"ファウスト博士"

目次

登場人物

  • 詩人(語り) 
  • ファウスト博士(バリトン)
  • メフィストフェレス(テノール)
  • ワーグナー(バス)
  • パルマ公爵(テノール) 
  • パルマ公爵夫人(ソプラノ)
  • 式部官(バス)
  • 兵士(グレートヒェンの兄)(バリトン)

開幕前に

  • ブッゾーニ自身を思わせる詩人によって、魔法使いマーリン、稀代の色男ドン・ジョヴァンニと並んで、子供の頃から自分の心を捉えて離さないファウスト博士の物語を書いてみようと思った経緯が語られる。(上演では省略されることもある。)

序幕Ⅰ 中世、ドイツ・ヴィッテンベルクのファウスト博士の書斎

  • 半ば図書室、半ば錬金術の実験室のような部屋で、人生の盛りを過ぎたファウスト博士は、求めても求めても辿り着けない世界に倦んでいる。
  • 助手のワーグナーが来客を告げると、最初、ファウスト博士は断るが、客人が、ファウスト自身も学んだ、懐かしいクラカウから来た、しかも「アスタルテの魔法の鍵」と呼ばれる稀少な本を渡したがっていると聞いて会うことにし、その黒魔術の本を受け取る。学生たちはファウスト博士に本を渡すと、姿を消す。

序幕Ⅱ 同じ部屋、同じ日の真夜中

  • ファウスト博士は覚悟を決めて、本に書かれている通り、堕天使ルシファーを呼ぶと、鬼火が六つ現われる。そのうちの最初の五つはファウストの意に叶わないが、六つ目は「私の速さは人間の思考のよう」と言うので、ファウスト博士が姿を見せろと命じると、メフィストフェレスが現われる。
  • ファウスト博士は「私の残りの人生で いかなる望みも無条件でかなえてくれ」と望む。それに対して「その後は貴方が私に仕えるのですね」とメフィストが言うと、ファウスト博士は「それはできない」と撤回しようとするが、「貴方は付け狙われている」とメフィストに脅されて、契約を結ぶことになる。

幕間劇

  • ミュンスター大聖堂で、武具を身に着けたグレートヒェンの兄が、跪いて祈っている。グレートヒェンはゲーテの『ファウスト第1部』に登場する娘で、若返ったファウストと恋をして身ごもり、亡くなった。兄は、妹の復讐を誓っている。ファウストは自分の手は汚さずに、メフィストにその兄を始末させる。

主幕

第1景 イタリア・パルマ公爵の庭園

  • パルマ公爵と公爵夫人の結婚式の場に、ファウストとメフィストが現われる。パルマ公爵は鷹揚にもてなし、公爵夫人の希望を叶えてやってほしいと命じる。ファウストは魔術を用いて、公爵夫人の希望に応じて、まずソロモン王とシバの女王、次にサムソンとデリラ、それからヨハネとサロメの姿を見せるが、そのいずれもファウストと公爵夫人に似ている。挙句の果てに、パルマ公爵の顔をした死刑執行人が現われて、ヨハネの首を打ち落とそうとすると、公爵夫人は思わず「死んではいけません」と本心をもらしてしまい、パルマ公爵の不興を買う。
  • ファウストはパルマ公爵の饗宴に誘われるが、料理には毒が盛られているからすぐに立ち去るようにと、メフィストがファウストに注意を促す。そこに公爵夫人が夢遊病者のように現れて、ファウストの逃避行について行く。メフィストは宮廷司祭に化けて、パルマ公爵に、公爵夫人を追うことなどせず、新たに戦略結婚を勧める。

第2景 ドイツ・ヴィッテンベルクの酒場

  • 学生たちが幾つものグループに分かれて、プラトンの学説を唱えたり、ルターを擁護したり、酒を飲みながら盛り上がっている。
  • その場にいたファウストは、学生たちから、女性との出会いについての話を求められ、パルマ公爵夫人との思い出を語り始める。そこに急使の格好をしたメフィストが現われて、公爵夫人の死を伝え、ファウストに嬰児の死体を見せる。死の床で公爵夫人が生んだのだった。
  • 嬰児の死体と見えたのが、藁人形に変わり、メフィストがそれに火をつけると、煙が立ち登り、永遠の美女、ヘレナの姿を形作る。それはゲーテが『ファウスト第2部』で追い求めた姿である。この間に、学生たちは気味悪がって退散する。
  • そのヘレナの幻影に、ファウストは、人間の力の限界を理解する。
  • その時、三人のクラカウから来た学生を見て、ファウストは、自分の運命の時を悟る。

終景 ヴィッテンベルク

  • 街は雪に覆われていて、大聖堂の入口が見える。夜警が登場して10時を知らせる。
  • 以前、ファウスト博士が住んでいた家に、今は、かつて助手をしていたワーグナーが住んでいて、学生たちに総長就任を祝福されている。
  • 再び、夜警が現われて、11時を告げる。
  • ファウストが登場して、その家の階段に乳飲み子を抱いた女乞食がいるのを見る。ファウストは最期の時を迎えるに当たり、昔、母が「善いことをすれば救済がもたらされる」と言っていたのを思い出す。その女乞食が、あの公爵夫人だと気がついて、その子を受け取り、最後の力を振り絞って、その子が自分の命を受け継ぐようにと呪文を唱えて、息絶える。
  • 三たび夜警(実はメフィスト)が現われて、今度は真夜中を知らせる。 
  • 赤子がいた場所から、若者が立ち上がる。ファウストの叡智を受け継いだのだろうか?

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@ Aiko Oshio


最終更新:2017年12月17日 12:39