"ドン・カルロ"

対訳 【イタリア語 5幕版】

訳者より

  • ヴェルディ後期の作品の中で、その完成度と内容の充実度にも関わらず意外とポピュラリティがないのがこのドン・カルロでしょうか。アイーダやオテロのように分かりやすいスペクタクルの見せ場がないのと(実は第3幕には宗教裁判で火あぶりにされる罪人たちが引っ立てられるのを大群衆が見るというスペクタクル場面があるにはあるのですがちょっと話としても陰惨)、主要な登場人物が多すぎて話が少々込み入ってしまっている(逆にそれがこのオペラを好きな人にとってはたまらない魅力なのですが)などがハンデとなっているのでしょうか。このオペラを知らない人が食指を動かすのに決定的な誘因となるものがちょっと足りないというのがその理由となっているのかも知れません。
  • 第1幕の実らなかったカルロとエリザベッタの愛の2重唱、第2幕のロドリーゴとエーボリの飄々とした宮中でのやり取り、あるいは幕切れのフィリッポ王とロドリーゴの力強い掛け合い、第4幕の王と大審問官の低音同士の丁々発止など、私にとってはこのオペラは登場人物同士の緻密なやり取りが大変な魅力となっています。
  • フランス語の版はオリジナルに近いものがテンプレートとして上がっていたようなのであちらはそのまま上がっていたものを訳し、こちらイタリア語版は1886年 モデナ版と思しきとあるCDのリブレットをお借りしてそちらから訳したものにテンプレートを差し替えさせて頂いております。従ってこちらはかなり多くのCDなどで対訳としてお使い頂けるものと思います。サンティーニ(DGに入れた新盤)ショルティジュリーニハイティンクなどの盤が該当します。もっとも盤によって言葉の微妙な差異があるかも知れませんのでそれはご容赦ください。
  • この5幕版から第1幕がそっくりカットされた4幕版(CDではカラヤンムーティなどの録音あり)はサンジュスト修道院のカルロの登場の場面を除くとほぼ5幕版と違いはないのではと思いますのでほぼ問題なくご参照頂けるかと思います。

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@ 藤井宏行

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最終更新:2023年09月22日 21:13