"セルセ"

対訳


あらすじ

  • 王セルセが心地良いプラタナスの木陰でうっとりしていると、女性の美しい歌声が聞こえ、彼はその声の主ロミルダに恋をし妻に迎えたいと願う。彼は弟のアルサメーネにこの思いを彼女に伝えるよう命ずるが、実はロミルダと恋仲のアルサメーネは困ってしまう。一方アルサメーネのことが好きなアタランタは、ロミルダとセルセが結ばれれば自分がアルサメーネにつけ入る好機が訪れると喜ぶ。アルサメーネとロミルダの関係に気づいたセルセはアルサメーネを宮廷から追放し、自分の気持を直接ロミルダに伝えるが、彼女の心は全く動かない。

訳者より

  • 「セルセ」は(日本ではかなり昔のCMのおかげで・・キャスリーン・バトルだったっけ?)「オンブラ・マイ・フ」だけが飛び抜けて有名なように思います。でも台本読むとコメディーとしてなかなかよくできており全部通して聞くとほかにも随所に素晴らしいメロディーが散りばめられています。
  • この対訳が「オンブラ・マイ・フ」しか知らないかたがたがちょっと他の部分も聴いてみようと思うきっかけにわずかながらでもなるといいなと思います。

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@ TRASIMEDE

監修者より

  • キャスリーン・バトルのCMで「オンブラ・マイ・フ」が大ヒットしたのをリアルタイムで経験していた監修者です(笑)。それ以前は器楽編曲の「ヘンデルのラルゴ」または「懐かしい木陰よ」などの日本語題名の方がポピュラーでした。CMのヒット以前、高校の音楽の授業で変ホ長調版(原曲はヘ長調)の楽譜を渡されてとても気に入り、家でピアノを弾きながら愛唱していましたが、数十年後に対訳に関わることになろうとは…
  • オペラ本体から切り離され独り歩きが長かった「オンブラ~」は、妙に真面目な歌だと誤解されていて、その美しい旋律を神聖、おごそか、格調高い…などと形容する言葉が目につきます。しかし台本を読んでいただけば分かるように、この歌でプラタナスの木にうっとりしているセルセは、後でロミルダによってどんなに木に恋い焦がれても「葉っぱのざわめきしか返ってこないのに」と、馬鹿にされるような王なのです。その他のシーンでもセルセは短気で思慮がなく、自分の命令の曖昧さのためにロミルダとの結婚を逃してしまう、愚かな王として描かれています。好きな男を手に入れるためなら嘘も策略もいとわないアタランタや、ユーモア溢れるエルヴィーロなど他のキャラも個性的で、オペラ全体としては泣き笑いの「ラブコメ」みたいな雰囲気ですね。
  • ヘンデルの音楽もそれを的確に反映し、短く軽妙なノリのアリアが多いのですが、残念ながら当時はそれが仇になったようで、「セルセ」はわずか5回上演されただけでお蔵入りとなってしまいました。(この後2作品でヘンデルはオペラの筆を絶っています) しかし現在では演出に工夫し甲斐もあり、歌だけでなく歌手の演技にも見どころが多いヘンデル・オペラとして、とても人気があります。クスッと笑ったりニヤニヤしながら、台本と音楽を楽しんでいただければと思います。

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@ REIKO

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最終更新:2021年05月15日 20:12