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"影のない女"


目次



はじめに

  • オペラの舞台は、東南に浮かぶ島々を治める神話上の帝国である。5人の主要な登場人物がいる。皇帝(テノール)、皇妃(ソプラノ)、乳母(メゾソプラノまたはコントラルト)、身分の低い染物師バラク(バスバリトン)、その妻(ドラマティック・ソプラノ)である。
  • 6番目の登場人物カイコバートは、霊界の王であり、皇妃の父であり、実際はプロットを動かしている人物だが、一度も舞台には登場しない。皇妃は人間ではない。ガゼルの姿をしていた時に、皇帝に捕えられたので、人間の姿に変わり、二人は結婚したのである。
  • しかし、彼女は影を持っていない。これは、彼女が子供を産むことができないことを象徴している。カイコバートは、こう命じていた。「12番目の月の終わりまでに皇妃が影を得なければ、皇妃は父親の手に返還され、皇帝は石にされるだろう」と。

第1幕

  • 第1場
    夜明け。皇帝と皇妃の寝室の外側の野外。カイコバートの使者が到着し、乳母に告げる。「この3日のうちに影を得なければ、皇妃は強制的に霊界へと戻され、皇帝は石に変えられる」と。乳母は霊界に帰還できる見通しが立って興奮を隠しきれない。というのも、人間を嫌悪している乳母は、人間達と一緒に暮らすことは想像できなかったからである。
    使者は去り、皇帝が寝室から現れる。皇帝は、可愛がっていた鷹を探すため3日間の狩りに出発するところである。その鷹こそ、以前、彼がガゼルに向けて放った鷹であり、そのガゼルが皇妃に変身したのである。皇帝は、皇妃の世話を乳母の手に委ねる。
    皇妃は居間から出て来ると、望む動物に何でも変身できた頃のことをなつかしむ。その台詞からは、皇妃は、皇帝の赤い鷹に襲われた後、彼女に変身能力を与えていた「タリスマン」 *1 を失ってしまったことが明らかになる。そのタリスマンには、影を得ることができなかった場合に、皇帝と皇妃が直面する運命を予言する呪いが刻まれていたのである。
    すると、その赤い鷹が現れ、皇妃に警告するとともに、乳母には皇妃が影を得るための手伝いをするよう命じる。魔術に通じている乳母は、人間界に降りて行き、皇妃に自分の影を売り渡す女を見つけることを提案する。
  • 第2場
    齢を取った染物師バラクは、妻と3人の兄弟と一緒に小屋で暮らしている。3人兄弟は「片目の男」「片腕の男」「背中の曲がった男」である。彼らは盗品を巡ってケンカをしており、バラクの妻が上からバケツの水をぶっかけることで、やっと引き離されるが、彼女の義弟たちは、今度はそのことで彼女と言い争いをする。バラクが入って来て、口論をやめさせる。バラクの妻は、義弟たちを家から追い出すよう夫に迫るが、バラクは拒否する。
    バラク自身は子供が欲しいと思っている。しかし、バラクの妻は重荷を背負うことを怖れ、ひそかに子供を持たないことを心に誓っていた。
    染物師と兄弟達が外出すると、代わって、皇妃と乳母が変装して登場する。バラクの妻は彼女らに出て行くよう命じるが、乳母は、贅沢な暮らしを幻として現出させる。「影」の引き換えとして、その贅沢な暮らしを与えようというのである。バラクの妻は、夫を3日間拒否し、乳母と皇妃を、女中として働きにやって来た貧しい親戚として家に住まわせることにも同意する。
    バラクが家に近付いて来たので、バラクの妻は、まだ夕食の準備が出来ていないことを心配するが、もう一度乳母が魔法を使って全てを用意し、あわせて、夫婦のベッドからバラクのベッドだけを引き離してしまう。乳母と皇妃が退場すると、バラクの妻の耳元に「生まれていない子供たちの声」が嘆くように舞台裏から響いてくるが、その声は魔法で呼び出された「火に掛けられた魚」から湧いてくるようである。
    染物師バラクが戻ってみると、夫婦のベッドが引き離されているのを見つける。しかし、女性は「最初の何日か」は、このような奇妙な振舞いをすることを知っていたので、妻は妊娠したのかも知れないと考え、まずは良きことの前兆と受け取る *2 。そのため、「町の番人たち」が夫婦の愛を讃える歌を聞きながら、床の上で寝ることを受け入れる。

第2幕

  • 第1場
    皇妃は女中として働きながら、染物師バラクが仕事に行く準備を手伝うが、バラクが彼女に優しくするので、その立場について悩みを抱く。乳母は、ほうきを魔法の道具に利用して、美少年の幻を出現させ、バラクの妻を誘惑する。
    染物師バラクは、腹を空かせた兄弟達と、物乞いの「家なき子」達を連れて帰って来る。商品を全て市場で売り切った彼らは、素晴らしい一日を過ごしていた。そのため、みんなを招いて祝宴を張ろうとしたのだが、バラクの妻はその宴をぶち壊しにしてしまう。
  • 第2場
    「赤い鷹」に導かれて皇帝がやって来る。彼は、皇妃と乳母がひそかに「狩りの小屋」に入って行く所を見て、その様子に疑念を抱く。更に近寄ってみると、皇帝は、人間の臭いが皇妃の後ろに匂っていることに気付き、皇妃を殺さねばならないと決意する。
    初めは「鷹」を、次に「矢」を使って皇妃を殺そうと思うが、いずれも「皇妃の発見と変身」に関係しているため、そのような使い方は禁じられている。ならば素手でと心に決するが、それもまた不可能なことを悟る。どこか人里離れた谷間に行き、悲しみを胸に一人で生きようと思い定めて去る。
  • 第3場
    染物師バラクの家。バラクは乳母に眠り薬を飲まされて眠ってしまう。乳母は、バラクの妻のために、再び美少年の幻を出現させるが、バラクの妻は恐怖にとらわれ、バラクを眠りから覚ます。バラクは家に誰かいることを知って驚くが、妻が街に行くと叫ぶので、また混乱する。バラクと一緒に残された皇妃は、以前にも増して罪の意識を感じる。
  • 第4場
    皇妃は「狩りの小屋」で眠りにつくが、眠っていても、彼女の罪と、来るべき皇帝の運命への悩みが追いかけて来る。彼女には、父親の支配する霊界だと思われる大広間へと皇帝が歩み行く姿が見える。目に見えない合唱が「タリスマンの呪い」を歌う。
  • 第5場
    翌日、バラクの妻は「影」を捨て去る。光に照らされて、妻に影が無いことが明らかになった時、バラクは、突如手の中に現れた剣を彼女に振り下ろそうとするが、兄弟達に止められる。バラクの妻は赦しを求める *3 。皇妃は、血に覆われたその影を受け取ることを拒む。全員、地中に飲み込まれてしまうと、川が家の中に流れ込んで来て、皇妃と乳母は「魔法の小舟」に乗り込み、カイコバートの審判を待つ。

第3幕

  • 第1場
    カイコバートの治める霊界の地底の洞窟。バラクの妻は「生まれていない子供たちの声」につきまとわれ、悩まされている。彼女は、バラクを愛していると口に出し、彼が暴力的に自分の命を奪おうとしたことを悲しむ。声が、彼ら二人に、それぞれ、はしごを登って来るように指示する。
  • 第2場
    皇妃と乳母が、カイコバートの寺院に到着する。乳母は皇妃に逃げるよう説得するが、皇妃は夢で見た扉を思い出し、あの向こう側で父が待っていることに気付く。そのため、乳母の言に従わず、扉を越えて入って行く。乳母は、王妃を待ち構える怖ろしい苦しみを予言するとともに、互いを探し求めているバラクとその妻を全く別の方角へと案内する。
    バラクの妻は夫の手にかかって死ぬことを、バラクは許した妻をその腕に抱くことを望んでいる。カイコバートの使者は、乳母に、罰として人間界をさまよえと宣告する。
  • 第3場
    寺院の内部。皇妃はカイコバートに語りかけ、罪の赦しと、影を投げる人間達の世界での彼女の居場所を探すよう求める。カイコバートは答えず、皇帝はすでにほとんど石と化してしまっている。一人の声が、そこにある「命の泉」を飲み、バラクの妻の影を自分のものとするよう彼女に迫る。だが、バラクと妻の声が舞台裏から聞こえて来た時、皇妃は拒否する。彼ら二人の将来を奪い、別の人間からその「人間性」を奪うことはできない。彼女は「そうしないわ!」と歌う。
    この断念のおかげで彼女は解放される。王妃は影を手に入れ、皇帝は復活する。舞台には美しい風景が広がる。バラクと妻は絆を取り戻し、妻は自分の影を回復する。二組のカップルは「人間性」を歌い、彼らの「生まれていない子供たち」を讃える。


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@ wikipedia

訳者注

  • 「あらすじ」については、Wikipediaの英語の記述が、とても簡潔に要点を捉えているように思えましたので、そのまま訳しました。若干、意味を補っていますが、ほぼそのままの訳です。
  • 原文は、こちらを。

*1 「タリスマン」は、「御守り」「護符」などと訳せますが、単なる「物体」より広い意味があるような気がしたので、対訳でもこのまま訳しました。
*2 「妻が妊娠したと思った」というのは、解釈として間違っていないと思いますが、リブレットではそこまではっきり言っていなくて、女予言者たち(?)が「奥さんがヘンな状態になったら、いいことが起こりますよ」と言うだけです。
*3 「バラクの妻が赦しを求める」というのは、少なくともリブレット上にはなく、むしろ「殺してくれ」と言っています。あるいは、これは記述の誤りかも知れません。
平成22年5月 Wしるす



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