自浄努力(C)

  • 医師の法的責任を問うこと自体に強い拒否的反応を示す方は、医療業界ではむしろ多数派だろうと想像しています。
    しかし、密室内で専門性のある行為をしていることをいいことに、医療の手抜きをし、あるいは無用な治療をし、責任を問われそうになるやカルテを改ざんし、民事の法廷でも虚偽の証言をする、あるいは看護師に偽証させるという医師が一定数いることも事実でしょう。医療過誤の被害者は泣き寝入りしてきた時代が長く続きました。
    そして、医師自らが、医療過誤やカルテの改ざん等に自律的に対応してきたかというと、そのような事例を寡聞にして知りません。医師会が患者の訴えに耳を傾け、医療過誤やカルテ改ざんのあったことを認定して当該医師にペナルティを科したり、同種事例が再発しないよう何らかの防止策を講じたりということはあるのでしょうか。

  • 日本の厚生労働省医道審議会(医道審)
    医師等資格所持者に処分を下す機関ですが,いままでの役立たずぶりがひどすぎる。これが刑事扱い増加の大きな一因となっていると思う。
    2年ほど前から年数回開催になりましたが,それまではなんと6月ごろに年一回だけ しかも官僚の作文を追認するだけ(これは今もか)非常勤の委員が年一回集まって数時間会議して終り調査権限は一切なし 刑事裁判の結果が確定するまでは処分しない(去年くらいから判決前や民事でも処分できるようになった)。判決が秋だったら処分は翌年になっちゃってたのです 遅すぎ問題外

  • 「問題のあった医師に対する処分は、医療専門家による調査の結果ではなく刑事裁判の結果を根拠にすることを原則とする」というのは、医師会・病院会の代表や医学部教授らといったお医者様方を主体とする医道審議会が自発的に決定なさったことです。「審議会の決定なんて官僚の作文をなぞっているだけだ」と仰る方がいらっしゃるかも知れませんが、その作文をする官僚の多くも医系技官と呼ばれるお医者様です。
    お忘れのようなので確認しておきますが、司法手続を行政手続に前置する今の医事紛争処理制度はそもそもお医者様方が作り上げ守り続けてきた制度です。そして、司法手続を行政手続より前置することで、お医者様方は事実上自浄作用を働かせる責任から免れるという利益を享受なさってきたことは紛れもない事実です。起訴・有罪判断ともに極めて困難であった司法手続を自分たちの権益を守る防壁として存分に利用し続け、ここ数年それが防壁として機能しなくなりつつなった途端、行政も含めた医療業界の不作為を棚に上げて、あたかも「医療崩壊」の主犯が司法にあるかのように主張なさるのは如何なものでしょうか。

  • 例え医療界が質の落ちる医師の排除に積極的でなかったにしろ、検察の介入がやむをえないとは思えません

No.210 YUNYUNさん
  • ミスを繰り返す医者にあたって命を落とす危険があるが、患者は黙って我慢しろ、という言い方では、患者は承服できず、警察権力の介入を求める人が跡を絶たないでしょう。

No.246 FFFさん
  • 「過失によって人を死傷させた医師に対する適切な処分」が刑事司法以外の方法で既に充分とられているならば、捜査機関としては、敢えて国家刑罰権を発動するまでもないと判断して、摘発・立件を控えるという運用をすることでしょう

No.251 YUNYUNさん
  • 捜査機関自身の判断ということもありますが、加えて、国民が医師らの内部処分に満足すれば「刑事手続による処罰を求めない」という行動が期待されます。つまり、検察官は起訴・不起訴を独自に判断する権限を与えられているといいつつも、「被害者の処罰感情」を無視することはできず、正式に告訴があれば少なくとも捜査に動かざるを得ない。改正法では国民の意思を反映するために、検察審査会の起訴決議に強制力が持たされています。特に、最近では、医療に不満を抱く患者が刑事手続の発動を求める傾向が強まり、しかし実際はそれは実は過剰な期待であって、刑事手続においても満足すべき結果が得られないため、さらに不満を募らせて民事訴訟に挑むという最悪パターンがあるうように思います。この悪循環を断ち切るためには、「刑事手続の発動を求めなくても、悪い医療は淘汰され、正しい医療が行われるしくみが出来ている」という<確信>を国民に与えることが必要です。それは何も、無実の医師をスケープゴートに仕立て上げて国民におもねれ、ということではありません。問題事例が発生した場合に、医学的な観点から過失を問えるものか問えないものかの判断を、詳しい根拠を付して公表し、処分されるべき者がこのように処分されましたということが、国民の目に納得できる形で示されればよい。


  • 誤解の一つは、司法の行為が、問題医師対策になるという考えです。つまり全くに近く役にたっていないという現実があります。そして社会に対して実害もある。問題医師の問題は、当然社会全体としてはほっておけばいいということにはならず、我々も対策を練って対応していかなければいけないでしょうが、司法に対しては(というより司法による対応がよいと思っている人たちに対して)できないなら(できないのだから)するなと言っているだけです。



  • 日本の場合,医師法には医師会の規定がなく,その結果,医師という職能集団の自己統治組織がない。なぜこれがないかという理由はよく分かっていない。戦前は強制参加の組織があったが,戦後GHQも特に示唆することなく結局今日まで来ている。どうも当時の厚生省が医籍を管理したかったというのが理由のようであるが,証拠は残っていない。つまり多くの国には最低限の職業倫理を守らせる強制参加の身分制度があり,日本の弁護士会のように,あまりひどい非行があると除名になるため,事実上医業が開業できなくなる。こういう議論をすると,日本には医道審議会があるではないかと指摘がすぐされるが,これは厚労省が医療行政の権限の枠内で処分を出す機関である。厚労省の権限下にある医療費の不正請求の場合と,刑事罰が確定した医師に対して後追い的に行政処分を行う機関である。刑が確定していない医師,あるいは何度も失敗を犯す医師に対する医道審議会の判断基準を強化せよという意見もある。しかしそうなると厚生労働大臣が医師の生殺与奪権を握ることになる。私としては,たまたま私が最高裁の下級裁判所裁判官指名諮問委員会の委員として裁判官の指名の適否について審議させていただいて実感したのだが,これに似た医師資格を審査する独立の第三者機関を作ってここで審査し,医療行政からは引き離すべきだと考えている。(米本昌平委員)http://www.courts.go.jp/saikosai/about/iinkai/asu_kondan/asu_kyogi13.html
最終更新:2008年09月16日 22:12