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Chopin Asort… Part3

  この作品は、籠龍の作品「REDMOON」と世界観を共にした作品です。
一応こっちのほうが本編となってますがそっちの方も見ると世界観が上手く補完できると思います。


Part3. Meeting and now ...

Lupis side

 ゲルバと名乗った魔女の衝撃の告白の後、私たちは彼女の案内のもとジャンバルキア大森林を歩いた。森の中はまさに生物の体内そのもののように、森全体が蠢き、おびただしいほどの生命の気配を感じさせる。
 私もヴェアも、そしてセイも、押し黙ってしまったルーナの後に続いてゲルバの案内についていく。話では、ゲルバが今住んでいる小屋の近くにルーナの目的のものがあるらしい。
「前はここに、〝ジャンバルキアの三姉妹〟って魔女がいたんだけどねぇ?」
 歩いている途中、ゲルバは思い出したように呟く。〝ジャンバルキアの三姉妹″――バグラチオン帝国が西に広がる大森林一帯で好きに暴れまわっていた魔女たちである。上品な物腰に残忍な本性を隠し、さながら狩りのように森に迷い込んだ者を追いまわすという。
「その子たちがねぇ、数か月前に、殺されたのよぉ、レッドムーンに」
「なんですって?」
「ジャンバルキアの三姉妹が?」
 事情のわからないセイとヴェアは疑問符を浮かべているが、ルーナと私は正直驚きを隠せない。確かにその三姉妹は新式の魔法しか扱わないという話だったが、それでもある程度の実力は兼ね備えている。
「一番上は確か――〝雷槌〟の魔女だったかな。妹二人もある程度強いって話だけど…まさか三人がかりでも敵わなかったのかな」
「いいえぇ、あたしの〝影〟を使って探りをいれてみたけど、なんか妹二人がレッドムーンに一方的にやられたみたいね」
 ゲルバはこともなげに言う。挑んだ魔女たちの方が愚かだった、とでも言いたげなほど冷めている。
「てことは、〝雷槌〟はその後にレッドムーンに…?」
 私は二人の会話に口を挟むが、ゲルバは首を横に振る。
「三姉妹の長女は、別の奴にやられたみたいねぇ。波長からすると、相手は同じ魔女だったかな」
「魔女? 他の魔女が〝雷槌〟の魔女を殺したの…?」
 驚いた。確かに魔女同士、そりの合わない性格であれば敵対することはあるだろう。しかし、いくらなんでもレッドムーンが目の前にいるような時に魔女同士で争うものだろうか。
「そうなのよねぇ、いまいち腑に落ちないところがそこの部分なのよ。レッドムーン目の前にして魔女が魔女と戦うと思う? 普通、はいくら仲の悪い魔女でも大神には構えるもんだと思うけど」
 大魔女が自らを引き換えに大神を滅ぼしている。それは揺るぎのない事実であり、大神含めアルタニスと名乗る大神派の人狼一団は、魔女のことをなによりも憎んでいるだろう。あちらにしてみれば、こちらの魔女の事情などわからないのだし、魔女としてもまずは人狼を倒さなければならないだろう。
「大魔女サマは、」
「私のことはルーナって呼んで」
 ゲルバが呼ぶと、ルーナは睨むようにしてそれを咎める。ゲルバは肩をすくめると、再び口を開く。
「ルーナさま、これって何かに似てると思わない?」
 ゲルバは視線を送るが、しかしルーナは押し黙っている。段々と私も話が見えてくる。つまりは、そういうことなのだろう。
「どういうことだよ。さっきから全然話が見えてこないんだが」
「う、うん…私もよくわからないんだけど」
 ヴェアたちがやっとのことで会話に入ってくる。
「つまり、敵側――レッドムーンの勢力にはおそらく、魔女がいる」
 魔女がくみするということ自体が問題なのではない。魔女を恨んでいるはずの大神や人狼が受け入れるほどの戦力を持った魔女だということが問題なのだ。
「あるいは…かつての私のように、拾われたのかもね」
 ルーナがやや自嘲気味に言う。それに対してはゲルバも返答せず、皆押し黙ってしまう。
 森はさらに続いていき、普通の人の足ではまずたどり着けないだろう奥深くにまで達する。そこまでくると、ゲルバが身を隠すために対森林の一部に強力かつ広域の結界を張っていたことがわかる。その結界の強さは、肌に触れるだけでもびりびりと波長が伝わり、魔力の高さを示している。おそらく、私を含めここにいる魔女全員が本気を出してもこの結界は砕くことができないだろう。
 それほどにゲルバの魔力はこの中の誰よりも逸脱していた。
「ん、てことはルーナ様ってばアレのことも知らないの?」
 思い出したように、ゲルバは再び話始める。
「数日前、アンナマリアが陥落したんですよ?」
「アンナマリアが? どういうこと?」
 私も驚いているが、例によってあとの二人は首をひねっている。仕方ないので解説を交えながら話さなければならない。
「アンナマリアっていうのは、魔女たちが独立して運営してる学校のことよ。人間や人狼に知られないように、バグラチオン帝国の東側の方に位置してるんだけど」
 もっと詳細に言うならば、死の灰で覆われた不毛の大地グレーランドを越えた先の活火山地帯、エンシャロム山脈の更なる奥にあるのだ。
 そこでは、学校ということでまだ力のない魔女たちに新式、旧式の魔法を教え、来るべきレッドムーンの復活や人狼の蜂起などに対抗しうる力を育てているという話だ。
「あそこは、アンナマリア…〝火竜〟の魔女が作った学校だよね。レッドムーンにまだあそこを落とすほどの力はないと思ってたけど」
 ルーナは、大魔女であった頃の記憶をたぐっているのだろう、アンナマリアといえば禍の月――大魔女とレッドムーンが対決した際に、前線には来なかったが、かなりの魔力を有していたという話だった。
「そうですねぇ。アンナマリアってば、禍の月の時に来てくれなかったのに、まったく何やってんだか、ですねえ」
 ゲルバが愚痴をこぼすようにして呟く。
「まあ、あの子はあの子で…私が奪ったレッドムーンの力の核を保管しておいてくれたから重要な役割ではあったんだけどね」
 ジャンバルキアの三姉妹に引き続き、〝火竜〟の魔女アンナマリアとその学校の陥落。レッドムーンの魔女に対する非情なまでのせん滅がうかがえる。
「てことは、力の核のほうは、レッドムーンが取り戻したってこと?」
「そうなりますね。大分大きな力が少し前からカルメアデス大神殿にいるのがわかりますから――っていうか、ルーナさま、もしかして波長とか読み取ることそのものができなくなってるんですか?」
 ゲルバの発言に、ルーナは渋い顔を作る。
「出来たら苦労してないっての! ルピスに同行してもらってるのもそれが理由のひとつなんだから」
 確かに、私もゲルバほど広域で正確に魔力や波長を感じ取ることはできないが、ある程度大きな力を感じ取ることはできる。
「そりゃまた、偉く弱体化しましたねぇ…んで、今は風の魔女みたいですけど、どれくらい強いんですか? レッドムーン倒せるんすか?」
 ゲルバの質問にルーナは答えない。私から見てもわかる。レッドムーンは、格が違いすぎる。彼女一人でどう立ち向かうつもりだったのか、私ですら聞きたいくらいだ。
「だっ…だからここに来たんでしょうが。そりゃ、最初は無計画だったかもしれないけど、今はヴェアがいるんだから!」
「へっ? 俺?」
 いきなり呼ばれてびくりとする。私も彼には一目置いている。期間としてはルーナよりも少ない時間であるのに、人狼としての力をかなり早いペースで会得しつつある。
「彼ですかー? レッドムーンはおろか、そこらへんのアルタニスにもまだ勝てなさそうですけど?」
「ふふん。だからこの森に来たんじゃない」
 ルーナはわかっていると言わんばかりの表情である。しかし、未だに私は七宝剣の戦力を測りかねている。いくらアーク――ルーナ自身が造った武器だとしても、人狼になりたてのヴェアが使いこなせるとはあまり思いにくい。
「うーん、確かにここにある破剣はいいかもしれないですけどねえ…」
 ゲルバは心配そうにヴェアを見る。
「破剣を扱うって段階じゃなく、まず引き抜くことから始めないといけないですからねー」
「そう、なんだよねえ…引き抜かないとねえ…」
 ルーナも、心配そうにヴェアを見つめた。




Gerba Side

 懐かしき来訪者は、今や少女の姿であった。若くなるのならば私もまた転生してみたいとも思ったが、彼女のいちじるしい魔力の衰えには驚いた。
 世界に名をはせ、実質的にも大神に次ぐ実力者であるとうたわれたほどの大魔女がこれほどまでに小さな存在になるとは正直転生の魔法というものをしなくて良かったと思っている。
 そしてまた、ルーナと同じくらいの少女を見て月日の経過を実感させられる。ついこの間――といっても数十年ほど前なのだが――別れたばかりのデーヴァはもう亡くなり、その子供が彼女を継いでいる。いくら強大な力を有している私でも歳を感じざるを得ない。
 そして、ルピスと名乗った理知的な魔女。聡明で皆のまとめ役のような彼女を見ていると、さながら大魔女を支えた三魔女の再来のように思える。しかし、魔女としての力は格段に劣るものばかりではあるが。
 彼女たちを連れ、私は影の結界を解いていきながら森の最奥に進む。
「ここですよー、ルーナ様。古き魔術にて封印されし破剣――クラッシュルマンドが眠る地です」
「クラッシュ…ルマンドだって?」
 私たちの一番後ろについてきていた男が声をあげる。確か名はヴェアといったか。戦闘力も聖騎士ということだけあってさることながら、よくよく肝が据わっている。 魔に関わる機会がなかったためか人狼の能力はさほど使いこなせていないようだが、しかしそれほど悲観的な戦力ではない。
「クラッシュルマンド…俺の能力の名前だ」
 彼が自分の両手を見ながらつぶやく。クラッシュルマンドという能力は、古くには魔法や人狼の能力をかき消す力のことを指していた。
 目の前の、大岩に突き刺さっている大剣もまた一振りであらゆる魔術、能力を喰らい尽くす能力を秘めている。
「そう、ヴェアの能力と同じ名前。ヴェアはこの世界で唯一神をも殺せる能力を受け継いでいるのよ」
 ルーナが大剣を見つめながらつぶやく。
彼の魔力――人狼風に言えば、波長とでも呼ぶべきだろうか――は、おそろしいほど深く、広い。おそらく人狼として覚醒した際、よほどの近い距離で大神の波長にあてられたのだろう。もしかしたら、物理的接触の際に大神の波長をもろに吸い込んだのかもしれない。
「人狼の能力、魔女の魔法、そして大神…レッドムーンの力でさえ、ヴェアはかき消すことができる」
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