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Blancheur … Part1

  この作品は、籠龍の作品「REDMOON」と世界観を共にした作品です。
一応こっちのほうが本編となってますがそっちの方も見ると世界観が上手く補完できると思います。


Part1.meet again

Luna side


 いつもとは違う朝を迎えた気がする。布団はふかふかで、寝る時にわざわざ見張りを立てる必要もなく、食事も辺りの森で調達する必要すらない。そして、なにより嬉しいのは水浴びのことである。これのなんと嬉しいことか。いつもは川や澄んだ池の冷たい水をかぶっていた分、温められた湯は身にしみる。
 隣の部屋がどたどたとうるさい。壁越しにもわかる子供の騒ぐ声。どうやら隣の部屋は子供がいるみたいだ。こんな世の中に子供を連れて旅するのも辛いだろうに。
「…起きるか」
 ぼそりと呟き、ベッドから降りる。床のひんやりとした感触が素足に染みてきて、じわりじわりと目が覚めてくる。これに加えて冷えた水で顔を洗えばもうぱっちり目覚めるというものだ。
 少し考えたのち、洗面所に向かう。寝巻き――というより、ただ単に薄いローブを羽織っただけなのだが――のままで部屋から出るのもどうかなと思ったが、それよりも早く顔を洗ってすっきりしたい。
 部屋を出ても、誰も見かけなかった。通路の一番奥の、下に続く階段を見てここが二階だったと気づく。
 階段には向かわずに反対の通路を進み、洗面所に入る。井戸というよりも簡易式の風呂場といったような洗面所が設置してある。そこから桶で水をすくって、自分の顔にかける。
 ひんやり、という表現では生易しすぎるほど冷たい水が、私の顔を覆う。一瞬心臓が止まったような気がする。
 その冷たさに耐えながら顔を洗う。もう眠気はまったくない。完全に冷水に追い出されてしまったようだ。
 ふと、水に映った自分の顔を見る。緑色の髪は肩まで伸びており、毛先は外へとはねている。けして寝ぐせがひどいわけではない。もともとくせ毛なのかしらないが、私の髪は外ハネになってしまう。そして十代後半の、女性になる前のまだ垢ぬけていない顔つき。
 しばらくじっと見つめていたが、再び寒さが身を包んだので、急いで部屋に戻る。
 衣服を整え、身だしなみも確認し終えると、ゆっくりと部屋を出て先ほどの階段を下りる。
「おおルーナ。起きたか」
 階段を下りてすぐに声をかけられる。ここの宿は、二階、三階が宿泊用で、一階は食事をするところとなっているため、朝食をとろうとする人たちで席はいっぱいになっていた。
 しかし、先ほどの声の主は私のために隣を空けておいてくれたようだ。ありがたくそこに座る。
「ヴェアは朝が早いなあ。もう朝ごはん食べたの?」
「久しぶりにいい寝床だったからな。なんていうか、かえって寝つきが悪かったみたいだ」
「はは、なにそれ変なの。私は普通に人が多い町に着いただけで感動したけどね」
「人里離れたところに住んでた魔女の言うことじゃないな」
 笑いながらヴェアはミルクを飲む。私は店員に適当なものを注文して、テーブルの皿に盛ってあるソーセージを一口つまむ。
「んで、これからは情報収集かな。一刻も早く大神(おおかみ)を見つけないと、また村が壊滅するようなことが起きちゃうよ」
「それに、人狼もな。俺みたいなやつを増やさないようにしないと」
 そういって、ヴェアはソーセージを口に放る。
 世界はその多くが不思議なことで包まれている。もちろんそんなことに気付かない人もいるし、それが当たり前だった時代もある。
 しかし、いつだって私たちのような存在は大きく取り上げられることなくこそこそとすべきものなのである。
 ちなみにヴェアは人狼である。そして私は魔女だ。こんな奇妙な組み合わせで旅をしているというのは、どうにも滑稽かもしれない。しかし、お互いが共通の目的を持っているということから、行動を共にすることを選んだのだ。
 ヴェアは、自分を人狼にした大神、レッドムーンを倒して自分の体を元の人間のものにすること。そして、私はそのレッドムーンとは浅からぬ縁があるのだ。
 ちなみに大神というのは、そのまま大いなる神の呼び名である。魔女に力を与え、人狼を生み出し、生命を管理する。まさに万能の存在たりえるものなのだ。しかし、数百年前、レッドムーンと呼ばれた大神は一度殺された。
 その大神にとどめを刺したのは、その大神の一番の部下であり守護者であり、また理解者であった、アークという魔女だった。
 もちろん、魔女という存在を生み出した大神であるレッドムーンも簡単には殺されるはずもない。彼は死の間際に、周囲の生命その全てを刈り取り、再誕を予言する。同時に、そのレッドムーンの力で魔女アークは倒れてしまった。
 そして今、大神が再誕し世界を暴走し続けながら走り回っている。
 その大神に人狼にされたことにより、ヴェアは元の聖騎士という身分を捨てなければならない状況に陥り、現在は逃亡生活となっている。
「大神が近くにいればわかったりしないのか? 魔女なんだし、そういう不思議な魔法があるとか」
「んな便利なもんがあったらこんな苦行のような旅しないわ。そっちこそ犬でしょ? 匂いで嗅ぎ分けてよー」
「い…っ? ち、違うわ! 俺は人狼だ。つまり狼だろ! 犬じゃねえ」
「同じようなもんでしょ、ほらほらソーセージ欲しかったらお手でもしてみなさいな」
 ソーセージをヴェアの前で右に左に動かしてみる。しかし、ヴェアはそのソーセージは反応せずにこちらにまくしたてる。
「だからっ! そんな相手の居場所もわからないのになんでこんなクソっ寒い北国なんかに来たんだよ! どう考えても俺のいた街の周辺のほうが大神もいるだろ。俺がそのレッド…レッド、なんとかってやつに人狼にされたのはその周辺だし」
 私はそれを聞きながら、ソーセージを一口かじる。
「あのねぇ、前にも言った通り大神の移動力は尋常じゃないの。一晩で山ふたつみっつ越えるくらいわけないの。そんな奴に真っ向勝負で追いつこうとするなんてどうかしてるよ。この町でレッドムーンの情報を得たってその次の日にはまったく別のところにいるかもしれないんだから」
「む…じゃあ、何かいい案があるのかよ」
「魔女ってのは基本的に一人で行動したがるもんだけどね。こういった緊急事態には魔女同士で助け合うものよん」
 私はにやりと笑ってヴェアを見つめた。

Hound side


「ぶぇっくしょんっ!」
 こんな寒い国に来るとは思ってもみなかった。寒さで何か新しいものが生まれそうだ。
「しかし、ヴェアの野郎はこんなとこまで逃げてきて何を企んでるんだ…」
 空を見上げると、祖国の青空とは全く異なった、灰色で埋め尽くされている。時折雪でも降るのではないかというほどに冷え込む時もあり、暖かいところで過ごしてきた自分にはかなり辛いところだ。
「ま、そんな寒さもこのハウンド様のテンションにかかればいっきに熱帯になっちまうけどな!」
 びしっと人差し指で高らかに天を指す。まったく、こうしていれば寒いことなど何もない。
「…やれやれ、ハウンドさんは本当にぶっとんでますね」
 そこに、後ろから声をかけられる。振り向くと、そこには自分よりもややすらりとした青年が立っている。目鼻も整っており、その造形の良さから女性にも見えるほどではあるが、彼は男だ。
 わきに抱えている、自分の顔よりも大きいのではないかというくらいの大きさの本が目印だった。
「おうマタギ。こんな寒いのに相変わらず涼しそうな顔してんなあ」
「いえいえ、これでも凍りつきそうなくらいなんですよ。その点、同じ聖騎士でもハウンドさんは寒いのが平気そうですね。さすがですよ。やっぱり鍛え方が違いますね」
 にっこりと笑顔で返してくる。
「まーな、せっかく寒いとこに来たんだしなんか食いに行こうぜ。熱いもんか辛いもんでも食えばもうこんな寒さなんて気にならなくなるぜ」
「え、ヴェアさんを追うんじゃないんですか? せっかく僕の部下も何人か連れてきてるのに」
 マタギは虚を突かれたかのように目を丸くしている。俺はその表情を見て鼻で笑ってしまう。
「まだまだ青いな、マタギ。これだからお前ってやつは…」
 ぽん、とマタギの肩に手をおいて彼を見る。
「いや、ハウンドさんただ寒いだけじゃないっすか…? 手ぇめっちゃ震えてますよ」
「ばっ、んなことねーって! 俺はアレだよほらアレ、お前らにいいもん食わせようとしてただけだぜ! まあお前らが遠慮するんだったら別にいーけどな!あー、真っ先にヴェアの野郎をぶっ飛ばしたかったからよかったぜ!安心したぁー」
 そう言って、一行は街中を進んでいった。凍えるような寒さの中、笑い声だけがこだましていた。

Vere side


 雪が積もってきた。
 雪なんて俺は見たことがなかった。もともといた街は温暖な気候だったので、特に寒さを気にする必要もなく生きてきた。しかし、この寒さは尋常ではない。人を寄せつかせない何かがある。
「ここはね」黙って歩いていたルーナは、ふと突然口を開いた。「氷の魔法が得意な魔女が住んでるんだ」
「はぁ? そりゃわかりやすいところに住んでるなあ。そんじゃあ炎の魔女は火山にでも住んでるのか?」
「まあ、自分の魔法が一番届きやすい場所に身を置くのは魔女として当たり前のことだよ。火山だって、近くにいくらでも自分の力の源となるものがあるわけだし。そうやって自分の得意な場所に住んでいれば聖騎士とかに攻め込まれても対応できる」
「…ああ」
 ルーナはこちらを振り向かずに、俺の前を歩いている。彼女の表情はわからないが、怒っているのと悲しんでいるのが両方混ざっているようだった。
 聖騎士は異端者を許さない。もちろん、何をもって異端とするかなんていうくくりはほとんどない。犯罪を起こすか、人間以上の力を得るかのどちらかによって、聖騎士は動き出す。
 後者の理由なんてのは、特に理不尽である。聖騎士を統括する聖教会が異端だと決めつければそいつは絶対的に異端者となる。ルーナのように、それほどもめ事を好まないような魔女でも、探し出して殺すことも多いだろう。
「聖騎士なんて、正義の味方じゃないさ。ただの殺戮好きか、よっぽどの変人か、もしくはただのバカの集まりだ」
「ヴェアはどれ?」
 その質問には答えず、俺は道の先を見つめる。雪山がごうごうとそびえ立ち、頂上が見えない。この寒さと残りどれくらい歩けばいいのかを考えると、軽くめまいを覚える。
「ヴェアはなんで聖騎士になったの」
「忘れたよ。成り行きみたいなもんだったと思う」
「聖騎士になって異端者を殺した?」
「異端者はそんなに見つかるもんじゃない。俺は、最初に出会った異端者とやらがレッドムーンだった。それ以外は基本的に凶悪な犯罪の犯人とかを非公開に処刑してた…教会の奴らは断罪って言ってたけど」
 ルーナはそれを反芻する。
「断罪、断罪ね。それはまた大そうな御身分だわ」
「…まったくだ」
 そこまで言うと、ルーナは足を止める。
「ここ、ここが目的地」
 ぽつりと言う。しかし、目の前には相変わらず白一色で、建物らしき影も形も見えてこない。
「あん? とうとうボケた――でぇっ!」
 ルーナに思いっきり蹴られる。
「失礼だなー。魔女が住んでる場所が人目につくはずないでしょ。ヴェアは幻覚を見てるんだよ」
「なに、そうなのか」
 すぐに目に魔力を集中させる。魔力の基本的な扱い程度は旅の途中でずっとルーナに学んでいたのだ。目や鼻、耳など感覚器に魔力を集めることで、その感覚をより人ならざるものに近付けることができる。もちろんルーナはそこに自分の得意な分野である風の魔力を乗せることで、さらに広範囲、精密な魔術を扱うことができる。
 ルーナのアドバイスで、人ならざる視覚へとかわるとすぐに今までの景色がまったく違うものであるとわかる。
「こ、これは…館?」
 そこには雪のような白い壁の、古びた館がたたずんでいた。
「ここに住んでるのは冷嬢のルピス。その力は人を死に至らしめるほどの凍てつく氷と、見た者すべてを魅了し死ぬまで操るという…」
「へえ…な、なんかお前の友達には思えない感じの奴だな」
 素直な感想を述べる。しかし、そこへ新たな声がどこかから割って入る。
『ちょっと! 違うでしょルーナ! 適当に嘘ばっかり言わないで! 本気にしちゃってるじゃない!』
「…?」
 館から声がする。どうやら、こちらの話を聞いていたようだ。
「…」
 ルーナも俺も、少しの間沈黙している。
「ま、今言ったルピスの特徴はまだ優しい方で、一説には人の肉をそのまま食ったことがあると――」
『ないよそんなことっ! そんなところで立ってないで早く入ってきてよ! 扉は開いてるから』
 再び聞こえてきた慌ただしい声の後に、館の入り口の重々しい扉がゆっくりと開いていく。どうやら今の声の主がルーナの言うところのこの館の主、冷嬢のルピスのようだ。
「ま、実際は今みたいな子なんだけどね。からかうとおもしろいから時々会ったりしてる」
「…」
 まさにルーナのお友達といったところか。とりあえず中に入る。
 中は思ったより暖かいようだ。氷の魔女というから、館の内部まで氷づけにされているかとも思ったが、案外そうでもないらしい。そのことをルーナに聞いてみると、「さすがに魔女といっても化け物じゃないよ。氷の魔女だって凍死するし、炎の魔女も何の魔法もなしに炎に包まれたら焼け死んじゃうからね」と言った。案外そういうものなのかもしれない。
 館を進んでいくと、すぐに大広間のような場所に出る。ここが応接間なのだろうか、中央には大きなテーブルが置かれており、その上にはごちそうが並んでいる。
 そして、俺達の目の前には、一人の女性が立っている。
「ようこそ、私の館へ。そよ風のルーナと…確か人狼のお方」
「ん、もうこっちの事情はわかってるみたいだな」
「うわさ程度には。魔女は自分なりの情報源を持ってますからね。それにルーナが来るとわかってましたし」
「ということは、あんたがルピスさん、か」
 真っ白なワンピースを着た女性だった。見かけでいえば、ルーナよりも少し大人っぽい。ルーナが十代半ばから後半とするならば、目の前のルピスはおそらく二十代半ばといったところか。おれと同い年くらいなのだろうか。
「はい、私が冷嬢のルピスです。人狼の方、どうぞよろしくお願いしますね」
 微笑みながら、ルピスは手を差し出す。
「ああ、こっちはヴェアだ。人狼ってのはまあ合ってるけどそんなに言わないでくれ。あんましよくは思ってないしな」
「ああ、そうでしたか。それではヴェアさんと呼びましょう」
 先ほど門の前で聞こえたあのにぎやかな印象とはかなり違う、落ち着いた女性である。まさに二つ名の通り令嬢を感じさせる。
 ルーナが横からひょいと出てきて、ルピスを見る。
「やあ、ルピス。久しぶり。五年くらい会ってなかったっけ」
「ほほほ、六年くらいじゃなかったかしらあなたと会うといつも厄介なことに巻き込まれますからね」
「それはいつも私のせいじゃないでしょうが。周囲の環境が私を放っておかないのよ。しょうがない」
 にこにこと笑いながらも、両者の間はなにか違和感のようなものが流れている。
「ちなみに人肉はおいしかった?」
「だから食べてないって言ってるでしょ!」
 べしん、とルピスがルーナをはたく。しかしすぐに俺の視線に気づいたかと思うと、ほほほ、と口元に手を当てて微笑み、何事もなかったかのようにくるりと振り返る。
「さて、と…それでは食事にしましょうか。おそらくお二人ともあまりぜいたくな生活をしてないんじゃないですか?ここで少し休むといいですよ」
 ルピスはそのままテーブルの方へと歩いて行く。
「…あいつ、今猫かぶってるから」
 ルピスに聞こえないように、ルーナが耳打ちしてくる。俺は少しだけうなずいて、そのままルピスについていく。まあ、彼女が隠し切れていないのは俺でもわかる。静かな歩き方がぎこちないし、ほほ笑んだときの表情もどこか強張っている。
「…あいつのクセみたいなもんなんだよね。いつも初対面の人と会うとああやって自分を隠すんだ」
「そうなのか、まあさっきからそんな気はするけど」
「言葉遣いとか、話し方は別に変わらないんだけどさ。なんていうか、妙に構えちゃってるんだよね。いい大人であろう、とかそんな感じ」
 少し、面倒くさそうに、しかし心配そうにルーナが後ろでつぶやく。
「まあ、あの子なりの背伸びなんだろう。多分そのうち素が出てくれるよ」
 テーブルに三人が座ると、ルピスは食事の前になにやら祈りのようなものをしてから食べ始めた。その祈りもまた格式ばった感じの難しそうな言葉を並べたてたもので、ルピス自身もうろ覚えのような感じだった。
「それはそうとルーナ、ここへは何しに来たの? ただ遊びに来たってわけじゃなさそうだけど」
 食事をしていると、ルピスが話を振ってきた。
「んー、大体あんたの予想通りだと思う」
「そう…まあ人狼を連れてきたときからなんとなくは予感してたけどね。何を探せばいいの?」
 ルピスはあきれた様子でルーナを見る。
「理解が早くて助かるわ。ちょいとレッドムーンを探して――」
 その言葉は、ルピスが食器を落した音で断ち切られる。開いた口が塞がらないまま、ルピスはルーナを見る。対するルーナは、あっけらかんとしながらそのまま食事に手をつけている。
「レッドムーン? 大神の? まさかとは思うけど、このヴェアさんて、レッドムーンの力で人狼に…?」
「そう。珍しいでしょ。私が追い求めてきたものよ」
 端的に言う。しかしルピスはそれでは納得しないようで、あわてて立ち上がる。
「ば、ばか言わないで。レッドムーンっていったら大神の始祖も始祖じゃない。そんなもの探し出してどうするの?」
「決まってるでしょうが。ぶっ飛ばす」
 にやりと、初めてルーナがルピスに笑いかける。ルピスはその凶悪な笑みに一瞬たじろぐが、それでも譲らない。
「あなたは風の魔女でしょうが! まともな攻撃手段もそんなにない風の魔術でどうやって大神に対抗するの!」
「こっちにはヴェアもいる」
「ヴェアさんだって、まだ力を使いこなせてないみたいじゃない…そんな状態で挑むなんて自殺もいいとこだわ」
「ルピスも手伝ってくれれば」
「私だって…せ、戦闘には向かないわよ…多分、ルーナたちを巻き込むことになるだろうし」
「大丈夫」
「何が大丈夫なの?そうやって適当なこと言って…」
「あー、ちょっといいか」
 さすがにそこで俺も割って入る。この二人は多少ものを言い合える仲のようだが、その議題が自分のことに関係してるなら出ざるをえない。
「まず、俺たちはレッドムーンを探しているんだが、その探索のために君の、ルピスの力が必要らしいんだ」
 ルピスは答えない。
「ルピスの氷はね、目になり耳になり、広域に飛んでいって雪となって降り積もるんだよ」
 ルーナが補足する。なるほど、そういうことでこの魔女の力が必要だったのか。納得しながら、ルピスを見る。
「ルピス、頼む。位置を探ってくれるだけでいいんだ」
 しかし、ルピスは何も答えない。ただただ黙って顔を伏せているだけだ。レッドムーンへの脅威は確かにわかる。俺も、自分の人狼を治すために必要だと言われなければ、あんな化け物とは絶対に会いたくないだろう。
「…私にそんな期待、しないでよ」
 そう言い残して、ルピスは部屋を後にした。ルーナは、部屋を出た彼女を見つめながら、しかし何も言うことはなかった。
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