業務上過失致死罪は必要?(C)

  • 刑罰の抑止力が全くないと考える説は極論であり、特に故意犯についてまで抑止力がないとする説は、国民全体の間で極少数であろうと思います。(もし多数であるならば、刑法全廃の動議が、とっくの昔に起こっているはずです。)どの程度の効果があると考えるかは、見解が別れるということでしょう。故意犯に比べて過失犯の場合に、刑罰による抑止効果が小さいということは、法曹関係者の間でも、常識的であろう思います。だからといって抑止力ゼロとは解されておらず、それなりに効果がある(効果がある場合もある)と信じるからこそ、現行刑法体系の過失犯処罰規定が維持されているのですが。

  • 医師を処罰すれば抑止力が働くと考えているようですが、そこのところが、根本的に間違いだと思います。医療事故は注意すれば防げるというものではありません。
    これはひとつの例でしかなく、医師の業務の上ではこのような「不幸としか言いようのない例」に出会うことを完全に避けることができず、にもかかわらず、裁判で片っ端から医師の責任が認定されている、という印象を(多くの医師が)持っているのです。
最終更新:2008年09月17日 22:12