概要
一刀流剣術『島津示現流』に、我流の剣術を交えて構成された、
島津 綾菊の戦闘技術。
一対一で人間を殺害する事を目的として、技の一つ一つが考案されている。
『島津示現流』が持つ「二乃太刀不要」の精神を体現するかのように、一撃一撃が非常に重い。
常人とは次元を異にする身体能力故に扱える技術で有り、形だけの模倣は出来ても完全な再現は不可能に近い。
綾菊本人も、この技術を全て他人に教えようとはしない様だ。
使い手
身体能力
約五十五貫(200kg)有る大剣『無名』を、片手で風車の様に振り回す腕力、
それだけの装備を身に付けながら、助走無しに三間(5.4m)を飛ぶ脚力。
そのつもりになれば、腕力だけで相手を破壊する事も可能な程、単純な力には優れる。
瞬発力という面を見れば、脚力で強引に加速を与え、直線的な動きは十分に行える。
反面、鋭角ターンや急停止等は、与えた加速を殺すまでのラグが生じて苦手。
肉体の耐久力は、どちらかと言えば能力に頼る面の方が大きい。
但し、顎への打撃は首の筋力で、重量で押しつぶす類の攻撃は全身の力で、それぞれ耐える事を選択出来る。
本人の体重は60kg程度なので投げは可能だが、関節技はこれまた力任せに凌がれる危険が高い。
能力に依る補正
上記の通り、非常に高水準の身体能力を持っているが、此処に更に能力に依る補正が加わる。
能力の発動形態には現在二種類が有り、それによって補正が変わる。
尚、外見の変化は二形態どちらも酷似しており、ただ色の違いだけが存在する。
四肢、脇腹から脇の下、首の側面、頬から耳と、爬虫類の様な鱗に覆われる。
『龍人変化:炎龍』
鱗が赤い時は、熱を正の方向に操作する為、全体的に筋力が上がる。
また、鱗に覆われた部分と内臓が熱に強くなり、己の能力による熱に十分耐えられるようにもなる。
鱗は強度もそれなりに有り、打撃斬撃への軽度の耐性を持つ。
但し、後述するように、魔力由来の行動に対しては、驚くほどに脆い。
『龍人変化:氷龍』
転じて、鱗が青い時は、熱操作の方向が負である為、筋力への補正はかからない。
その代わり、冷気への耐性と打撃斬撃に対する軽度の耐性を得る。
此方もまた、魔力由来の行動に対する弱さは変わらない。
体質
紆余曲折の末に人から外れた身は、通常の生物とはかけ離れた特性を見せる。
その体は間違いなく生物なのだが、同時に魔力の集合体としての性質も持つ。
大別すれば二つ。片方は大きな弱点、もう片方は幾らかの利点となる。
一つ目は、極度に低い魔力抵抗力。
魔力による〝攻撃〟に弱いのでは無く、魔力由来の〝全て〟に過剰な反応を示す。
極端な話、治療目的に行われる魔術ですら、綾菊の身体を破壊する結果を引き起こすのだ。
能力の発動形態によって熱または冷気には耐性が有るが、それ以外の魔力由来の行動ならば、耐性は一般人以下。
原因は、第五世界の魔力とは別種の魔力で体が構成されている事。
周囲の魔力を取り込んで回復を図る事も出来ず、治癒は基本的に時間に任せるほか無い。
二つ目は、身体の分解と再構成。
自分の体の一部を魔力へと分解し、体内に取り込む事が可能。
再構成する場合は、この方法で分解した部位だけを組み上げられる。
何らかの形で欠損した部位で有れば、構成する魔力自体が欠けている為、再構成は不能。
余り用途は多くないが、有れば有るで使えない事も無い。
『白百合』
刃渡り四尺、柄と鍔、鞘が純白の反りの深い太刀。
刀身は完全に潰れていて、形状は刀だが打撃武器となっている。
重量バランスや長さなどが最も綾菊の手に馴染んでいる、いわばメインウェポン。
不殺制圧を苦手とする綾菊にとっては貴重な、殺さずに倒せる武器。
刃が無い為、居合いにはやや不向き。
ちなみに、一応人格の様な物が有り、その口調は綾菊本人に酷似している。
『九十九』
九十九神の一種で、人格を持つ刀。普段は刃渡り三尺三寸、美しい直刃の形状。
路地裏で人斬りを行っている所に遭遇、打ち果たして己の物とした。
刀とは表記したが、その実はあらゆる近接武器にその姿を変える事が可能。
鋼の鞭、槍、薙刀、斧、弓。様々な形を取って戦える。
主に左手に持ち、右手の攻撃によって生まれた隙を軽減する為に使われる。
だが、これ一振りでも十分に戦う事が出来る程の、綾菊の持つ太刀で最も優れた一品。
『業炎』
刃渡り四尺五寸の分厚い刃は赤く輝き、刃紋は炎の様に揺らぐ刀。
約10kgという、太刀の常識に捕らわれぬ重量を持つ。
重量で叩き切る西洋剣の利点と、引き切る刀の利点が合わさった名刀。
気力や体力を強制的に魔力に変換し、炎を発する力を持つ。
尚、これもまた人格を持つ刀。使い手をお前と呼ぶ、横柄な口調をしている。
『無名』
刃渡り六尺、重量約五十五貫(200kg)。握りは四つ以上で刃の厚みも四寸越え。
その全てが規格外の、鉄の塊の如き大剣。
余りに大き過ぎるので、背負う時は結構急な角度で斜めになっている。
異常なまでの硬度を持ち、銃弾の乱射程度では傷も付かない。
その為、目の前に構えて盾として使われる事が多い。
それ以外では、相手の頭上に投げて重量で押しつぶすなど、この武器ならではの使われ方が多数。
切れ味が飛びぬけて良い訳では無いが、此の重量の前ではもう無意味な事かも知れない。
『短刀』
常に懐に隠している短刀。柄は一握りと少々、刃も短い。
主に獣の解体に用いるのだが、密着戦闘に於いては十分な武器となる。
投擲での攻撃も可能だが、それには重量が少々足りず威力が不足する。
『鉢金』
額に装備する防具。だが、頭突きの威力を増すために使用する事が多い。
つばぜり合いの際に刀の峰に頭突きを打ち込んで、強引に押し切った事が有る。
戦闘技術
『島津示現流』
刀一振りを用いて、一対一で敵を殺害する事を目的とした剣術。
その思想は「二乃太刀不要」の言葉に表れており、先んじて一撃で倒せるなら防御は不要と考える。
小技は余り存在せず、名を持つ技も少ない。
名称 |
用途、解説 |
備考 |
居合・立(りゅう) |
極端に捻りを加えた構えで、下から上へと斬り上げる居合い。 鎧武者も装甲が薄くなる、大腿部を狙う |
- |
歩法・行(こう) |
素早い体重移動と全身のバネを用いて、3間の間合いを飛ぶ。 |
『無名』装備時の移動距離 |
示現流・重切 |
太刀を肩に担ぐように振りあげて、そのまま全身の力で振るう。 |
- |
蜻蛉の構え |
左足を前に、右足は斜め後方に開いて、太刀を強く握った右手を耳の高さまで上げ、左手を其処に添える構え。 上から下へ、速く強く振り降ろす振り下ろす事だけを追求した、超攻撃的な体勢。 |
- |
秘太刀・雲耀 |
自分の持つ全力で、最速最強の一撃を放つ「だけ」の技。切っ先は音速を超え、周囲に衝撃波を放つ程になる。 複雑な仕組みや仕掛けが有る訳では無く、単純に強いから強い。 |
- |
我流
『島津示現流』の弱点である、守りや複数戦闘、連撃を補う為の技術。
対応出来る場面を増やす為に磨き続けた結果、技の数はそれなりになっている。
構え
名称 |
用途、解説 |
備考 |
剣狂 |
二刀を構え、太極拳で言う所の仆歩(右足の方を前方に)の体勢で、右手を前方に突き出し左手は頭を守る。 低い位置からの連撃を狙う構え。 |
多用しない |
剣鬼 |
左足を前にした、360度何処へでも移動できる立ち方。右手を横に伸ばし、左手を前方に向ける。 攻防のバランスに優れた、二刀流剣術の主軸。 |
- |
剣帝 |
右手に大剣『無名』、左手には大剣に変化させた『九十九』を持つ。速度低下を補って余りある攻撃力を得る。 |
多用しない |
十二還 |
両手の太刀を真っ直ぐ前に突き出し右足をやや後方に、左足に体重をかけてやや前屈の姿勢になる。 連続攻撃につなぐための、前に進むだけの構え。 |
専用派生複数 |
幽鬼 |
太刀を持った両手をだらりと垂らし、あらゆる気配を殺す。 相手の攻撃を回避する事を重視し、また、自分の狙いを悟られない様にする意図もある。 |
- |
剣魔 |
己の異名を冠した、我流の剣の究極系。右手に大剣、左手に太刀を構える。 この組み合わせで有れば、その他の部分がどうであろうとこの名を付ける。 |
- |
六天魔王 |
「剣魔」時、『九十九』を変化、上半身を覆う鎧と変えて背から金属の翼を六枚出現させる。 金属の翼の縁は刃の様に鋭く、振り降ろせば並みの剣士の斬撃よりも威力が高い。 |
飛行可能 |
剣術
名称 |
用途、解説 |
備考 |
騒嵐 |
右手→左手の順に居合いを放ち、次いで同時に相手の首と足を狙い斬りつける。 |
- |
居合い・鋼断 |
極端な前傾の低姿勢から放つ高威力の居合い。 |
- |
居合い・逆浪 |
放った後、足を軸の回転行動で一歩後退する居合い。 |
- |
幽幻 |
体全体を撓る様に曲げて相手の攻撃を回避し、すかさず両手の太刀を脇腹に走らせる。 一切の無駄無く最短距離を走る太刀筋は、何か幻を見ているようにも感じられる。 |
- |
送り灯篭 |
片手の太刀で相手の攻撃を上方に流しつつ、もう片手の太刀で切り抜けを狙う。 「幽幻」にも似ているが、此方の方が威力は低く確実性は高い。 |
- |
秘太刀・火産霊神 |
太刀に可能な限りの力を注ぎこみ、巨大な炎を纏わせて斬りつける。 殺傷能力は太刀の域を超えるが、炎が無効の相手なら威力も半減。 |
『業炎』未装備時消費大 |
体術その他
武家の嗜みか、体術も一通り身に付けている。
格闘技というよりは武道に近い、人体の急所を狙う技が多い。
それに能力を組み合わせ、応用性に欠ける技術を補う。
名称 |
用途、解説 |
備考 |
掴み |
ただ掴むだけなのだが、耳の穴や鼻の骨、眼窩の凹凸など、危険な部位に指を掛ける。 そのまま持ち上げて投げたり、頭蓋を締め上げたりと、残虐性の高い技術。 |
- |
掌底 |
表面よりは内部に響く打撃。自分が怪我しにくい上、受け止められてからは掴みに転じられる。 |
間合い40cm~1.2m |
裏拳 |
太刀を持ったままでも放つ事の出来る打撃。背面の敵には寧ろ威力が増す。 |
間合い40cm~80cm |
水面蹴り |
主に右足の踵で放つ。太刀での斬撃と併用する事で、回避の余地を削る事が多い。 |
間合い1m~1.5m |
踏みつけ蹴り |
相手の膝を踏みつけるように放つ蹴り。殺せはしないが、動きを止める事は出来る。 |
- |
上段廻し蹴り |
高威力、且つ意外に回避の難易度が高い蹴り。体勢を崩してから放つと良く当たる。 |
間合い90cm~1.8m |
一本背負い |
通常の正しい投げ方では無く、力任せに相手の肘関節を破壊しつつ投げ捨てる。 |
- |
見切り |
敢えて一撃を受ける事で相手の持つ獲物の長さを計測し、それ以降の回避を容易にする。 |
- |
龍炎 |
腕全体に炎を纏わせて、渾身の力で殴りつける。 |
- |
幻魔・不知火 |
狭い範囲の熱操作によって蜃気楼を作り出し、彼我の距離の認識を狂わせる。 持続時間はほんの一瞬だが、その間に距離を詰める事が可能。 |
- |
攻略情報
腰に差した三本の太刀と、背負っている身の丈以上の大剣。そして、異常ともいえる怪力を武器に戦う。
流派は島津示現流、一対一だけを想定した総合殺人術であり、大概の武器と体術は十分以上に扱える。
単調な直線的攻撃が多いが、その分攻撃は速く重い。受けさせてもダメージは通ると考え、ひたすらに攻撃する。
太刀の間合いで有れば途切れない連続攻撃と回避からのカウンター、拳の間合いで有れば、関節破壊を中心とした柔術混じりの体術。
接近戦闘に置いては、非常に多くの手札を持つ。
反対に、中遠距離においては、攻撃を回避しつつ間合いを詰める以外に何も出来ない。
魔力抵抗の極端な低さも合わさり、相性によっては接近前に四肢の半分が使用不能になる事も有る。
尚、太刀の次に得意とする武器は鞭である。趣味と実益を兼ねて。
対峙するならば、正面からの激突は避けるべきである。
本人の体重60kgに装備総重量220kgを合わせた280kg。これが正面から向かってくるのだから、押さえるだけでも危険だ。
ましてや、それでも自由に駆け回る筋力。これと真っ向勝負をしようというのは、極めて一部の能力者でしか取れない選択肢だろう。
また、太刀の刀身がいずれも長く、踏み込みから斬りつける為、直線方向への射程はそれなりに長い。
太刀を防ぐ事が出来る強度の防具または能力が無い限り、間合いに入らずに戦うか回避に徹するかを選ぶ事になる。
構えは、多くの場合は大上段。更に一撃を重視する場合、蜻蛉の構えとなる。
いずれも、上から下へと太刀を振り下ろす事が、事前に分かっている構えだ。
だから、初撃を回避するなら、左右方向への軸移動をとりいれた動きを選択すれば良い。
太刀を同時に二本扱える事に加え、両腕の強度や技術も有り、上半身を物理的に狙うのは少々難易度が高い。
振り下ろされた腕の横に並ぶように潜り込めば、少なくとも片腕だけはいなせるだろう。
戦闘力を削ぐなら、防御手段が少ない脚を狙えば良い。左右どちらであろうと、然程効果に差はない。
打撃、斬撃への対応手段は豊富であり、反撃の手段も十分。
だが、中遠距離の攻撃への対処方法は少ない。
大きく動いて回避するか、鱗の耐久力に任せて耐えるか、だ。
体質の関係上、魔力由来の攻撃は耐える事も難しい。
能力の熱操作に関しては、本人の知力が然程でもないため、少々頭を使えば破る事は難しくない。
但し注意しなければならないのは、負の方向の操作で使用する氷の能力の一部。
足場を凍らせる、四肢を凍らせる、自分を氷で覆って攻撃を防ぐ。単純だが厄介な手段は有る。
結論として、この妖に戦闘で勝利したいなら、以下の事を心掛ければ良い。
一つ、力に力で対抗しない。
二つ、常に円を描くように動き、正面に長くは立たない。
三つ、距離を取るか、逆に詰めるか。剣士の間合いで戦わせない。
四つ、魔力由来の攻撃を放つ。
単純な身体のスペックなら異常とも言える領域。
それでも、付け込む余地は、十分に有る。
最終更新:2011年01月25日 15:23