"エルナーニ"

対訳

エルナーニよ一緒に逃げて(動画対訳)



訳者より

  • ヴェルディののちの大作ドン・カルロでも登場はしませんが重要な役割として印象的だった霊廟に眠る祖父カルロス5世が、このオペラでは主人公の若い恋敵として登場して参ります。あちらはシラーが原作ですがこのエルナーニの方はフランスの文豪ヴィクトル・ユーゴーが原作、もっともオペラ化したときに原作はずたずたにされてしまったのでしょうか、登場人物が皆意味不明な挙動をしています。
  • やたらと投げやりで、すぐ死にたがる割には山賊の親玉という、没落した貴族エルナーニ(ドン・ジョバンニ)、エルナーニを山賊の親玉へと追いやったカルロス5世はえらく行動的な王さまですが、神聖ローマ皇帝に選ばれた嬉しさからか3幕では恋敵エルナーニに恋人エルヴィーラをあっさりとくれてやるばかりか彼の家の復興まで許すという突拍子もない行動に出ます。
  • じじいのくせに(といっても年齢は40代後半か50代はじめくらいでしょう)後見しているエルヴィーラと無理矢理結婚しようという挙に出る貴族シルヴァは、これまたエルナーニを殺そうとしたり自分の命を捨ててでも彼の命を救おうとしたりと、状況に応じて行動が極端です。
  • このなんとも分かりにくく荒唐無稽なダブル三角関係の恋の展開は、しかしながら生き生きとしたヴェルディ初期のメロディに乗って大変魅力的なオペラとなりました。登場人物たちの唐突な心変わりや予期できない行動を気にしなければ、大変楽しく聴ける作品ではないかと思います。
  • ご用意頂いていた原語のリブレット、第2幕ですが最後の部分(第14場以降)が二つの版を両方載せていました。私の耳にした範囲では、第14場で終わる短いヴァージョンはシッパース盤ガルデルリ盤、16場まである長い方のヴァージョンがボニング盤ということでした。一応両方訳は付けましたので、聴かれる方を選んでご利用ください。

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@ 藤井宏行

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最終更新:2013年10月10日 20:21