産科の現状と将来展望

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-産科崩壊は時間の問題ですね。現在も産科医は少ないですが、産科医の40%が50歳後半から60歳以上で占められているのです。彼らは、これから 10年程度で臨床現場から離れますが、それをおぎなう若手がいません。確かに、若手もゼロではありませんが、分娩を扱わない産科医(不妊治療など)や婦人科系を希望しているようです。また、若手は女性医師の割合が非常に高いです。半分以上は女性です。別に女性を悪く言うつもりはありませんが、一日おきの当直(夜はほとんど眠れませんから、当直と言う言葉は適切ではありませんが)を、男性医師と同様にやりつづけることは、無理と思います。 -今の状況は過渡期なんだと思います。医者のやることには「ご意見無用」だった時代の揺り戻しが来ているのではないかという気がします。ちょうど、犯罪被害者が日陰者だった日本社会のアンチテーゼとして、極端に大きな声を張り上げる本村氏が現れたように。今まで医療側に傾いていた天秤が、真ん中に落ち着く前の段階として患者側に傾いている最中とでも言いましょうか。&br()あえて率直に言わせて頂きますが、かつて患者の立場がもっと低かった頃には、証拠隠滅なり遺族の泣き寝入りなりで表ざたにならずに済んだ医療ミス(あるいは青戸や富士見のような言語道断の行為)が沢山あったんじゃないですか?何十年も前に書かれた「白い巨搭」が近年大ヒットしたのも、ああいう事例(患者軽視、カルテの改ざん、被告を不当にかばう同業者など)が今でもあるのではという一般人の意識が反映されているのかもしれません。&br()近年になって医療過誤が増えたとか、モラルに欠ける医師が増えたとかいうよりも、そういう事例が表面化しやすい時代になったのでしょう。それ自体はよいことです。ただ、その次の段階として、表ざたになった医療ミスの判断基準が必要になってくるのに、その指針を誰も持っていないから今のような状況に陥ってしまったのです。医療側はいい意味で反撃すべき時だと思います。警察や検察がなんと言おうが、「やむをえないミス」と「許せないミス」を峻別したり、「ミスのヘボさ」と「結果の重大さ」を適正に秤にかけられるのは、やはり同業者をおいて他にいません。 -日本で医療事故が何件あるのか?、医療事故による被害者は何人いるのか、医療事故による致死率は事故の種類に応じてどの程度あるのか、というデータはありません。集計すらされていません。また、残念ながら現実としてカルテ改竄、事故の隠蔽は少なくとも過去において明らかにありました。これらの点を指して「医療の不透明性」と呼ばれる場合もあります。 -[[医事関係訴訟事件の診療科目別既済件数>http://www.courts.go.jp/saikosai/about/iinkai/izikankei/toukei_04.html]]&br() -1.僻地病院は廃止、診療所のみとする&br()2.産科、小児科を中心に可能な限り医師の集約化を進める&br()3.病床は削減、患者負担も増やし在宅移行を促す&br()4.医療費のうち保険負担分を減らし自己負担とする&br()5.混合診療導入と保険診療範囲の制限&br()6.赤字の多い公立病院は廃止、または民間に移管する&br()7.制度、受診費用の見直しによる基幹病院への受診制限&br()8.いわゆる終末期医療への保険診療適応の制限、廃止&br()今現在進行しつつある、あるいは今後予想される事態を適当に書き連ねてみたものですが、こうしてみると受診者サイドから見て明らかに今までより良くなったと思われる変化はあまりないようです。 -「医療崩壊」とは主に地域機関病院の勤務医不足の問題です。小松先生もそう定義しているし一番問題になってる点でしょう。パターンとしては&br()職場環境の悪化(労働環境・訴訟問題・研修の影響などの人事問題)が根底にあり徐々に基幹病院の医師数が減少(開業・転勤・補充不足)&br()→全体の仕事量が変わらないので中堅医師の負担増&br()→限界を超えて一斉に辞職&br()→地域基幹病院が実質閉鎖になるので隣の基幹病院に患者が殺到&br()→基幹病院のドミノ現象&br()ということです。 -このたびの医療崩壊の最大の原因はマスコミによる国民に対するミスリードです。医療従事者は悪であり、始めから疑ってかかれというプロパガンダを延々と行いました。そして、何かあれば医療従事者を徹底的に叩け、と大号令をかけたのです。結果として、国民は来院当初より「変なことするなよ(--メ)」と言う表情を前面に出してすべてを疑ってかかるようになりました。そんな風になれば、すべての有害事象に対して医療従事者が悪いと思うようになり、徹底的に医療従事者を叩くようになりました。最初のうちは医療従事者も謙虚に「反省」していましたが、そんな空気が徐々に濃くなると嫌気が差して救急医療から逃げていくという状況になったわけです -私の勤務する病院でもいよいよ救急医療からの撤退を考えています。私が赴任した当時、常勤医の当直回数は(夜間当直を一コマ、日直を一コマと換算します)月に4-5回でした。現在は8~9回です。ちなみに給料の手取りは全く増えていません(私個人を言えば、手術手当の廃止により手取りは2割減りました)。これは新研修医制度に伴い、当直医師の派遣元であった大学病院の医師が減ったため、出張数が激減したためです。&br()当院では常勤医は内科医3名、外科医1名のため、当初は外科系疾患に関しては休日だろうが夜間だろうが、私がいる限りすべて私を呼ぶというシステムにしていましたが、もう限界です。月8回の当直に加え(私が当直の時はよほど重患でない限り、内科系疾患も私が診てました)、外科系疾患をすべて呼ばれていては私の体が持ちません(外科系疾患は蜂刺されから湿疹、指の浅い切創まで私が見てます。)こうして当院の救急は衰退します。内科医も月8-9回の当直ではやってられない・・・ということで、1.5次救急(二次に近いレベルまで対応してました)の当院の救急は消滅します。今後、生死に関わる救急を含め、町内の患者さんは近くて15キロ離れた二次救急機関、疾患によっては50キロ離れた3次救急機関に医師のカバーがない状態で救急隊員によって運ばれることになります。私が赴任して5年あまり、救急医療に力を注ぎ救急隊の教育、システムの構築などいろいろ頑張ってきましたが、結局「予算」には勝てませんでした。 -[[分娩施設における医療水準の保持・向上のための緊急提言(日本産科婦人科学会 産婦人科医療提供体制検討委員会)>http://www.jsog.or.jp/news/html/announce_30OCT2006.html]]&br()以下のような提言をすべての分娩施設に対して行うこととする。&br()1.すべての分娩施設は必要なスタッフを確保し、医療設備の向上に努めていただきたい。 &br()2.分娩施設の責任者は、勤務している産婦人科医師の過剰勤務を早急に是正すべきであり、それが達成されるまでの過渡期においては、産婦人科医師の過剰な超過勤務・拘束に対して正当に処遇していただきたい。 &br()3.上記を達成し、地域の周産期医療を崩壊させないためには、分娩料の適正化が必要である。
-産科崩壊は時間の問題ですね。現在も産科医は少ないですが、産科医の40%が50歳後半から60歳以上で占められているのです。彼らは、これから 10年程度で臨床現場から離れますが、それをおぎなう若手がいません。確かに、若手もゼロではありませんが、分娩を扱わない産科医(不妊治療など)や婦人科系を希望しているようです。また、若手は女性医師の割合が非常に高いです。半分以上は女性です。別に女性を悪く言うつもりはありませんが、一日おきの当直(夜はほとんど眠れませんから、当直と言う言葉は適切ではありませんが)を、男性医師と同様にやりつづけることは、無理と思います。 -今の状況は過渡期なんだと思います。医者のやることには「ご意見無用」だった時代の揺り戻しが来ているのではないかという気がします。ちょうど、犯罪被害者が日陰者だった日本社会のアンチテーゼとして、極端に大きな声を張り上げる本村氏が現れたように。今まで医療側に傾いていた天秤が、真ん中に落ち着く前の段階として患者側に傾いている最中とでも言いましょうか。&br()あえて率直に言わせて頂きますが、かつて患者の立場がもっと低かった頃には、証拠隠滅なり遺族の泣き寝入りなりで表ざたにならずに済んだ医療ミス(あるいは青戸や富士見のような言語道断の行為)が沢山あったんじゃないですか?何十年も前に書かれた「白い巨搭」が近年大ヒットしたのも、ああいう事例(患者軽視、カルテの改ざん、被告を不当にかばう同業者など)が今でもあるのではという一般人の意識が反映されているのかもしれません。&br()近年になって医療過誤が増えたとか、モラルに欠ける医師が増えたとかいうよりも、そういう事例が表面化しやすい時代になったのでしょう。それ自体はよいことです。ただ、その次の段階として、表ざたになった医療ミスの判断基準が必要になってくるのに、その指針を誰も持っていないから今のような状況に陥ってしまったのです。医療側はいい意味で反撃すべき時だと思います。警察や検察がなんと言おうが、「やむをえないミス」と「許せないミス」を峻別したり、「ミスのヘボさ」と「結果の重大さ」を適正に秤にかけられるのは、やはり同業者をおいて他にいません。 -日本で医療事故が何件あるのか?、医療事故による被害者は何人いるのか、医療事故による致死率は事故の種類に応じてどの程度あるのか、というデータはありません。集計すらされていません。また、残念ながら現実としてカルテ改竄、事故の隠蔽は少なくとも過去において明らかにありました。これらの点を指して「医療の不透明性」と呼ばれる場合もあります。 -[[医事関係訴訟事件の診療科目別既済件数>http://www.courts.go.jp/saikosai/about/iinkai/izikankei/toukei_04.html]]&br() -1.僻地病院は廃止、診療所のみとする&br()2.産科、小児科を中心に可能な限り医師の集約化を進める&br()3.病床は削減、患者負担も増やし在宅移行を促す&br()4.医療費のうち保険負担分を減らし自己負担とする&br()5.混合診療導入と保険診療範囲の制限&br()6.赤字の多い公立病院は廃止、または民間に移管する&br()7.制度、受診費用の見直しによる基幹病院への受診制限&br()8.いわゆる終末期医療への保険診療適応の制限、廃止&br()今現在進行しつつある、あるいは今後予想される事態を適当に書き連ねてみたものですが、こうしてみると受診者サイドから見て明らかに今までより良くなったと思われる変化はあまりないようです。 -「医療崩壊」とは主に地域機関病院の勤務医不足の問題です。小松先生もそう定義しているし一番問題になってる点でしょう。パターンとしては&br()職場環境の悪化(労働環境・訴訟問題・研修の影響などの人事問題)が根底にあり徐々に基幹病院の医師数が減少(開業・転勤・補充不足)&br()→全体の仕事量が変わらないので中堅医師の負担増&br()→限界を超えて一斉に辞職&br()→地域基幹病院が実質閉鎖になるので隣の基幹病院に患者が殺到&br()→基幹病院のドミノ現象&br()ということです。 -このたびの医療崩壊の最大の原因はマスコミによる国民に対するミスリードです。医療従事者は悪であり、始めから疑ってかかれというプロパガンダを延々と行いました。そして、何かあれば医療従事者を徹底的に叩け、と大号令をかけたのです。結果として、国民は来院当初より「変なことするなよ(--メ)」と言う表情を前面に出してすべてを疑ってかかるようになりました。そんな風になれば、すべての有害事象に対して医療従事者が悪いと思うようになり、徹底的に医療従事者を叩くようになりました。最初のうちは医療従事者も謙虚に「反省」していましたが、そんな空気が徐々に濃くなると嫌気が差して救急医療から逃げていくという状況になったわけです -私の勤務する病院でもいよいよ救急医療からの撤退を考えています。私が赴任した当時、常勤医の当直回数は(夜間当直を一コマ、日直を一コマと換算します)月に4-5回でした。現在は8~9回です。ちなみに給料の手取りは全く増えていません(私個人を言えば、手術手当の廃止により手取りは2割減りました)。これは新研修医制度に伴い、当直医師の派遣元であった大学病院の医師が減ったため、出張数が激減したためです。&br()当院では常勤医は内科医3名、外科医1名のため、当初は外科系疾患に関しては休日だろうが夜間だろうが、私がいる限りすべて私を呼ぶというシステムにしていましたが、もう限界です。月8回の当直に加え(私が当直の時はよほど重患でない限り、内科系疾患も私が診てました)、外科系疾患をすべて呼ばれていては私の体が持ちません(外科系疾患は蜂刺されから湿疹、指の浅い切創まで私が見てます。)こうして当院の救急は衰退します。内科医も月8-9回の当直ではやってられない・・・ということで、1.5次救急(二次に近いレベルまで対応してました)の当院の救急は消滅します。今後、生死に関わる救急を含め、町内の患者さんは近くて15キロ離れた二次救急機関、疾患によっては50キロ離れた3次救急機関に医師のカバーがない状態で救急隊員によって運ばれることになります。私が赴任して5年あまり、救急医療に力を注ぎ救急隊の教育、システムの構築などいろいろ頑張ってきましたが、結局「予算」には勝てませんでした。 -[[分娩施設における医療水準の保持・向上のための緊急提言(日本産科婦人科学会 産婦人科医療提供体制検討委員会)>http://www.jsog.or.jp/news/html/announce_30OCT2006.html]]&br()以下のような提言をすべての分娩施設に対して行うこととする。&br()1.すべての分娩施設は必要なスタッフを確保し、医療設備の向上に努めていただきたい。 &br()2.分娩施設の責任者は、勤務している産婦人科医師の過剰勤務を早急に是正すべきであり、それが達成されるまでの過渡期においては、産婦人科医師の過剰な超過勤務・拘束に対して正当に処遇していただきたい。 &br()3.上記を達成し、地域の周産期医療を崩壊させないためには、分娩料の適正化が必要である。 -医療、特に産科ではどんなに努力しても胎児死亡や母体死亡といった不幸な結果に終わることがあるにもかかわらず、福島、奈良の刑事事件としての介入、マスコミによるバッシング報道は、開業医からの母体搬送や高リスク患者の妊娠管理、分娩を扱うことを使命と考え、献身的に仕事をしてきた(お産だけでなく、子宮癌、卵巣癌などの手術、術後の化学療法、ターミナルなど文字通り休み無く働いている)地方の基幹病院の勤務医の気持ちを萎えさせました。&br()既に30後半~40歳代という働き盛りの勤務産婦人科医はリスクと報酬を考えると割りに会わないと考え開業するケースが増え(医局の締め付けも緩くなっている)、新入局者のほとんどは女医さんであり、残された一線の産婦人科医は兵站を絶たれ、一人また一人とドロップアウトしている状況です。

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