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maguSky -メイガスカイ-


※お題小説の下書き的な、プレお題小説(?)です。だからと言う訳じゃないですが、オチがやっつけです。
 これを元に追加したり改稿したり追加したり改稿したり削ったり削ったり削ったり改稿したりします。
 何となく、自分の作品の書き方を客観的に見直す為に夏冊子に提出する所までの遍歴をアップしていこうと考えてます。
 何か意見とかを頂けると何であれ、非常に助けになります。
 直接なり、チャットなり、掲示板なりで頂けるとありがたいです。






◆◇◆




 光の尾を僅かに曳きながら、ペルシェは両手で握り締めた箒の柄を下へと強引に押し込んだ。
 無理矢理な急速降下。
 ペルシェの短く切った波打つ金髪が後ろへ乱れて流れる。黒い三角帽子はどう言う訳か脱落せずにペルシェの頭を飾っていた。
 穂先から漏れ曳かれる魔七(マナナ)の光を掻き消すように豪炎が空を焼いて貫く。
 日の光に極端に弱そうな細工物のような碧眼を細め、ペルシェは箒の柄を必死に操った。黒い影がペルシェに覆い被さる。柄を右へ一杯に引っ張りペルシェは急速右旋回を行った。猛烈な重力加速がかかり、全身で抗いながらペルシェは旋回を終えた。巨大な影は後方を過ぎ去って行く。すぐさまに急速上昇。水平に。前方を睨む。
 赤褐色の長い尾が揺らめき、大人3人分はあろうかという翼を広げて空の魔獣、レッドドラゴンが滑空していた。
 レッドドラゴンが両翼を水平に広げ巨体を傾けた。左旋回に入る。
 ペルシェはこのまま交戦を続けるべきか迷った。交戦時間は時計の針が1回転はしている筈だ。
 ペルシェの魔七はもう尽きかけているし、何よりも集中力が限界である。このままでは些細なミスで焼き殺されかねない。
 眼下を見れば幾つかの村々が見える。自分が撤退したらこの村々はどうなるのか。新しく住みついたこのレッドドラゴンはドラゴンの例に漏れずに縄張りに大変敏感だ。彼らを守るのがペルシェの使命だが、結果は逆にレッドドラゴンを怒らせるだけに終わりそうだった。命を捨てて守りたい。そうペルシェは願う。だが、それは逃避である事も知っている。
 自分を殺しただけでレッドドラゴンは満足するのか。自分を殺した後、村々を焼かれたのでは自分が死ぬ意味が無い。いや、それもまた死から逃げる為の逃避なのか。ペルシェの頭の中をぐるぐると迷いと未練が旋回し、思考を鈍らせる。
 そして、気付いた時には遅かった。
 レッドドラゴンは旋回中に速度が低下したのを利用し、瞬間的に空中停止を行っていた。首がペルシェへと向く。
 ペルシェは悲鳴を上げたものの、レッドドラゴンの口から吐き出された豪炎は空気の振動すら燃やし尽くした。


◆◇◆


「はぁ。ペルシェですか?」
 ケイブリンク・セルはマグカップに入ったコンスープを啜りながら間抜けな顔で聞き返し、質問に答えるべく言葉を捜した。
「あいつですか。まぁ、悪くない奴でしたよ。多少無口で、ごちゃごちゃ考える所は良くも悪くもありましたけどね。それが何か?」
 ペルシェ・ルドルマンが死んだ、と報告を受けたケイブリンクは暫し呆けた顔をしていたが、コンスープを飲み終わる頃には何時もの掴み所の無い曖昧な笑顔を貼り付けた顔に戻っていた。そうですか、と言って、お悔やみを申し上げます。葬式は? ああ、一応顔は出しますので。会話を終えた。雑談を終えたケイブリンクとは顔と名前を知ってる程度の間柄である魔女は三角帽子を揺らして休憩所から出て行った。
 その表情や目線、声から暗に彼女が自分を非難している事をケイブリンクは読み取っていた。ペルシェとはつい先日まで組んでいたのだが、仲違いをして遂に切れたペルシェがケイブリンクとのペアを解消するように上に申請したのだ。それが通り、晴れてペア解消。しかし、運悪く新しいペアと組む前に最近住み尽いたレッドドラゴンの偵察任務に出て、帰らぬ人となったらしい。
「大方、」ケイブリンクは苦笑した。「自らを囮にでもしようとしたのだろう」
 村々は怒り狂ったレッドドラゴン焼き尽くされた。
「全く、世話が無い」
 休憩所から立ち上がると、ケイブリンクは伸びをした。壁に立て掛けてあった、愛用のレバーアクション式の連発ライフルを手に取る。
「新しい相方は緩い奴だといいな」
 ふぁ、と欠伸をした。


◆◇◆


「さあ! さっさと出撃すっわよ!」
 格納庫へ向かったら、自分の身長より2.5倍はあろう箒を手に小柄な魔女が元気に吠えた。
 望んだ相方とは違う性格だが、何だか子犬のようでケイブリンクは和んだ。
「何、その気持ち悪い顔。私はコヌイ・ペイプよ」
 桃色の髪を揺らし、2つに小さく髪を束ねたコヌイは青の瞳を細めた。
「いや。ケイブリンク・セル。第5騎兵連隊所属。魔男(まおとこ)の経験は1年」
 魔男は、間男をもじった渾名だ。魔女の補助として同行する男の事を、そう呼ぶ。
「ん。射撃成績は?」
「中の上かな」
「低いわねー。よろしく」
 コヌイは悪戯っぽく笑い、ケイブリンクは彼女と握手した。小さな手だ。箒握っても半分も握れないのではないかと思うほどだ。
「それで、早速なんだけど、命令がきてるのよ」
 ひらひら、と飛行計画書を振るコヌイ。その様子を見るに、ブリーフィングは終わったようだ。本来、円滑な作戦遂行の為にも魔男もブリーフィングに参加するようにはかられるべきなのだが、魔女だけ受けて各魔女が自分の魔男に任務を伝えるこの方式は、未だに魔女の権威・地位が高い事の証左に他ならない。
「哨戒任務ですかい?」
「レッドドラゴン打倒よ」
 おお、神よ。ケイブリンクが天を振り仰ぐのを見て、コヌイは、ふししと笑った。


◆◇◆


 コヌイとケイブリンクが跨ってもまだ十二分に余裕のある箒にベルトで身体を固定する。同時に、コヌイとケイブリンクも背中合わせでお互いをベルトで固定した。箒・魔女・魔男は正に一蓮托生の関係にある。子世界樹(コユグドラシル)を素材にした箒は太く頑丈であると同時に、魔七を吸い取ると浮力(厳密に言えば推力に近い)を持つ性質がある。故に、子世界樹は空に浮かぶ空中樹木として世界中を漂白していた。
 箒の穂先には魔七ブースターが備え付けてある。と大仰に言ってもその正体は子世界樹の枝を束ねてあるだけのものだ。子世界樹の性質として、同じ材質の物が近くに大量にあればある程に相乗効果で浮力が高まる、というものがある。であるからこそ子世界樹は枝葉が生い茂った樹木の頭を下にして逆さまに浮かぶ。
 その性質を利用し、枝を集めて束ねた穂先からは強力な浮力が発生し、それを推進力として前へ進む。柄を右に向ければ右に曲がるし、下にすれが降下。上にすれば上昇するという寸法だ。
「タマ、大丈夫?」
「え、ああ。ちゃんと付いてるぞ」
「付いてる?」
 一瞬、ケイブリンクは金玉ついているのか、と男同士で下品に励ましあう時の言葉かと錯覚したが、どうやら銃の弾の事らしい。
「いや。弾な。大丈夫だ。もう装填してある」
 しっかりしてよ、というコヌイの言葉にケイブリンクは尤もだと苦笑した。話題ついでに愛用のレバーアクション式の連発ライフルを見る。
 口径は三十。5連発式で、銃の引き金を保護するように覆うハンドガード(レバー)を前へ開くとカラクリが作動して発射した弾丸を排出し、予め装填されていた新しい弾丸が新たに装填される仕掛けになっている。大方のものは、騎兵用に短い銃身なのだが、ケイブリンクは本来の長さである長銃身を好む。一応、照星と照門だけでなく、望遠鏡を改造した照準器も取り付けてあった。
「いーい? レッドドラゴンの巣穴まで飛ぶ。誘き出す。撃つ。勝った。帰る」
 ね、簡単でしょ? とコヌイは言ってふししと笑う。簡単というか雑というか。個人的に撃つのあとは死ぬだと思うのだが、ケイブリンクは黙っていた。返事替わりにコヌイの脇腹を銃床で突いた。
「よしよし。噂よりやる気でおねーさん安心したよ。それじゃ、行くわよ」
 コヌイの身体が淡く光ると、その光が染み込むように箒が発光する。箒が僅かに浮き上がり、ずるずると足先を引き摺りながら格納庫から外へと前進を開始した。コヌイは眉間をシワを寄せながら集中して魔七を流す。魔七が失われて乾燥した子世界樹の箒に魔七を馴染ませる。コヌイが柄を下に押し込み、コヌイが足を地面へと突っ張らせて前傾姿勢で箒が停止した。
「忘れ物無い?」
「愛、かな」
 冗談で返す。コヌイは少し笑ったようだった。腕時計に目を落とす。
「09時14分。出撃」
 そう呟くと同時にコヌイが前傾姿勢を解除した。水平へ戻し、箒を加速させる。
 魔七が大量にコヌイから供給され、箒が空へと浮かび上がる。穂先が地面に擦らない位置まで浮き上がると、コヌイは柄を引き上げた。50度の角度で上昇を開始する。強い風を背中に受けてケイブリンクは落下防止ベルトに繋いだ連発ライフルを、それでもきつく抱き抱えた。


◆◇◆



「後ろだ。右回避推奨」
「許可!」
 右急旋回へと入る。重力加速にブン回されそうになりながら、コヌイとケイブリンクはレッドドラゴンの豪炎を回避した。
 背後を通過するレッドドラゴンへ、ケイブリンクはライフルを構えて全弾連射する。5発中、2発が命中したのを確認。レッドドラゴンは短く悲鳴も漏らすが悲鳴と呼ぶには怖ろしい唸り声である。悲鳴と解るのは、コヌイとケイブリンクが一度ならずドラゴンと交戦した事があるからで、更に言えばライフル弾が鱗を貫通し、血を拭き出した姿を視界の端に捉えていたからだ。
「左旋回入るよ!」
「向こうは右だ。交差するぞ」
 切り替えし、左急旋回へとコヌイは箒の軌道を導く。窮屈な旋回にコヌイとケイブリンクの身体が重力加速で軋む。
 だが、何とかレッドドラゴンの旋回の内側に潜り込んだ。視界にレッドドラゴンの背中が横切った。
「右旋回!」
「解ってる」
 更に素早く右旋回に切り返す。重力加速と戦いながらケイブリンクは弾丸の装填を終えていた。
 レッドドラゴンは水平飛行に入り、僅かに身体を降下姿勢にしていた。距離を取って仕切りなおす積りらしい。
「逃がさないよ!」
 コヌイが箒に魔七を送り込み、ブースターから強烈な光を噴き出し増速する。
「頭下げろ」
 コヌイが箒に胸をくっつけるように前傾すると、ケイブリンクは身体を捻り、無理矢理に連発ライフルを前方に構えた。右肘をコヌイの背中に置いて射撃の安定を取る。
 引き金を引くと初弾が飛び、レッドドラゴンの尾に命中する。レッドドラゴンが仰け反るように世にも怖ろしげな悲鳴を吠えた。レバーを開いて次弾を装填する。狙いをつけて引き金を引く。ドラゴンの急所は腰の付け根と首の付け根にある。そこを一発撃ち抜ければ運動機能を失い墜落するしかない。
 次弾は外れた。3発目は尾の先に弾かれる。ドラゴンの翼は魔女の箒と同じで、ドラゴンの魔七によって広がり、ドラゴンに推進力を与える。4発目は翼に命中したが、ドラゴンの飛行に支障が無いのはそれが理由だ。多少はあるかもしれないが、翼を攻撃して墜落させるのと、急所を狙うのでは急所の方が成功率が高いとされている。翼を破壊するには魔男が携帯できるライフル弾が足りないのだ。
 5発目は外れる。捻った身体を戻し、装填作業に入る。と、突然、
「急速降下!」
 コヌイの一声と共に落下する強烈な浮遊感に襲われてケイブリンクは思わず装填の為に手にしていた弾丸を3発落っことしてしまった。視界の端で前方を見ると、どうやら突然レッドドラゴンが急降下を開始したらしい。それを追って、コヌイも急速降下へ入ったのだ。
「気を付けろ。誘いかもしれん」
 ドラゴンは頭が良い。また、自在に方向を変える頭も脅威だ。
「虎穴になんちゃらだよ!」
 突っ込む。
 突如、レッドドラゴンは身体をぐるりと180度横回転し、背面飛行に移った。首を腹へ向け、コヌイ達へ向けて口を開いた。
 悲鳴。
「上等ぉぉぉぉ!」
 かと思ったら蛮声だった。
 コヌイは更に穂先のブースターに魔七を過剰供給し、瞬間最大加速を得てレッドドラゴンへと突っ込んだ。
 豪炎がレッドドラゴンの口から漏れ、噴き出す。
 だが、それが噴出された時、コヌイはレッドドラゴンの頭上を通過した。高速でレッドドラゴンを追い抜く。
「急速上昇! 速度相殺して空中静止するから!」
 後はよろしく、と続けずにコヌイは全力を振り絞り、重い柄を上へと引っ張り上げた。
 意図を読み、ケイブリンクは身体を捩り捻り、体位を入れ替える。後ろ向きから前向きへ。
コヌイとケイブリンクが背中合わせに繋げているベルトは胴だけだ。強引に、足も入れ替えて前向きに座りなおした。
垂直に箒が立つ。
穂先からブースターの光が噴き出して急速落下の速度に抗った。
 急激な減速で、一時的に箒が空中に静止する。
 コヌイを後ろから抱き抱えるように、ケイブリンクは連発ライフルを構えた。
 照準器でレッドドラゴンの首の付け根、急所を狙う。
 1発目。至近弾。肩の鱗が弾け飛ぶ。
 2発目。外れ。
 3発目。翼に当たる。
 こちらの意図に気付き、腹へ折り畳むようにしていたレッドドラゴンの首が戻り始める。
 4発目。外れ。角度が浅く、鱗に弾かれる。
 5発目。外れ。首の鱗に突き刺さる。
 舌打ち。空中静止が終りを告げる。
 ケイブリンクはレバーを開いて薬室を開けた。ライフル弾を1発。直接滑りこませる。
 レバーを戻し閉鎖。撃鉄はレバーに連動して起きていた。
 コヌイはギリギリまで空中静止を保とうと制御している。
 両目を開けたまま、片目で照準器を覗く。
 確かに、急所が見える。だが、レッドドラゴンも自分達の箒も動いている。レッドドラゴンは降下。自分達の箒はやや降下のほぼ空中静止。
 狙いを僅かに下方へ修正し、引き金を引く。
 照準器に捕らえた急所から赤い血筋が延びた。


◆◇◆


 急降下していた事もあってか、墜落したレッドドラゴンは只の肉塊と成り果てていた。
「死ぬかと思ったね♪」
「嬉しそうに言われてもなぁ」
 温かい物が飲みたい、とケイブリンクは嘆いた。
「あそこで突っ込むとは思わなかった」
「下手に旋回とかすると、どうしても一時的に鈍くなるから、突っ込まなきゃ黒コゲ危機一髪だったよ」
 そう言って、ふししと笑うコヌイ。ケイブリンクは呆れたとばかりに肩を竦めた。
「ペアの初戦果がドラゴンとは幸先良いよー。ドラゴンスレイヤーを早速名乗れるね」
 コヌイは上機嫌だ。ケイブリンクはレッドドラゴンの死骸を見つめた。
 ペルシェの仇。村々の仇。もう少し、感慨が沸くかと思ったが、存外そうでもない。ケイブリンクは顔を歪めた。
 残ったのは勝利の余韻だった。




 詰まる所、ケイブリンクが戦う理由はそれだけだったのだ。
 そして、それで満足に足る十分だった。
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