつて地の国で対峙した因縁の相手、[[カンナ>黒野 カンナ]]と再会する。
ハニー以外では、唯一自らが人の範疇に無いことを知られている相手。
そして、そのことを追求しないでくれていた相手……
ワーズは語る。そのことに関しては、本当に感謝している、と。
だがしかし、今この場で対峙する限り、「戦う」以外の道はない、と。
戦闘は序盤、手数と素早い攻め、更に投げナイフのスキルに長けるワーズがカンナを押す。
しかし、カンナの機転を利かせたフェイントのカウンター攻撃がワーズの能力、ラフューレ・フェルノーアを破壊。
これに体勢を崩したワーズは絶好のチャンスを晒すことになるが、カンナはここに峰打ちを叩き込む。
完全にワーズを捉えた一撃は、峰打ちながらも凄まじい威力を誇ったが、ワーズはこれに耐え反撃。
両者ともに傷を負い、戦闘は一度振り出しに戻るかのように思われた。
だが、言葉を交わすうちに、カンナはワーズを受け入れる姿勢を示す。
これにワーズは、『お前に“私”の気持ちが分かるわけがない』という節の言葉を言い放ち、
仮面を脱ぎ捨て、少女としての全てを晒し、醜い異形の『角』を晒し――
それでもワーズを受け入れる姿勢を見せるカンナの前で、『真の姿――黒い鬼――』を、解放する。
これに思わずたじろぎ、『恐怖』を隠しきれないカンナに、ワーズは攻撃を開始。
人を超越するパワーでカンナを列車内まで追い込むが、ギリギリでカンナが策をめぐらせる。
自身の服を着せた人体模型を「身代わり」とすることで、ワーズの隙を突くことに成功。
絶対の「トドメの一撃」を叩き込むチャンスに――カンナは、バケモノと化したワーズを抱きしめる。
それはワーズにとって、生まれてからまだ二度目の経験――
本質たる自分を抱きしめてもらう、受け入れてもらうということであった。
これに動揺したワーズは、戦意を失い――カンナの優しさに縋ろうとした――瞬間、
自我を失い暴走した[[オルガネラ>アーロン・オルガネラ【≪四刃≫】]]が合流。
ワーズをワーズと認識できず、カンナもろとも攻撃しようとする。
最早戦う力は残っていない二人にとって、絶対の窮地――
ワーズは所持していた転送装置でカンナを逃がそうとするが、その転送装置は一人用。
カンナを逃がすとワーズが逃げられなくなるため、カンナはこれを拒否。
ボロボロの身体で、オルガネラに立ち向かおうとするが――……
――[[哀しい救済>エルヴァレッタ・ウェリルドーシェ【≪四刃≫】]]……ふたりは、命からがら、これを脱する。
意識を失ったカンナが次に目を覚ましたときは、そこは何処かの宿屋であり――
そこにワーズの姿は無かったが、そこには、たったひとこと「Words」と記された『手紙』が残されていた。
それは確かに、ワーズの「変化」を示すものでもあった。
**――中央放送局、想いをぶつける決闘、そして
[[中央放送局]]占拠テロに参加。
同じく、そこに訪れていた朔夜と再会し、一騎打ちを申し込む。
放送局3階テラスの上で烈しい攻防を繰り広げながら、ワーズは自分が人間ではないことを語る。
そして、戦いが激化するうちに、ワーズの感情も昂ぶってゆく。
彼女は語った。今まで、自分と共存できる、と言った人間は多かったと。
しかし、皆、自分が本質たる鬼の姿を解放すれば、恐怖に逃げて行ったという。
生まれた村を迫害の末追い出され、母親を喪い、
たった一人で角と腕を隠して放浪して、やっと築き上げた絆は一瞬の不注意で瓦解して。
そんなことを繰り返すうち、生涯でたった一度だけ好きになった人からも、
化け物と罵られて剣を向けられ――
……彼女は、そんな生活を続けるうちに、どうしても人間を信じることが出来なくなっていたのだ。
しかし、そんな彼女を、朔夜が諭す。
手を伸ばせ、自分で掴み取れ。それを邪魔するものは、全て自分が断ち切ってやる、と。
自分は人間であり、化け物であるお前の気持ちは分からない。
でも、独りでいることは、“さむい”だろう、と。
そうして激戦の果て、ワーズは朔夜に敗れ去り。
倒れ伏すワーズは、ぼんやりと――……考えていた。
異形の自分を受け入れてくれたハニー。殺意を以て接しても、助けてくれると言った朔夜。
そして……――
……この世界は、案外捨てたものでは、ないのかもしれない。
その結論に到った、彼女は。
『
……朔夜
私、……外が、見たい
陽の光の下で……笑いたい……。
』
――と。ついに、はじめて。自分の本心を、口にする。
『
でも、そのために……どうしても、会っておきたい人が居る。
だから、もし……その人と会って。私自身、『答え』が見つけられたら……
そのときは……。……わたしと、……一緒に、…… 遊んで、くれますか? ……――――
』
そんな言葉を残して、彼女は去った。
そしてその日以降、彼女は≪R.I.P.≫からも、姿を消した。
彼女が向かう先には何があり、そしてどんな結末が待ち構えているのか?
それはまだ、誰にも分からない――
**――煌彩剣鏡 ~ ForWords.
[[ノクト・アルカディア]]における[[≪R.I.P.≫]]、[[カーネル>カーネル=アドルフ・レルゼクム]]との最終決戦の数日前。
ワーズは、郊外の小さな山に有る展望台において、[[黒野 カンナ]]との再会を果たす。
≪R.I.P.≫から姿を消して以後、探し続けていた相手。「どうしても、会っておきたい人」の一人……。
ワーズはカンナに組織を抜けたことを告げ、カンナもまた戸惑いながらも嬉しさや安堵を表していた。
何より、その際のワーズは仮面や鎧を外し、普通の女の子のような服装をしていたのだ。
他愛のない、しかし確かな敵同士だったふたりからすれば大切な会話が続く。
だが、ワーズがカンナを探していたのには、それを上回る決意たる理由があった。
『
……カンナ。『あの日』……――僕は、君と戦った
朔夜の時と、同じだ。僕は、全力で君を倒す……殺すつもりだった
≪黒き鬼≫として。全部の力を解放して……倒す、つもりだった
……それでも君は、僕に勝った
僕に勝って、それどころか……あんなにも醜い姿の僕を、受け入れてくれた……
……僕には、まだそれが理解できないんだ
どうしても……なんで君が、あの日。僕を抱きしめてくれたのか
朔夜も、カンナも。自分を殺しにかかってくる相手に、どうして……
……きっと僕は。「それ」が分からなきゃ、前に進めない
光の下に出ることは出来た……けれど、僕が。本物の『僕』を晒して歩くことは、出来ないんだ
……今から君に、無茶苦茶なお願いをする。拒否してくれても構わない
きっと君にたくさんの迷惑をかけるだろうけど、僕は……どうしても、『答え』が欲しい
【何時しか。その語り口調は、途切れ途切れであることを止めていた】
【想いのたけを一気に吐き出すかのように、流暢に語って。そして】
黒野、カンナ
最後に、もう一度だけ。私と、戦って欲しい
【――それでも。瞳の奥に見えるものは、揺らがなかった】
』
『
……本当に、無茶苦茶だよ
【ぽつり、と、ようやく口にした言葉】
守りたいものに刃を向けるなんて、そんなこと──
……ワーズと戦ったら、きっとお互い無傷じゃ済まないよ
その可愛い服だって、ボロボロになっちゃうかもしれない
【紡ぐ言葉は、何かを押し殺すような痛切なものであった】
【──しかし、そこには、はっきりとした否定の意は含まれておらず】
【 目を逸らしたら、いけない 】
【「……でも」】
【そして、次がれる言ノ葉】
でも、その刃が本当に、意味を成すことなら──
──その刃、私に全部受け止めさせてよ。ワーズ
』
……それはワーズにとっての夜明けの序曲"AubadE"
表歴史には語られない、9.5番目の≪R.I.P.≫との戦い――≪ 煌彩剣鏡 ~ Border In The Color. ≫――
戦いは熾烈を極めた。
しかし、そこに以前のような血生臭さは無かった。ワーズの心境に殺意はなく、ただ純然たる決闘だった。
……カンナの最大の一撃、≪ Hat TЯick ≫。それに真っ向から鬼の力で反撃したワーズ。
両者ともに、ほぼ同時に倒れ。決闘は引き分けと成る。
その瞬間、崩れ落ちたカンナの懐より舞うものがあった。
―――――
【上空から、小さな白い破片が風に煽られながら、ワーズの側へ降り落ちてくるだろう】
【それは、一枚の紙切れであった。──もしかしたら、その紙には見覚えがあるかもしれない】
【それは、手紙だった】
【たった一枚の、そしてたった一言だけしか書かれていない手紙】
【〝Wards〟──と】
【ワーズ自身の筆跡で書かれたその文字】
【あの日──ワーズがカンナに送った、あの世界一短い手紙】
【しかしながら、その〝Wards〟のすぐ左横には、こんな言ノ葉が書き足されていた】
【〝For〟】
【──「あなたへ」】
【そんな言霊が添えられて】
【並んだ二つの言霊は、一つの言ノ葉となる】
【しかし、届くかもしれない。そこには二つの意味が込められていることに】
【〝ForWards〟──〝ワーズへ/未来へ〟】
【カンナの願いと。そして決意と。未来を望む希望の全て】
【ワーズに届けようと思っていたあらゆる想いが、そこには綴られていた】
【〝世界一短い手紙〟】
【その返信は、世界で二番目に短い手紙だった】
――――
戦いを経て。
その想いを受けて。
ワーズは、自分自身が探したかったものを見つけた。
カンナが、朔夜が、ハニーが、自分自身を受け入れた理由。
そしてワーズが、カンナたちの想いを理解したいと願った理由。
とても単純で、だからこそ大きな理由。
……ともだちになりたい。
カンナは、その想いを受け入れた。
それを受けた少女はその日、はじめて笑顔を見せたという。
忌まれし生を受け、黒く血ぬられた因果の道を歩んできた少女の先に、確かな未来が開けた瞬間だった。
かくしてワーズワイスは、≪R.I.P.≫と完全に永訣したのである。