"無口な女"

対訳

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あらすじ

  • 家政婦が、イギリス海軍の退役軍人モロズス卿の部屋を掃除しているところへ、理髪師がやって来る。家政婦は理髪師を通じて、独り身のモロズス卿に伴侶として自分を売り込んでもらおうと話しかけるが、理髪師は耳を貸さない。
  • この二人の話し声が大きいので、モロズス卿が怒って出て来る。実はモロズス卿は船の事故で耳を傷めていて、大きな音声に我慢がならないのだ。この家に欲しいのは静けさだけだというモロズス卿に、理髪師は“無口な女”を妻にすればいいと提案する。

訳者より

  • リヒャルト・シュトラウスはホフマンスタールと組んで、「エレクトラ」、「ばらの騎士」、「ナクソス島のアリアドネ」、「影のない女」、「エジプトのヘレナ」、「アラベラ」と次々オペラを生み出してきた。そのホフマンスタールが亡くなった後、シュトラウスが目を付けたのがシュテファン・ツヴァイクで、ツヴァイクも喜んでこの共同作業に携わった。
  • 「無口な女」はイギリスの劇作家ベン・ジョンソンの作品を自由に改作したもので、幕が開くとすぐに理髪師が登場する。言葉巧みなこの理髪師は、「フィガロの結婚」や「セヴィリアの理髪師」のフィガロを連想させる。
  • 「セヴィリアの理髪師」でフィガロはアルマヴィーヴァ伯爵の恋に力を貸したが、ここではモロズス卿に結婚相手を紹介すると言う。モロズス卿はというと、静けさが欲しいだけで、結婚相手を探しているわけではないが、理髪師に「無口な娘で、年配の金持の男と結婚したがっている者もいる」と言われて、だんだんその気になってくる。年寄りが若い娘と結婚したがるあたりは、「ドン・パスクワーレ」にも似ているし、「ばらの騎士」をも思わせるが、モロズス卿ははるかに好人物である。
  • そこに甥のヘンリーが何年ぶりかで姿を現わし、モロズス卿は大喜びするが、ヘンリーがオペラ団で歌っていると知ると、歌なんか歌う男はモロズスではないと追い返す。ここではオペラに対しての自虐的な笑いもある。
  • そこで機転の利く理髪師は、ヘンリーをはじめとするオペラ団の仲間と、一芝居打つことを思いつく。最終的に、理髪師が手を貸すのは実は甥のヘンリーで、こうなるとテノールのヘンリーはアルマヴィーヴァ、バスのモロズスはバルトロと重なり、「セヴィリアの理髪師」と似ているところが多い。
  • シュトラウスは次もツヴァイクと組んでオペラを作りたいと思っていたが、ヒトラー政権下で、ツヴァイクはユダヤ人であったため亡命を余儀なくされ、二人の共同制作はこの一作で終わる。このオペラ「無口な女」もシュトラウスの尽力で1935年にドレスデンで一度、カール・ベーム指揮で上演にこぎつけたもののすぐに上演禁止となった。次に上演されたのは1959年、カール・ベーム指揮、ザルツブルク音楽祭である。
  • 尚、台本には多少、冗漫な部分もあり、上演ではカットされることが多い。

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@ Aiko Oshio

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最終更新:2021年02月13日 09:34