"オルランド"

対訳

あらすじ

  • 主人公オルランドは、アンジェリカの命を救った経緯で、彼女を好きになりました。そのアンジェリカは、怪我をしたメドーロの世話がきっかけで、恋に落ちています。その時小屋を貸したのが、女羊飼いのドリンダです。メドーロとアンジェリカは、もう自分の意思では制御できないほど、互いに強くひかれあっていて、オルランドとドリンダの思いが入り込む余地はありません。

訳者より

  • 「オルランド」は傑作との評価が高いのですが最初にDVDで観たとき、それほど面白いと思わなかったのです。それは、監修者REIKO様のいう「ト書きの設定を無視した演出」のせいだったのかもしれません。
  • でも、今回対訳を作成するにあたって、最近出た ヤーコプス ワイマン のCDを繰り返し聴きやはり素晴らしいオペラであるという認識を新たにしました。美しいアリアが随所に散りばめられていて、しかも定形からはずれた「狂乱の場」などもあり、飽きるところがありません。
  • ヤーコプス盤みたいになんとかCD2枚に収まる160分というやや短めの演奏時間(ヘンデルのオペラとしては)も全曲を通して聴くにはお手頃ではないかと思います。

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@ TRASIMEDE

監修者より

  • 「オルランド」は「アリオダンテ」「アルチーナ」と並ぶアリオスト「狂乱のオルランド」による3部作の第1作で、また5つあるヘンデルの魔法オペラとしては最後に書かれた傑作です。レチタティーヴォとアリアの交替を繰り返すオペラ・セリアの定型を打破した部分が多く、劇の進行と密着して自在に音楽付けされている点が現代において高く評価されている理由ですが、台本自体も他のヘンデル・オペラと比較するとかなり異色に思われます。
  • 登場人物は5人と少な目で、しかも彼らの関係は物語の最初と最後で何ら変化しません。普通ならタイトル役オルランドは念願かなって愛するアンジェリカと結ばれ、一方でメドーロとドリンダの新たなカップルが成立しハッピーエンド…となるところでしょう。しかしこの台本では何と!嫉妬の地獄から帰還したオルランドが「自己を克服」してアンジェリカとメドーロを祝福し、ドリンダは相変わらず「ぼっち」(笑)のまま物語が終わるのです。
  • オルランドは有名な狂乱の場だけでなく、最後に正気に戻る所以外は全編アタマおかしい状態です。初演時にタイトル役を歌ったカストラートのセネジーノは、当時としては常軌を逸したこの役柄を好ましく思わず、それが結局ヘンデルと決別しライバルの「貴族オペラ」に移籍する一因にもなったようです。結末の異色さやタイトル役の壊れぶりは、当時の観客にも微妙な受け止め方をされたのではないでしょうか。失敗ではないが大成功とも言えない公演回数10回&その後の再演なし…がそれを物語っています。
  • もう一つ注目していただきたいのは舞台設定です。「オルランド」の物語は終始、美しい自然に囲まれた屋外で展開します。愛し合う二人の名前を月桂樹に刻みつけて歌うメドーロの「Verdi allori」や、思い出がたくさんつまった森を後にするアンジェリカの「Verdi piante」は、そのような背景で歌われるのです。そして薄暗い洞窟やオルランドの幻覚として現れる冥府の恐ろしい光景が、美しい森と対照的に扱われて物語に陰影を与えています。近年はト書きの設定を無視した演出が珍しくありませんが、時代を移したとしても最低限のところは押さえて欲しいのですけどね…?
  • ヤーコプス指揮のアルヒーフ盤 は、適宜想像の助けになる効果音が入っている録音で、対訳を読みながら「脳内演出」で聴いていただくと、あっという間の2時間40分だと思います。愛と嫉妬に悩み苦しむ登場人物にどっぷり感情移入するのも良いし、彼らを見守る立場にいる魔術師&哲学者ゾロアストロの超然としたキャラクターも面白い。どうぞお好みの方法でお楽しみください。

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@ REIKO

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最終更新:2014年07月27日 23:44