"無口な女"

目次

登場人物

  • モロズス卿(バス):イギリス海軍の退役軍人
  • 家政婦(アルト):未亡人
  • 理髪師(バリトン)
  • へンリー(テノール):モロズス卿の甥
  • アミンタ(ソプラノ):へンリーの妻
  • イゾッタ(ソプラノ):一座の歌手
  • カルロッタ(メゾソプラノ):一座の歌手
  • モルビオ(バリトン):一座の歌手
  • ヴァヌッチ(バス):一座の座長
  • ファルファッロ(バス):一座の歌手

  • 時と場所:1780年頃、ロンドン郊外のモロズス卿の屋敷

第1幕 モロズス卿の部屋、午前中

  • 家政婦が、イギリス海軍の退役軍人モロズス卿の部屋を掃除しているところへ、理髪師がやって来る。家政婦は理髪師を通じて、独り身のモロズス卿に伴侶として自分を売り込んでもらおうと話しかけるが、理髪師は耳を貸さない。
  • この二人の話し声が大きいので、モロズス卿が怒って出て来る。実はモロズス卿は船の事故で耳を傷めていて、大きな音声に我慢がならないのだ。この家に欲しいのは静けさだけだというモロズス卿に、理髪師は“無口な女”を妻にすればいいと提案する。
  • 階下で物音がする。なんと何年も音沙汰のなかった甥のヘンリーがやって来た、しかも仲間と一緒に。モロズス卿は甥っ子との再会を喜び、ヘンリーが軍隊の仲間を連れて来たと勘違いして全員を呼び入れる。が、それは軍隊ではなくオペラ団の仲間、しかもその一座の女と結婚したと知って、憤慨して全員追い返し、理髪師には明日、“無口な女”を連れて来るように命じる。
  • ヘンリーもその妻のアミンタも受け入れず、オペラをばかにするモロズス卿を、一座の面々は罵倒するが、理髪師がとりなして一芝居打つことを提案する。つまり、モロズス卿はとんでもない金持ちだから、誰かが結婚するのはどうだろうかと。“無口な女”と思って結婚したのに、その女が大騒ぎを起こし、ヘンリーが仲裁に入って仲直りするという策略を皆、面白がり、三人の女性が花嫁候補を演じることになる。

第2幕 同じ部屋、翌日の午後

  • 見合いのためにモロズス卿が正装するのを手伝いながら、家政婦は、これは理髪師の企みだとモロズス卿に告げるが、モロズス卿は家政婦を追い出す。
  • 理髪師も盛装して、娘を三人連れてやって来る。カルロッタの演じる田舎娘、イゾッタの演じる才気煥発な娘にモロズス卿はうんざりするが、アミンタの演じる、もの静かな娘に心惹かれる。
  • モロズス卿とアミンタが親密そうなのを見て、理髪師は、ヴァヌッチが扮する牧師と、モルビオが扮する公証人を呼び、自分と家政婦が立会人となって、結婚を成立させる。
  • そこにモロズス卿の元部下と称する老水夫たち(実はファルファッロをはじめとする一座の仲間)がやって来て大騒ぎするので、近所の飲み屋で一杯やってくれと追い返す。
  • モロズス卿と二人だけになったアミンタは、モロズス卿が自分に対して心から優しいので、騙すのが心苦しくなる。が、心を鬼にして、私は何でも好きなようにすると小悪魔に豹変する。この豹変ぶりにモロズス卿はうろたえるが、そこへヘンリーがやって来て、モロズス卿の窮地を救ってくれる。モロズス卿は一晩中ヘンリーに女を見張ってもらって、やっと眠ることができる。

第3幕 同じ部屋、翌朝

  • アミンタ演じるレディ・モロズスが、大きな物音を立てて、家具を入れ替え、部屋の模様替えをさせている。その後、ヘンリー扮する歌の先生とレッスンを始め、モロズス卿は喧しさに我慢できず、理髪師に離婚の手続きを頼む。
  • 離婚手続きが始まり、レディ・モロズスは結婚前にヘンリーと関係があったことが分かり、さあ離婚成立かと思いきや、花嫁が処女であることは結婚の条件になっておらず、離婚は認められない。
  • 頭を抱えてベッドに逃げ込むモロズス卿を見て、ヘンリーは、実はこれは全部、自分たちが企んだことだとばらす。牧師も公証人も皆にせものと知って、モロズス卿は怒りから一転、大笑いし始め、自分を騙したお前たちはすごいと面白がる。
  • 最後はモロズス卿と甥のへンリー、その妻アミンタの三人だけになる。「無口な女は素晴しい。一番いいのはそれが他人の妻である時だ。」と言って、モロズスは幸せをかみしめる。

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@ Aiko Oshio
最終更新:2021年02月13日 09:19