"カヴァレリア・ルスティカーナ"

対訳

訳者より

  • 復活祭(イースター)の日付は毎年変わり、今年(2013)のカトリックのイースターは例年より少し早目の3/31なのだそうです。長かった冬が終わり、主イエス・キリストとともにすべてのものがよみがえる明るい春にこれはまた何と陰惨な物語でしょう。
  • イタリアの作家ジョヴァンニ・ヴァルガが1880年に書いた同名の短編小説を下敷に1890年、マスカーニが曲を書いたこのオペラは、ヴェリズモの傑作として今でも頻繁に取り上げられる作品となっています。
  • 生誕200年のヴェルディの陰に隠れてしまっていますが、彼マスカーニも今年は生誕150周年ですのでそのお祝いもかねて取り上げることとしました。陰惨とは言いながらオペラ冒頭のコーラスや、復活祭のミサの場面など、どこかからっとした明るい美しさが暗さを和らげてくれているのがこの作品の魅力のひとつでしょう。
  • 幕が上がる前のトゥリッドゥの歌だけが、この作品の舞台となったシチリアの方言で歌われています。一応そのニュアンスをお伝えした方が良いかな、ということで、同じ南の島つながりということで(エトナという活火山もありますし)ここは九州は熊本の方言っぽく訳してみました。このあともその方言で舞台を展開していくことも試みたのですが、えらく手間と時間がかかる上、何だかマヌケな味わいとなってしまうことから、原語の方もあとは標準イタリア語のようなのでそういう愚かな試みはやめて、私にしては素直に訳しておきました。
  • サントゥッツァが「私は呪われている」と言っているのは、彼女はトゥリッドゥと結婚をまだしていないにも関わらず、もう肉体関係を結んでしまっている(カトリックでは重大な罪です、ましてやこんな田舎の村では…)、最後のトゥリッドゥの台詞などもそんなことを頭に置いて読むと一層辛い響きとなるでしょうか。
  • すぐ女を口説いてモノにしてしまうイタリア男とかいう偏見が日本人には根強いようですが、それくらい必死に努力しないとモノにできないほど女性の身持ちが堅いというのがその裏にあることを忘れてはなりません。それだけにこういう形で捨てられた彼女の悲惨さは途方もないものがあるのでしょう。あまりに美しい間奏曲がそう思って聴くと何とも悲しいものに聴こえてきます。
  • 彼女はトゥリッドゥが殺されたあともこの村で生きていられるのでしょうか。それとも…

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@ 藤井宏行

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最終更新:2021年04月03日 20:18