"メリザンドの歌"

メリザンドの歌(動画対訳)

【募集】ボカロPのみなさまへ。ボカロイドによるフォーレの メリザンドの歌(The King's three blind daughters ) をここに貼りたいと思っています。動画サイトにアップしたらゲストブックまで。通知お待ちしております。

「メリザンドの歌」いろいろ

  • 第3幕冒頭で、メリザンドが髪を梳きながら歌います。一般には次のふたつのヴァージョンが知られています。

    • 私は日曜の正午の生まれ(私の長い髪が)
      メーテルリンクの戯曲初版に置かれた詩。
      ドビュッシーはこれを採用。

    • 三人の盲いた姉妹
      戯曲の第二版以降に置かれた詩。
      フォーレとシベリウスはこちらを採用。(フォーレの歌詞は英語版、シベリウスの歌詞はスウェーデン語版)この詩はメーテルリンクの詩集「Quinze Chansons(十五の歌)」の#5としても収められています。

  • ところが、鷲尾浩訳「ペレアスとメリザンド」にはこのふたつとは全く別の詩「Thirty years I've sought, my sisters」が掲載されています。

  • 底本にはこの詩の英文と和訳が掲載されています。調べてみるとこの詩は、メーテルリンクの詩集「Quinze Chansons(十五の歌)」の#13として収められている詩を英訳したものでした。ちなみに島村抱月訳「ペレアスとメリザンド」でもこちらの詩が掲載されています。なぜふたつの邦訳にこの英語の詩が「メリザンドの歌」として掲載されているのか、「メリザンドの歌」をこちらの詩に差し替えたのはメーテルリンクなのか、あるいは、明治~昭和初期日本で上演された際には、演出者の判断でこちらの詩が多く採用されたというだけのことなのか、詳細は不明です。ただ、 こちらのページ(英文) には次のような記述があります。
    • Perhaps this seemed to Maeterlinck too Elizabethan. He substituted for it the poem which Miss Alma Tadema thus renders:
    • (日曜の正午の生まれが)エリザベス朝風に過ぎると思われたのでしょう、メーテルリンクはこちらの詩(妹よ尋ね探した三十年)に置き換えた

三人の盲いた姉妹

盲ひの三人姉妹が
(希ふ望みはまだ冷めず)
盲ひの三人姉妹が
金のランプに灯をともす。

彼等は塔の上に行く
(彼等と御身と我々と)
彼等は塔の上に行く
第七日目を待つために。

ああ、顧みて人は言ふ
(一人希望(のぞみ)をうちつながら)
ああ、顧みて人は言ふ、
燃えるランプをわれ知ると……

ああ、次の人の言ふのでは
(彼等と御身と我々と)
ああ、次の人の言ふのでは、
これが王様の足音だ……

いや、至聖者(よきひと)の言ふのでは
(ひとり希望をうちつながら)
いや、至聖者の言ふのでは、
燈はしかし消えている。
(鷲尾浩訳)
Les trois sœurs aveugles,
(Espérons encore).
Les trois sœurs aveugles,
Ont leurs lampes d’or.

Montent à la tour,
(Elles, vous et nous).
Montent à la tour,
Attendent sept jours.

Ah ! dit la première,
(Espérons encore).
Ah ! dit la première,
J’entends nos lumières.

Ah ! dit la seconde,
(Elles, vous et nous).
Ah ! dit la seconde,
C’est le roi qui monte.

Non, dit la plus sainte,
(Espérons encore).
Non, dit la plus sainte,
Elles se sont éteintes…

三人の盲いた王女(英語版)

三人の盲いた王女たちが、
囚われて座っています。
闇の中、それぞれのランプが
金色の微光を放ちます。

塔の階段を
姉妹は昇ってきたのです。
そこで待つこと七日、
ランプに灯をともし。

あきらめましょう、と一人目の王女
そして、炎に身を屈めて
聞こえるのはランプが燃える音だけ。
おお、でもあの方が来てくれれば!

おお、あきらめないで!と二人目の王女
ランプの揺らめきと聞こえたのは
かすかな足音でなくって?
王子様が階段に!

しかし、最も清い王女は、
振り返って
おお、もうおしまいよ、永遠に、
私たちのランプは消えているわ…
(拙訳)
The King's three blind daughters
Sit locked in a hold.
In the darkness their lamps
Make a glimmer of gold.

Up the stair of the turret
The sisters are gone.
Seven days they wait there
And the lamps they burn on.

What hope? says the first,
And leans o'er the flame.
I hear our lamps burning.
O yet if he came!

O hope! says the second.
Was that the lamp's flare,
Or a sound of low footsteps?
The Prince on the stair!

But the holiest sister
She turns her about:
O no hope now forever -
Our lamps are gone out.

妹よ尋ね探した三十年(英語版)

妹よ 尋ね探した三十年
遠い遠い隠れ家へ
妹よ 歩み尋ねて三十年
足跡一つ見つからぬ

妹よ 歩み廻った三十年
私の足は疲れたが
妹よ 何処へ行っても彼の人は
居は居るものの現れぬ

妹よ 時の立ち行く悲しさは
又も洗足におり立ちて
妹よ 黄昏消えて夜となれば
悶え苦しむこの心

妹よ 御前はちょうど十六歳
これからの日はそちのもの
妹よ 私のもちしこの杖で
又も尋ねて彼の人を
(鷲尾浩訳)
Thirty years I've sought, my sisters,
far his hiding-place,
Thirty years I've walked, my sisters,
But have found no trace...

Thirty years I've walked, my sisters,
And my feet are worn,
He was all about, my sisters,
yet he was unborn...

Sad the hour grows, my sisters,
Bare my feet again,
For the evening dies, my sisters,
And my soul's in pain...

You are now sixteen, my sisters,
Time it is for you,
Take my staff away, my sisters,
go and seek him too...

妹よ尋ね探した三十年(仏語版)

妹よ 尋ね探した三十年
遠い遠い隠れ家へ
妹よ 歩み尋ねて三十年
足跡一つ見つからぬ

妹よ 歩み廻った三十年
私の足は疲れたが
妹よ 何処へ行っても彼の人は
居は居るものの現れぬ

妹よ 時の立ち行く悲しさは
又も洗足におり立ちて
妹よ 黄昏消えて夜となれば
悶え苦しむこの心

妹よ 御前はちょうど十六歳
これからの日はそちのもの
妹よ 私のもちしこの杖で
又も尋ねて彼の人を
(鷲尾浩訳)
J'ai cherché trente ans, mes sœurs,
Où s'est-il caché?
J'ai marché trente ans, mes sœurs,
Sans m'en approcher...

J'ai marché trente ans, mes sœurs,
Et mes pieds sont las,
II était partout, mes sœurs,
Et n'existe pas...

L'heure est triste enfin, mes sœurs,
Ôtez mes sandales,
Le soir meurt aussi, mes sœurs,
Et mon âme a mal...

Vous avez seize ans, mes sœurs,
Allez loin d'ici,
Prenez mon bourdon, mes sœurs,
Et cherchez aussi...
最終更新:2020年09月18日 19:07