医者の士気

  • 皆さんは、経過が長い病気(例えば抗癌剤治療を繰り返し必要としている癌など)の患者さんの病状が悪化して入院したときに、周りからかけられる言葉で一番嫌がる言葉はどういう言葉だと思いますか?人にもよるでしょうが、多くの患者さんから聞かされたのは、「がんばれ」と言う言葉だそうです。「自分はこれまで散々がんばってきた、それなのに無責任に『がんばれ』と言われてもどうすればいいのか?」という事のようです。
  • 誰でもするあるいはしたことあるようなようなミス(割り箸事件や福島の事件、女子医大の事件)でこのような事態になると当然医師達は「自分も犯罪者の一員」と考えるようになり、士気が失せます。
  • 今と以前と何が違うかと考えるとほとんどの医師がそうだと考えると思いますが、モチベーションだと思います。患者さんを治療するということでいえば、少々徹夜しても、2-3日病院泊まってもそれ程苦にはなっていませんでした。しかし、最近では訴訟という言葉が常に頭につきまとい、万全の体制でない限り手は出さない方向になってきています。家族が大きい病院を希望されれば、紹介先の先生に申し訳ないと思いながらも紹介状を書いています。どなたかが書かれていましたが、言葉は悪いですが、同じ亡くなるなら何もせずに亡くなったほうが訴えられないということです。ただ何もしない訳ではありません。いろいろな治療法は提案していますし、そのために国内、海外の論文やガイドラインもできるだけ勉強しています。ただし、昔と違うことはきちんと危険性をすべてお話します。そうしますと、当然ですが多くの場合、今より改善する可能性もあるが積極的で侵襲をともなう方法は拒否されます。何もしないからといって、患者さんのために徹夜したり、病院に泊まったりしなくなったかというと今でもしています。それは、家族とのコミニュケーションのためです。何もしなくても病室へたびたび顔を出しています。診察をして少しづつ状態が悪くなっていることを説明しています。ただ、こういう医療が本当に良いものかと言われれば”否”と思いますし、勉強も防衛医療のためのようでモチベーションも上がりません。
最終更新:2008年07月19日 21:23