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RED・MOON~2つ名狩りの魔女~第8章:見えざる者(2)

  {初めに…
 この作品は東風の作品「MELTY KISS」の人狼側からの話です。
 よって、その作品と世界観が同じはずですが、稀に違うところもあるかもしれません。その時は温かい目で見過ごしてください…

 仔細あってこの章は2つに分けることになった~!


第八章:見えざる者



「俺が今まで行った中で一番心に残る所って言えば、そうだな。中立国アランスの南に位置する青海と紅海のちょうど交わる所は、そりゃスゲーもんだぜ。圧巻だね。まぁ、あそこは争うごとは滅多にないから、大して滞在はしなかったんだが、あそこは面白かった」
 午前の授業が半分終り、しばしの休憩時間。レントはバルコニーに腰かけ、隣のアムネリスに旅の話をしていた。外の世界をあまり知らないアムネリスにとってはどれも目新しいことばかりで、どれも興味深く聞いてくれるので、レントとしてもついつい話に熱が入る。
「へぇ~、見てみたいな~」
「だから一緒に見に行こうぜ」
「はいはい。いつかね」
「んだよ。俺はガチだぜ」
「アランスか…永世中立の国よね」
「そうさ。あそこはいろんな人種が唯一、一緒にいられる場所だ」
「あらそう? もう一か所あるわよ」
「そんなはずはない」
「あるわよ。魔都・ヴァルキアがね」
 悪戯っぽく笑みを浮かべて言うアムネリスに、レントは首を振る。
「ヴァルキアは伝説の都市だ。存在しない。だから理想郷、だから魔都なんだ」
 かもね。と含みを持たせる言い方をするアムネリスは視線をレントから外へ向けると、暖かな風を受けて髪が靡く。
「もうすぐ、ここの卒業生達が集結するの。私の同期達もいるわ。仲の良かった子もね。今は若い子に魔法を教えているらしいわ。私ね、こういう状況で不謹慎だけど、ちょっと楽しみで」
「どんな時だって、友に会うのは嬉しいよ」
 二人の間をまた風が吹く。
「いい風」
「嫌な風だな」
 同時に発した二人の言葉はまるで正反対の言葉であった。驚いたようにアムネリスはレントを見たが、彼は彼女を見なかった。遠くの空を見ている彼の目はまるで冗談を言っているような感じではなく、それは警戒に全身のアンテナを張り巡らせた獣のようにピリピリとしたものであった。
「どうしたの?」
 いつもとは違うレントに戸惑いながらも、アムネリスが尋ねると彼は視線をアムネリスに向けて険しい顔をする。
「嫌な感じがする。凶兆だ。お前から今の話を聞いた瞬間、寒気がした。風に死臭が混じったような血生臭いのを感じた。その魔女達。もし連絡手段があるんなら。一旦、退き返らせろ」
 バルコニーから降りると、レントはアムネリスの肩を掴む。意味がわからないと顔をするアムネリスだが、レントの顔は真剣そのものであった。
「俺の直感は当たる。信じてくれ。アンナマリアに伝えてくれ」
 それは懇願する言葉であったが、相手に有無を言わせない程に切羽詰まったものが含まれていた。アムネリスは頷いて、走り去る。レントは去っていくアムネリスを見送りながら震える自らを抱く。
「なんだ? この寒気…」


 そんな様子を物影から見ているのはリアナ、クルタナ、レイア、ルディアナであった。彼女らは仲良く並んでジ~っと二人を覗いていた。
「ま~た、あの二人、一緒にいる」
「ねぇねぇ。これって、あれなんじゃない? あの二人。もしかして…」
 リアナとクルタナがそりゃもう楽しそうに盛り上がっている中、相変わらず無表情のレイアに、首を傾げているルディアナ。この《アンナマリア》に男は基本的にはいない。だから恋愛話などありはしないのだが、稀にこうしたことがあると。それはもう、待ってましたとばかりに噂の種になるのだ。
「やっぱり、あの二人付き合ってるのか?」
「噂だけど、レントが室長の部屋から出てきたの見た子がいるんだって~」
「ええ~! 誰よ。その子」
「知らん」
「なんだよ!」
 リアナとクルタナは完全に二人の世界に入っている。
「こら! もう授業始まってるわよ。リアナ」
 厳しい声にリアナは驚いて振り向くと、その声の主はリアナの耳を引っ張る。
「痛い痛い痛いよ~! お姉ちゃん止めてよ!」
 そこに立つのはリアナによく似た女性であった。名前はソーニャ・マックリーン。最高クラス・マグアスの生徒であり、リアナの実の姉であった。
「何、授業サボってるのよ!」
「サボってないよ! 大体、お姉ちゃんはどうなのよ!」
「私はいいのよ。マグアス組は警戒なんたらで、授業がないのよ」
「な? なんで私達だけ、授業なのよ!」
「つべこべ言わずにさっさと…って、うわ!」
 アムネリスと別れたレントが角から現れ、ソーニャはダイナミックに驚き飛びあがった。レントはリアナ達を見ると軽く手を上げ「よっ!」と、すると彼女らも同じように片手を上げる。そして視線は飛び上がったままの形で固まるソーニャに視線が行く。彼女は動かない。
「……どうした? なんかの魔法か?」
 動かないソーニャに心配そうに尋ねるレントだが、彼女は顔を引きつらせ答えない。完全に顔を真っ赤にしている。面と向うにはあまりにもレントの顔は美し過ぎた。
「大丈夫……っ!」
 ソーニャに近づいて行ったレントだったが、急に振りかえる。その動きは彼女らが捉えるにはあまりにも敏捷なもので、まるで捕食獣の動きにも似た敵意ある行動であった。それは何もない壁へ向かって、レントがポケットにしまってある銀製のナイフを投げ付けていたのだ。

★   ☆   ★

 その者は夜を歩き、昼を歩き。どこでも歩いていた。その者は見つかることがない。今までもそうだった。これからもそうだろうと思った。その者はそう思っていた。多少は注意が必要ではあったが、それでもなんら不自由なく動くことができた。しかし、外から来た人間は違った。金髪の男は違った。そいつはその者を事あるごとに感知していた。感じ取り警戒していた。これは断じて許されない事象であった。それはその者にとって、一切の意義を掻き消すには充分なものであった。
 何とかする必要がある。だが、下手に動くわけにはいかない。だからその者は男を監視した。なぜ感知が可能なのかは不明であったが、この男はあまりにも他を逸した物を持っているのは明らかであることが判明した。これはその者達の計画に異常をきたす能力である。現に今だって……
 男は魔女達と話している。その者はゆるりと近づいた。これ以上、邪魔をされるわけにはいかない。すでに命令は出ている。あとは合図を待つだけだ。ギリギリの間合いまで詰め、息をひそめる。高々、ただの人間を仕留めるのは雛を狩るようなものだ。
 その者は身をかがめ、準備は整った時、男が急に振り返ってきた。

★   ☆   ★

 ナイフを投げたレントに一瞬反応できなかった周囲だが、レントは彼女らに気を止めることもなく別のナイフを取り出し、投げた方へ向かった。
「ナイフが……」
 リアナが驚愕の声を上げた。レントの投げたナイフは壁に激突する前に止まり、宙に浮かんでいたからだ。
 レントはその方向へ手を突き出し、何かを掴むと力一杯に地面に叩きつけた。床に何かがぶつかる音が聞こえる。と、今まで何も見えなかった床の空間が波のようにぶれると、そこには狼頭の者が。
「人狼?」
 リアナが上げた驚愕を遥かに超えた驚愕の声を上げたのはルディアナであった。クルタナ達が支えなければ今にも倒れてしまいそうなほどだ。しかし、ルディアナ程ではないにしろ、皆の表情が強張る。それはいつも無表情のレイアも例外ではない。目に珍しく不安の色を見せ、白い顔を一層白くする。
 その場で唯一、平穏を保っていた者。唯一傲然としていた者。それがレントであった。彼は床に押し付けた人狼からの反撃を軽いステップで回避し、距離を取った。もっとも強靭な人狼にとってそれは間合いの中であるが、不注意には襲いかかってはこなかった。
「お前か……いつもいつも嫌な気配を漂わせてたのは」
 レントは人狼を見ても一切、動じない。ナイフを握りなおし、不敵にも笑みすら浮かべている。人狼は話しこそしなかったが、その目には人間に自分が見つかった事に対しての羞恥と、憤怒が交互に光っていた。
「なんてこと……見えない人狼? は、早く先生を」
 ソーニャが軽くパニックになり、アタフタしているのを見てレントは両手を広げて見せ、高々と声を張る。
「少女達よ。戦え! 俺と共に。そして歓喜せよ。この俺がここにいるということを!」
 その姿はあたかも聖堂に飾られる絵画のように、子供が夜に親から聞かされる勇者バリスタンスの冒険の一シーンのように、人の目を、そして心を引き寄せるものがあった。
 レントは対面する人狼へと向かい、ナイフで切りつける。変幻自在を思わせる彼の攻撃は人狼の体を舐めるが、分厚い毛皮は容易にその中までは徹してはくれない。おまけに人外の運動能力に反射神経ときている、当てることもままならない。
しかし幸いなこともあった。この人狼は姿を消す、もしくは見えなくする能力の持ち主であり、攻撃型の能力者ではないことだ。そうはいっても、人狼の一振りで人間なんてものは押し潰されてしまう。
人狼の反撃にレントはしなやかな体をくねらせ、器用に躱していく。涼しい顔をしてはいるが、その顔には笑みはなく、背中には嫌な汗が流れる。
「ちょ、お姉ちゃん。何してるのよ!」
 レントの必死な攻防をただ見るソーニャにリアナは言ったが、ソーニャは困った顔をしながら思案している。
「早く、レントを助けないと」
「……でも、校内での魔法の使用は……」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ! この真面目バカ!」
 そこにいるのはソーニャとリアナ。そしてレイアである。攻撃系には全くダメなクルタナはさっさと、倒れそうなルディアナを連れ先生を呼びに走っていた。
 先生が来るのを待つ待たないで、言い争う姉妹を余所に、やはり身体能力の差でだんだん不利になってきたレントを加勢したのはレイアであった。
「私は命ず、風よ。レントを守れ」
 襲いかかる人狼とレントの間に風が発生した。
「風よ。人狼の動きを封じろ」
 淡々と無機質な声色のレイアは魔法を放つ。風に付きまとわれる人狼は忌々しそうに舌打ちをする。風の枷が次第に彼の動きを鈍らせた。
 レントは前へ。強靭な体躯の人狼にとっては、レントの持つナイフなど玩具にしか見えないだろう、切れ味もレントも持つ魔剣ネスティマに比べれば〝切れない〟と同義語で結べるレベルだ。しかし、なんであれ殺す術はある。それは刺突。それも鍛えられない場所を狙えば刺せば、相手にダメージは与えられる。そしてレントの狙いは人狼の目であった。身を屈め、俊敏に近づき一気に襲いかかった。刃は人狼の左目めがけていく、が、さすがと相手を褒めるべきだろう。人狼のなせる技だ。危険を感じた人狼はすんでの所で頭を逸らす。刃は目のすぐ左を削る。舌打ちしながら即座に距離を取ろうとしたレントだが、ついに人狼の手に肩を掴まれた。骨の軋む音がした。痛みにレントの顔がゆがむ。
「私が命じる。風よ。突風となれ」
 レイアの声と同時に、レントを巻き込んで突風が人狼を襲う。背後の壁に叩きつけられた。
「ッグ。魔女が……」
 人狼が口から呪われた言葉のように漏れた。
「我、命じる。善なる万力によりて、我に力を貸せ」
 口論を終えたリアナが目前まで迫っていた。まったく気配がなく、瞬間的にその間合いまで迫っていたので、人狼は面喰う。突き出されるリアナの掌。それに人狼の本能、直感というべき寒気を感じ彼は身を翻して避けた。リアナの掌は強固な石造りの壁を最小限の範囲で粉砕する。
 恐怖すら感じさせる一撃であったが、人狼は少し顔をしかめただけで、すぐに体勢を整えリアナに一撃を入れんと彼の爪が迫った。
「私が命じる。邪魔しろ」
 風がぶつかり、人狼はぐらつき彼の爪はリアナを掠めるように通過した。激しい苛立ちに舌打ちをし、目は怒りでランランと輝く。しかし、その顔はすぐにしかめられた。脇腹に激痛。
「俺を忘れんなよ」
 レントが人狼の脇腹にナイフを突き立てる。渾身の力で刺したにもかかわらず、刃は半分も入らない。レントが捩じると、人狼の口から苦痛の声が漏れた。人狼の横一閃を、レントは身をかがめ躱すとナイフが突き刺さる脇を蹴りつける。さらに深く刺さりついに人狼は声を上げた。よろよろとさがる人狼の体が徐々に消えていく。逃げるつもりだろう。その時、今まで黙っていたソーニャの声が聞こえる。
「は~い。ちょっとどいてて」
 見ればソーニャは右手を突き出し左手は手首に添えている。
「我、命じる。善なる万力によりて、我に力を貸せ……
 死の標的(シームブル・モルス)」
 ソーニャが新魔法により強化し、旧魔法を放つ。彼女の手から放たれた光は人狼の目前で分裂し杭となる。身を翻した人狼であったが、杭の一つが彼の右肩を抉り壁に叩きつける。すると分かれていた杭達が彼の右腕に次々に突き立ち、まるで壁に磔にされるような形となる。痛みに彼は声を上げた。完全に固定された右腕のせいで逃げられない。
「我、命じる。善なる万力によりて、我に力を貸せ」
 動けない人狼にリアナが迫る。再度、壁を粉砕して見せた攻撃をする気だ。人狼は歯を食いしばり、爪を右の肩口に突き立てる。この時ほど強靭な肉体を恨めしく思ったこともないだろう。そう簡単には切断できない己の体を、何度も何度も爪を突き立て、抉り、引き千切り、彼が食いしばる歯から悲痛の呻きを漏らし、白目を剥きながら右腕を体から引き千切り離脱しリアナの攻撃を躱した。
 噴き出す血に、人狼は右の肩口を思いっきり叩きつけ、全身の筋肉を引き絞り止血した。そして、姿を消しながら逃げていく。追いかけて追いつけるものでもない。
「お姉ちゃん。もう一回あの技を!」
 リアナは期待を込めて、ソーニャに言ったが、彼女からはあっさりと一言「無理」と返ってくる。どうやら、相当疲労するらしく、二回目を撃てる力はないようだ。
「追いかける」
 レイアが既に見えなくなった人狼の方を見ながら言ったが、レントは首を横に振った。
「いや、無理だ。完全に気配を消した。こうなったら俺でも追えない。後は先生方に任せよう。だから……
 今は勝利に酔いしれろ!」
 そう言って、レントは両手を広げ片足を上げポーズを決める。リアナとレイアほぼ同時に同じくポーズを決めた。ドン引きした目でソーニャが見ていた。
「え? 何? それ流行ってるの?」
「……これから」
 冷たい視線に低温火傷したレントは痛々しく答えた。


 だいぶ逃げた頃、城の奥の陰になる場所で人狼は肩で息をしながら姿を晒した。その姿は人狼ではなく、一人の若い男である。顔は青白く、目は虚ろになっていた。痛みに声を漏らしながら脇腹のナイフを引き抜く。血が噴き出し口から惨めに声が漏れた。
『大丈夫か?』
 頭に中で声がした。
「はい。大丈夫です。クソックソクソ。魔女と人間ごときに後れを取るなんて、殺してやる。あいつら皆殺しだ!」
『落ち着け。今は姿を消して、ゆっくりと休むんだ……動けるか?』
 頭の声の声色が変わったのは彼が再び姿を消した時だった。
『早く、その場所を離れろ!』
「何か、あった……」
「誰と話しているのかな?」
 背後からの声に押し黙り振り返ると、そこには目元を布で隠す男……否、すでに人狼が立っている。マティレスであった。
 人狼は息をひそめ、脇腹の血を止め後ずさる。やはり見えてはいないらしく動いても彼は何も動じない。
(大丈夫です。奴には見えてない。このまま、逃げ切ります)
『バカ! 交信は控えろ』
 人狼がそう言った瞬間。激しい叱咤が飛んできた。そして同じく、マティレスも動いた。今まで石のように動じなかった彼が、真っ直ぐ若き人狼へ向かい捉える。彼は反応もろくにできず、顔を掴まれ壁に叩きつけられる。
「君を捉えるのは難しかった。破長すらも見えなくなるからだ。しかし、やはり奴と交信するときは隠しようがないようだ」
 マティレスはニヤリと牙を剥き言った。
「しかし、見えない敵とはまさに我ながら〝盲点〟だ。苦労した。いくら破長の見える私でもね。さて、君の記憶を見せてもらおう」
 マティレスは人狼に顔を近づけ目元の布を外す。

★   ☆   ★

 アムネリスはアンナマリア達にレントから聞いた事を話していたが、レントの勘だけではどうにも説得力に欠けるものがあり、アンナマリアや教頭のダニアは少し思案げな顔をしている。アムネリスは助け船を出してもらおうと、隣のシャローンを見るが、彼女も顎に手を置き目を閉じている。
「今すぐに、呼び出しをかけている姉妹達に退避を……」
「しかし、根拠のない話を間に受けるのは。ましてやオームの言葉です」
 アムネリスの言葉をダニアが一蹴すると、「しかし」とシャローンが口を開いた。
「あのレントがただのオームではないのは確かですよ~。この隔絶された《アンナマリア》を探し当てたのも彼ですからね~。かといって彼を信じきるのも問題がありますし……どうでしょうか。一度、姉妹達には身を隠すようお命じになり、少しばかり調べてみては、校内にいると想定される人狼も何か関係しているのかもしれませんからね~」
 シャローンの言葉にはダニアも少し納得した感じに頷く。
「校内の人狼は問題ない」
 シャローンの意見でまとまった中、声と同時に戸が開き入ってきたのはマティレスであった。彼は中へ入ると、片手に持つ片腕のない若い男の死体を投げた。アムネリスが小さな悲鳴を上げた以外、後の者は表情一つ変えない。
「人狼を見つけた。どうやら私が見つける前に、何者かと戦ったようだな。死にかけていたが、情報は掴めたよ。それによると、私はアムネリス先生の意見には至って賛成したい」
 彼の言葉に今度はその場の皆の顔色を失わせる。
「どういうことですか?」
 落ち着いたアンナマリアの声に、マティレスの答えは簡潔だった。
「ここの動きはアルタニス(あちら)には筒抜けであるということだ。私がアルタニスならば、何か仕掛ける」
「あちらと交信できるのであれば、私達が姉妹達へ送った波は既に勘づかれているというのですか?」
「恐らく。それから、この学校にはもう一人、動きまわる者がいる。ここいる者達のリーダーらしいが、どのような能力なのかも不明である。もしかしたらその者の能力も関係してくるかもしれん」
 マティレスの言葉に、アンナマリアは小さく溜め息を吐くと凛とした声を上げる。
「ダニア。私は姉妹達の持つ音無玉を割ります。各教員の方に学校中を探しまわらせなさい。何としてももう一人を探させるのです。マティレス。その者の名前はわかりますか?」
「エアロ」
「幽閉中の者はいかがなさいますか?」
「あの者を殺してはなりません」
 ダニアの問いに答えるはマティレス。
「これほど捜して見つからないのであれば、かなりうまく姿をくらませているのでしょう。しかし、グリフォスとの交信のみが奴の破長を引きだせる場所。見つけたくば、あの者を生かしておいてください」
「しかし、それではこちらの動きが筒抜けなのでは?」
「私の王が言っていました。相手に筒抜けならば、渡してやればいいと」
 ゾッとする笑みを浮かべるマティレスに、顔に出さなかったがアンナマリア以外の者が寒気を覚えた。
「そうですか。ではあなたにお任せします。では……」
 そう言うと、アンナマリアは炎に包まれ煙と共に消えた。

 しかしその頃、アルタニスの待ちうける村へ足を踏み入れた者達が…
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