"バスティアンとバスティエンヌ"

対訳




訳者より

  • モーツァルト12歳のときのドイツ語歌詞による歌物語(ジングシュピール)。最近のリバイバルまでほとんど顧みられなかった他の多くの初期オペラと異なり、40分ほどのコンパクトな一幕ものであることや、登場人物が3人だけで済むといったこともあり、比較的よく取り上げられていた作品です。ジャン・ジャック・ルソーのオペラ「村の占い師」の台本をパロディにしたものなのだそうで、けっこうユーモラスな台詞が微笑ましいです。
  • ジングシュピールですから歌と台詞をつないで書かれたものかと思いきや、1970年代に出された新モーツァルト全集では台詞の一部がレシタティーヴォになっており、この版で録音されたマティス/ハーガー盤のような録音もあります。
  • その新全集に即したテキストを持って来て訳したかったところですが見つけきれませんでしたので、ネット上でよく流布している版に基づいて訳しました。地のセリフが少々長い感じもしますが、なかなかに面白い掛け合いでしたのでちょっと羽目を外したところで。そこかしこに織り込まれた小ネタのギャグが良い味出してます。コルシカ島が舞台の田舎の純朴な男の子と女の子、それに怪しげなおっさんの三人ですからどこかの地方の訛りで訳すことも試みましたがちょっと今一つでしたので、バスティエンヌは10年ほど前のコギャル(死語)のような感じで、バスティアンはなよっとした優柔不断な感じで(それにしちゃあこの男遊び人のようですけれど...あんまり軽薄な喋りをさせると収拾がつきませんので)、コーラはまあこんなもんでしょう。
  • この作品にも少年合唱団員を起用した(しかも登場人物3人とも)ウィーン少年合唱団員/ハラー盤のようなのもありました。音だけ聴くと実に美しいのですが、この台本一見素朴に見えて実はなかなかオトナの事情を良く織り込んで結構凄いことを喋ってたりしますので、この対訳はあんまり見ないで音だけで楽しむのが良いかもしれません。

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@ 藤井宏行

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最終更新:2015年06月14日 15:37