序幕

(ヴァルキューレの岩山の上。第2夜「ジークフリート」の最後のシーンと同じ舞台設定である。舞台後方は、下から燃える炎の反射に照らし出されている。3人のノルンは、背の高い女性のように見えるが、その姿は、襞の多い、丈長の、黒い、ヴェールのような衣裳に包まれている。第1の(最年長の)ノルンは、舞台右手前方の枝ぶりの良いモミの木の下に寝そべり、第2の(年下の)ノルンは、ブリュンヒルデの寝室の前に置いてある岩のベンチにもたれて横たわっている。第3の(最年少の)ノルンは、舞台中央後方にあって岩山のへりとなっている岩に、腰を掛けている。しばらく、陰鬱な沈黙が続く)


<第1のノルン>
(身動きせずに)
あそこで、何が光っているの?

<第2のノルン>
もう朝が来たのかしら?

<第3のノルン>
ローゲの手下が、この岩を囲んで燃えているのよ。
まだ夜だわ。
綱を紡いで、歌いましょうよ。

<第2のノルン>
(第1のノルンに)
では、紡ぎながら、歌いましょう。
お姉さんは、どこに、この綱を掛けるつもり?

<第1のノルン>
(体を起こし、金色の綱を体から解きほぐすと、その先端をモミの木の枝に結びつける)

吉と出るか、凶と出るか分からないけれど、
綱を巻き付けて、歌いましょう。
ああ・・・昔は「世界樹」に巻き付けていたのに。
その木の幹からは、力強く、雄々しく、
神聖な枝々が緑に茂っていたものだった。
涼しい木陰に泉がさざめき、
その水の音は、知恵をささやいていた・・・。
だから、私は、神聖な想いを歌ったものよ。
ある時、大胆な神が
泉の水を飲みにやって来て、
片方の目を、
永遠の代価として差し出した。
ヴォータンが代価を払って得たのは、
この世界樹から、一つの枝を伐り出すこと・・・
強き神にふさわしい槍の柄を作るため、
幹から枝を伐り取ったの。
でも、長い歳月(としつき)のうちに、
その傷が、森を壊してしまった。
葉は落ち、
樹は枯れ果てて、
悲しいかな、泉の水も涸れ果てた・・・
いまや、私の歌は、暗い想いばかり。
それなのに・・・もはや世界樹には
綱を掛けられない。
私は、このモミの木に
掛けることしかできない・・・
さあ、妹よ、歌って・・・綱をあなたに投げるから。
知ってる?それからどうなるか?

<第2のノルン>
(投げられた綱を、寝室の入口の脇にある岩の出っ張った部分に巻き付ける)
信義を守るべしとの契約の言葉を、
ヴォータンは、その槍の柄に刻み込み、
その槍を持って、世界を支配していたのよ。
ところが、ある大胆な勇者が
戦でその槍を打ち砕き、
聖なる契約を保持する槍は、
粉々になってしまった。
そこで、ヴォータンはヴァルハラの勇士達に命じ、
世界樹を幹ごと切り倒し、
枯れた枝ともども薪にさせたわ。
樹は倒れた・・・
もはや泉は、永遠に湧き出すことはない!
だから私は、今、綱を巻き付けるわ・・・
このとんがった岩に。
さあ、妹よ、歌って・・・綱をあなたに投げるから。
知ってる?それからどうなるか?

<第3のノルン>
(綱を受け取り、その先端を背後に放り投げながら)
巨人達によって建てられた城がそびえ立つ・・・
神々と勇者の神聖な一族をしたがえて、
ヴォータンは、大広間に腰掛けている。
伐られた薪の高い山が、
大広間をぐるりと取り囲んでいる・・・
かつては、世界樹だったのよ!
ひとたび、この聖なる樹に
激しく赤々と火が付けば、
炎は、輝かしい大広間を
焼き尽くし、
不死の神々の終末が、
永遠にたそがれ始めるのよ。
お姉さん達は、まだ知っていることがあるの?
もしそうならば、改めて綱を掛け直して・・・
北からもう一度投げ返すから。
(第2のノルンに綱を投げる)

<第2のノルン>
(第2のノルンは、そのままその綱を第1のノルンの方へ投げると、第1のノルンは、その綱を小枝からほどいて、別の大きな枝へと結びつける)
紡いでよ!お姉さん!歌ってよ!

<第1のノルン>
(舞台後方を見やりながら)
朝が来るの?
それとも炎の明かりなの?
瞳が曇る・・・
聖なる過去が、はっきり見えなくなった。
あの場所には、昔、ローゲが赤々と燃え盛っていたはずよ。
知ってる?あの男はどうなったの?

<第2のノルン>
(投げられた綱を、また岩に巻き付けながら)
槍の持つ魔力で
ヴォータンは、ローゲを手下にし、
ローゲは、ヴォータンに知恵を授けた。
だけど、ローゲが自由を求め、
槍の柄に刻まれた文字を、
歯でかじり取ろうとした時、
誰もをねじふせる
槍の切っ先で、
ヴォータンは、ローゲを拘束し、
ブリュンヒルデの岩山の周りで燃えさせた。
知ってる?ローゲはどうなるの?

<第3のノルン>
(投げられた綱を、また後ろに放り投げる)
粉々になった槍の
とがった破片を、
いずれ、ヴォータンは
火の神ローゲの胸に深く突き刺すわ・・・
そうすれば、この世を焼き尽くす炎が点火し、
主神ヴォータンは、その炎を、うず高く積まれた
世界樹の薪の山へと投げ入れるでしょう。
(綱を投げ返す。受け取った第2のノルンは、その綱を再度そのまま第1のノルンに投げ返す)

<第2のノルン>
知りたいの?
いつそうなるかを・・・。
投げて!お姉さん!その綱を!

<第1のノルン>
(あらためて、その綱を結びつける)
夜が明ける・・・
もう何も見えないわ・・・
綱の糸目も、もう見えない。
全ては、もつれにもつれている。
怒り狂った男のいやらしい顔が、私の心を乱す。
昔、ラインの黄金を奪ったアルベリヒ・・・
知っている?あの男はどうなったか?

<第2のノルン>
(寝室の前にあるギザギザになった岩に、苦労して綱を巻き付けながら)
岩のギザギザが、綱に食い込む・・・
糸の強さが、十分ではないんだわ・・・
綱は、ちぎれ始めている。
災いと妬みから出来あがった
ニーベルングの指輪が目の前に立ちはだかる。
復讐の呪いが
私の糸を引きちぎろうとする。
知っている?これから、どうなるか?

<第3のノルン>
(投げられた綱を、急いで、つかみに行く)
綱の張り方がゆるすぎて、届かないわ。
私が北に向かって先端を投げられるように、
もっと、ピンと張ってちょうだいよ!
(力を込めて無理やり綱を引っ張ったので、綱は真ん中で切れる)
切れた!

<第2のノルン>
切れた!

<第1のノルン>
切れた!

(ノルンは3人とも驚きのあまり立ち上がり、舞台の中央に集まって来る。切れた綱の断片を手にすると、その綱で自分達の体を結び合わせる)


<3人のノルン達>
永遠の知識も、もうおしまい!
私たち、知恵の女が、もうこの世を語ることもない。
降りて行こう!母のもとへ!降りて行こう!

(3人は姿を消す)

(薄明。曙光が広がり始めると、下界から反射していた炎の輝きは、だんだん力を失っていく)

オーケストラによる間奏曲

薄明-日の出-明るい陽ざし

(ジークフリートとブリュンヒルデは、岩山の寝室から出て来る。ジークフリートは完全に武装しており、ブリュンヒルデは自分の馬を轡(くつわ)につなぐ)

<ブリュンヒルデ>
新たな行動に出るのね?私の勇者さん・・・
とっても愛しているあなたを
手放さなきゃならないの?
私がためらっているのは、
一つ気がかりなことがあるからなの。
もしや、私の魅力や値打ちが
薄れちゃったのかなって!
だって、神々に教えられたことは、
全部授けてしまったわ。
数え切れないほどたくさんの神聖なおまじないをね。
逆に私は、
乙女としての強さの源を、
勇者のあなたにあげてしまって、
今はあなたに従うしかない。
知識は失って、願いごとばっかり・・・
愛には溢れているけれど、能力は失って・・・。
でも、こんな弱い女だけれど、さげすまないで!
全てを与えてしまって、
もう何にも与えられない私を!

<ジークフリート>
奇蹟のように素晴らしいひと。
あなたは持ち切れないぐらいのものを、ぼくにくれたよ。
もし、ぼくがあなたに教わったことを、
身につけていなくても怒らないでくれ!
一つのことだけは、頭から離さないよ。
ぼくにはブリュンヒルデがいるってことを。
それだけはすぐ頭に入ったんだ。
ブリュンヒルデを忘れないってことだけは!

<ブリュンヒルデ>
私に、愛の約束をしてくれるの?
だったら、あなた自身のことだけを考えてちょうだい。
そして、あなたの為したことを忘れないで。
あの激しい炎のことを忘れないで。
この岩山を取り囲み、
怖れることなく突き進んできた、あの炎のことを。

<ジークフリート>
ブリュンヒルデをつかまえに来たんだ!

<ブリュンヒルデ>
忘れないで・・・あの盾で覆われた女のことを。
深い眠りに落ちていて、あなたが兜の縛めから
解き放ってくれた女のことを。

<ジークフリート>
ブリュンヒルデを目覚めさせに来たんだ!

<ブリュンヒルデ>
忘れないで・・・二人を一つにしている誓いを。
忘れないで・・・二人で誓っている契りを。
忘れないで・・・二人が生きている愛を。
そうすれば、ブリュンヒルデは、永遠に清らかに、
あなたの胸の中で燃え続けるわ!
(ジークフリートを抱きしめる)

<ジークフリート>
最愛の人・・・ぼくは行くよ。
炎に清められたこの小屋に、あなたを置いて。
(指からアルベリヒの指輪を抜き取り、ブリュンヒルデに手渡す)
あなたのおまじないのお礼に、
ぼくは、この指輪をあげるよ。
そこには、ぼくが昔成し遂げたことの
幸(さち)がいっぱいつまっているのさ。
ぼくは、長いこと陰気にそれを守っていた
一匹の龍を打ち殺したんだ。
さあ、指輪の力をあなたの手に!
ぼくの誠実さを現わす聖なる形見の品として!

<ブリュンヒルデ>
(感動に心を震わせながら指輪を手にはめる)
ただ一つの宝物よ!誰にもやらないわ!
指輪の代わりに、私の愛馬を受け取って!
昔は、私と一緒に
雄々しく空を駆けめぐったけど、
今は私ともども、強い性格を失ったので、
稲妻光る雷雨の中を、雲を飛び越え、
ひらりと舞い上がったりはしなくなった。
けれども、あなたと一緒なら、
たとえ火の中であっても、
グラーネは、怖がらずについて行くわ。
そうよ!勇者さん!
この子は何でも言うことを全部聴くわ!
だから大事に守ってほしいの!
この子は、あなたの仰せのままに動くから、
ブリュンヒルデからの挨拶をグラーネに伝えてね!

<ジークフリート>
あなたの清らかさによってのみ、ぼくは
これまで以上の働きができるということだね?
ぼくの戦いの勝敗を決めるのは、あなたさ。
ぼくが勝利を贈るのは、あなたさ。
あなたの愛馬の背にまたがり、
あなたの盾で身を守れば、もう、ぼくは
自分がジークフリートだなんて思わない。
そのとき、ぼくはブリュンヒルデの片腕にすぎないんだ。

<ブリュンヒルデ>
ああ!あなたの心こそブリュンヒルデじゃないかしら!?

<ジークフリート>
ぼくの心から燃え上がるのは勇気さ!

<ブリュンヒルデ>
だとしたら、あなたはジークフリートであり、ブリュンヒルデなのね?

<ジークフリート>
ぼくのいる所が、ぼくたちの居場所なんだ。

<ブリュンヒルデ>
(いきいきと)
えっ?だったら、この岩のお部屋は空っぽになるわ?

<ジークフリート>
二人で一つになって、ここにいるのさ!

<ブリュンヒルデ>
(大きな陶酔に浸って)
ああ!神聖なる神々よ!
高貴なる種族よ!
この祝福に満ちた夫婦を見て、
微笑んでください!
離れていても・・・誰が別れさせられると言うの?
別れている間も・・・決して離れ離れじゃない!

<ジークフリート>
元気でね!ブリュンヒルデ。きらめく星座!
元気でね!輝いて愛して!

<ブリュンヒルデ>
元気でね!ジークフリート!勝利の光!
元気でね!輝いて生きて!

<二人>
元気でね!元気でね!元気でね!

(ジークフリートは急いで馬を岩山の斜面に連れて行き、ブリュンヒルデはその後を追う。ジークフリートと馬が岩舞台の陰に隠れてしまうと、観客にはもう彼の姿は見えなくなる。ブリュンヒルデは、慌てて斜面のはじっこに駆け寄り、一人立ちすくむと、ジークフリートの姿を追って下界を見やる。
すると低い所からジークフリートのホルンの音が聞こえてくる。ブリュンヒルデはその音に耳を澄ますと、斜面をもう少し降りて行く。おかげでもう一度、下にジークフリートの姿を認め、無我夢中に身振り手振りで別れの挨拶を送る。彼女のうれしそうな微笑みからは、勇者ジークフリートの陽気な旅立ちの様子が手に取るように伝わってくる。幕が素早く閉まると、オーケストラはホルンのメロディーを受け継ぎ、力強い曲を演奏し始める)

ジークフリートのライン河への旅

(そのあと、すぐに第1幕となる)

第1幕

ライン河のほとりのギービヒ家の大広間

(舞台後方に向かって開かれている大広間。舞台後方もまた、川まで続く広々とした岸辺。岸の周りを岩山が取り囲んでいる)

第1場
(グンター、ハーゲン、グートルーネ。グンターとグートルーネは、舞台の袖の高椅子に座っており、その前には酒宴用のグラスを置いたテーブルがある。ハーゲンは、その前に座っている)

<グンター>
なあ、ハーゲン。教えてくれ、勇者よ・・・
私は、このラインの地を立派に治めているだろうか?
このグンターは、父ギービヒの名声を高めているだろうか?

<ハーゲン>
正当な世継ぎであるあなたを、
私はうらやまずにはいられない。
我々二人の兄弟を産んだグリムヒルデが、
身の程を知るようにと、私に教えたのだ。

<グンター>
うらやましいのはこちらだ!
お前がうらやむことはない!
私は、長男としての器量を受け継いだだけで、
知恵があるのは、お前だけだ・・・。
だが、そのおかげで腹違いの兄弟の争いも丸く収まる。
お前の助言を高く買っているからこそ、
今度も私の名声をいかに高めるか尋ねているのだ。

<ハーゲン>
ならば、その私の助言が至らぬと言うわけだな・・・?
実は、あなたの評判は、まだ余り良くないのだ。
なぜなら、ギービヒ家の当主であるあなたは、
ある高貴な宝を、まだ手に入れていないからだ。

<グンター>
それが何なのか言わなければ、
今度は私がお前を責めるぞ。

<ハーゲン>
一見したところギービヒ一族は、
夏の陽射しを浴びて熟し切った大木のようだが、
グンター・・・あなたには妻が無く、
グートルーネ・・・あなたには夫がいない。

(グンターとグートルーネは、黙ったまま物思いに沈む)


<グンター>
教えてくれ・・・我らが家名を高めるためには、
誰を妃に迎えればいいのだ?

<ハーゲン>
ある女を知っている。
この世で一番美しい女だ・・・
高き岩山の上にその座はあり、
広間は、炎に取り巻かれている。
この炎をかいくぐる者だけが
その女ブリュンヒルデの求婚者となれるのだ。

<グンター>
私程度の男の勇気でも出来ることなのか?

<ハーゲン>
もっと強い男にしか出来ないことだ。

<グンター>
その強い男とは誰のことだ?

<ハーゲン>
ヴェルズング族の若者ジークフリートこそ
その最強の勇者だ。
愛の力に捉えられた
双子の兄妹・・・
ジークムントとジークリンデが産んだ
いわくつきの血統正しい息子だ。
森の中でたくましく育ったこの男を、
私はグートルーネの夫にしたいのだ。

<グートルーネ>
(恥ずかしそうに話し始める)
そのお方は、どんな勇敢なことをしたので、
最強の勇者と呼ばれているの?

<ハーゲン>
巨大な龍が「嫉妬の洞窟」の前で
ニーベルングの宝を守っていたが、
ジークフリートは、その龍の大きな口をふさぎ、
勝利の剣を振るって、龍を斬り殺したのだ。
こんな大それたことをしたので、
勇者としての名声は、いや増しに増したのだ。

<グンター>
(考えをめぐらしながら)
ニーベルングの宝なら聴いたことがあるぞ・・・
その中には、世の羨望の的の財宝も含まれているのだろう?

<ハーゲン>
その使い方を知る男が宝を持てば、
それこそ全世界がひれ伏すはずだ。

<グンター>
しかし、その宝は、ジークフリートが奪い取ったのだろう?

<ハーゲン>
ニーベルング族は、あの男のしもべだ。

<グンター>
ならばブリュンヒルデを手にするのも、あの男に決まっているではないか?

<ハーゲン>
あの男以外に炎の勢いを抑えられる者はいないからな。

<グンター>
(不機嫌そうに席から立ち上がって)
何だって、不和と不信の種をまいたりするのだ!
私の力ではどうにもできないものを、
なぜ私に求めさせようとするのだ?

(グンターは、せわしなく大広間を行ったり来たりする。ハーゲンは、席を立たないまま、再び近くに舞い戻って来たグンターを、いわくありげな身振りで立ち止まらせる)


<ハーゲン>
ジークフリートが、あなたに花嫁を連れ帰るならば、
ブリュンヒルデはあなたのものになるではないか?

<グンター>
(腹を立て、疑い深そうにして、また顔を背ける)
どうしたら、何の不足もないそんな男が、
私のために求婚してくれるというのだ?

<ハーゲン>
(相変わらず席に座ったまま)
そんな願いなど、すぐ聞いてくれるさ。
その前に、グートルーネが、あの男を魅了してくれれば。

<グートルーネ>
ハーゲン!私をバカにするなんて意地悪な人!
どうして私がジークフリートを魅了できるというのよ?
世界一強い勇者なら、
きっと絶世の美女たちが
とっくに自分のものにしているはずだわ。

<ハーゲン>
(きわめて内輪の話をするかのように、グートルーネに上体を傾ける)
あの小箱に入っている薬を忘れたのか?
(さらに声をひそめて)
この薬を手に入れた私が保証しよう・・・
これを使えば、あなたの望むあの勇者は、
あなたに恋い焦がれてしまうのだ。
(グンターは、またテーブルのほうに戻って来て、テーブルによりかかったまま注意深く耳を傾ける)
もしジークフリートがやって来て、
この飲み薬を一口飲めば、
あなたの前に会った女がいたことも、
そもそも近くに女がいたことも、
この男は一切合財忘れてしまう。
さあ、いかがであろう?ハーゲンの助言は。

<グンター>
(元気良く、立ち上がって)
グリムヒルト、ばんざい!
我らに、この男を授けてくれた母よ!

<グートルーネ>
ジークフリートに会ってみたいわ!

<グンター>
どこに行けば会えるのだ?

(ホルンが舞台の左後方から響いてくる。
ハーゲンは耳を澄ます)

<ハーゲン>
喜び勇んで活躍の場を求めているあの男にとって、
この世界など、ちっぽけな森のようなものだ・・・
休むことなく何かを求めて突き進んでいるのだから、
ギービヒ家の治めるラインの岸辺にも立ち寄ったのだ。

<グンター>
ならば、喜んであの男を迎えよう!
(舞台上のホルンの音が近付いて来るが、まだまだ離れている。二人とも耳を澄ます)
角笛の音がライン河から聞こえるぞ。

<ハーゲン>
(岸辺に近付き、川面を見下ろすと、また振り返って叫ぶ)

小舟の上に、勇者と馬がいる!
勇ましく角笛を吹き鳴らしている!
(グンターは道半ばで立ち止まり、耳を澄ます)
舟にゆっくり櫂を入れ、
手持無沙汰に見えるくせに、
流れに逆らう小舟は勢いよく近づいて来る。
櫂を操る腕が示すのは、
龍退治をした者のみが誇る無双の力。
まさにジークフリート!他の者ではない!

<グンター>
通り過ぎてしまうのか?

<ハーゲン>
(両手を口に当てて川へと呼びかける)
ホイホー!おおい!
元気な勇者よ、どこへ行く?

<ジークフリートの声
(川の下流の遠い所から)
豪勇なるギービヒの若殿のもとへ。

<ハーゲン>
その殿の大広間に、私が案内しよう。
(舟に乗ったジークフリートが岸辺に現れる)
こちらへ!さあ、ここに舟を!


第2場
(ジークフリート、ハーゲン、グンター、グートルーネ)
(ジークフリートの舟が着くと、ハーゲンは舟を鎖で岸につなぎ、ジークフリートは馬とともに岸辺に降り立つ)


<ハーゲン>
ようこそ!ジークフリート、誉れ高き勇者!

(グンターは岸辺のハーゲンに近寄る。グートルーネは高椅子に腰掛けながら、うっとりしてジークフリートの姿を見つめている。グンターは友好の挨拶を交わそうとする。一同は、無言のまま、互いに相手の出方をうかがっている)

<ジークフリート>
(馬に寄りかかりながら、落ち着き払って舟の傍に立ち止まっている)
ギービヒの若殿とは、どなただ?

<グンター>
あなたが探していたグンターとは私のことだ。

<ジークフリート>
ラインの地での名声はうかがっている・・・
さあ、一戦交えるか?それとも友となるか?

<グンター>
戦いは、よそうではないか!
ようこそ、お越し下された!

<ジークフリート>
(落ち着き払って辺りを見渡す)
馬は、どこにつなげばいい?

<ハーゲン>
私が、休める所に連れて行こう。

<ジークフリート>
(ハーゲンに向き直って)
あなたは、ぼくをジークフリートと呼んだな・・・
以前会ったことがあるのか?

<ハーゲン>
あなたの怪力を見て、あなただと思い当たっただけだ。

<ジークフリート>
(ハーゲンに馬を委ねながら)
グラーネの面倒を良く見てくれ!あなたは、これほど
高貴な馬の手綱を取ったことはないはずだ。

(ハーゲンは馬を引き、舞台右手後方の、大広間の後ろへと消える。ジークフリートが感慨深げに馬を見送ると、グートルーネもハーゲンの合図に応じて、ジークフリートには気付かれぬまま、舞台左手の扉を通って、自室へと退場していく。グンターはジークフリートを案内し、共に大広間の中へと入っていく)

<グンター>
さあ、勇者よ・・・安んじて使ってくれ、
父祖代々のこの広間を・・・
あなたの行く所、
目についたもの、それらは全て、
あなた自身のものと思って良いのだ・・・
私の財産、領地、領民、全てあなたのものだ。
私は、この身に誓おう!
私自身を、あなたの臣下として差し出すことを。

<ジークフリート>
ぼくは、領地も領民もあげられないし、
父親の家屋敷もあげられない。
ぼくが受け継いだのは、我が身一つなので、
この身を使い果たすことしかできないのだ。
ぼくが持っている一振りの剣ですら、
自分自身で鍛えたのだ・・・
ぼくは、この剣に誓う!
この剣を、盟約の証しとすることを。

<ハーゲン>
(二人の話している間に戻って来て、ジークフリートの背後に立っている)
だが、あなたは、
ニーベルングの宝の持ち主だと聞いたぞ。

<ジークフリート>
(ハーゲンの方に振り返って)
そんな宝のことなど忘れていた。
どうでもいいものでしかないのだから!
その宝は、置きっぱなしにしてある。
かつて龍が宝の番をしていた洞窟の中に。

<ハーゲン>
何一つ持ち出さなかったわけか?

<ジークフリート>
(ベルトにぶら下がっている網目の金物細工を指差しながら)

こんな物があるが、何の役に立つのかわからない。

<ハーゲン>
これは、隠れ頭巾ではないか。
ニーベルング族が腕によりをかけて作った物だ・・・
ひとたび、これを頭にかぶれば、
あなたは、どんな姿にも変身できるし、
遠くに行きたいと思う時は、
一瞬にして行ってしまうのだ。
これ以外の宝は、持ち出さなかったのか?

<ジークフリート>
指輪を一つだ。

<ハーゲン>
今も持っているんだろう?

<ジークフリート>
美しい女が持っているさ。

<ハーゲン>
(独り言で)
ブリュンヒルデか・・・!

<グンター>
ジークフリートよ、宝の交換など必要ない・・・
あなたの持ち物に比べれば、私の財産など
がらくたのようなものだが、それもみんな、あなたにあげよう。 何もお返しなどなくても、私は喜んであなたに仕えよう。

(ハーゲンは、グートルーネの部屋に近づき、その扉を開く。出て来たグートルーネは、牛の角でできた盃に酒を満たして、ジークフリートに近付いて行く)

<グートルーネ>
ようこそ、お客様!このギービヒの家に!
この家の娘が、お飲み物を差し上げますわ。

<ジークフリート>
(機嫌よくグートルーネにお辞儀をすると、酒盃を手でつかむ。そのまま、感慨深げに目の前に持ってゆき、小声で語りかける) たとえ君が教えてくれたことを全て忘れようとも、
たった一つの教えだけは忘れない・・・
この最初の一口を、ぼくは大切な愛のために捧げる!
ブリュンヒルデ・・・君への!

(ジークフリートは酒盃に口を当て、長い時間をかけて一息で飲む。グートルーネに盃を返すと、グートルーネは、戸惑いつつも恥ずかしそうに目を伏せる)


<ジークフリート>
(ぱっと燃え上がった恋情もあらわに、じっとグートルーネを見つめる)
稲妻のような眼差しで、ぼくを焼き焦がしておきながら、
どうして今さら目を伏せるのです?

(グートルーネは、顔を真っ赤にしながら、目を上げてジークフリートを見る)

<ジークフリート>
ああ!何て美しいんだ!
瞳を閉じて・・・
その目の輝きは、ぼくの胸を
焼き尽くしてしまいそうだ・・・
炎のような血潮の流れが、
胸を焦がしてしまいそうだ!
(声を震わせながら)
グンター、あなたの妹さんのお名前は?

<グンター>
グートルーネだ。

<ジークフリート>
(小声で)
グートルーネ・・・なるほど「良き知らせ」だ。
ぼくが、この人の眼に見たものは・・・。
(情熱的に激しくグートルーネの手をつかんで)
ぼくは、あなたの兄上に仕えようとしましたが、
誇り高き兄上は、ぼくの申し出を断りました。
あなたも、兄上同様、ぼくを思い上がった男と思うのですか?
もしも、ぼくがあなたに結婚を申し込んだら?

(グートルーネは、思わずハーゲンと目を合わせる。
しおらしく首をうなだれると、自分はジークフリートにふさわしくないとでも言うような身振りをしながら、よろめくような足取りで大広間を後にする)

<ジークフリート>
(ハーゲンとグンターが注意深く様子を見守る中、ジークフリートは、まるで魔法に捕えられたかのように、グートルーネの後ろ姿を見送ったまま、振り返ろうともせずに質問する)
グンター、あなたには妻がいますか?

<グンター>
まだ結婚はしていないが、
おそらく妻をめとることは難しかろう!
実はある女を想っているのだが、
手に入れる手段が思いつかないのだ。

<ジークフリート>
(元気づいて、グンターに振り向く)
諦めているようだが、ぼくが何かお役に立てないだろうか?

<グンター>
彼女の居場所は、岩山高く・・・

<ジークフリート>
(いぶかしげに、急いで口をはさむ)
「彼女の居場所は、岩山高く」・・・

<グンター>
広間は炎に取り巻かれ・・・

<ジークフリート>
「広間は炎に取り巻かれ」・・・?

<グンター>
炎を越える者だけが・・・

<ジークフリート>
(全身全霊で記憶をつなぎ留めようとしながら)

「炎を越える者だけが」・・・?

<グンター>
 ・・・ブリュンヒルデの花婿となる。

(ジークフリートの仕草からは、ブリュンヒルデの名前が出ても、もはや彼女との記憶は完全に消え去ってしまったことが分かる)

<グンター>
私では、岩山をよじ登ることもできないし、
炎の勢いも弱まりはしないだろう!

<ジークフリート>
(白昼夢のような状態から我に返ると、陽気にはしゃぎながら、グンターに顔を向ける)
ぼくは・・・炎なんか怖くない。
あなたのために、その女性に求婚しよう。
なぜなら、ぼくは、あなたのしもべ。
ぼくの勇気はあなたのものだ。
グートルーネを、ぼくの妻としていただきたい。

<グンター>
グートルーネは、喜んであなたに差し上げよう。

<ジークフリート>
ブリュンヒルデを、あなたのもとに連れて来よう。

<グンター>
あの女性を、どうやって欺くつもりだ?

<ジークフリート>
隠れ頭巾で変身して、
あなたの姿になり代わる。

<グンター>
ならば、誓いを立てようではないか!

<ジークフリート>
義兄弟の血の誓いを立てよう!

(ハーゲンは、角でできた酒盃に、樽から出したばかりのワインを注ぎ、ジークフリートとグンターの目の前に差し出す。彼らは、剣で腕に傷をつけると、しばらく盃の真上に傷口をかかげる。そして、ハーゲンが二人の間に盃を差し出すと、その上に二本ずつ指を置く)


<ジークフリート>
花咲く命あふれる血潮よ、
この飲み物に、したたり落ちろ。

<グンター>
兄弟の熱き思いをたっぷり混ぜて・・・
この飲み物に、我らの血よ、咲き誇れ。

<二人>
友への忠誠のために飲もう。
楽しく、自由に、この契りから、
義兄弟の血の誓いよ・・・栄えよ!

<グンター>
兄弟の一人が誓いを破れば、

<ジークフリート>
友が、不実を行うならば、

<二人>
今飲んだ血のしずくよ。
激流となり、ほとばしれ!
友への罪の償いを果たせ!

<グンター>
(飲むと、ジークフリートに盃を渡す)
さあ・・・契りを交わすぞ。

<ジークフリート>
さあ・・・忠誠のしるしを飲むぞ。

(飲み終わったジークフリートが、空になった盃を差し出すと、ハーゲンは、その盃を剣で真っ二つに割る。ジークフリートとグンターは、手を差し出して握手し合う)

<ジークフリート>
(誓約の儀式の間、ずっと後ろに立っていたハーゲンを、しげしげと見つめながら)
なぜ、あなたはこの誓いに加わらない?

<ハーゲン>
私の血など入れたら、酒が腐ってしまう。
私の血は、あなた方の血のように、純粋で高貴ではない。
冷たくこごる、よどむ血で、
頬さえ赤く染めてくれない。
だから、炎のようなあなた達の契りには、関わらないのだ。

<グンター>
(ジークフリートに)
陰気な男は放っておけ!

<ジークフリート>
(再び盾を持ち)
さあ、出発しよう!
あそこにぼくの船がある。
あれなら早く岩山に着く。
(グンターに近寄って行き、出発の合図をする)
あなたは一晩、岸辺の船の中で待っていて、
そのあと、例の女を連れ帰れば良い。

(出発しようと向きを変え、グンターについて来るよう合図する)

<グンター>
その前に休まなくて良いのか?

<ジークフリート>
一刻でも早く帰って来たいんだ!
(岸辺に行き、船のともづなを解き始める)

<グンター>
ハーゲン!お前はこの家の番をしていろ!

(ジークフリートを追って岸辺に出る。ジークフリートとグンターが武器を船に下ろし、マストに帆を張って出発の準備を全て整えている間に、ハーゲンは自分の槍と盾を持って来る。

グートルーネは自分の部屋の戸口に姿を見せるが、その直前にジークフリートは船を岸から離したばかりであり、すぐに船は川の流れの真ん中へと漕ぎ出ていく)

<グートルーネ>
みんな、慌ててどこへ行ったの?

<ハーゲン>
(盾と槍を持って、悠然と大広間の前に陣取り、腰掛けながら)
船に乗った・・・ブリュンヒルデの求婚に行くのだ。

<グートルーネ>
ジークフリートが?

<ハーゲン>
そうだ。あなたを妻にしたくて、
居ても立ってもいられぬ様子だったぞ!

<グートルーネ>
ジークフリートが・・・あたしのもの!
(うきうきと上気したように、自分の部屋に引っ込んでいく。その間に、ジークフリートは手につかんだ櫂を、川の上流に向けて入れ、瞬く間にすっかり視界から消えてしまう)


<ハーゲン>
(大広間の入口の柱に背をもたせながら、微動だにもせず)

ここに座って、俺は見張り、屋敷を守る。
大広間を敵から守る。
ギービヒの子は、追い風を受け、
妻を求めて旅の空。
その男のために舵を取る強き勇者は、
その男を危機から守ってやった上に、
自分の花嫁を、このラインの岸辺に連れてくるというわけだ。
だが、この俺のために持ち帰るのは・・・あの指輪だ!
何不自由ない息子達よ・・・陽気な奴らよ。
せいぜい陽気に、帆を張るのだ!
お前らは俺を見下している。だが、お前らの方こそ、
このニーベルングの息子に仕えているのだ。

(ギービヒ家の大広間と舞台前面とを仕切っていたタペストリーが、バタンと崩れかかり、舞台と観客席とは遮断される。短いオーケストラ間奏曲を経て舞台転換が行われた後、タペストリーは完全に引き上げられる)


第3場
(ブリュンヒルデ、ヴァルトラウテ、ジークフリート)
(序幕と同じく、ブリュンヒルデの岩山の上。ブリュンヒルデは、岩の寝室の入口に座り、一言も発さず物思いに沈んでいる。ジークフリートにもらった指輪を見つめると、歓びに満ちた思い出に満たされて、指輪に口づけする。
すると、遠くから雷鳴が聞こえて来るので、目を上げて耳を澄ますが、やがてまた指輪をじっと見つめる。再度稲妻が炎のように光ると、もう一度耳を澄ます。遠くに目をやると、黒い雷雲が岩山に向かって近付いて来る)

<ブリュンヒルデ>
耳になじんだ音が、
遠くから聴こえて来る。
天馬がここに駆けて来るわ。
雲に乗り、雷を鳴らしながら、この岩山へ。
独りぼっちの私を見つけたのは誰?

<ヴァルトラウテの声>
(遠くから)
ブリュンヒルデ!お姉さん!
寝ているの?起きているの?

<ブリュンヒルデ>
(椅子から立ち上がって)
ヴァルトラウテの声だわ!何て懐かしい声かしら!
(舞台に向かって叫ぶ)
来てくれたのね?妹よ!
勇気を出して、来てくれたのね?
(岩山のへりに駆けて行く)
あのモミの木・・・
きっと見覚えがあるでしょ?
あそこで馬から降りて、
馬を休ませなさいよ!
(ブリュンヒルデがモミの木に駆け寄って行くと、そこから雷が落ちたような轟音が聴こえて来る。やがて、彼女は体を激しく揺らしながら、ヴァルトラウテと共に戻って来る。相変わらず、喜びに上気しているが、ヴァルトラウテの、おずおずとした不安そうな様子には気がつかない)
私を訪ねて、ここに来たの?
あなたは、そんなに勇気ある人だった?
おそれもせずに、
ブリュンヒルデに会いに来てくれるなんて?

<ヴァルトラウテ>
あなたのことだけが心配で、急いで来たのよ!

<ブリュンヒルデ>
(とても嬉しそうに興奮して)
ブリュンヒルデのために、
ヴァルハラのお父さまの禁令を破ってくれたのね?
それとも・・・ねえ、もしや・・・
私へのヴォータンの怒りが和らいだとでも?
私が、主神に逆らい、ジークムントを守った時、
罪を犯しつつも、私は・・・
お父さまの望みを叶えたのだわ。
怒りが和らいだことは、
この私も分かっていたの。
なぜなら、お父さまは、私を眠りに閉じ込め、
この岩山に縛り付け、
偶然、私の目を覚ました男の
下女にしようとした時でさえ、
私の切なる願いを叶えてくれた。
全てを燃やし尽くす炎で、岩山を取り巻き、
臆病な男が寄りつかないようにしてくれた。
その罰によって、私は最も幸せな女になったのよ。
だって、世に類なき素晴らしい勇者が
私を妻にしてくれたのだもの!
その方の愛につつまれて、
今の私は笑い輝いているのよ。
(激しい歓喜の仕草で抱きしめようとするブリュンヒルデに対して、ヴァルトラウテは、ためらいつつも苛立たしげに、身をもぎ離す)
あなたは、私の幸運がうらやましくないの?
私の歓びを一緒に喜んでくれたり、
分かち合ったりはしてくれないの?

<ヴァルトラウテ>
(声を荒らげて)
愚かな姉さんと、そんな妄想を分かち合えというの?
全然別のことが不安でたまらないから、
ヴォータンの禁令を破って来たというのに。

(ブリュンヒルデは、ここで初めて、ヴァルトラウテの極度に興奮した雰囲気に気付いて、いぶかしく思う)

<ブリュンヒルデ>
かわいそうに・・・不安と恐怖で脅えているのね?
厳しいお父さまは、まだ許してくれてないの?
お父さまに怒られて、罰せられるのが怖いのね?

<ヴァルトラウテ>
(暗い声で)
そんなことが怖いぐらいなら、
私の不安なんか、すぐ消え去ってしまうわ!

<ブリュンヒルデ>
何ですって?まるでわからないわ!

<ヴァルトラウテ>
興奮しちゃだめよ・・・
私の言うことをよく聴いて!
不安でたまらなくてやって来たのに、
今すぐ、ヴァルハラに飛んで帰りたいぐらいよ。
それぐらい私は不安なのよ。

<ブリュンヒルデ>
(驚いて)
不死の神々に何か起こったの?

<ヴァルトラウテ>
私の言うことを、よく聴いて!
お父さまは、あなたと別れてからというもの、
もう私達を戦場に送り出さなくなった・・・。
途方に暮れた私達は、
不安に脅えながら騎行するばかりだった。
お父さまは、ヴァルハラの戦士たちにも
近寄らなくなったわ。
絶え間なく一人で馬に乗り、
さすらい人として、この世界をさまようばかり。
つい最近、やっと帰って来たかと思えば、
どこかの勇士に砕かれた槍の破片を
手に持っていたわ・・・
そして、一言も発さないで、手で合図した。
ヴァルハラの高貴な戦士達に合図し、「世界樹」を切り倒させ、その幹を薪にさせると、神々の大広間の周りに
うず高く積み上げさせたわ。
そして、神々の会議を招集し、
おごそかに玉座に座ると、
不安そうな神々を横に座らせ、
大広間の周りを、ぐるっと勇者達に取り巻かせた。
でも、お父さまは、そのまま座って何も言わず、
玉座に沈み込み、深刻な顔で、口をつぐんでいるばかり。
こぶしに槍の破片を固く握りしめ、
ホルダのリンゴにも手を触れようとせずに・・・。
それを見た神々は、
驚きと不安で固まってしまった。
でも、ヴォータンが旅に出していた二羽のカラス・・・
そのカラス達が良い知らせを持ち帰った時、
もう一度・・・最後にもう一度だけ・・・
神は、永遠の微笑をもらした。
お父さまの膝の周りを取り囲む私達ヴァルキューレは、
お父さまを哀願の眼差しで見つめていたけど、
お父さまはそれにも気づかず、
私達は皆、
底知れぬ不安とおののきにさいなまれていた。
でも、私がお父さまの胸にすがって泣いた時、
その瞳が、ようやく光を放った・・・
お父さまが想い出したのは、
ブリュンヒルデ・・・あなたのことよ!
深くため息をつくと、お父さまは目を閉じて、
夢の中にいるように、
こうつぶやいたわ・・・
「ラインの水底の娘達に、
あの子が指輪を返してくれれば、
神も世界も、呪いの重荷から解き放たれて、
救われるだろうに!」
私はすぐに決意すると、お父さまの傍から離れ、
黙っている神々をかき分けながら、
人知れず急いで馬に乗ると、
嵐のように、あなたのもとへとやって来たのよ。
ああ、お姉さん、お願いよ・・・
思い切って、あなたにできることをしてちょうだい!
不死の神々の苦しみを終わらせて!

(ブリュンヒルデの目の前に崩れ落ちる)

<ブリュンヒルデ>
(平静なまま)
何と落ち着かない夢のような話を、
かわいそうなあなたは、語るのかしら!
でも、愚かな私は、神々の神聖な霧の中から、
もう飛び出してしまったのよ・・・
今聞いたことが、理解できないわ。
あなたの言うことは、ひどく混乱した話にしか思えない。
眼だって・・・きっと疲れすぎなのね。
真っ赤な炎のように瞬いているし、
頬にも血の気が無くて、真っ青よ・・・
そんなに取り乱して、私に何をしてほしいと言うの?

<ヴァルトラウテ>
(激しい口調で)
あなたの手にある、その指輪。
そう、それよ・・・私の言うことを聞いて・・・
ヴォータンのために、その指輪を捨ててほしいの!

<ブリュンヒルデ>
指輪を?・・・あたしが?

<ヴァルトラウテ>
ラインの娘達に返すのよ!

<ブリュンヒルデ>
ラインの娘達に・・・私が・・・この指輪を?
ジークフリートの愛の形見なのよ?
あなた、正気?

<ヴァルトラウテ>
聞いて!私の不安な気持ちを分かってよ!
その指輪には、世界中の災厄が取り憑いている。
投げ捨てて!遠く波間へと!
ヴァルハラの悲惨を終わらせるため、
川に投げてほしいの・・・その呪いの指輪を!

<ブリュンヒルデ>
何ですって!
これが、私にとってどんなものか分からないの?
分かるわけがないわね!心のない人には!
ヴァルハラで得られる歓びよりも、
不死の神々の名誉よりも、
この指輪のほうが私にとって価値があるのよ・・・
この明るい黄金を見つめれば、
神々しい輝きが溢れ出してくる・・・
それこそが、永遠に続く神々の幸福よりも、
ずっと私にとって価値あることだわ!
なぜなら、そこから輝き出すのは、
ジークフリートの愛なのだもの・・・
ジークフリートの愛!
ああ、あなたに、この歓喜を伝えられれば!
その歓喜とは・・・この指輪の中にこそ、あるのよ。
さあ、神々の神聖な会議の場へと、戻りなさい!
指輪の件については、こう報告するがいいわ・・・
「愛を、私は捨てたりはしない。
誰も私から愛を奪えない。
たとえ、壮麗に輝くヴァルハラが
瓦礫と化してしまおうとも!」

<ヴァルトラウテ>
それが、あなたの誠意だと言うの?
妹のことは愛さないで、こんな悲しみの中に、
放り出してしまうの?

<ブリュンヒルデ>
行ってしまいなさい!
馬に乗って飛んで行け!
あなたなんかが指輪を奪うことはできないわよ!

<ヴァルトラウテ>
ひどいわ!何てこと!
何てひどいの、お姉さん!
ヴァルハラの神々がひどいことになるわ!

(ヴァルトラウテは駆け去って行く。すぐにモミの木から雷雲が、嵐の中を立ち昇る)

<ブリュンヒルデ>
(明るく照らし出された雷雲が遠ざかって行く。すぐに、完全に遠方に消え去ってしまうが、ブリュンヒルデは、それを目で追っている)
雷雲が、稲光を発しながら、
風に運ばれて、
嵐のように去って行く。
もう二度と私の所には来ないでちょうだい!
(辺りは夕暮れにつつまれている。麓からの炎の反射が、次第に明るさを増してくる。ブリュンヒルデは、落ち着き払って、下界の風景を見渡す)
黄昏の夕闇が、天を包んでいるわ・・・
私を守ってくれる炎が、ますます明るくなってくる。
(麓からの炎の反射が、どんどん強くなって来る。炎はますます赤くなり、岩山のへりにまで近づいてくる)

今日はなぜ、これほど狂ったように、
炎の波が、この岩の壁まで燃えてくるの?
岩の頂きまで、火が洪水みたいに押し寄せて来る。
(ジークフリートが角笛を鳴らして近づいて来る音が、下の方から聞こえる。ブリュンヒルデはそれを聞くと、歓喜して立ち上がる) ジークフリートだわ!
ジークフリートが帰ってきたの?
あの人が呼んでいるわ!
さあ・・・!さあ!あの人のもとへ!
私の神である、あの人のもとへ!

(感極まって、岩のへりへと駆けて行く。炎が吹き上げると、その中からジークフリートが現れる。だが、彼が高い岩の上に飛び移ると、炎はすぐに消え、また下から照らし出されるだけとなる。ジークフリートは、頭にかぶった隠れ頭巾で、顔の上半分を覆い、目だけを露わにし、グンターの姿をしている)




<ブリュンヒルデ>
(驚きのあまり後じさりする)
だまされた!誰が入って来たの?

(舞台前方にまで逃げて行き、驚いて声も出せず、ジークフリートをじっと見つめる)

<ジークフリート>
(舞台後方の石の上に突っ立ったまま、盾にもたれて身じろぎもせず、長い間ブリュンヒルデを見つめている。やがて、普段よりも低い作り声で、彼女に語りかける)
ブリュンヒルデよ!求婚者が来たのだ!
お前の炎など、私には恐ろしくなかった。
私は、お前を妻にする・・・
喜んで従うがいい!

<ブリュンヒルデ>
(ぶるぶると震えながら)
この男は誰かしら?
最強の男にのみ定められたはずのことが
できてしまったなんて・・・

<ジークフリート>
(前と同様の作り声で)
お前を手なずけに来た勇者だ。
お前を力ずくでも手に入れに来たのだ。

<ブリュンヒルデ>
(恐怖に襲われて)
妖怪が、あの岩に降りて来たの!?
鷲が舞い下りて、
私を食いちぎりに来たの!?
気味悪い男!お前は誰なの?
(長い沈黙)
人間の仲間なの?
それとも地獄の軍勢の一員?

<ジークフリート>
(前と同様の作り声だが、初めはいくらか震えた声で、やがて再び平静な声で続ける)
私はギービヒ家の当主・・・
勇者グンターだ。
女よ、私に従うがいい。

<ブリュンヒルデ>
(絶望の叫び声をあげる)
ヴォータン!残酷で恐ろしい神!
ああ!今、分かった!
罰とは、これを意味していたのね・・・
私を嘲笑い、悲しみのどん底に
突き落とそうというのね!

<ジークフリート>
(岩から飛び下り、ブリュンヒルデに近づいて来る)
もう夜になるぞ・・・
この岩屋で、
私と契りを結ぶのだ!

<ブリュンヒルデ>
(ジークフリートの指輪をはめている指を、脅すように突き出しながら)
近寄らないで!このしるしを恐れるがいい!
私に乱暴することはできないわ。
この指輪が、私を守っている限り。

<ジークフリート>
その指輪こそ、夫の権利を、このグンターに与えるもの。
その指輪を、二人の契りのしるしとしてやろう!

<ブリュンヒルデ>
さがれ!強盗め!
恥知らずの盗っ人め!
厚かましく、近寄って来ないで!
私は、指輪のおかげで、
鉄より強い女となっている。
絶対に・・・これを私から奪うことはできない!

<ジークフリート>
ならば、それさえ奪えば
いいと言うわけだな!

(ブリュンヒルデに飛びかかり、二人は取っ組み合う。やがて、ブリュンヒルデは身をもぎ離し、逃げ、身を守ろうとするかのように振り返るが、ジークフリートは再び彼女をとらえる。ブリュンヒルデは逃げるが、さらに追いつかれ、またも激しい取っ組み合いとなる。ジークフリートがブリュンヒルデの手をつかみ、その指から指輪を抜き取ると、彼女は大きな叫び声を上げる。ブリュンヒルデが力尽きて、ジークフリートの腕の中に倒れ込む時、彼女の眼差しは、無意識にジークフリートの両眼をかすめる)

<ジークフリート>
(岩山の寝室の入口にある石のベンチに、力尽きたブリュンヒルデを寝かせる)
もはや、お前は、私のものだ。
ブリュンヒルデ・・・グンターの花嫁よ。
お前の寝室を、私によこすのだ!

<ブリュンヒルデ>
(放心状態で虚空をみつめ、弱々しい声で)
どうやって身を守ればいいの・・・なんて惨めな女!

(ジークフリートは命令するような身振りで急き立てる。ブリュンヒルデは、震えながら、よろめくような足取りで、寝室に入って行く)

<ジークフリート>
(剣を抜き、いつもの声に戻って)
さあ、ノートゥングよ、証人となれ。
ぼくが礼節にかなう求婚をしたことを。
兄との信義を守るために、
グンターの花嫁と、ぼくとの間を隔てよ!

(ブリュンヒルデの後を追う)

(幕が降りる)
VORSPIEL

Auf dem Walkürenfelsen. Die Szene ist dieselbe wie am Schlusse des zweiten Tages. Nacht. Aus der Tiefe des Hintergrundes leuchtet Feuerschein. Die drei Nornen, hohe Frauengestalten in langen, dunklen und schleierartigen Faltengewändern. Die erste (älteste) lagert im Vordergrunde rechts unter der breitästigen Tanne; die zweite (jüngere) ist an einer Steinbank vor dem Felsengemache hingestreckt; die dritte (jüngste) sitzt in der Mitte des Hintergrundes auf einem Felssteine des Höhensaumes. Eine Zeitlang herrscht düsteres Schweigen

DIE ERSTE NORN
ohne sich zu bewegen
Welch Licht leuchtet dort?

DIE ZWEITE NORN
Dämmert der Tag schon auf?

DIE DRITTE NORN
Loges Heer lodert feurig um den Fels.
Noch ist's Nacht.
Was spinnen und singen wir nicht?

DIE ZWEITE NORN
zu der ersten
Wollen wir spinnen und singen,
woran spannst du das Seil?

DIE ERSTE NORN
erhebt sich, während sie ein goldenes Seil von sich löst und mit dem einen Ende es an einen Ast der Tanne knüpft
So gut und schlimm es geh'
schling' ich das Seil und singe.
An der Weltesche wob ich einst,
da gross und stark dem Stamm entgrünte
weihlicher Äste Wald.
Im kühlen Schatten rauscht' ein Quell,
Weisheit raunend rann sein Gewell';
da sang ich heil'gen Sinn.
Ein kühner Gott
trat zum Trunk an den Quell;
seiner Augen eines
zahlt' er als ewigen Zoll.
Von der Weltesche
brach da Wotan einen Ast;
eines Speeres Schaft
entschnitt der Starke dem Stamm.
In langer Zeiten Lauf
zehrte die Wunde den Wald;
falb fielen die Blätter,
dürr darbte der Baum,
traurig versiegte des Quelles Trank:
trüben Sinnes ward mein Gesang.
Doch, web' ich heut'
an der Weltesche nicht mehr,
muss mir die Tanne
taugen zu fesseln das Seil:
singe, Schwester, - dir werf' ich's zu.
Weisst du, wie das wird?

DIE ZWEITE NORN
windet das zugeworfene Seil um einen hervorspringenden Felsstein am Eingange des Gemaches
Treu beratner Verträge Runen
schnitt Wotan in des Speeres Schaft:
den hielt er als Haft der Welt.
Ein kühner Held
zerhieb im Kampfe den Speer;
in Trümmer sprang
der Verträge heiliger Haft.
Da hiess Wotan Walhalls Helden
der Weltesche welkes Geäst
mit dem Stamm in Stücke zu fällen.
Die Esche sank;
ewig versiegte der Quell!
Fessle ich heut'
an den scharfen Fels das Seil:
singe, Schwester, - dir werf' ich's zu.
Weisst du, wie das wird?

DIE DRITTE NORN
das Seil auffangend und dessen Ende hinter sich werfend
Es ragt die Burg, von Riesen gebaut:
mit der Götter und Helden heiliger Sippe
sitzt dort Wotan im Saal.
Gehau'ner Scheite hohe Schicht
ragt zuhauf rings um die Halle:
die Weltesche war dies einst!
Brennt das Holz
heilig brünstig und hell,
sengt die Glut
sehrend den glänzenden Saal:
der ewigen Götter Ende
dämmert ewig da auf.
Wisset ihr noch,
so windet von neuem das Seil;
von Norden wieder werf' ich's dir nach.
Sie wirft das Seil der zweiten Norn zu

DIE ZWEITE NORN
schwingt das Seil der ersten hin, die es vom Zweige löst und es an einen andern Ast wieder anknüpft

Spinne, Schwester, und singe!

DIE ERSTE NORN
nach hinten blickend
Dämmert der Tag?
Oder leuchtet die Lohe?
Getrübt trügt sich mein Blick;
nicht hell eracht' ich das heilig Alte,
da Loge einst entbrannte in lichter Brunst.
Weisst du, was aus ihm ward?

DIE ZWEITE NORN
das zugeworfene Seil wieder um den Stein windend
Durch des Speeres Zauber
zähmte ihn Wotan;
Räte raunt' er dem Gott.
An des Schaftes Runen,
frei sich zu raten,
nagte zehrend sein Zahn:
da, mit des Speeres
zwingender Spitze
bannte ihn Wotan,
Brünnhildes Fels zu umbrennen.
Weisst du, was aus ihm wird?

DIE DRITTE NORN
das zugeschwungene Seil wieder hinter sich werfend
Des zerschlagnen Speeres
stechende Splitter
taucht einst Wotan
dem Brünstigen tief in die Brust:
zehrender Brand zündet da auf;
den wirft der Gott in der Weltesche
zuhauf geschichtete Scheite.
Sie wirft das Seil zurück, die zweite Norn windet es auf und wirft es der ersten wieder zu

DIE ZWEITE NORN
Wollt ihr wissen,
wann das wird?
Schwinget, Schwestern, das Seil!

DIE ERSTE NORN
das Seil von neuem anknüpfend
Die Nacht weicht;
nichts mehr gewahr' ich:
des Seiles Fäden find' ich nicht mehr;
verflochten ist das Geflecht.
Ein wüstes Gesicht wirrt mir wütend den Sinn:
das Rheingold raubte Alberich einst:
weisst du, was aus ihm ward?

DIE ZWEITE NORN
mit mühevoller Hand das Seil um den zackigen Stein des Gemaches windend
Des Steines Schärfe schnitt in das Seil;
nicht fest spannt mehr der Fäden Gespinst;
verwirrt ist das Geweb'.
Aus Not und Neid
ragt mir des Niblungen Ring:
ein rächender Fluch
nagt meiner Fäden Geflecht.
Weisst du, was daraus wird?

DIE DRITTE NORN
das zugeworfene Seil hastig fassend
Zu locker das Seil, mir langt es nicht.
Soll ich nach Norden neigen das Ende,
straffer sei es gestreckt!
Sie zieht gewaltsam das Seil an: dieses reisst in der Mitte
Es riss!

DIE ZWEITE NORN
Es riss!

DIE ERSTE NORN
Es riss!

Erschreckt sind die drei Nornen aufgefahren und nach der Mitte der Bühne zusammengetreten: sie fassen die Stücke des zerrissenen Seiles und binden damit ihre Leiber aneinander

DIE DREI NORNEN
Zu End' ewiges Wissen!
Der Welt melden Weise nichts mehr.
Hinab! Zur Mutter! Hinab!

Sie verschwinden

Tagesgrauen. Wachsende Morgenröte, immer schwächeres Leuchten des Feuerscheines aus der Tiefe

Orchesterzwischenspiel

Tagesgrauen - Sonnenaufgang - Heller Tag

Siegfried und Brünnhilde, treten aus dem Steingemache auf. Siegfried ist in vollen Waffen, Brünnhilde führt ihr Ross am Zaume

BRÜNNHILDE
Zu neuen Taten, teurer Helde,
wie liebt' ich dich,
liess ich dich nicht?
Ein einzig' Sorgen
lässt mich säumen:
dass dir zu wenig
mein Wert gewann!
Was Götter mich wiesen,
gab ich dir:
heiliger Runen reichen Hort;
doch meiner Stärke
magdlichen Stamm
nahm mir der Held,
dem ich nun mich neige.
Des Wissens bar, doch des Wunsches voll:
an Liebe reich, doch ledig der Kraft:
mögst du die Arme nicht verachten,
die dir nur gönnen,
nicht geben mehr kann!

SIEGFRIED
Mehr gabst du, Wunderfrau,
als ich zu wahren weiss.
Nicht zürne, wenn dein Lehren
mich unbelehret liess!
Ein Wissen doch wahr' ich wohl:
dass mir Brünnhilde lebt;
eine Lehre lernt' ich leicht:
Brünnhildes zu gedenken!

BRÜNNHILDE
Willst du mir Minne schenken,
gedenke deiner nur,
gedenke deiner Taten:
gedenk' des wilden Feuers,
das furchtlos du durchschrittest,
da den Fels es rings umbrann.

SIEGFRIED
Brünnhilde zu gewinnen!

BRÜNNHILDE
Gedenk' der beschildeten Frau,
die in tiefem Schlaf du fandest,
der den festen Helm du erbrachst.

SIEGFRIED
Brünnhilde zu erwecken!

BRÜNNHILDE
Gedenk' der Eide, die uns einen;
gedenk' der Treue, die wir tragen;
gedenk' der Liebe, der wir leben:
Brünnhilde brennt dann ewig
heilig dir in der Brust!
Sie umarmt Siegfried

SIEGFRIED
Lass ich, Liebste, dich hier
in der Lohe heiliger Hut;
Er hat den Ring Alberichs von seinem Finger gezogen und reicht ihn jetzt Brünnhilde dar
zum Tausche deiner Runen
reich' ich dir diesen Ring.
Was der Taten je ich schuf,
des Tugend schliesst er ein.
Ich erschlug einen wilden Wurm,
der grimmig lang' ihn bewacht.
Nun wahre du seine Kraft
als Weihegruss meiner Treu'!

BRÜNNHILDE
voll Entzücken den Ring sich ansteckend
Ihn geiz' ich als einziges Gut!
Für den Ring nimm nun auch mein Ross!
Ging sein Lauf mit mir
einst kühn durch die Lüfte,
mit mir verlor es die mächt'ge Art;
über Wolken hin auf blitzenden Wettern
nicht mehr schwingt es sich mutig des Wegs;
doch wohin du ihn führst,
 - sei es durchs Feuer -
grauenlos folgt dir Grane;
denn dir, o Helde,
soll er gehorchen!
Du hüt' ihn wohl;
er hört dein Wort:
o bringe Grane oft Brünnhildes Gruss!

SIEGFRIED
Durch deine Tugend allein
soll so ich Taten noch wirken?
Meine Kämpfe kiesest du,
meine Siege kehren zu dir:
auf deines Rosses Rücken,
in deines Schildes Schirm,
nicht Siegfried acht' ich mich mehr,
ich bin nur Brünnhildes Arm.

BRÜNNHILDE
O wäre Brünnhild' deine Seele!

SIEGFRIED
Durch sie entbrennt mir der Mut.

BRÜNNHILDE
So wärst du Siegfried und Brünnhild'?


SIEGFRIED
Wo ich bin, bergen sich beide.

BRÜNNHILDE
lebhaft
So verödet mein Felsensaal?

SIEGFRIED
Vereint, fasst er uns zwei!

BRÜNNHILDE
in grosser Ergriffenheit
O heilige Götter!
Hehre Geschlechter!
Weidet eu'r Aug'
an dem weihvollen Paar!
Getrennt - wer will es scheiden?
Geschieden - trennt es sich nie!

SIEGFRIED
Heil dir, Brünnhilde, prangender Stern!
Heil, strahlende Liebe!

BRÜNNHILDE
Heil dir, Siegfried, siegendes Licht!
Heil, strahlendes Leben!

BEIDE
Heil! Heil! Heil! Heil!

Siegfried geleitet schnell das Ross dem Felsenabhange zu, wohin ihm Brünnhilde folgt. Siegfried ist mit dem Rosse hinter dem Felsenvorsprunge abwärts verschwunden, so dass der Zuschauer ihn nicht mehr sieht: Brünnhilde steht so plötzlich allein am Abhange und blickt Siegfried in die Tiefe nach. Man hört Siegfrieds Horn aus der Tiefe. Brünnhilde lauscht. Sie tritt weiter auf den Abhang hinaus und erblickt Siegfried nochmals in der Tiefe: sie winkt ihm mit entzückter Gebärde zu. Aus ihrem freudigen Lächeln deutet sich der Anblick des lustig davonziehenden Helden. Der Vorhang fällt schnell. Das Orchester nimmt die Weise des Hornes auf und führt sie in einem kräftigen Satze durch.

Siegfrieds Rheinfahrt

Darauf beginnt sogleich der erste Aufzug

ERSTER AUFZUG

Die Halle der Gibichungen am Rhein

Diese ist dem Hintergrunde zu ganz offen; den Hintergrund selbst nimmt ein freier Uferraum bis zum Flusse hin ein; felsige Anhöhen umgrenzen das Ufer

ERSTE SZENE
Gunther, Hagen und Gutrune. Gunther und Gutrune auf dem Hochsitze zur Seite, vor welchem ein Tisch mit Trinkgerät steht; davor sitzt Hagen


GUNTHER
Nun hör', Hagen, sage mir, Held:
sitz' ich herrlich am Rhein,
Gunther zu Gibichs Ruhm?

HAGEN
Dich echt genannten
acht' ich zu neiden:
die beid' uns Brüder gebar,
Frau Grimhild' hiess mich's begreifen.

GUNTHER
Dich neide ich:
nicht neide mich du!
Erbt' ich Erstlingsart,
Weisheit ward dir allein:
Halbbrüderzwist bezwang sich nie besser.
Deinem Rat nur red' ich Lob,
frag' ich dich nach meinem Ruhm.

HAGEN
So schelt' ich den Rat,
da schlecht noch dein Ruhm;
denn hohe Güter weiss ich,
die der Gibichung noch nicht gewann.

GUNTHER
Verschwiegest du sie,
so schelt' auch ich.

HAGEN
In sommerlich reifer Stärke
seh' ich Gibichs Stamm,
dich, Gunther, unbeweibt,
dich, Gutrun', ohne Mann.

Gunther und Gutrune sind in schweigendes Sinnen verloren

GUNTHER
Wen rätst du nun zu frein,
dass unsrem Ruhm' es fromm'?

HAGEN
Ein Weib weiss ich,
das herrlichste der Welt:
auf Felsen hoch ihr Sitz;
ein Feuer umbrennt ihren Saal;
nur wer durch das Feuer bricht,
darf Brünnhildes Freier sein.

GUNTHER
Vermag das mein Mut zu bestehn?

HAGEN
Einem Stärkren noch ist's nur bestimmt.

GUNTHER
Wer ist der streitlichste Mann?

HAGEN
Siegfried, der Wälsungen Spross:
der ist der stärkste Held.
Ein Zwillingspaar,
von Liebe bezwungen,
Siegmund und Sieglinde,
zeugten den echtesten Sohn.
Der im Walde mächtig erwuchs,
den wünsch' ich Gutrun' zum Mann.

GUTRUNE
schüchtern beginnend
Welche Tat schuf er so tapfer,
dass als herrlichster Held er genannt?

HAGEN
Vor Neidhöhle den Niblungenhort
bewachte ein riesiger Wurm:
Siegfried schloss ihm den freislichen Schlund,
erschlug ihn mit siegendem Schwert.
Solch ungeheurer Tat
enttagte des Helden Ruhm.

GUNTHER
in Nachsinnen
Vom Niblungenhort vernahm ich:
er birgt den neidlichsten Schatz?

HAGEN
Wer wohl ihn zu nützen wüsst',
dem neigte sich wahrlich die Welt.

GUNTHER
Und Siegfried hat ihn erkämpft?

HAGEN
Knecht sind die Niblungen ihm.

GUNTHER
Und Brünnhild' gewänne nur er?


HAGEN
Keinem andren wiche die Brunst.

GUNTHER
unwillig sich vom Sitze erhebend
Wie weckst du Zweifel und Zwist!
Was ich nicht zwingen soll,
darnach zu verlangen machst du mir Lust?

Er schreitet bewegt in der Halle auf und ab. Hagen, ohne seinen Sitz zu verlassen, hält Gunther, als dieser wieder in seine Nähe kommt, durch einen geheimnisvollen Wink fest

HAGEN
Brächte Siegfried die Braut dir heim,
wär' dann nicht Brünnhilde dein?

GUNTHER
wendet sich wieder zweifelnd und unmutig ab
Was zwänge den frohen Mann,
für mich die Braut zu frein?

HAGEN
wie vorher
Ihn zwänge bald deine Bitte,
bänd' ihn Gutrun' zuvor.

GUTRUNE
Du Spötter, böser Hagen!
Wie sollt' ich Siegfried binden?
Ist er der herrlichste Held der Welt,
der Erde holdeste Frauen
friedeten längst ihn schon.

HAGEN
sehr vertraulich zu Gutrune hinneigend

Gedenk' des Trankes im Schrein;
heimlicher
vertraue mir, der ihn gewann:
den Helden, des du verlangst,
bindet er liebend an dich.
Gunther ist wieder an den Tisch getreten und hört, auf ihn gelehnt, jetzt aufmerksam zu
Träte nun Siegfried ein,
genöss' er des würzigen Tranks,
dass vor dir ein Weib er ersah,
dass je ein Weib ihm genaht,
vergessen müsst' er des ganz.
Nun redet: wie dünkt euch Hagens Rat?

GUNTHER
lebhaft auffahrend
Gepriesen sei Grimhild',
die uns den Bruder gab!

GUTRUNE
Möcht' ich Siegfried je ersehn!

GUNTHER
Wie suchten wir ihn auf?

Ein Horn auf dem Theater klingt aus dem Hintergrunde von links her. Hagen lauscht

HAGEN
Jagt er auf Taten wonnig umher,
zum engen Tann wird ihm die Welt:
wohl stürmt er in rastloser Jagd
auch zu Gibichs Strand an den Rhein.

GUNTHER
Willkommen hiess' ich ihn gern!
Horn auf dem Theater, näher, aber immer noch fern. Beide lauschen
Vom Rhein ertönt das Horn.

HAGEN
ist an das Ufer gegangen, späht den Fluss hinab und ruft zurück
In einem Nachen Held und Ross!
Der bläst so munter das Horn!
Gunther bleibt auf halbem Wege lauschend zurück
Ein gemächlicher Schlag,
wie von müssiger Hand,
treibt jach den Kahn wider den Strom;
so rüstiger Kraft in des Ruders Schwung
rühmt sich nur der, der den Wurm erschlug.
Siegfried ist es, sicher kein andrer!

GUNTHER
Jagt er vorbei?

HAGEN
durch die hohlen Hände nach dem Flusse rufend
Hoiho! Wohin,
du heitrer Held?

SIEGFRIEDS STIMME
aus der Ferne, vom Flusse her
Zu Gibichs starkem Sohne.

HAGEN
Zu seiner Halle entbiet' ich dich.
Siegfried erscheint im Kahn am Ufer
Hieher! Hier lege an!


ZWEITE SZENE
Siegfried, Hagen, Gunther und Gutrune. Siegfried legt mit dem Kahne an und springt, nachdem Hagen den Kahn mit der Kette am Ufer festgeschlossen hat, mit dem Rosse auf den Strand

HAGEN
Heil! Siegfried, teurer Held!

Gunther ist zu Hagen an das Ufer getreten. Gutrune blickt vom Hochsitze aus in staunender Bewunderung auf Siegfried. Gunther will freundlichen Gruss bieten. Alle sind in gegenseitiger stummer Betrachtung gefesselt

SIEGFRIED
auf sein Ross gelehnt, bleibt ruhig am Kahne stehen

Wer ist Gibichs Sohn?

GUNTHER
Gunther, ich, den du suchst.

SIEGFRIED
Dich hört' ich rühmen weit am Rhein:
nun ficht mit mir, oder sei mein Freund!

GUNTHER
Lass den Kampf!
Sei willkommen!

SIEGFRIED
sieht sich ruhig um
Wo berg' ich mein Ross?

HAGEN
Ich biet' ihm Rast.

SIEGFRIED
zu Hagen gewendet
Du riefst mich Siegfried:
sahst du mich schon?

HAGEN
Ich kannte dich nur an deiner Kraft.

SIEGFRIED
indem er an Hagen das Ross übergibt
Wohl hüte mir Grane! Du hieltest nie
von edlerer Zucht am Zaume ein Ross.

Hagen führt das Ross rechts hinter die Halle ab. Während Siegfried ihm gedankenvoll nachblickt, entfernt sich auch Gutrune, durch einen Wink Hagens bedeutet, von Siegfried unbemerkt, nach links durch eine Tür in ihr Gemach. Gunther schreitet mit Siegfried, den er dazu einlädt, in die Halle vor

GUNTHER
Begrüsse froh, o Held,
die Halle meines Vaters;
wohin du schreitest,
was du ersiehst,
das achte nun dein Eigen:
dein ist mein Erbe, Land und Leut',
hilf, mein Leib, meinem Eide!
Mich selbst geb' ich zum Mann.

SIEGFRIED
Nicht Land noch Leute biete ich,
noch Vaters Haus und Hof:
einzig erbt' ich den eignen Leib;
lebend zehr' ich den auf.
Nur ein Schwert hab' ich,
selbst geschmiedet:
hilf, mein Schwert, meinem Eide!
Das biet' ich mit mir zum Bund.

HAGEN
der zurückgekommen ist und jetzt hinter Siegfried steht

Doch des Niblungenhortes
nennt die Märe dich Herrn?

SIEGFRIED
sich zu Hagen umwendend
Des Schatzes vergass ich fast:
so schätz' ich sein müss'ges Gut!
In einer Höhle liess ich's liegen,
wo ein Wurm es einst bewacht'.

HAGEN
Und nichts entnahmst du ihm?

SIEGFRIED
auf das stählerne Netzgewirk deutend, das er im Gürtel hängen hat
Dies Gewirk, unkund seiner Kraft.

HAGEN
Den Tarnhelm kenn' ich,
der Niblungen künstliches Werk:
er taugt, bedeckt er dein Haupt,
dir zu tauschen jede Gestalt;
verlangt dich's an fernsten Ort,
er entführt flugs dich dahin.
Sonst nichts entnahmst du dem Hort?

SIEGFRIED
Einen Ring.

HAGEN
Den hütest du wohl?

SIEGFRIED
Den hütet ein hehres Weib.

HAGEN
für sich
Brünnhild'!...

GUNTHER
Nicht, Siegfried, sollst du mir tauschen:
Tand gäb' ich für dein Geschmeid,
nähmst all' mein Gut du dafür.
Ohn' Entgelt dien' ich dir gern.

Hagen ist zu Gutrunes Türe gegangen und öffnet sie jetzt. Gutrune tritt heraus, sie trägt ein gefülltes Trinkhorn und naht damit Siegfried

GUTRUNE
Willkommen, Gast, in Gibichs Haus!
Seine Tochter reicht dir den Trank.

SIEGFRIED
neigt sich ihr freundlich und ergreift das Horn; er hält es gedankenvoll vor sich hin und sagt leise
Vergäss' ich alles, was du mir gabst,
von einer Lehre lass' ich doch nie:
den ersten Trunk zu treuer Minne,
Brünnhilde, bring' ich dir!

Er setzt das Trinkhorn an und trinkt in einem langen Zuge. Er reicht das Horn an Gutrune zurück, die verschämt und verwirrt ihre Augen vor ihm niederschlägt

SIEGFRIED
heftet den Blick mit schnell entbrannter Leidenschaft auf sie
Die so mit dem Blitz den Blick du mir sengst,
was senkst du dein Auge vor mir?

Gutrune schlägt errötend das Auge zu ihm auf


SIEGFRIED
Ha, schönstes Weib!
Schliesse den Blick;
das Herz in der Brust
brennt mir sein Strahl:
zu feurigen Strömen fühl' ich
ihn zehrend zünden mein Blut!
mit bebender Stimme
Gunther, wie heisst deine Schwester?

GUNTHER
Gutrune.

SIEGFRIED
leise
Sind's gute Runen,
die ihrem Aug' ich entrate?
Er fasst Gutrune mit feurigem Ungestüm bei der Hand
Deinem Bruder bot ich mich zum Mann:
der Stolze schlug mich aus;
trügst du, wie er, mir Übermut,
böt' ich mich dir zum Bund?

Gutrune trifft unwillkürlich auf Hagens Blick. Sie neigt demütig das Haupt, und mit einer Gebärde, als fühle sie sich seiner nicht wert, verlässt sie schwankenden Schrittes wieder die Halle

SIEGFRIED
von Hagen und Gunther aufmerksam beobachtet, blickt ihr, wie festgezaubert, nach; dann, ohne sich umzuwenden, fragt er:
Hast du, Gunther, ein Weib?

GUNTHER
Nicht freit' ich noch,
und einer Frau soll ich mich schwerlich freun!
Auf eine setzt' ich den Sinn,
die kein Rat mir je gewinnt.

SIEGFRIED
wendet sich lebhaft zu Gunther
Was wär' dir versagt, steh' ich zu dir?

GUNTHER
Auf Felsen hoch ihr Sitz -

SIEGFRIED
mit verwunderungsvoller Hast einfallend
"Auf Felsen hoch ihr Sitz;"

GUNTHER
ein Feuer umbrennt den Saal -

SIEGFRIED
"ein Feuer umbrennt den Saal"... ?

GUNTHER
Nur wer durch das Feuer bricht -

SIEGFRIED
mit der heftigsten Anstrengung, um eine Erinnerung festzuhalten
"Nur wer durch das Feuer bricht"... ?

GUNTHER
 - darf Brünnhildes Freier sein.

Siegfried drückt durch eine Gebärde aus, dass bei Nennung von Brünnhildes Namen die Erinnerung ihm vollends ganz schwindet

GUNTHER
Nun darf ich den Fels nicht erklimmen;
das Feuer verglimmt mir nie!

SIEGFRIED
kommt aus einem traumartigen Zustand zu sich und wendet sich mit übermütiger Lustigkeit zu Gunther
Ich - fürchte kein Feuer,
für dich frei ich die Frau;
denn dein Mann bin ich,
und mein Mut ist dein,
gewinn' ich mir Gutrun' zum Weib.

GUNTHER
Gutrune gönn' ich dir gerne.

SIEGFRIED
Brünnhilde bring' ich dir.

GUNTHER
Wie willst du sie täuschen?

SIEGFRIED
Durch des Tarnhelms Trug
tausch' ich mir deine Gestalt.

GUNTHER
So stelle Eide zum Schwur!

SIEGFRIED
Blut-Brüderschaft schwöre ein Eid!

Hagen füllt ein Trinkhorn mit frischem Wein; dieses hält er dann Siegfried und Gunther hin, welche sich mit ihren Schwertern die Arme ritzen und diese eine kurze Zeit über die Öffnung des Trinkhornes halten. Siegfried und Gunther legen zwei ihrer Finger auf das Horn, welches Hagen fortwährend in ihrer Mitte hält.

SIEGFRIED
Blühenden Lebens labendes Blut
träufelt' ich in den Trank.

GUNTHER
Bruder-brünstig mutig gemischt,
blüh' im Trank unser Blut.

BEIDE
Treue trink' ich dem Freund.
Froh und frei entblühe dem Bund,
Blut-Brüderschaft heut'!

GUNTHER
Bricht ein Bruder den Bund,

SIEGFRIED
Trügt den Treuen der Freund,

BEIDE
Was in Tropfen heut' hold wir tranken,
in Strahlen ström' es dahin,
fromme Sühne dem Freund!

GUNTHER
trinkt und reicht das Horn Siegfried
So - biet' ich den Bund.

SIEGFRIED
So - trink' ich dir Treu'!

Er trinkt und hält das geleerte Trinkhorn Hagen hin. Hagen zerschlägt mit seinem Schwerte das Horn in zwei Stücke. Siegfried und Gunther reichen sich die Hände

SIEGFRIED
betrachtet Hagen, welcher während des Schwures hinter ihm gestanden
Was nahmst du am Eide nicht teil?

HAGEN
Mein Blut verdürb' euch den Trank;
nicht fliesst mir's echt und edel wie euch;
störrisch und kalt stockt's in mir;
nicht will's die Wange mir röten.
Drum bleibt ich fern vom feurigen Bund.

GUNTHER
zu Siegfried
Lass den unfrohen Mann!

SIEGFRIED
hängt sich den Schild wieder über
Frisch auf die Fahrt!
Dort liegt mein Schiff;
schnell führt es zum Felsen.
Er tritt näher zu Gunther und bedeutet diesen
Eine Nacht am Ufer harrst du im Nachen;
die Frau fährst du dann heim.

Er wendet sich zum Fortgehen und winkt Gunther, ihm zu folgen

GUNTHER
Rastest du nicht zuvor?

SIEGFRIED
Um die Rückkehr ist mir's jach!
Er geht zum Ufer, um das Schiff loszubinden

GUNTHER
Du, Hagen, bewache die Halle!

Er folgt Siegfried zum Ufer. - Während Siegfried und Gunther, nachdem sie ihre Waffen darin niedergelegt, im Schiff das Segel aufstecken und alles zur Abfahrt bereit machen, nimmt Hagen seinen Speer und Schild.
Gutrune erscheint an der Tür ihres Gemachs, als soeben Siegfried das Schiff abstösst, welches sogleich der Mitte des Stromes zutreibt.

GUTRUNE
Wohin eilen die Schnellen?

HAGEN
während er sich gemächlich mit Schild und Speer vor der Halle niedersetzt
Zu Schiff - Brünnhild' zu frein.

GUTRUNE
Siegfried?

HAGEN
Sieh', wie's ihn treibt,
zum Weib dich zu gewinnen!

GUTRUNE
Siegfried - mein!
Sie geht, lebhaft erregt, in ihr Gemach zurück. Siegfried hat das Ruder erfasst und treibt jetzt mit dessen Schlägen den Nachen stromabwärts, so dass dieser bald gänzlich ausser Gesicht kommt

HAGEN
sitzt mit dem Rücken an den Pfosten der Halle gelehnt, bewegungslos
Hier sitz' ich zur Wacht, wahre den Hof,
wehre die Halle dem Feind.
Gibichs Sohne wehet der Wind,
auf Werben fährt er dahin.
lhm führt das Steuer ein starker Held,
Gefahr ihm will er bestehn:
Die eigne Braut ihm bringt er zum Rhein;
mir aber bringt er - den Ring!
Ihr freien Söhne, frohe Gesellen,
segelt nur lustig dahin!
Dünkt er euch niedrig, ihr dient ihm doch,
des Niblungen Sohn.

Ein Teppich, welcher dem Vordergrunde zu die Halle einfasste, schlägt zusammen und schliesst die Bühne vor dem Zuschauer ab. Nachdem während eines kurzen Orchester-Zwischenspieles der Schauplatz verwandelt ist, wird der Teppich gänzlich aufgezogen

DRITTE SZENE
Brünnhilde, Waltraute, Siegfried. Die Felsenhöhle (wie im Vorspiel. Brünnhilde sitzt am Eingange des Steingemaches, in stummen Sinnen Siegfrieds Ring betrachtend; von wonniger Erinnerung überwältigt, bedeckt sie ihn mit Küssen. Ferner Donner lässt sich vernehmen, sie blickt auf und lauscht. Dann wendet sie sich wieder zu dem Ring. Ein feuriger Blitz. Sie lauscht von neuem und späht nach der Ferne, von woher eine finstre Gewitterwolke dem Felsensaume zuzieht

BRÜNNHILDE
Altgewohntes Geräusch
raunt meinem Ohr die Ferne.
Ein Luftross jagt im Laufe daher;
auf der Wolke fährt es wetternd zum Fels.
Wer fand mich Einsame auf?

WALTRAUTES STIMME
aus der Ferne
Brünnhilde! Schwester!
Schläfst oder wachst du?

BRÜNNHILDE
fährt vom Sitze auf
Waltrautes Ruf, so wonnig mir kund!
in die Szene rufend
Kommst du, Schwester?
Schwingst dich kühn zu mir her?
sie eilt nach dem Felsrande
Dort im Tann
 - dir noch vertraut -
steige vom Ross
und stell' den Renner zur Rast!
Sie stürmt in den Tann, von wo ein starkes Geräusch, gleich einem Gewitterschlage, sich vernehmen lässt. Dann kommt sie in heftiger Bewegung mit Waltraute zurück; sie bleibt freudig erregt, ohne Waltrautes ängstliche Scheu zu beachten
Kommst du zu mir?
Bist du so kühn,
magst ohne Grauen
Brünnhild' bieten den Gruss?

WALTRAUTE
Einzig dir nur galt meine Eil'!

BRÜNNHILDE
in höchster freudiger Aufgeregtheit
So wagtest du, Brünnhild' zulieb,
Walvaters Bann zu brechen?
Oder wie - o sag' -
wär' wider mich Wotans Sinn erweicht?
Als dem Gott entgegen Siegmund ich schützte,
fehlend - ich weiss es -
erfüllt' ich doch seinen Wunsch.
Dass sein Zorn sich verzogen,
weiss ich auch;
denn verschloss er mich gleich in Schlaf,
fesselt' er mich auf den Fels,
wies er dem Mann mich zur Magd,
der am Weg mich fänd' und erweckt',
meiner bangen Bitte doch gab er Gunst:
mit zehrendem Feuer umzog er den Fels,
dem Zagen zu wehren den Weg.
So zur Seligsten schuf mich die Strafe:
der herrlichste Held
gewann mich zum Weib!
In seiner Liebe
leucht' und lach' ich heut' auf.
Sie umarmt Waltraute unter stürmischen Freudenbezeigungen, welche diese mit scheuer Ungeduld abzuwehren sucht
Lockte dich, Schwester, mein Los?
An meiner Wonne willst du dich weiden,
teilen, was mich betraf?

WALTRAUTE
heftig
Teilen den Taumel, der dich Törin erfasst?
Ein andres bewog mich in Angst,
zu brechen Wotans Gebot.

Brünnhilde gewahrt hier erst mit Befremdung die wildaufgeregte Stimmung Waltrautes

BRÜNNHILDE
Angst und Furcht fesseln dich Arme?
So verzieh der Strenge noch nicht?
Du zagst vor des Strafenden Zorn?

WALTRAUTE
düster
Dürft' ich ihn fürchten,
meiner Angst fänd' ich ein End'!

BRÜNNHILDE
Staunend versteh' ich dich nicht!

WALTRAUTE
Wehre der Wallung:
achtsam höre mich an!
Nach Walhall wieder
drängt mich die Angst,
die von Walhall hierher mich trieb.

BRÜNNHILDE
erschrocken
Was ist's mit den ewigen Göttern?

WALTRAUTE
Höre mit Sinn, was ich dir sage!
Seit er von dir geschieden,
zur Schlacht nicht mehr schickte uns Wotan;
irr und ratlos
ritten wir ängstlich zu Heer;
Walhalls mutige Helden
mied Walvater.
Einsam zu Ross, ohne Ruh' noch Rast,
durchschweift er als Wandrer die Welt.
Jüngst kehrte er heim;
in der Hand hielt er seines Speeres Splitter:
die hatte ein Held ihm geschlagen.
Mit stummem Wink Walhalls Edle
wies er zum Forst, die Weltesche zu fällen.
Des Stammes Scheite hiess er sie schichten
zu ragendem Hauf rings um der Seligen Saal.
Der Götter Rat liess er berufen;
den Hochsitz nahm heilig er ein:
ihm zu Seiten hiess er die Bangen sich setzen,
in Ring und Reih' die Hall' erfüllen die Helden.
So sitzt er, sagt kein Wort,
auf hehrem Sitze stumm und ernst,
des Speeres Splitter fest in der Faust;
Holdas Äpfel rührt er nicht an.
Staunen und Bangen
binden starr die Götter.
Seine Raben beide sandt' er auf Reise:
kehrten die einst mit guter Kunde zurück,
dann noch einmal - zum letztenmal -
lächelte ewig der Gott.
Seine Knie umwindend,
liegen wir Walküren;
blind bleibt er den flehenden Blicken;
uns alle verzehrt
Zagen und endlose Angst.
An seine Brust presst' ich mich weinend:
da brach sich sein Blick -
er gedachte,
Brünnhilde, dein'!
Tief seufzt' er auf, schloss das Auge,
und wie im Traume
raunt' er das Wort:
"Des tiefen Rheines Töchtern
gäbe den Ring sie wieder zurück,
von des Fluches Last
erlöst wär' Gott und Welt!"
Da sann ich nach: von seiner Seite
durch stumme Reihen stahl ich mich fort;
in heimlicher Hast bestieg ich mein Ross
und ritt im Sturme zu dir.
Dich, o Schwester, beschwör' ich nun:
was du vermagst, vollend' es dein Mut!
Ende der Ewigen Qual!

Sie hat sich vor Brünnhilde niedergeworfen

BRÜNNHILDE
ruhig
Welch' banger Träume Mären
meldest du Traurige mir!
Der Götter heiligem Himmelsnebel
bin ich Törin enttaucht:
nicht fass ich, was ich erfahre.
Wirr und wüst scheint mir dein Sinn;
in deinem Aug' - so übermüde -
glänzt flackernde Glut.
Mit blasser Wange, du bleiche Schwester,
was willst du Wilde von mir?

WALTRAUTE
heftig
An deiner Hand, der Ring,
er ist's; - hör' meinen Rat:
für Wotan wirf ihn von dir!

BRÜNNHILDE
Den Ring? - Von mir?

WALTRAUTE
Den Rheintöchtern gib ihn zurück!

BRÜNNHILDE
Den Rheintöchtern - ich - den Ring?
Siegfrieds Liebespfand?
Bist du von Sinnen?

WALTRAUTE
Hör' mich! Hör' meine Angst!
Der Welt Unheil haftet sicher an ihm.
Wirf ihn von dir, fort in die Welle!
Walhalls Elend zu enden,
den verfluchten wirf in die Flut!

BRÜNNHILDE
Ha! Weisst du,
was er mir ist?
Wie kannst du's fassen, fühllose Maid!
Mehr als Walhalls Wonne,
mehr als der Ewigen Ruhm
ist mir der Ring:
ein Blick auf sein helles Gold,
ein Blitz aus dem hehren Glanz
gilt mir werter
als aller Götter ewig währendes Glück!
Denn selig aus ihm
leuchtet mir Siegfrieds Liebe:
Siegfrieds Liebe!
O liess' sich die Wonne dir sagen!
Sie - wahrt mir der Reif.
Geh' hin zu der Götter heiligem Rat!
Von meinem Ringe raune ihnen zu:
die Liebe liesse ich nie,
mir nähmen nie sie die Liebe,
stürzt' auch in Trümmern
Walhalls strahlende Pracht!

WALTRAUTE
Dies deine Treue?
So in Trauer
entlässest du lieblos die Schwester?

BRÜNNHILDE
Schwinge dich fort!
Fliege zu Ross!
Den Ring entführst du mir nicht!

WALTRAUTE
Wehe! Wehe!
Weh' dir, Schwester!
Walhalls Göttern weh'!

Sie stürzt fort. Bald erhebt sich unter Sturm eine Gewitterwolke aus dem Tann

BRÜNNHILDE
während sie der davonjagenden, hell erleuchteten Gewitterwolke, die sich bald gänzlich in der Ferne verliert, nachblickt
Blitzend Gewölk,
vom Wind getragen,
stürme dahin:
zu mir nie steure mehr her!
Es ist Abend geworden. Aus der Tiefe leuchtet der Feuerschein allmählich heller auf. Brünnhilde blickt ruhig in die Landschaft hinaus
Abendlich Dämmern deckt den Himmel;
heller leuchtet die hütende Lohe herauf.
Der Feuerschein nähert sich aus der Tiefe. Immer glühendere Flammenzungen lecken über den Felsensaum auf
Was leckt so wütend
die lodernde Welle zum Wall?
Zur Felsenspitze wälzt sich der feurige Schwall.
Man hört aus der Tiefe Siegfrieds Hornruf nahen. Brünnhilde lauscht und fährt entzückt auf
Siegfried!
Siegfried zurück?
Seinen Ruf sendet er her!
Auf! - Auf! Ihm entgegen!
In meines Gottes Arm!

Sie eilt in höchstem Entzücken dem Felsrande zu. Feuerflammen schlagen herauf: aus ihnen springt Siegfried auf einen hochragenden Felsstein empor, worauf die Flammen sogleich wieder zurückweichen und abermals nur aus der Tiefe heraufleuchten. Siegfried, auf dem Haupte den Tarnhelm, der ihm bis zur Hälfte das Gesicht verdeckt und nur die Augen freilässt, erscheint in Gunthers Gestalt

BRÜNNHILDE
voll Entsetzen zurückweichend
Verrat! Wer drang zu mir?

Sie flieht bis in den Vordergrund und heftet von da aus in sprachlosem Erstaunen ihren Blick auf Siegfried

SIEGFRIED
im Hintergrunde auf dem Steine verweilend, betrachtet sie lange, regungslos auf seinen Schild gelehnt; dann redet er sie mit verstellter - tieferer - Stimme an
Brünnhild'! Ein Freier kam,
den dein Feuer nicht geschreckt.
Dich werb' ich nun zum Weib:
du folge willig mir!

BRÜNNHILDE
heftig zitternd
Wer ist der Mann,
der das vermochte,
was dem Stärksten nur bestimmt?

SIEGFRIED
unverändert wie zuvor
Ein Helde, der dich zähmt,
bezwingt Gewalt dich nur.

BRÜNNHILDE
von Grausen erfasst
Ein Unhold schwang sich auf jenen Stein!
Ein Aar kam geflogen,
mich zu zerfleischen!
Wer bist du, Schrecklicher?
langes Schweigen
Stammst du von Menschen?
Kommst du von Hellas nächtlichem Heer?

SIEGFRIED
wie zuvor, mit etwas bebender Stimme beginnend, alsbald aber wieder sicherer fortfahrend
Ein Gibichung bin ich,
und Gunther heisst der Held,
dem, Frau, du folgen sollst.

BRÜNNHILDE
in Verzweiflung ausbrechend
Wotan! Ergrimmter, grausamer Gott!
Weh'! Nun erseh' ich
der Strafe Sinn:
zu Hohn und Jammer
jagst du mich hin!

SIEGFRIED
springt vom Stein herab und tritt näher heran
Die Nacht bricht an:
in diesem Gemach
musst du dich mir vermählen!

BRÜNNHILDE
indem sie den Finger, an dem sie Siegfrieds Ring trägt, drohend ausstreckt
Bleib' fern! Fürchte dies Zeichen!
Zur Schande zwingst du mich nicht,
solang' der Ring mich beschützt.

SIEGFRIED
Mannesrecht gebe er Gunther,
durch den Ring sei ihm vermählt!

BRÜNNHILDE
Zurück, du Räuber!
Frevelnder Dieb!
Erfreche dich nicht, mir zu nahn!
Stärker als Stahl
macht mich der Ring:
nie - raubst du ihn mir!

SIEGFRIED
Von dir ihn zu lösen,
lehrst du mich nun!

Er dringt auf sie ein; sie ringen miteinander. Brünnhilde windet sich los, flieht und wendet sich um, wie zur Wehr. Siegfried greift sie von neuem an. Sie flieht, er erreicht sie. Beide ringen heftig miteinander. Er fasst sie bei der Hand und entzieht ihrem Finger den Ring. Sie schreit heftig auf. Als sie wie zerbrochen in seinen Armen niedersinkt, streift ihr Blick bewusstlos die Augen Siegfrieds


SIEGFRIED
lässt die Machtlose auf die Steinbank vor dem Felsengemach niedergleiten
Jetzt bist du mein,
Brünnhilde, Gunthers Braut. -
Gönne mir nun dein Gemach!

BRÜNNHILDE
starrt ohnmächtig vor sich hin, matt
Was könntest du wehren, elendes Weib!

Siegfried treibt sie mit einer gebietenden Bewegung an. Zitternd und wankenden Schrittes geht sie in das Gemach

SIEGFRIED
das Schwert ziehend, mit seiner natürlichen Stimme
Nun, Notung, zeuge du,
dass ich in Züchten warb.
Die Treue wahrend dem Bruder,
trenne mich von seiner Braut!

Er folgt Brünnhilde

Der Vorhang fällt


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@wagnerianchan


最終更新:2016年04月20日 01:02