"アポロとヒュアキントス"

対訳

訳者より

  • モーツァルト弱冠11歳、初めて書いたオペラとされる作品です(もう一曲、ほんのわずか前に書かれた「第一戒律の責務」(K.35 ドイツ語)を最初のオペラとする考え方もありますが、これはミヒャエル・ハイドンらとの共同作品ですし、どちらかと言うとオラトリオ風の作品で(劇として上演されることもありますが)、こちらの方がオペラとしてはそれらしいので私としてはこれをモーツァルトのオペラ処女作と考えたいと思います。
  • ギリシャ神話、少年ヒュアキントスの死を題材に書かれた物語ですが、かなり神話からは脚色されており、痴情のもつれからくる殺人事件といった趣のお話です。もっともあまり生々しい描写はないのと(殺人そのもののシーンもカットされている)、女声を主体とした声のアンサンブルに、たぶんまだあまりこういった世界には深くは接していなかったであろうモーツァルトの透徹した音楽もあいまって、全くと良いほどエグさはないものに仕上がっております。
  • 登場人物は王エバルスだけが男声(テノール)で、あとはアポロも男の子たち二人(アポロとゼフィルス)も女声で歌われ、ただ一人の女性であるエバルスの娘メリアを入れてほとんど女声ばかり、王がテノールであることや、この女声が男役もやって色恋のくんずほぐれつを演じるというあたり、後の「イドメネオ」や「皇帝ティートの慈悲」を彷彿とさせ、実際その音楽の片鱗も感じさせる興味深い作品となりました。そのためもあるのでしょうか。結構演奏される機会も多く、聴きごたえもあります。少年合唱団のメンバーだけによる上演なんていうのもあるようで、少女メリアまで男の子にやらせると音楽の純粋さにも関わらずかなり淫靡な感じになるように思われるのは私の心が穢れているせいでしょうか。
  • この作品、あと興味深いのはラテン語で書かれていることですが、まあこれは鑑賞上の障害になることはないでしょう。訳語はもっと生々しいドラマにすることも考えたのですが、どうせ非現実的な筋ですし、少年合唱団員が演じているようなイメージで言葉を選んでみました。少々不思議な味わいとなりましたがお楽しみ頂ければ幸いです。

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@ 藤井宏行

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