"ルイザ・ミラー"

対訳

神よ私を罰して下さい(動画対訳)



訳者より

  • ヴェルディ中期のオペラの中では、あまり取り上げられることが多くはありませんが、この作品も大変魅力的な傑作のひとつと言って良いと思います。何より台本が素晴らしく、さすが原作がシラー(「たくらみと恋」)だけのことはあると言えましょうか。
  • 何よりも魅力的な登場人物はヒロインのルイザの父親の退役軍人ミラー、ヴェルディは数々の魅力的なバリトンのキャラクターを生み出してきましたが、この娘思いの剛毅な父親はシモン・ボッカネグラと並んで素敵なお父さんNo.1と2を争うのではないでしょうか。いや、ジェノヴァの総督としてそのスーパーマンぶりを発揮したボッカネグラに比べると、この一般庶民に近いミラー氏、我々にとても感情移入しやすいところが強みです。第1幕で娘を嫁に寄こせとねじ込む悪役ウルムに、娘の気持ちを尊重することが一番大事だと諭すところなど親父の端くれたる私も惚れ惚れと聞き入ってしまいます。
  • それだけに第3幕、自分が振られたと勘違いした領主のバカ息子(と言いきってしまいましょう)のロドルフォに娘を毒殺されてしまった時の慟哭はあまりに酷くて見ていられないところがあり、舞台で見るにはこのオペラ、世の父親にはリゴレットと並んでちょっと辛いものがあります(しかもリゴレットではジルダが自分で死を選んだようなところがあり、またリゴレット自身にも娘の死の責任の一端がありますけれども、このルイザ・ミラーではミラー氏には全くこんな目に遭ういわれはなく、しかも一旦は自死を考えた娘が、父の言葉に生きて行こうと思いなおした直後のバカ息子の愚行で娘を奪われたというあまりにやるせない展開。それでもバカ息子を罵倒するでもなく、不幸をじっと耐えている姿は痛々しいです)。
  • ミラー氏の不幸を一層際立たせているのは、このオペラの悪役二人、領主のワルターとその部下ヴルムの小物っぷり。息子ロドルフォを金持ちで権力を手にしている公爵の未亡人(ロドルフォの幼なじみでもあるのですが)と結婚させようとあの手この手の悪だくみ、たまたま息子がルイザと相思相愛であったがためにミラー家の不幸はとんでもないことになります。これでもか、これでもかと繰り出されるえげつない罠は見ていて嫌になる程です。そしてその罠にころっと嵌められて自滅するバカ息子...
  • ヴェルディのオペラでも、「ナブッコ」のイズマエーレや「エルナーニ」のタイトルロール、「アイーダ」のラダメスや「ファルスタッフ」のフェントンと、恋する若い男のバカさ加減は結構見事に表現されておりますが、この「ルイザ・ミラー」のロドルフォもその系譜に入るでしょうか。このオペラはそのバカさが導く不幸な結末が、悪役二人が小物過ぎるだけに一層際立ってしまって少々耐えがたいところでもあるのです。

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@ 藤井宏行

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ルイザ・ミラーとは

  • ルイザ・ミラーの51%は祝福で出来ています。
  • ルイザ・ミラーの18%はマイナスイオンで出来ています。
  • ルイザ・ミラーの17%は小麦粉で出来ています。
  • ルイザ・ミラーの4%は株で出来ています。
  • ルイザ・ミラーの3%は根性で出来ています。
  • ルイザ・ミラーの3%は度胸で出来ています。
  • ルイザ・ミラーの2%は果物で出来ています。
  • ルイザ・ミラーの2%は宇宙の意思で出来ています。
最終更新:2015年06月27日 08:12