THE OLD DAYS(2-3)


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「ヒャーッハッハッハァッーーーーー!」

耳障りな哄笑を響かせながら、男が上空を飛び回る。
正体不明の衝撃波をぶちまけ、辺りの建物を砕き散らしていた。

「くそ、くそ、くそ……! 本物の悪魔が出てきやがった、なんだありゃ!」

断続的に牽制射撃を加えながら、ソープ二等兵が毒づく。

「喋るな、ソープ。その分の酸素を走るのに回せ」

全速力で走り続けながら、ゲイツが冷静に返答する。
角を曲がるたび、油断なくサブマシンガンでチェック、クリア。

「そうは言いますけどね、二等軍曹。ありゃ反則だ、銃が効かないなんて!」

マガジンポーチから弾倉を取り出し、リロードしながら吐き捨てる。
実際のところ、ゲイツも同感だった。
グレネードですら弾き飛ばし、致命傷を避ける。おまけに空まで飛びながら、手から凄まじい威力の衝撃波を撒き散らしてくる。
コミックの中の登場人物としか思えないその相手は――何とも始末の悪いことに、今自分たちの命を狙って行動しているのだ。

デルタチームは、上手くやっていた。
建築物の密集している区画に走りこみ、牽制射撃を加えながら、ランダムにルートを変化させて逃走している。
今のところ、一人の脱落者も出していない。そうこうしているうちに、あの近衛もこちらを見失ったようで――状況はといえば、まずまずだった。

だが、それも長くは続かない。

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「――少佐!」

基幹道路の方角から、低く唸るような駆動音。
特別共和国防衛隊の、装甲車両が次々に市街地へ突入してきていた。随伴の歩兵も、かなりの規模確認される。
本来大規模な交戦を想定していなかったデルタチームは、対装甲装備を持ち合わせていない。
有効なものといえば、ゲイツのバレットだったが――それは今、1km彼方の丘の上に放置されている。

「HQ、HQ! こちらデルタ! 敵主力部隊とコンタクト、五分で全滅しちまう! 航空支援を要請する!」

キャラガが通信機に向かって怒鳴り、ライフルを敵の方に向けて発砲する。
すぐさま敵の装甲車両から、機銃による応射。

くそ――そう悪態をつき、衝撃波で崩れかけた建物に、デルタの面々が隠れる。
大きな壁を背に、ゲイツとソープは座り込んだ。

「ソープ、怪我はないか」
「はい軍曹、大丈夫です……にしても……控えめに言ってですが、最低にクソッタレな状況ですね」
「ああ、本当に控えめだ。もう少し自己主張しても構わんのではないかね」

それぞれリロードし、ため息をつく。
常に作戦が上手くいくわけではない、というのは分かっている。
ある程度のイレギュラーがありながらも、それでも目標を遂行できるように、特殊部隊の人員は訓練されている。

今回のイレギュラーは、たった一つだった。
機材の不調、情報の錯綜。
それらが複合して起こることも珍しくない実戦では、まだ想定外の要素が少ないほうなのだが――今回は、あまりにも重大すぎた。
遥か彼方、1000mの距離から飛来する超音速の弾丸を素手で弾けるボディーガードがついていた、という、たった一つのイレギュラー。

それが状況をココまで悪化させた原因である。

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「……おいでなすったぞ」

狙撃銃で、随伴歩兵を排除していたグリッグが呟いた。エンジン音が近付いてくる――死神の足音。
数分後には、全員が蜂の巣になっていてもおかしくない、その状況でも、彼らは冷静だった。
最後の一瞬まで、生還への望みを捨てず、チームのために戦う。その決意と共に、銃杷を握り――お互いに視線を交わす。

イラク兵の話すアラビア語が聞こえ、戦車の砲塔が動く音が聞こえた。
暗い室内、ゲイツが息を呑んだその瞬間―――空を切り裂き、闇を払い、静寂を打ち破って。

米軍の近接航空支援が、開始された。

F-15E、ストライクイーグルから発射された、マーヴェリック空対地ミサイルが戦車をなぎ払い、歩兵を焼き尽くす。
大口径の機関銃弾が降り注ぎ、歩兵を圧倒し、装甲車を爆炎に包む。

「………見たかくそったれ! これがステイツだ!」

感極まったのか、ソープが叫ぶ。全員が頷き、通信機が、上空からの言葉を伝える。

『オーライデルタ、プレゼントは届いたか? チビってねえよな? 酒おごってもらうからよ、さっさと帰って来い!』

ソレを皮切りに、歓声が室内を包む。
あの絶望的なムードすら、覆して見せる――それが米軍の力。
そう確信し、ゲイツはサブマシンガンを手に取る。

「ようし、さっさといくぞ野郎共! あのパイロットに、嫌って言うほど酒を呑ませてやる!」

そう少佐が告げた。いまや士気は最高潮であり、彼らの能力は最高峰。
それから10分、デルタチームはLZである広場に到着し、周囲を確保――ヘリの到着を、待っていた。

もう帰るだけ。そう思うが、気は緩めない。
全員が油断なく、周囲を警戒していた、はずなのに―――それは、悪夢と言っていい出来事だった。

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まず、無音の衝撃波。僅かにうめき声を残し、物陰で路地を警戒していたソープが倒れた。
次の瞬間、轟音と共に巨大な衝撃波。背後から一撃を受け、ギャズとダンがばらばらになった。
慌てて銃を向けたネルソンが、男の回し蹴りで吹き飛ぶ。

「……ったくよぉ。面倒くせぇことさせてくれやがって、特殊部隊サンが」

じゃり、と地面を踏みしめ、LZにあの男――近衛の男が現れた。

「機関ナンバーズ、アフェルだ。機関。知ってる? 知らねェか、別にいいけど。
――だってまあ、ありがちなセリフだけどよ。あンたら、ここで死ぬんだからさ」

銃声、マズルフラッシュ。残ったゲイツ、グリッグ、コーダ、キャラガ。この四人が、それぞれ手持ちの銃器で、激しい攻撃を加える。
だが、その最中で――

「落ち着けってば。冥土の土産ってやつ? 教えてやっからさー」

銃弾を、悉く弾き落としながら、まるで気負う様子もなく笑っている。
アフェル、と名乗るこの男。
ゲイツたちにはその意味を知る由もないが――カノッサ機関、ナンバーズ所属の能力者である。

「俺たちの活動に、あのオッサンがそこそこ協力してくれてたんだよ。クウェートに侵攻したときも、俺たちが先陣きったんだ。
今回あんたらがあのオッサンを殺すー、なんて息巻いちゃってっからさ、俺がここに派遣されてきたわけ。ホント面倒だぜ、勘弁してくれよ」

ぶん、と手を振り、コーダが肩口から身体を切断されて倒れる。

「あ、コレ? こりゃお前、能力だよ。知らない? なんだ何にも知らねェのな、トクシュブタイ。
俺の能力は『斥力を操る』こと。まあ、あんまり重たいものは動かせないんだけど……こんな風にさ」

どしゅ、という音。キャラガの頭部が、無感動に弾け飛ぶ。

「空気を反発させて、ソニックブームを作り出すことくらいは朝飯前なワケ。んー……このくらいかな。このくらいか。
じゃあもう飽きたしさ――死ねよ、お前ら……!?」

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