THE OLD DAYS(2-3)

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***5/13 「ヒャーッハッハッハァッーーーーー!」 耳障りな哄笑を響かせながら、男が上空を飛び回る。 正体不明の衝撃波をぶちまけ、辺りの建物を砕き散らしていた。 「くそ、くそ、くそ……! 本物の悪魔が出てきやがった、なんだありゃ!」 断続的に牽制射撃を加えながら、ソープ二等兵が毒づく。 「喋るな、ソープ。その分の酸素を走るのに回せ」 全速力で走り続けながら、ゲイツが冷静に返答する。 角を曲がるたび、油断なくサブマシンガンでチェック、クリア。 「そうは言いますけどね、二等軍曹。ありゃ反則だ、銃が効かないなんて!」 マガジンポーチから弾倉を取り出し、リロードしながら吐き捨てる。 実際のところ、ゲイツも同感だった。 グレネードですら弾き飛ばし、致命傷を避ける。おまけに空まで飛びながら、手から凄まじい威力の衝撃波を撒き散らしてくる。 コミックの中の登場人物としか思えないその相手は――何とも始末の悪いことに、今自分たちの命を狙って行動しているのだ。 デルタチームは、上手くやっていた。 建築物の密集している区画に走りこみ、牽制射撃を加えながら、ランダムにルートを変化させて逃走している。 今のところ、一人の脱落者も出していない。そうこうしているうちに、あの近衛もこちらを見失ったようで――状況はといえば、まずまずだった。 だが、それも長くは続かない。 ---- ***6/13 「――少佐!」 基幹道路の方角から、低く唸るような駆動音。 特別共和国防衛隊の、装甲車両が次々に市街地へ突入してきていた。随伴の歩兵も、かなりの規模確認される。 本来大規模な交戦を想定していなかったデルタチームは、対装甲装備を持ち合わせていない。 有効なものといえば、ゲイツのバレットだったが――それは今、1km彼方の丘の上に放置されている。 「HQ、HQ! こちらデルタ! 敵主力部隊とコンタクト、五分で全滅しちまう! 航空支援を要請する!」 キャラガが通信機に向かって怒鳴り、ライフルを敵の方に向けて発砲する。 すぐさま敵の装甲車両から、機銃による応射。 くそ――そう悪態をつき、衝撃波で崩れかけた建物に、デルタの面々が隠れる。 大きな壁を背に、ゲイツとソープは座り込んだ。 「ソープ、怪我はないか」 「はい軍曹、大丈夫です……にしても……控えめに言ってですが、最低にクソッタレな状況ですね」 「ああ、本当に控えめだ。もう少し自己主張しても構わんのではないかね」 それぞれリロードし、ため息をつく。 常に作戦が上手くいくわけではない、というのは分かっている。 ある程度のイレギュラーがありながらも、それでも目標を遂行できるように、特殊部隊の人員は訓練されている。 今回のイレギュラーは、たった一つだった。 機材の不調、情報の錯綜。 それらが複合して起こることも珍しくない実戦では、まだ想定外の要素が少ないほうなのだが――今回は、あまりにも重大すぎた。 遥か彼方、1000mの距離から飛来する超音速の弾丸を素手で弾けるボディーガードがついていた、という、たった一つのイレギュラー。 それが状況をココまで悪化させた原因である。 ---- ***7/13 「……おいでなすったぞ」 狙撃銃で、随伴歩兵を排除していたグリッグが呟いた。エンジン音が近付いてくる――死神の足音。 数分後には、全員が蜂の巣になっていてもおかしくない、その状況でも、彼らは冷静だった。 最後の一瞬まで、生還への望みを捨てず、チームのために戦う。その決意と共に、銃杷を握り――お互いに視線を交わす。 イラク兵の話すアラビア語が聞こえ、戦車の砲塔が動く音が聞こえた。 暗い室内、ゲイツが息を呑んだその瞬間―――空を切り裂き、闇を払い、静寂を打ち破って。 米軍の近接航空支援が、開始された。 F-15E、ストライクイーグルから発射された、マーヴェリック空対地ミサイルが戦車をなぎ払い、歩兵を焼き尽くす。 大口径の機関銃弾が降り注ぎ、歩兵を圧倒し、装甲車を爆炎に包む。 「………見たかくそったれ! これがステイツだ!」 感極まったのか、ソープが叫ぶ。全員が頷き、通信機が、上空からの言葉を伝える。 『オーライデルタ、プレゼントは届いたか? チビってねえよな? 酒おごってもらうからよ、さっさと帰って来い!』 ソレを皮切りに、歓声が室内を包む。 あの絶望的なムードすら、覆して見せる――それが米軍の力。 そう確信し、ゲイツはサブマシンガンを手に取る。 「ようし、さっさといくぞ野郎共! あのパイロットに、嫌って言うほど酒を呑ませてやる!」 そう少佐が告げた。いまや士気は最高潮であり、彼らの能力は最高峰。 それから10分、デルタチームはLZである広場に到着し、周囲を確保――ヘリの到着を、待っていた。 もう帰るだけ。そう思うが、気は緩めない。 全員が油断なく、周囲を警戒していた、はずなのに―――それは、悪夢と言っていい出来事だった。 ---- ***8/13 まず、無音の衝撃波。僅かにうめき声を残し、物陰で路地を警戒していたソープが倒れた。 次の瞬間、轟音と共に巨大な衝撃波。背後から一撃を受け、ギャズとダンがばらばらになった。 慌てて銃を向けたネルソンが、男の回し蹴りで吹き飛ぶ。 「……ったくよぉ。面倒くせぇことさせてくれやがって、特殊部隊サンが」 じゃり、と地面を踏みしめ、LZにあの男――近衛の男が現れた。 「機関ナンバーズ、アフェルだ。機関。知ってる? 知らねェか、別にいいけど。 ――だってまあ、ありがちなセリフだけどよ。あンたら、ここで死ぬんだからさ」 銃声、マズルフラッシュ。残ったゲイツ、グリッグ、コーダ、キャラガ。この四人が、それぞれ手持ちの銃器で、激しい攻撃を加える。 だが、その最中で―― 「落ち着けってば。冥土の土産ってやつ? 教えてやっからさー」 銃弾を、悉く弾き落としながら、まるで気負う様子もなく笑っている。 アフェル、と名乗るこの男。 ゲイツたちにはその意味を知る由もないが――カノッサ機関、ナンバーズ所属の能力者である。 「俺たちの活動に、あのオッサンがそこそこ協力してくれてたんだよ。クウェートに侵攻したときも、俺たちが先陣きったんだ。 今回あんたらがあのオッサンを殺すー、なんて息巻いちゃってっからさ、俺がここに派遣されてきたわけ。ホント面倒だぜ、勘弁してくれよ」 ぶん、と手を振り、コーダが肩口から身体を切断されて倒れる。 「あ、コレ? こりゃお前、能力だよ。知らない? なんだ何にも知らねェのな、トクシュブタイ。 俺の能力は『斥力を操る』こと。まあ、あんまり重たいものは動かせないんだけど……こんな風にさ」 どしゅ、という音。キャラガの頭部が、無感動に弾け飛ぶ。 「空気を反発させて、ソニックブームを作り出すことくらいは朝飯前なワケ。んー……このくらいかな。このくらいか。 じゃあもう飽きたしさ――死ねよ、お前ら……!?」 ----
***5/13 「ヒャーッハッハッハァッーーーーー!」 耳障りな哄笑を響かせながら、男が上空を飛び回る。 正体不明の衝撃波をぶちまけ、辺りの建物を砕き散らしていた。 「くそ、くそ、くそ……! 本物の悪魔が出てきやがった、なんだありゃ!」 断続的に牽制射撃を加えながら、ソープ二等兵が毒づく。 「喋るな、ソープ。その分の酸素を走るのに回せ」 全速力で走り続けながら、ゲイツが冷静に返答する。 角を曲がるたび、油断なくサブマシンガンでチェック、クリア。 「そうは言いますけどね、二等軍曹。ありゃ反則だ、銃が効かないなんて!」 マガジンポーチから弾倉を取り出し、リロードしながら吐き捨てる。 実際のところ、ゲイツも同感だった。 グレネードですら弾き飛ばし、致命傷を避ける。おまけに空まで飛びながら、手から凄まじい威力の衝撃波を撒き散らしてくる。 コミックの中の登場人物としか思えないその相手は――何とも始末の悪いことに、今自分たちの命を狙って行動しているのだ。 デルタチームは、上手くやっていた。 建築物の密集している区画に走りこみ、牽制射撃を加えながら、ランダムにルートを変化させて逃走している。 今のところ、一人の脱落者も出していない。そうこうしているうちに、あの近衛もこちらを見失ったようで――状況はといえば、まずまずだった。 だが、それも長くは続かない。 ---- ***6/13 「――少佐!」 基幹道路の方角から、低く唸るような駆動音。 特別共和国防衛隊の、装甲車両が次々に市街地へ突入してきていた。随伴の歩兵も、かなりの規模確認される。 本来大規模な交戦を想定していなかったデルタチームは、対装甲装備を持ち合わせていない。 有効なものといえば、ゲイツのバレットだったが――それは今、1km彼方の丘の上に放置されている。 「HQ、HQ! こちらデルタ! 敵主力部隊とコンタクト、五分で全滅しちまう! 航空支援を要請する!」 キャラガが通信機に向かって怒鳴り、ライフルを敵の方に向けて発砲する。 すぐさま敵の装甲車両から、機銃による応射。 くそ――そう悪態をつき、衝撃波で崩れかけた建物に、デルタの面々が隠れる。 大きな壁を背に、ゲイツとソープは座り込んだ。 「ソープ、怪我はないか」 「はい軍曹、大丈夫です……にしても……控えめに言ってですが、最低にクソッタレな状況ですね」 「ああ、本当に控えめだ。もう少し自己主張しても構わんのではないかね」 それぞれリロードし、ため息をつく。 常に作戦が上手くいくわけではない、というのは分かっている。 ある程度のイレギュラーがありながらも、それでも目標を遂行できるように、特殊部隊の人員は訓練されている。 今回のイレギュラーは、たった一つだった。 機材の不調、情報の錯綜。 それらが複合して起こることも珍しくない実戦では、まだ想定外の要素が少ないほうなのだが――今回は、あまりにも重大すぎた。 遥か彼方、1000mの距離から飛来する超音速の弾丸を素手で弾けるボディーガードがついていた、という、たった一つのイレギュラー。 それが状況をココまで悪化させた原因である。 ---- ***7/13 「……おいでなすったぞ」 狙撃銃で、随伴歩兵を排除していたグリッグが呟いた。エンジン音が近付いてくる――死神の足音。 数分後には、全員が蜂の巣になっていてもおかしくない、その状況でも、彼らは冷静だった。 最後の一瞬まで、生還への望みを捨てず、チームのために戦う。その決意と共に、銃杷を握り――お互いに視線を交わす。 イラク兵の話すアラビア語が聞こえ、戦車の砲塔が動く音が聞こえた。 暗い室内、ゲイツが息を呑んだその瞬間―――空を切り裂き、闇を払い、静寂を打ち破って。 米軍の近接航空支援が、開始された。 F-15E、ストライクイーグルから発射された、マーヴェリック空対地ミサイルが戦車をなぎ払い、歩兵を焼き尽くす。 大口径の機関銃弾が降り注ぎ、歩兵を圧倒し、装甲車を爆炎に包む。 「………見たかくそったれ! これがステイツだ!」 感極まったのか、ソープが叫ぶ。全員が頷き、通信機が、上空からの言葉を伝える。 『オーライデルタ、プレゼントは届いたか? チビってねえよな? 酒おごってもらうからよ、さっさと帰って来い!』 ソレを皮切りに、歓声が室内を包む。 あの絶望的なムードすら、覆して見せる――それが米軍の力。 そう確信し、ゲイツはサブマシンガンを手に取る。 「ようし、さっさといくぞ野郎共! あのパイロットに、嫌って言うほど酒を呑ませてやる!」 そう少佐が告げた。いまや士気は最高潮であり、彼らの能力は最高峰。 それから10分、デルタチームはLZである広場に到着し、周囲を確保――ヘリの到着を、待っていた。 もう帰るだけ。そう思うが、気は緩めない。 全員が油断なく、周囲を警戒していた、はずなのに―――それは、悪夢と言っていい出来事だった。 ---- ***8/13 まず、無音の衝撃波。僅かにうめき声を残し、物陰で路地を警戒していたソープが倒れた。 次の瞬間、轟音と共に巨大な衝撃波。背後から一撃を受け、ギャズとダンがばらばらになった。 慌てて銃を向けたネルソンが、男の回し蹴りで吹き飛ぶ。 「……ったくよぉ。面倒くせぇことさせてくれやがって、特殊部隊サンが」 じゃり、と地面を踏みしめ、LZにあの男――近衛の男が現れた。 「機関ナンバーズ、アフェルだ。機関。知ってる? 知らねェか、別にいいけど。 ――だってまあ、ありがちなセリフだけどよ。あンたら、ここで死ぬんだからさ」 銃声、マズルフラッシュ。残ったゲイツ、グリッグ、コーダ、キャラガ。この四人が、それぞれ手持ちの銃器で、激しい攻撃を加える。 だが、その最中で―― 「落ち着けってば。冥土の土産ってやつ? 教えてやっからさー」 銃弾を、悉く弾き落としながら、まるで気負う様子もなく笑っている。 アフェル、と名乗るこの男。 ゲイツたちにはその意味を知る由もないが――カノッサ機関、ナンバーズ所属の能力者である。 「俺たちの活動に、あのオッサンがそこそこ協力してくれてたんだよ。クウェートに侵攻したときも、俺たちが先陣きったんだ。 今回あんたらがあのオッサンを殺すー、なんて息巻いちゃってっからさ、俺がここに派遣されてきたわけ。ホント面倒だぜ、勘弁してくれよ」 ぶん、と手を振り、コーダが肩口から身体を切断されて倒れる。 「あ、コレ? こりゃお前、能力だよ。知らない? なんだ何にも知らねェのな、トクシュブタイ。 俺の能力は『斥力を操る』こと。まあ、あんまり重たいものは動かせないんだけど……こんな風にさ」 どしゅ、という音。キャラガの頭部が、無感動に弾け飛ぶ。 「空気を反発させて、ソニックブームを作り出すことくらいは朝飯前なワケ。んー……このくらいかな。このくらいか。 じゃあもう飽きたしさ――死ねよ、お前ら……!?」 ---- [[1>THE OLD DAYS(1-3)]] 2 [[3>THE OLD DAYS(3-3)]]

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