この作品、「エイシスとガラテア(Acis and Galatea)」はもちろんオペラではありません。聖書を題材としているわけではないので、オラトリオともいえず、専門家の方でも分類に苦慮するというような作品ですが、一応「ギリシャ神話による音楽劇」ということになっているようです。音楽劇とはいうものの、初演時の舞台装置は簡単な背景幕のみで、演技はなかった、とされています(三澤寿喜著「作曲家◎人と作品・ヘンデル」音楽之友社2007)。
この物語は「牧歌的な」とか「パストラル」とか呼ばれるような雰囲気の場所でお話が進行します。登場人物が活動するこのような環境は日本人にはちょっとイメージしにくいように思います。翻訳するにあたって、背景の具体的なイメージが描けるように西洋の(ルネサンス、バロックなどの)絵画をさがして見てみました。ウェブ・ギャラリー・オブ・アートというサイトのトップページで、「TEXT」欄に例えば「nymph and shepherd」などと打ち込み検索して出てくる絵画(プッサン、ティツィアーノ他)を見ると、このようなところが舞台なのね、とだいたいわかります。 「なだらかな起伏がある野原で、ところどころに木立があり、小川があってその源にきれいな泉がある。近くには大きな岩山があったりして、遠くに山なみが霞んでいる。羊の群が野原の草を求めてゆっくりと移動している。」というような感じでしょうか。