"蝶々夫人"

対訳

ある晴れた日に(動画対訳)



訳者より

  • プッチーニの代表作のひとつ、日本の長崎を舞台としており、かつて世界で活躍したソプラノ歌手 三浦環が当たり役としていたことなどもあり、日本ではオペラに詳しくない方にも良く知られた作品となっているでしょうか。
  • 第2幕のアリア「ある晴れた日に」が飛び抜けて有名ではありますが、私はこの曲の白眉は第1幕の愛のデュエットではないかと思っております。古今東西のオペラの中でもこれほど切なく美しいのは他にないのではないかと思えるくらい素敵で、ここを自分の手で訳すことができたのは幸せなことでした。
  • そればかりではなく、第2幕や第3幕の蝶々さんとシャープレスの会話のところなど、訳していても思わず涙がこぼれてしまうようなやるせない内容、私もずいぶん対訳をこなしておりますが、訳しながらこんなに心動かされるというのは稀有の経験です。その感動がお伝えできるような訳になっているのかははなはだ心もとなくはありますが、ご覧頂けましたら幸いです。
  • ここのサイトでは仕掛かり中で長く置いてあり、第1幕の結婚式の場面までと第2幕のアリア「ある晴れた日に」は訳がついておりましたが、私のわがままで既に訳されている部分についても大幅に手を入れさせて頂きました。個人的にこだわりのある、逐行単位での対訳が崩れないようにするための語順の入れ替えや、キャラクター設定を揃えるための一人称・ニ人称の変更などのほか、原詩で異国の風物としてイタリア語にせずそのままにしてあるもの(神さまの名前や小物の名前・職業名など)はそのままカタカナで表記しました。
  • 特に注目すべきは主人公の呼び方が、英語のButterflyと日本語のチョーチョーさん、それとごくわずかですがイタリア語で蝶を表すfarfallaが使い分けられていることです。とても意味がありそうだったので、英語読みをしているところにはすべて「バタフライ」を、日本語読みをしているところは「チョーチョーサン」を、イタリア語読みのところは「蝶々」を当てました。イタリア語ネイティブの聞く感覚はおそらくこの訳語に近いのではないでしょうか。
  • この歌劇、3幕とも日本の春の情景が見事に描写されているように思いますし、筋書きからも連想されるのはやはり桜の花、第3幕の自害のシーンはまさに散り行く桜のイメージそのままですし、第1幕の婚礼のチョーチョーサンの着る白無垢の婚礼衣装も満開の桜を背景にするととても映えそうです。第2幕だけは桜ではありませんが、後半戻ってくる夫ピンカートンを迎えようと花盛りの庭から摘んできた花を部屋中に撒くのはやはり見事な春の描写です(ここでは歌詞でも「4月」と歌われています。それもあって本当は4月にアップするつもりでしたが、今年は桜の開花が思いの他早かったので3月末のアップとさせて頂きました)

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@ 藤井宏行

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最終更新:2022年03月19日 19:15