和解(C)


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医療事故書類送検報道
No.131 法務業の末席 さん
  • 「和解合意=過失責任の承認」では無いことをご説明していきたいと思います。
    まず和解の一般論(医療事件での和解に限定しないという意味)ですが、合意事項に「何らかの過失を認め謝罪する文言」を明確な表現で入れることは実際には少ないと思います。逆に過失の有無については慎重な言い回して確定的な文言となることを避け、過失責任の存在は敢えて不明確にしたまま、支払う金銭額についてだけ取り決めるのが和解契約では多いパターンだと、自分の少ない経験では思っております。
    ですので、和解契約書に盛られた内容を根拠に検察が刑事責任を追求する、このようなことは現実的ではないと思っています。普通に法律家(原則的には弁護士)が、和解金の支払側の助言者となって和解交渉を進める場合、一番気を遣うのがこの「過失責任や賠償責任を認めないまま和解する」という交渉の難しさなのです。
    「過失責任を明確に認めた上で謝罪して金銭支払に合意する」このような和解契約を結ぶのは、先に刑事訴追されていて有罪は間違いないが、和解契約(示談)の有無が情状による量刑の判断(場合によっては執行猶予が付く付かない)に大きく影響する場合が考えられます。しかし刑事捜査が具体化しない段階で行なう和解交渉では、「過失責任や賠償責任を認めないまま和解する」方向で進めるのが将来の法的リスク低減の考え方です。
    このように過失責任や賠償責任を明確にしないために、賠償金という用語を使わずに和解金という言葉を用いたり、過去に対する明確な謝罪の表現ではなく将来に向かった寛恕の表現にしたり、和解交渉というのは非常に高度かつ専門的なネゴシエーション能力を要求されます。こうしたテクニックは、究極的には和解契約の内容を根拠に刑事責任が追及されたりするリスクを回避することにつながります。だから和解交渉が上手に行なわれていれば、その和解合意の内容を刑事責任追求の根拠にされるということは現実的でないと私は考えます。
    良く巷間では、優秀な弁護士は法廷で争わずに和解での解決を目指すと言われますし、そして和解交渉技術の長けた弁護士は報酬も高くなると言われます。それは和解交渉の上手な弁護士は、刑事責任追及の材料にされるような不用意な文言を和解契約書に入れ亡いように、依頼者の法的リスクを如何に減らすかという配慮に長けているからです。ゴタゴタが長引くのがいやで、相手の言うとおり過失責任を認めて謝罪する言葉を書き連ねた和解契約書を作成するならば、それは上手な和解とは言い難いと思います。
    医療関係者、特に病院の経営サイドの事務方には、ゴタゴタが長引くのはイヤだからサッサと金を払って解決したいという意識があるように感じます。そのような姿勢がある限り、相手の言うとおり過失責任を認めて謝罪してしまうことは有り得ることなのでしょうが、その安易な姿勢が端的に表れたのが、大野病院事件での福島県が纏めた事故報告書ではないでしょうか。その安易な報告書が日本中の産科医療を崩壊させるような法的リスクを現出させた事実を、私の言わんとする「上手な和解合意≠過失責任の承認」の反対事例として受止めて下さい。