過去の自分に花束を


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【第一部・ラーグ】


かつて戦争があった
俺は、その戦争に一人の兵士として参加してた
名はラーグ・オリフェイト

『君達に我が国最大の任務を任せたい』

異世界から能力者を連れ、戦争に参加させる
しかし、異世界に向かう方法はまだ確立されていない
学者が論文を書いても卓上の理論
俺達はモルモットにされた

「…異世界ってこんなとこなのかよ…」
国中の宝玉を使った転送装置が俺を飛ばした先
空は濁り、空気は淀み、異形の者が闊歩する世界
俺は、異世界ではなく
異界へと飛ばされたのだ




『悪くない…俺は悪くない……お前が中尉を殺したから…!』
異界をさまよい、異形の者から逃げ惑い、やっと出会った仲間
安堵感から彼に駆け寄ったが
彼は俺を刺した

「…なんでだよ……なぁ…クロム…」
腹を押さえ、俺は倒れた
薄れゆく意識の中、必死に彼を見つめた
最後に俺が見た光景は
彼が首を跳ねられた瞬間と
後ろで、血が滴り落ちる刀を握った俺の姿だった

『ぃよう!また会ったな!…ってお前は一回目か』
目を覚ました俺は、地面も空も、何もかも黒一色の空間に立っていた
そして目の前には、青白い人の形をした発光体

『俺はお前にとっての神!生き返らせたりぃ~♪お前を元の世界に帰せちゃったりぃ~☆』
神と言った発光体
俺はこの地獄から、化け物達から遠く離れた世界に帰ることを望んだ

『帰るには条件があるんだぜ!』
発光体が出した条件
それは、この発光体が出すゲームをクリアすること

『俺がお前をステージに送る!お前はそのステージにいる規定数の化け物を倒すだけ!どんどんどんどんクリアしていって、この世界の悪~い王様を倒せば第一部クリア!第二部については、第一部が終わったら教えてやんぜ!』
発光体が出した条件がそれ
そのゲーム内でのルールはこうだ
①死んだら最初っからやり直し
②死んだ時、俺の何かを払えば記憶を持ち越して最初っからやり直し・払わなければ、初めて俺がこの世界に来た時と同じ条件で始まる
③体調は次のステージでも持ち越し・死んだらリセット

「体調は持ち越し…って?」

『俺はお前を任意の時間軸に飛ばせんだ!でもよ?腹ペコのお前が満腹のお前のいる時間に飛ばされたら回復しちまうかもしれないだろ?だから腹が減ったらそのまんま、力が向上してもそのまんま☆良くも悪くも、お前の状態が反映されるんだよ!あ、でもよ!見た目はその時間軸のお前と一緒にしてやるからな!』
最後のことは、意味が分からなかった
後々分かったがな

「母さんに……会いたい…会うんだ…絶対」

『それじゃ、ゲームスタート☆っとその前に…』
俺は、刀身が真っ白な刀を渡された

『初回記念サービス!迦具土って名前だ!』
迦具土…今も使う俺の宝
俺を何度も助けてくれた、俺の誇り

『ほいじゃ、ゲームスタートだ!』





俺は闘った
徹底的に闘った
迦具土を握り、化け物共に圧倒されながらも、不意打ちや奴らにとっては珍しいのであろう戦闘術式も惜しみなく使った




『よぉ!また会ったな!』
だが、俺は死んだ
理由は、飢え
一つのステージが終わったら、即座に次のステージに飛ばされる
最初は戸惑った
休む暇もないんだからな
だが、このゲームに制限時間の無いことに気付いた俺は、化け物共に見つからないよう休み、睡眠だけはしっかりとっていたが
食料がなかった

『リセットするか、払うか…どっちにするね?』
リセット…0からのスタート
きっと、俺はまた飢えで倒れ、死ぬだろう
他にも、また奴らに苦戦するようなら…
初めて俺が払う物
自分の“何か”

『オ~ケ~♪それじゃ、ゲームスタートだ☆』
俺が払った物
“食欲”
自分の“何か”とは、自分の物ならなんでもいい、と思った俺は
自分の“死因”を払った


『よぉ!また会ったな!』
記憶を継承した俺は、また最初からやり直し
殺してきた相手をまた殺し
同じ場面で死んだ

「食欲無くなっても…ダメなんだよなぁ…」
“食欲”が無くなっただけ
当然、体が食い物を必要とするが、それに気付かなくなる
前触れも無く気絶した

『リセットか、払うか…どっちにするね?』
リセットすれば、食欲も戻ってくるが…

「俺の…睡眠欲を払う」
俺は妥協しなかった
睡眠をとるタイミングは分かってる
食い物は…あるじゃないか

『オ~ケ~♪それじゃ、ゲームスタートだ☆』

また最初から
だが、もう違う

「…いただきます!!」
俺は“化け物”を喰った
奴らの血で喉の渇きを癒し、奴らの血肉で腹を満たした
最初こそ吐き気で何度も戻したが、繰り返すうちに
あれは固そうだ、あれは少し脂肪が多い
そう考えられるようになっていた

「見つけた」
あの化け物共も、今となっては俺の餌
この頃には、奴ら一人一人の癖が感じ取れるようになっていた
どの角度から俺を殺そうとしても
お前はモーションが少し荒い、お前は逃げる手段を残す故に浅い

あの“神”がゲームと言った理由が分かった

「見つけた」
餌を狩る

「見つけた」
餌を喰らう

「見~つっけた…」
餌で“遊ぶ”

この頃からだ
俺の吐く息が
少し紫色になったのは

この頃からだ
迦具土が
少しくすんできたのは


「鬼ごっこ鬼ごっこ」
体の変化
少し力が強くなった
少し足が速くなった
少し余裕が出来てきた

「俺が鬼?い~ち、に~、さ~ん」
数を数える俺に、餌が噛み付こうとしてきた

「鬼にタッチしたらアウトだよ?あれ?鬼がタッチしたらアウトだけど、鬼に触ったらアウト?どうなんだろ?」
俺は餌を斬った

「ねぇ、どうなんだろ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?」
餌の脳をいじりながら
砂場で遊ぶガキのように
俺は餌に話し掛けた

なんでだろうな
話し相手がいなかったから
多分、そんな理由だろう

「ど~っこだっ?かくれんぼ、かくれんぼ、かくれんぼ、かくれんぼ」
月を5000回程眺めた時の出来事だ
俺はステージに飛ばされ、餌を捜していた
食欲がない、だが、いつ気絶するか分からない
この時点の俺は、ステージに飛ばされる度に奴らを喰っていた

「隠れ鬼?タッチ?見つけた見つけた見つけた見つけた」

俺は、餌を見つけた
二人いた
殺した
一人は逃げた

「タッチしなきゃ捕まえられないや」

しばらく探したが、なかなか見つからない

「…見つけた」

さっきの餌ともう一人
餌は、震えながら何かを言っていた
もう一人は、腹から血を流し、倒れていた
地面の奴はいい
今は、あの剣を持った餌を

『…お前が中尉を殺したから……!』

「タッチ」

無防備な餌の首を跳ねる

「いただきます」
まずは転がっている頭を拾い、頭蓋を切り取る
肉単品でも素朴で旨いが、脳のソースにつけて喰うのは格別だ

「あれ?いつもの餌じゃない?」
切り取り、脳に指を挿れ、ソースを味わおうとした俺は
普段の餌と違うことに気付いた
肌が黒くなく、斬った時に瘴気が漂わない
俺はソースの入れ物に目をやった

「……あ」
覚えている

「あ、、あ、」
どれだけの月日が流れようと
覚えている

「あ、あ、あ、あ、」
一緒に訓練した

「ああぁぁぁあぁ」
一緒に異界へ飛ばされた

「ああああああぁあぁぁぁああああああぁあぁぁ!!!」
俺を殺した

「クロム、クロム、クロム、嫌だ、嫌だ、違う、俺じゃない、気付かなかった、違うんだよ、、」
俺は、“彼”の首に謝った
涙を流しながら
“彼”の首を抱きしめ、何度も謝罪の言葉を口から出し

『………Die』
殺された
死の間際聞こえた言葉は

『………運命、逆ら、もの、ゃない…運、、は、、、自、で、、、だ、、も、、、、』

俺の声だ
だが、やけに落ち着いた
やけに冷めた



『よぉ!また会ったな!』
久しぶりのこの空間
また来るなんて

『リセットする「甘えを払う、同情や情け、昔のしがらみなんかいらない!好きなのを持って行け!」

『…久しぶりだなぁ☆そう言ったのは何人ぶりか♪』
……俺はリセットしたんだ
覚えてないだけ
0から始まったんだ
そりゃ覚えているわけがない
だが、今の俺
“今回”の俺は違うんだ
あそこで殺されることが分かった、必要ない感情も払った

俺は、生還することだけを考えていた



また最初から
殺し、喰い、理解した
俺は、喰らう度、この世界の空気…いや、瘴気か…それを吸う度、化け物の体になっていく
身体能力の増幅、感覚の鋭敏化
もはや気を失うことなど恐れない
別の目的
強者になる
それだけの為に喰らう
肉や脳髄、眼球、内臓に骨

俺は徐々に完成していった

そして

「さよなら、クロム」
あの場所で、“友”を斬った
だが、首は跳ねず心臓を、頭蓋は開かずそのままの状態で
弔い?違うな
必要なかったからだ
人間如きを喰らうなんぞ

そして
『………Die…』
予想通り、“俺”が現れた

背後から脊柱目掛け突きを放ち、横へ薙払うつもりなんだろう
もう、その手は“覚えている”

「……よぉ、俺」
化け物の体になりかけている俺の身体能力
それを使えば、攻撃が分かる今なら

『…………ふん…』
クロムの死に大した感情は抱かない
“払った”からな
俺はすぐに前方へ飛んだ

『………シナリオ通りにはいかん…か…』

この“俺”は、俺が俺を殺すステージなんだ
体から、少しだけ薄い紫色の霧のようなものが漂っている
こいつは
未来の俺

「………俺は…あんたを殺す…そして、その体を喰う!」

即座に剣を構え飛び出した

“俺”が刀を構え、迎え討とうとする
いや、もう放った後だった
それは、横一線
しかし、俺はコンマレベルで飛び込む速度が遅かったのが功を奏したのか、“俺”の攻撃は空を斬った

(空振r)

違った
俺は、存在しない“太刀”に斬られた
胴から下が、無くなった

『…教えてやろう…お前は………能力を発現させる…今のが………その能力だ』

(…ちくしょう…ちくしょうっ…………また…………やり直し…)

『よぉ!また会ったな!』

「やり直す…!やり直す……!!」

『んじゃ、何払うんだぁ?』

「痛覚を払う…!」
もう、生き残れるなら…なにもいらなかった
生還できるなら…全てを払うつもりだった





「よぉ、俺」
一体幾つの月を数えたのだろう
“神”は時間軸を操れる
当然、1日淀んだ空に陽が上った日もあった
俺は…自分が幾つなのかも分からなかった

「お前の能力……一度の行動を二度行うことか……」

『………学んだか…』
戦況は、俺が僅かに圧されている
“俺”に勝つため、新たな戦術魔法を開発しようとしたが
それは、“俺”が歩んだ道
“俺”も当然使えるだろう
なら“俺”はなぜ俺の前にいる
答えは、俺が“俺”を殺したからだ

『………足掻くな…お前が死のうと…俺が継ぐ…俺が生還してやる…』

「足掻くつもりも無し……」
俺は…成長した
口調も“俺”に似てきたのはこの頃からか

「お前の能力……“俺”の能力は確かに脅威だ………今の俺とは違う、居合いのフォーム」

『…………』

「行きの太刀で弾き…帰りの太刀で斬る…それが二度づつ来る」
俺は、圧されてはいたが

「だが」
“見”に回ることに徹していた

「その能力…同じモーションしか二回出来ない」
一度斬り、次に見えない斬撃が飛んでくる
一の太刀をかわしたからと、追い討ちをかければ“それ”の餌食
深く追わず、待つ
待った結果、気付けた

一の太刀を避け、見えない斬撃の地点が来るであろう場所に、わざと“かする”よう回避行動を遅くした

“俺”の能力
それは、一度斬ればその地点にコンマ代で数瞬遅れその地点を斬る
一度歩けば、同じ進行方向に二歩分動く
全て寸分違わず、同じ位置に、同じ範囲で
そして

「欠点は…」
その行動中、他の部位は“動けない”
一度斬る動作の時、足元なども固定され
二歩分歩く時は、斬りかかるという動作を使用できない

「あんた…能力に頼りすぎだ」

二歩分下がる、二歩分飛び退く
確かに、異常な光景だ
だが、種が分かればそこを責める

俺は、飛びかかり
“俺”の一の太刀、続く見えない斬撃を“迦具土”で防ぎ
帰りの太刀、見えない斬撃を鞘で防ぐ

『………』
“俺”は無表情だったが、顔が動揺しているような風だったな
懐に入った俺から離れようと“俺”は能力を使って二歩分飛び退こうとした


「ビビったら…負けだ……」
動揺からの………回避行動

未熟な“それ”に“予定通り”に動く俺は、出来合いの動作に軽く追いくスピードで“俺”に斬りかかる

『ッッ?!』

こうやって
“俺”は別の“俺”に勝ったんだな

『………ぬかっ、、た』

「…………」
腹部から臓物をはみ出し、口から紫色の瘴気を吐き出す“俺”

『………俺が死ぬなら………“グレアム”は…誰なんだ…』
その言葉を呟き
“俺”は死んだ

「………“グレアム”?」
もしや、と“その時”の俺は思った
この“俺”は
何かを払い
記憶を継承した俺なんじゃないか、とな






『、、、、、はん、、、、ムはん、、、、、、』

………ん?

『、レアムはん!グレアムはん!』
俺を呼ぶ声が聞こえる
“今の”俺を呼ぶ声が

『退屈なんや~』
目を開けると、隣には
大事な“ペット”が俺の顔を覗いていた

『上から景色見るんもえぇけど、飽きてもうたわ』

「…………………Fuck…」
俺は小さく悪態をつき、寝ぼけた目を無理やりクロに合わせる

『飛行機ん中退屈や~』

「……………」

『グレアムはんは勝手に寝てまうし』
………付き合いきれん
俺は視線を元に戻し、静かに瞼を閉じる

『なんや、また寝るんか?』

「………黙ってろ…寝るのはお前の特技だろう…?なら…目的地まで黙って寝てろ」
『旅行行く言うたんはグレアムはんやないの』

「旅行じゃない、ただの墓参りだ」

ブーたれるクロを無視し、俺はあの夢の続きを見ようとした
あの、忌々しい記憶を眺めたい
あの痛みに触れたい
あの過去を、無駄にしてはいけない
記憶の彼方に、追いやってはいけない
そう思ってな

ほら、瞳を閉じれば
また昔に戻れる


【第一部・ラーグ】
【終】