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RED・MOON~2つ名狩りの魔女~第7章:戦友(とも)(2)

  {初めに…
 この作品は東風の作品「MELTY KISS」の人狼側からの話です。
 よって、その作品と世界観が同じはずですが、稀に違うところもあるかもしれません。その時は温かい目で見過ごしてください…

 仔細あってこの章は2つに分けることになった~!


   第7章:戦友(とも)



「ふ~ん。つまりレッドムーンってのはこの世界を創った神様なのか」
 大きな荷物を運びながらレントは前を歩くアムネリスに言う。
「そうよ。人はレッドムーンを神として崇めてたって言うんだから驚きよね」
「そんな神様がどうしてまた?」
「人はレッドムーンを神の座から追いやったんですって。それで、怒ったレッドムーンは再誕を掲げたの」
「なるほどね。で、そん時にレッドムーンや人狼達と戦ったのが、お前ら魔女ってことか」
「そう。当時、大魔女って呼ばれる人がいて。彼女を筆頭に戦争を起こしたんですって。それが今、私達が言う〝禍の月〟。それで、レッドムーンと大魔女は相討ちになったのよ」
「詳しいんだな」
「まぁね。私、一応先生だし。アンナマリアは当時を知る人だし、ここには古い文献があるから勉強するには事欠かないのよ。この学校だって、そもそもが大魔女がいない今、魔女達の関係を繋ぐためにできた場所なのよ。アンナマリアはレッドムーンの復活を予期して、来るべき戦いに向けてこの学校を設立したんだって。今では外に多くの姉妹たちがいるのよ」
 ふ~ん。と頷きながらレントは歩幅を広げてアムネリスの隣まで来る。
「でも、なんでその大魔女ってのはレッドムーンを裏切って、わざわざ俺ら人間の味方をしてくれたんだ?」
「さぁ? そこまでは本には書いてなかった」
「ふ~ん…あ、そうだ。最近俺変な夢見るんだよ」
「話、変わり過ぎでしょ…で、変な夢?」
「暗い場所にいるんだけど、何か巨大な物が迫ってくるような夢。嫌な夢だよ。ハッキリとはしないんだが、押し潰されそうな感じかして気持ち悪くなるんだ。嫌な予感がするな」
「何それ?」
「俺の予感や、夢はよく当たるんだぞ」
 相手にしないアムネリスにレントはムキになって言っている間に、目的の部屋に来た。扉をアムネリスが叩くと無機質な返事がすぐに返ってくる。
「どうぞ。開いています」
 その声に二人はゆっくりと入っていくと、中には純白のローブに長い髪を垂らした女性が本棚の前で本を開いていた。
「レイアス先生。言われてたの持ってきましたよ。どこに置いておけばいいですか?」
「まぁ、持って来たのは俺ですけどね」
 そんな二人にレイアスは感情の感じられない冷たい目を向ける。同じく無機質な感情の「か」の字もない言葉を口から発する。
「ありがとうございます。適当な所に置いておいてください。後は私がします」
「はい。わかりました」
 喜怒哀楽がまったく感じられないレイアスに少々戸惑うレントに対し、既に慣れた感じにアムネリスは答えレントに指示して荷物を床に置くとそのまま部屋を出ていく。レントも後を追う。
「ビックリしたわ~! なんだあの先生は? 感情をどっかに落としちまったのか? だったら、早く捜してやらねぇとあの冷たい目で死人が出るぜ」
 廊下を歩くレントは、相変わらず口悪く言う。
「レイアス先生はああいう先生なのよ。仕方ないわ。そう言う持論の持ち主なんだから」
「持論?」
「そう。『魔女に感情とは不必要な物である』らしいわ。つまり、魔法って言うのは私達の魂的ななんやらのエネルギーが、心を通して体表へ飛び出し力を生み出す物なわけで、そのエネルギーの通路である心にある感情はそのエネルギーの通りを阻害する存在であり、それを無くすことで無駄なエネルギー消費を無くし、より強い力を生み出す…らしいわ」
「ううん。多分、俺には半分も理解できてないんだろうが、変わった奴なんだな。あんなに感情を欠落させた奴は初めて見た」
「そうね。レイアス先生は確かに行き過ぎだけど。近いのなら会ってるわよ」
 アムネリスのさも当然という言葉に首を傾げるレント。そんな彼に「レイアスって名前を聞いて、何か気付かない?」とアムネリスは言う。レントは少し考えてから、少し自信なさげに言う。
「もしかして、あのレイアのことを言ってるか?」
「うん。レイアはレイアス先生の娘さんよ」
 この言葉にレントは驚いた反面、妙な納得を得た。確かに言われてみれば二人は似ていたし、冷たい目や無機質なしゃべり方はそっくりであった。
「でも、レイアの方がもう少し可愛げがあるぞ」
 いつもクルタナ達と共にいるレイアの姿を思い浮かべながら、レントは言う。
「出た。ロリコン発言」
「だから、俺はロリコンじゃねぇって! 信じろよ。俺は例え世界がひっくり返っても、チビよりもグラマラスな奴の方が好きだ」
 手を胸の前で山を作る様に動かしながら言うレントに、冷めた目でアムネリスは見つめている。が、レントは一切気にした様子もなく話し続ける。
「そう言った点で言うとシャローンやジルベルトはいいな。ジルベルトなんかいいねぇ~。あの夢の詰まり具合は、俺が一年中眠り続けて見る夢を詰めても足りないな」
 そう言いながら、レントの視線は自然とアムネリスの胸に移り止まると、大きなため息を吐きながら首を横に振る。
「どういう溜め息だ! 失礼な。いいのよ。私は! これで満足してるから!」
「諦めるなよ……あ、そうだ。エロい事するとデカくなるらしいぞ。俺が手伝ってやろうか?」
「遠慮しとく。ってか、そんなことありえない!」
「そう言うなって!」と飛びつこうとするレントをスルリと避けるアムネリス。しかしレントは諦めずに、また飛び付きアムネリスが逃げる。そんな他愛もない追いかけっこをしている二人に話しかけたのは噂をしていたジルベルトであった。
「アムネリス先生。捜しましたよ」
「おぉ! 出たな。おっぱい星人!」
 レントの軽口に、ジルベルトは「もう、やめてくださいよ~」と言いながら、若干本気でグーパンをした。受けるレントは地に伏せる。
「ジルベルト先生。なんですか?」
「アンナマリアが全教師を集めています。すでにほとんど集まっていますよ」
 どうやら急遽集められているようだ。ジルベルトはまだ報告を受けていない教師を呼びまわっているらしい。レイアスもその中に入っているらしく、これから呼びに行くそうだ。去っていくジルベルトに復活したレントは手を振りながら尋ねる。
「なぁなぁ。おっぱいってどうしたら大きくなるんだ?」
 そんな失礼な問いにジルベルトは振り返りニッコリと笑いながらサラリと答える。
「エッチ~ことすると大きくなるらしいですよ~」
「ほら見ろ! 言った通りだろ!」
「だからって、あんたには絶対に頼まんわ!」
 グヘヘ~と近づくレントに本日二度目のグーパンが飛んだ。
「まったく。じゃぁ、私は行くから」
 倒れるレントを置いて、アムネリスはアンナマリアの部屋へと向かう。一人残されたレントはゆっくりと頭を掻きながら起き上がる。
「いって~。本気で殴りやがって…ん?」
 視線を感じ背後を振りむいたレントだったが、そこには誰もいなかった。レントは首を傾げながら、しばらく廊下をブラブラと歩いた。


 アンナマリアのサンルーフにアムネリスが行くと、中にはほとんど集まっている。シャローンは入ってくるアムネリスを見ると微笑み近づいてくる。
「まったく。急ですね~。いろいろとすることがあるんですけどねぇ~」
 そう言っていると、ジルベルトがレイアスと共に入ってくる。
「これで全員ですか?」
 ジルベルトの姿を見て、教頭であるダニアが半月型の眼鏡を押し上げながら言う。ジルベルトが「はい」と答えようと口を開いた時、彼女の背後でゆっくりと扉が開きそこからイリスが入ってくると、ゆっくりと前にいるジルベルトの肩を掴んだ。
「私が呼ばれてませんでした……」
「ヒィィィィっ!」
 いつもの暗い声にジルベルトの開いた口から悲鳴が上がる。
 イリスはその悲鳴にショックを受け、部屋の隅でさらに暗くなっていた。
「私はただ呼ばれなかったことを言おうと……死のう。その方が……」
「イリス。私が悪かったわ。急にあなたが現れるから」
 落ち込むイリスにジルベルトがなだめる。いつもの光景である。そこへアンナマリアが車椅子で現れ、咳払いをすると穏やかな空気が一気に引き締まる。
 なだめていたジルベルトも落ち込んでいたイリスもアンナマリアの姿を見ると、真面目な感じになる。イリスは日傘を取り出してさすと日の中を歩く。
「皆さん。人狼、しいてはレッドムーンがここを落とさんと動いているのは既に知っていますね」
 アンナマリアの優しい声は大気を震わす。皆の顔、レイアス以外の顔が少し曇り険しくなる。
「どうやら、本格的に動き出したようです。グレーランドの少し離れた所で、人狼達の巨大な破長を感じました。ここを攻めるのも間もないかもしれません」
「それはそれは。大変なことになりましたねぇ~。でもお考えがあるのでしょ?」
 相変わらず間の伸びた声のシャローンが、丸眼鏡を押し上げながら尋ねる。それに答えたのはアンナマリアの傍に立つダニアであった。
「その通りよ。今の戦力でも充分戦えるものであると、私やアンナマリアは考えたけれども、相手は人狼とレッドムーン。多いに越したことはない。そこで、外部にいる私達の姉妹達を呼び寄せることにします」
 先生方の顔に、ほぉ。と驚きの表情を見せた。外部の姉妹達とはアンナマリアを卒業し、教師にはならずに全国に散っていった魔女達の事である。つまりはそこにいる全員にとっても同期であり、先輩であり、後輩に当たる魔女達であった。
「全員ですか?」
 思わず言ったのはアムネリスであった。ダニアは頷く。
「これはこれは膨大な数になりますね。入るかしら」
「ジルベルト先生の言うとおりです。だから先生方にはその用意をしてもらいたいのです。姉妹達が我が家に帰ってくるのですから」
 ジルベルトのぼやきにアンナマリアが笑みを浮かべ皆を見渡しながら言った。その目はまるで母親のようであった。先生達は彼女の言葉に頷き答える。
「しかし、全員収集がかかるのは確かに異例ですが、私達を呼んだのは何か他に?」
 感情の無い声を出すレイアスは、感情のない目をアンナマリアに向ける。それを受け彼女は頷く。
「実はこの学校にまだ、いろいろと内部の事を探る者がいるようなのです」
「あのグリフォスと名乗る者以外にですか?」
 イリスのビクついたように言う。
「マティレスが今も捜索しているようですが、どうもまだ人狼がいるらしい。先生達には姉妹達を受け入れる用意の合間に見回りを徹底してもらいたいのです。生徒達にもしもの事があっては困りますからね」
 アンナマリアの言葉に先生一同は「わかりました」と先ほど以上に強いものを持って答えた。
「話は以上です。姉妹達には伝え、できるだけ早くこちらに着くように言っておきましょう」
 ダニアのその言葉で会議は終了した。先生達は各々に散らばっていく。

★   ☆   ★

 惨劇のあった村は今、後片付けの最中であった。人狼達が死体を掘った穴に放り込んでいる。
 ヴァン・ホーテンは一件の家の屋根の上で空を見ていた。惨劇のショックが抜けきらないわけではないが、これでも一応仕事をしているのだ。世界中に飛び交う波を見ていた。
〝伝波〟それがヴァンの能力である。自分の破長を伸ばして干渉できるのだ。と言っても大層なことができるわけではない。その波を消したりなどはできない。ただこの能力のおかげで、《アンナマリア》との交信が実現しているのは確かである。
 ヴァンは空に網状に伸ばした破長に面白い物が引っ掛かり、さっそく報告に屋根を飛びおりる。そしてそのままマーブルを探していると、呼びとめられた。
 ヴァンはその声に背をピンと伸ばし、金縛りにでもあったかのように硬直した。
「やぁ。久しぶりだね。ヴァン・ホーテン。そんなに急いでどうしたんだい」
 少しづつ振り向くと、そこには笑みを浮かべるコロンがいた。
「何か、面白い物でも見つけたかい?」
 それは問うような言い方ではあったが、確実にそれは命令的な物が含まれていた。全てを自分に話すように。そう彼は言っているのだ。ヴァンは震え、今見つけたものについて話し始める。
「実は今、エンシャロムから魔女達の念話のような物が飛んできまして……」
 その言葉に、コロンは楽しい物を見つけた子供のように身を乗り出してきた。
「一方通行の念話なのですが、それが大量に発進されました」
「それで? それは今、どうしている」
「今のところ、僕の所で止めています」
 コロンは満足そうに笑み、立ち上がるとヴァンの方へ歩み寄る。
「それで? 何と魔女共は通信しようとしているんだい?」
「はい……どうやらこっちにいる味方達にエンシャロムへ来るようにと、収集をかけているようです」
 怯えるように言うヴァンに対して、コロンは話を聞けば聞くほどに愉快そうに喉を鳴らし、嬉々とし始めた。
「あの……マーブルさんに、このことを……」
「ん? ああ、いいんだよ。彼は忙しいからね。後でいいのさ。そんなことより」
 コロンはヴァンに肩を組むと顔を近づける。鼻と鼻がくっつきそうなほどに近づくコロンに、戸惑いの目を向けるヴァン。
「ヴァン。私の忠実なヴァン・ホーテン。私の頼みを聞いておくれよ。君の力でその念話に少し細工をするんだ。何、そんな難しいことじゃない。ただ少し『目的地に着く前に、手前の村により休む』ようにと付けくわえてくれるだけでいい」
 彼の言葉は命令と同じであった。コロンの笑みは今や凶暴な肉食獣のそれに等しい物があった。彼は更なる血を欲しているのだ。ヴァンはそんなコロンの中性的な顔を見つめ、ただ一言。
「はい。仰せのままに…」
 こうして、修正された魔女達への収集命令が空へと飛んでいった。
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