捜査の開始・送検


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 医療に対する捜査の開始は大きく分けて以下の三つに分類できます。
Ⅰ 遺族その他の関係者による告訴・告発
Ⅱ 医師法21条に基づく届出
Ⅲ その他、遺族その他による捜査機関に対する申告・相談、マスコミ報道等

 まず、Ⅰの告訴・告発が警察に対してあった場合には、必ず警察は検察に送致(送検)しなければなりません(刑事訴訟法242条)。嫌疑なし、または嫌疑不十分と認める場合であっても送付しなければなりません。

 ⅡおよびⅢの場合、警察が捜査したら、法律の特別の定めのある場合(自転車窃盗などの微罪事件(犯罪捜査規範198条)をいい、業務上過失致死罪はこれに含まれません)を除き、事件を検察官に送致しなければなりません(刑事訴訟法189条2項、246条)。警察は捜査した結果犯罪が成立すると考えた場合はもちろん、犯罪の嫌疑が十分でないと認めた場合や犯罪の成立を阻却する事由があると認めた場合であっても、意見を付して送致しなければなりません。

 以上のように、告訴・告発があった場合や、捜査が行われた場合には、医師に過失があろうとなかろうと送検する制度になっています。しかし、「送検された」という報道がされると、あたかもその医師に過失があったかのような印象を国民に与えてしまうのが現状です。特に、送検時に実名で報道されることには無罪推定の原則の観点から、大きな問題があるため、このような報道に対して反対する意見が多く出されています。
 長野県医師会は「厚生連佐久総合病院の医師の書類送検時における実名公表について」という声明文を発表し、実名報道を控えるよう要請しています(注:当該事件についてはその後不起訴(嫌疑不十分)となったとの報道アリ=2008年9月27日付讀賣新聞)。

 たとえば、医師・病院側が過失を認めて,遺族に謝罪し,速やかに補償交渉を行って示談が成立している場合,それを区切りに警察は書類送検して,和解が成立していることを理由に(かつ遺族に寛恕の意を示して貰って),起訴猶予となっている事件もあります。送検というものの一般的イメージを考えると、マスコミは,医療事故報道のみならず,事件の「送検」を報じたら,必ずその帰結「起訴」「不起訴」「起訴猶予」を報じるべきだし(また、そのためには検察による広報も必要),「不起訴」「起訴猶予」を報じないのであれば「書類送検」は報じるべきではない、とのとの考えや、送検の意味をしっかりと解説すべきである、という考えもあるようです。

  • もし仮に、「何処かの食堂で中毒事故が起きたらしい、食べた客と食堂がトラブルになっている」と何らかの情報が警察にもたらされたら、組織としての警察はどのように行動すべきでしょうか。
    当然「場合によっては刑事事件として立件しなければならない、その為には具合が悪くなった客が本当に居るのか、その食堂で食べた物が何だったのか、よく調べなければならない」こう考えてるのが普通でしょう。
    そして次の段階として「保健所に問い合わせろ、何処かの病院で食中毒の患者を治療したかどうか聞いて回れ」という指示が現場の捜査員(刑事)に出されるでしょう。その結果アチコチに電話を掛けて確認を取るのですが、その電話やチョット聞きに行っただけで誰もがそんな事実は無いとの返事であれば、多分そこで「正式な捜査」になる前で終わりです。
    けれど消防署からは救急車で搬送したと言って来るし、保健所に電話したら入院した人がいるとの返事が来た、これは何らかの中毒事故発生は間違いない。となれば警察としても「業務上過失傷害」の疑いで捜査を開始せざるを得なくなります。
    このように警察が捜査を開始して、問題の食堂に捜査員を派遣して調べたり、或いは店の親父を任意で警察に呼んで事情を聞く。その一方で別の捜査員が被害者の入院している病院に飛んでいく。ところが入院している被害者から直接話を聞いてみたら、冷蔵庫に入れてあったその食堂から取った出前の残りを食べたら腹が痛くなって救急車を呼んだ。食堂の親父からの事情聴取もその通り間違いないし、一応食堂の親父は詫び料として破格の見舞金を既に被害者に届けている。オマケにその食べた出前の残りというのが1週間も前のヤツで、食品衛生所に検査を依頼したら、変色しているし腐ったニオイはするし、食べる方がオカシイという報告書であった。結局警察の捜査会議ではその食堂の親父を業務上過失傷害には問えないだろうという結論で一致した。
    さあこの場合どうしましょう。警察は任意ですが事情聴取もして調書も作っていますし、食品衛生所に検査鑑定も依頼しています。つまり「捜査」を行っていますので、いくら捜査会議の結論が罪に問えないとなっても、捜査のケジメとして検察に捜査結果の書類を送らなければなりません。これがいわゆる「書類送検手続」です。もちろん送検にあたって警察から起訴する必要は無い旨の附帯意見を付けて検察に送るでしょうし、検察でも不起訴処分となって一件落着となるでしょう。でもこのように捜査をしたからには、いくら不起訴処分は間違いないからといって、警察は送検手続をしないことは許されないのです。

    このように現行の法制度では以下の流れになります。
    1:疑わしい事例があれば警察は捜査をする

    2:捜査の結果は検察に送る(送検手続)

    3:起訴するかどうかは検察だけが決められる

    4:有罪かどうかは裁判所だけが決められる

    5:有罪判決が確定するまでは無罪として扱う
    (無罪推定の原則)

    再三このモトケンブログでも議論されている「医療事故調(安全調)」は、1の段階の前に置くことを想定している組織です。事故調(安全調)の役割は以下のようになるべきだ、と盛んに議論されています。

    0:事故調で正当でない医療行為との判定

    1:疑わしい事例があれば警察は捜査をする
    (事故調で正当な医療と判定されたら捜査しない)

    2:捜査の結果は検察に送る(送検手続)
    (正当な医療行為は捜査しないから送検もない)




送致と送付

 「広義の送致」には、「狭義の送致」と「送付」があります。「送付」とは告訴告発のあった事件で、検察庁に送る書類の頭が「送付書」となります。それ以外は「送致書」となります。
 なお少年事件の場合、過誤を防ぐため「少年事件送致書」「少年事件送付書」と書くように書式が定めれらています。