"パルジファル"

目次

登場人物

  • パルジファル(T) - 愚かな少年
  • クンドリー(S) - 二面性のあるミステリアスな女性
  • アンフォルタス(Br) - グラールの王
  • グルネマンツ(Bs) - グラール騎士団の老騎士、のちに隠者
  • ティトゥレル(Bs) - 年老いた前王、アンフォルタスの父
  • クリングゾール(Bs) - 魔術師
  • 二人の騎士(T,Bs)
  • 四人の小姓(2S ,2T)
  • 花の乙女たち(6人の女性歌手と合唱)

前史

  • 宗教戦争に熱心だったティトゥレルは、キリストが処刑されたときに使われたという<聖槍>と<聖杯(グラール)>を手にし、この二つの宝を守るため、グラール城を建てた。聖杯騎士と呼ばれる男たちは日々この宝を守り、さらにグラールの光を受けるとことで不死身となっている。クリングゾールはある時自分も聖杯騎士団に入ろうと志願したが、ティトゥレルは過去に犯罪歴のある彼を拒絶。クリングゾールは聖なる身になろうとさんざん努力した後だったので、この扱いに怒り、一転して復讐の鬼と化してしまった。彼は魔術で偽りの花園を作り、聖杯騎士たちをおびき寄せては堕落させていく。
  • ティトゥレルの後を継いでグラール王となった息子のアンフォルタスはクリングゾールを成敗しようと、聖槍を携えて魔法の城に向かうが、そこでクリングゾールの手先に利用されているクンドリーに魅惑され、彼女と関係を持ったあげく、クリングゾールから槍でわき腹を傷つけられてしまう。命は長らえたものの、傷は決して閉じない。しかしアンフォルタスが熱心に祈ると、お告げがあった:「「共感によって知を得る 清らかな愚か者。 私が選び出す その男を待て。」

第一幕

  • グラールと呼ばれる聖地の森の朝。グルネマンツは目を覚ますと、二人の小姓と祈りを捧げ、傷の痛みを和らげるための日課になっているアンフォルタスの水浴の準備をする。そこへクンドリーが慌ただしく馬を駆ってやってきて、痛みを和らげるためのバルサムを渡すが、自分は疲れ果てて倒れこんでしまう。彼女はいやいやながらクリングゾールの手先になっているが、根は善良で、ふだんはグラール騎士たちに一心に仕えている。
  • アンフォルタスが水浴へ出かけていくと、グルネマンツはクンドリーをいじめる小姓たちを叱り、成り行きから過去のことをすべて語って聞かせる。話が終わった時、白鳥が矢で射られ、その犯人として一人の少年が連れてこられる。グルネマンツはむやみに動物を殺してはいけないと言って聞かせ、少年に名を聞くが、彼は答えられない。何を聞いても「知らない」の一点張りの少年にグルネマンツはあきれるが、ふとこの子がお告げの愚か者ではないかとひらめいて、聖餐の儀式に連れていく。
  • 舞台変わってグラール城の大広間。ティトゥレル(舞台に姿は現さない)はもう高齢でほとんど墓にいるも同然の身でありながら、なお生き続けることを望み、傷を負って苦しむ息子の心情にはお構いなしにグラールの光を要求する。アンフォルタスはグラールの光を見れば命が長らえるのでこれを拒否し、罪の意識に苦しむ思いを必死で訴えるが、誰も耳を貸さず、儀式は遂行される。
  • グルネマンツは少年がアンフォルタスの嘆きにどう反応するか観察するが、彼がただぽかんとしているのを見て失望。つい腹立ちまぎれに追い出してしまう。

第二幕

  • クリングゾールの魔法の城。少年が自分の城に近づいてくるのを見たクリングゾールは眠れるクンドリーを呼び寄せ、嫌がる彼女に、少年を誘惑するよう命じる。クンドリーは抵抗するも結局は言いなりになるしかない。
  • 舞台変わって魔法の花園。花の乙女たちと呼ばれる、クリングゾールの手下の女たちは庭に入ってきた少年に言い寄り、こぞって自分のものにしようとする。少年が少々嫌気がさしてきたところに「パルジファル!」と呼びかける女性の声。少年は自分の名を思い出してはっとする。声の主はクンドリーだった。彼女は乙女たちを退け、パルジファルの母親の話をして気を引き、彼の唇に接吻を与える。すると、パルジファルは急にアンフォルタスの嘆きを思い出し、彼を救うのは自分だと認識する。そして目の前にいるクンドリーがアンフォルタスを誘惑したこと、グラールの森で見たみすぼらしい女も彼女だと悟る。パルジファルはクンドリーを冷たくあしらおうとするが、彼女がキリストを嘲ったために呪われて永遠に生き続けなければならない運命だと知ると、彼女にも救済を約束する。クンドリーはなおも彼に自分とたった一時だけでいいから一緒になってほしいと頼み、断られるとパルジファルに迷いの呪いをかける。
  • 誘惑が失敗したことを知ったクリングゾールが駆けつけ、聖槍を投げつけるが、それはパルジファルの頭上で止まる。彼が槍で十字を切ると、魔法の城は沈み、花園も荒れ野と化した。パルジファルは倒れたクンドリーに、「どこで僕とまた会えるか、 きみは知ってるはずだ!」と言い残して去る。

第三幕

  • グラールの森、聖金曜日の朝。グルネマンツは隠者となって森の隅にある小屋で暮らしている。彼はうめき声を耳にして死んだように眠っているクンドリーを見つけ、目覚めさせてやる。意識を取り戻したクンドリーは、以前と打って変わって落ちつきがある。グルネマンツが彼女の変化に驚いているところに、武装した男が疲れ切ったようすで森に入ってくる。グルネマンツの促しで武装を解くと、それはパルジファルだった。グルネマンツはパルジファルの持つ槍がグラールから奪われた<聖槍>であることを知ると感動し、続けてグラールを仰ぎ見れないために弱り果てた聖杯騎士たちのことを物語る。ティトゥレルは亡くなり、その葬儀が今日行われることになっていた。自責の念に駆られるパルジファルだが、グルネマンツは彼をグラールの王として祝福し、クンドリーとともに泉の水で清めてやる。パルジファルは<最初の務め>として、クンドリーの頭に泉の水を振りかけてやり、クンドリーは涙を流す。パルジファルはしばし聖金曜日の自然の様子に感嘆の目を向けたのち、グルネマンツとクンドリーに伴われてグラール城に向かう。
  • 場面変わってグラール城。これ以上ないほど陰気な空気が漂い、騎士たちは弱り果てたアンフォルタスに食ってかかる。アンフォルタスは初めのうち騎士たちの咎めにも抵抗せず、父の亡骸に向かって嘆くが、さらに騎士たちから詰め寄られるとついに怒りだし、自分を殺してからグラールを開帳すればいいと開き直る。そこにパルジファルが入ってきて、槍の先をアンフォルタスの脇腹に当てると、傷は一瞬にして閉じ、アンフォルタスは歓喜のあまりよろめく。パルジファルは自らグラールの王になることを申し出、聖杯を開く。居並ぶ人々が奇跡を讃えるうちに幕。

All rights reserved
© Maria Fujioka
最終更新:2019年01月26日 08:36