メルフュレル・ファーザー





メルフュレル・ファーザー


通称『メルフ導師』。「ファーザー」とは愛称のようなものらしい。

かなり特殊な剃り込みを頭部のほぼ全体、襟足以外に入れており、
切れ長の眼と二叉に分かれた眉毛が特徴的。
交叉した金糸雀色の襷のような装身具を肩から掛け、やや厳つく見える黒い服を纏っており、
十字架を象ったような腰飾り、黄金で縁取られた肩鎧から垂れる、同じく金糸雀色の装飾品。
主に黒と金をベースにした風貌が、重厚かつ威厳ある様相を呈している。
その手には漆黒の装丁が施された、分厚い魔導書が在る。


――所属・人物


エルメアが所属する〝教会〟の『術式解析部』枢機卿として君臨する男にして『円卓』の一人。
術式解析部の枢機卿だけあって、魔術に関しては卓抜した知識と理解を持つ。
エルメアに高度な術式を教えたのも、このメルフ導師である。
また、一度に複数の本を読んで完全に理解するというずば抜けた情報処理能力の持ち主でもある。

どこか叙述的な調子で喋ったり、巧みな比喩表現、遠まわしな表現を好む。
時折異国の言葉も混ぜるため、厳格な、威圧的な風貌と相俟って非常に印象的であり、
初対面の人にはどこか重いような印象を与えるかもしれないが、その実はお茶目というか何というか。

とにかく枢機卿でありながら教会の部下や教え子に対して、かなりフレンドリーである。
それでいてその裏には確かな優しさを持っており、人望は厚い。のか?
とりあえず教え子であるエルメアには慕われており、
あとローザ=ナルセにはかなり懐かれて?いる。
まそっぷとかようかんマンとか変態とか言われ放題であり、
おそらく枢機卿に対してドロップキックをぶちかませるのはローザだけであろう。
というか、逆に言えばメルフ導師がドロップキックをぶちかましても怒らない唯一の枢機卿である。
もっといえば枢機卿であるにもかかわらずドロップキックかまされるような性格である。
これでいいのか教会。
しかし、彼の魔力の質の高さや魔術行使のレベルの高さは折り紙付きである。

以前、世界各地の教会を「知識提供及び技術提供」的な名目で回っていたが、最近帰還した。
現在は紅丸 紅斗と共に、≪R.I.P.≫の足取りを追っている。
また、紅丸と同じく元≪R.I.P.≫である天ヶ谷 昴とも面識があるらしく、
メルフ導師自身、≪R.I.P.≫と何らかの関わりがあったと思われる。


――趣味


……まず、聖職者にして、重度のヘヴィ・スモーカーである。
だが健康面には気を使っているのか、わざわざ術式を施して無毒にしたタバコを吸っている。
そして気になったら居てもたっても居られないタイプ。
以前、持ってたタバコでルーン刻んで消し忘れて小火にしたことも。
寝言で「まそっぷ」とか呟いたこともあり、笑顔で「Maledizione」とか言っちゃうお茶目な人。
ちなみに「Maledizione」とは『呪われろ』という意味である。皆は使わないように。
好物は芋羊羹と赤ワイン。どういうことなの。
「芋羊羹はこの世で最も尊い食べ物だと思う」というよくわからない発言も残している。




魔術形体


彼の魔術形態のベースは教会式魔術構成法である。
些か彼なりにアレンジしているようだが、大元のギミックは変わらない。
愛用の魔導書・カーヴルヌースに書き込まれた術式を使用し、詠唱も本に書き込まれているため、
それを利用した魔術の同時展開、速攻発動等も可能といえば可能。
卓越した情報処理能力と魔術知識、そして実力を有するメルフ導師だからこその技である。
といっても流石に限界はあるようで、同時に展開できる魔術数は、安定性から考えても2発までだろう。

ただし、メルフ導師にも凄まじい反動がかかるものの、「最大魔力」において放たれた「本気の魔術行使」では、
『述懐+代理詠唱×2(魔導書+魔法陣)+詠唱保存解放×術式短縮+魔力圧縮』という凄まじい構成で以て、
一挙に4つの術を同時発動してみせた。このことから、とてつもない魔力を所有していることが分かるだろう。
なお、『術式短縮』と『魔力圧縮』という技術はメルフ導師のオリジナル技術である。


――教会式魔術構成法・二式(仮)


教会式魔術構成法には組み込まれない、メルフ導師オリジナルの技術を紹介する。
なお、これより先の項目は教会式魔術構成法をベースとしており、
これが理解できないと何を言ってるか分からないようなものかもしれないことを明言しておく。
ぶっちゃけ中の人の認識も間違っているかもしれないので、間違ってたらエルメアの人、是非指摘を。
多くなれば、そのうち独立したページを作成する予定。


――『術式短縮』(速攻発動)


メルフ導師独自の技術で、魔術の速攻発動に特化した構成法。
術式解析部として培った知識と、常人離れした膨大な量の術式を管理しているメルフ導師だからこその技で、
あらゆる術式を組み合わせて導いた新術式による構成、魔力に付加した概念のパターン分け、
諸設定をあらかじめ魔導書の式に組み込んでおくことなどによる簡略化により、
魔術発動までのプロセスを一挙に短縮する荒業。
術式短縮というよりは、正確には発動プロセスの全短縮であるが、
言葉として「術式短縮」のが分かりやすいので、こちらを使用する。

簡単に言うならば、「A」を導くために必要な式「B+C+D」を、
膨大な下準備と組み合わせによって新たに生み出した式「E+F」で代理してしまう技。
単純に「A」を導くために必要な式がひとつ少ない分、それだけ完成も速くなる。
魔術の構成過程そのものを短縮するため、詠唱破棄などの技術より多少速く、通常通りの概念付加が可能。
とんでもなく複雑な過程を経て発動するため、まず介入されないことも強み。

ただし通常の魔術発動以上に複雑難解なプロセスを経ており、
魔術自体の威力や効力は多少落ちる上、魔力の消費量も通常より多い。
また、その膨大な下準備は、メルフ導師の愛用する魔導書「カーヴルヌース」無くしては成しえない。
構成のプロセスをひとつ間違えば凄まじい暴発を招くリスクも孕んでおり、
複雑に絡み合った糸を全て完璧に解き切るような、高い情報処理能力も必要とする。
実質メルフ導師の専用スキルと言えるだろう。

なお、理論上は『術式短縮』+『詠唱破棄』が出来れば最速発動が可能となるのだが、
詠唱を破棄するとなると、あらゆる式を組み合わせて新式を導き短縮するという前提条件が崩れ去り、
それに連動して緻密に組み合わさった魔術発動の過程が崩壊してしまうため、これは不可能。
理論上だけ存在する超高速魔術で、浪漫である。

面倒くさい設定を全部すっとばして一言で表すなら、
『発動が速くなるかわりに効果が少し落ちて魔力消費が大きくなる』技術。


――『魔力圧縮』


同じく、メルフ導師独自の技術。
通常の構成法における魔力適用の際に適用する魔力を、通常以上に大量に適用し効力を上昇させる。
普通なら、必要以上の魔力を注ぎ込んだり、量を間違えれば暴発の危険性があるが、
メルフ導師は、云わば「魔力の外枠」はそのままに、「魔力の質」を一気に凝縮して行っている。

簡単に例えて言うならば、茶碗にご飯を入れる際、普通に盛り付けるのではなく、
思いっきりギュウギュウに押し詰めて無理矢理たくさん入れるように、
魔力をかなり圧縮して術式に適用する、やっぱりこれも荒業。

結果だけを見れば、その応用性は広い。
魔力を通常より多く使用することで効力そのものの底上げを行ったり、
適用する魔力の質を単一ではなく複数にすることで、ひとつの術に様々な効果を付随することが出来る。
ただし無論、暴発のリスクは高く、また繊細な魔力操作を必要とするため、
切羽詰まった展開の速い戦闘中などに使うのは至難の業。
単純に魔力量が少なくても到底発動などできず、またまた実質メルフ導師の専用スキルと言えるかもしれない。
ただしその分、上記の術式短縮と組み合わせた際の効果は凄まじく、
「通常よりも発動が速く、効果が高く、追加効果もついた魔術(ただし消費は莫大)」が使えたりする。

面倒くさい設定を全部すっとばして一言で表すなら、
『術が強くなったりするかわりに魔力消費が二倍くらい大きくなる』技術。


ここまですべてに共通していえることだが、いくらメルフ導師といえど魔力の限界はある。
これらの技術は全て消費や疲労がとんでもないため、流石の導師でも滅多に使うことは無い。


――グリモア:カーヴルヌース


彼が常に所有している、漆黒の装丁が施された分厚い魔導書。
曰く、「古代文明の遺跡に封印されていたものをパクッてきた」らしい。
辞典クラスの本の中には、彼が使う術式や述懐、魔術の証明式等がびっしりと書き込まれている。
ちなみにどうやら最初の数十ページ以外は全て手書きらしい。
彼が解析した術式が増えるたび、装丁などを取り替えて新たなページを追加しているようだ。

メルフュレル・ファーザーにとって魔術を使用する際絶対に必要な魔導デバイスである。
術式解析部に身を置くだけあって彼自身が研究・解析している術式があまりにも膨大で、
こうして魔導書などのデバイスを使わなければとても管理・行使しきれないからである。
裏を返せば、この本を所有している時、メルフ導師の使える魔術の種類は凄まじい数になる。
といっても、よく使うような術の式や述懐は、彼の頭にしっかり叩き込まれているようだ。
また、メルフ導師の魔術同時発動や術式短縮などの際にも必須となる。

使用する際は独りでに宙に浮き、勝手にページが捲れるが、
普通にページを捲って使用することも勿論可能。




使用魔術リスト


上記「グリモア:カーヴルヌース」の項にある通り、非常に膨大な種類の魔術を行使できる。
その全てを把握するのは不可能と思われるため、使用したことがあるものだけを記す。
また、エルメアの師と呼べる人物だけあって、彼女の術と共通点を持つようなものも多い。
なお、防御術と補助術の項が無いが、使用していないだけで、所持していることは間違い無い。


――攻撃術


†????????
  ~夜月の遠吠えは穢れし叫びか、ならば汝其の穢れにて罪を砕かん
名称は不明。前方、及び魔導書から薄紫色の光弾を射出する。
形体が非常に似通っていることから、恐らくエルメアの使用する天使術「セイクリッド・ロアー」の亜種。

†トリシューラ
  ~闇を穿つ破邪の聖槍、大いなる流動と共に我が元に具現せよ
メルフ導師の周囲に3つの光弾が出現し、それを自在な方向に撃ち出す中級術。
エルメアの使用する天使術「トライデント」の亜種。

†マーシレス・クロス
指定した座標点に小さな魔法陣が出現し、そこから、黒い刀剣状の魔力が突き出される術。
座標点を指定できる範囲が広く、遠距離攻撃が可能。
威力は高いが、欠点は攻撃範囲が狭く、発動時に出現する陣を見れば回避が容易いこと。


――回復術


†アルトグレイス
  ~大いなる輪廻よ、彼の者に喜びと希望を与えたまえ
対象の傷を癒し、状態異常を回復する中級術。エルメアの使用する天使術「グレイス」の亜種。

†セルベイション
対象の傷を癒しつつ、魔力や疲れなどの面に於いても回復補助する上級術。
物理的な傷の回復よりも魔力・精神力的な回復能力に優れている。

†リストア
自分自身の魔力を対象に分け与える術。気力の回復としても応用できる。

†カームルミナス
心身を鎮める効果を持つ、一種の状態回復術。鎮静という効果の関係上、睡眠を促進する用途もある。



思想と信仰(長文注意)


聖職者でありながら、教会の体系とは違った独自の価値観と信仰を持つ。
端的に抜き出せば、彼は教会であがめられる『神』というものを信じていない。
『神』とは人の祈りそのものが生み出した幻想であるという思想を持っている。
信仰は恐怖と表裏一体であり、即ち「神」とは「幽霊」と変わらないフィクションだと言い切る。

その偶像たる神の導きを妄信することなく、
自分自身の『信念』に基づいて進んでいくことこそが唯一の「救い」である、と考えており、
そしてそれこそが彼の説く教えである。祈りの具現である神を信じることも結構。
大切なのは、それを信じぬく自分自身の姿勢だというのだ。

時に苦しみ、時に涙し、時に笑いながらも困難な道のりを進んでゆく。
背負ったものに押しつぶされそうになったなら、仲間に助けを求めればいい。
そうやって進んでいった者にだけ、偶像ではない≪真の神≫が微笑む――
彼は、その思想を信じている。

枢機卿として如何なものかとは思われるが……以下、クルスに語った言葉より詳しく抜粋。


――『神』の本質と、「神」と「霊」の関係性について


「人々が救いを求める『神』の、本質というものを考えたことはあるかね?
わたしは何度も考えたことがある……修行の身であったころから、何度も何度も……
そして、こういう結論に達したのだ。……わたしたちが祈る『神』のほんとうの姿とは……

……わたしたちの『祈り』そのものである、と。

……人はね、弱い生き物なんだ。思ったよりも怖がりで、不安が何よりも苦手な生き物なのだよ。
そんな人が、何よりも恐れるものは何か?愛する者との死別?自分を理解されないこと?
或いは、明日の温かなパンにもありつけないことか……それもあるかもしれない……
だが、人が最も恐怖するもの。それはね、『説明できない出来事』なのだよ。

……人は知性を有する。他の種族とは一線を画した、ズバ抜けた知能を持つ。
世の中のあらゆる出来事を解析し、解き明かし、認識可能とすることで、人は恐怖を取り除いてきたんだ。
何故、焔は燃え上がるのか?可燃物に対して熱を加えることで、空気中のO2が反応して燃焼が発生する――
そう。この世界の、ありとあらゆる反応を、結果を、過程を。測定し、解析し、認識し、理解すること。
それが発展につながり、文化を形成することに繋がる。人の知性を最も妨げるのは、恐怖と不安だからだ。

ところが、そんな人の知能を以てしても解明できない出来事があったらどうする……?
真夜中にひとりでに浮き上がる椅子や机。使われていない部屋から響くグランド・ピアノ。
現実には見えないのに、写真の中にだけ存在する隣人……誰も居ない場所から聞こえる足音。
どれもこれも超常的で解明不可能な事象だ……しかし人は賢いんだな。
そういった現象に対して、『幽霊の仕業』という、新たなる概念を。考え方を生み出したんだ。
どうしても説明できないことに対して、幽霊、魂という「器」を与えることで認識可能にしたのさ。

考えることは最大の武器になる。どうしようもない、考えることすら不可能な出来事に対して、
少々荒っぽくも、人間は考えるための「入り口」を生み出した。「存在しないもの」を「仮定」することで。
そうすれば「考える」ことが可能になる……全く理解不能な現象ではなくなるんだ。

無理矢理な屁理屈と思うかね?しかし歴史として正しいことなんだ、そうやって人は『恐怖』を取り除いてきた……。
これは人間の全ての基本原理に通ずる。人は何かを『名付ける』ことで、自分自身の世界においてそれを認識するのだから……

……わたしはね。人が信ずる『神』というものも、この『幽霊』に通ずるものがあるのではないかと思うのだよ。

道に迷ったとき。罪を犯したとき。自分自身を、許せないとき。
それでも人は、道を探した。罪を祓ってほしかった。自分を、誰かに許してほしかった。
……しかし、どうしても。どうしても、その方法が見つからなかった時。
人々は、『存在しないもの』を『仮定』することで……『救い』を見出そうとしたんだ。
『恐怖』を。『不安』を取り払うために。人の知性は、『神』という絶対の存在を生み出したんだ。

……そうだ。わたしはさっき、「神とは人の祈りそのものである」と言った――
そう考えるに到った理由は、これだ。そう考えると、あらゆる矛盾が解き明かせる。
何故、この世界に神の教えは数多と存在するのか?
人々があがめる神は幾つも在って、そして神によって人々に説く道は違う。
ある方の神が絶対の教えとするものが、ある方の神が説く絶対の禁忌にすらなりえる。
それは、その『神』の本質が、そこに生きる人々の祈りと願いを色濃く反映したものであり――
――いうなれば、一種の『文化の産物』であるからだ。わたしは、こう考えた。

恐怖無くして霊は成らず、霊もまた恐怖無くしては成らない。
信仰無くして神は成らず、神もまた信仰無くしては成らない。
信仰は恐怖の裏返しであり、即ち神と霊は表裏一体のものである――
それが、わたしの導いた結論だ」


――信じるべきものと、真の「救い」とは


「では、自らが信じる神を。信じられなくなったらどうすればいいのか?
自分自身の進む道に、悩むのなら。それでいて、道を示してくれる神を疑うなら。
それでも信仰を捨て去ることができず、道が見えず、立ち尽くそうとしているのなら――

きみはこれから、『自分自身』の『信念』に基づいて、歩いていかなければならない。

何を信じるのか。何を思うのか。何のために、進むのか。自分自身で考え、実行し、そして振り返る。
それはとても恐ろしいことだ。恐怖、不安、孤独……神という絶対の拠り所は、もうないのだから。
しかし……現実とは、斯くもそういうものなのだ。
自分の罪を、迷いを、願いを。一瞬で簡単に祓い、示し、叶えてくれる、優しい優しい「神」。
それに縋ったまま生きていては、きっと……本物の幸福は、見えてこないのだ。
なぜなら、自分自身の進む道を。人生を決定するのは、最終的にどうしても自分自身ただひとりだけであるのだから。

犯した罪を。過去を。全て背負ったうえで、捨てることなく。
未来を見据え、時に迷い、時に傷つき、時に涙し、時に笑いながら、進んでゆく。
それが本来の人の生きる道であり、真の「救い」であるように、わたしは考える。
そして、その辛い道を乗り切った者にだけ――――


――偶像ではない、ほんものの≪神≫が、微笑んでくれる」



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最終更新:2011年03月09日 19:11