医師法21条


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医師法第21条  医師は、死体又は妊娠四月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは、二十四時間以内に所轄警察署に届け出なければならない。

「異状死」とは

  • 法医学会のガイドライン
    「注射・麻酔・手術・検査・分娩などあらゆる診療行為中,または診療行為の比較的直後における予期しない死亡.
    診療行為自体が関与している可能性のある死亡.
    診療行為中または比較的直後の急死で,死因が不明の場合.
    診療行為の過誤や過失の有無を問わない.」
    以上を「異状死」に含める
  • 外科学会の声明
    「「異状死」とは、あくまでも診療行為の合併症としては合理的な説明ができない「予期しない死亡、およびその疑いがあるもの」をいうのであり、診療行為の合併症として予期される死亡は「異状死」には含まれないことを、ここに確認する。」
  • 四病院団体協議会の報告書
  • 平成18年06月13日衆議院法務委員会
    厚生労働省大臣官房審議官 岡島 敦子:「医師法二十一条の「異状」とは法医学的な異状とされておりますが、具体的にどのような死が異状死に該当するかにつきましては、個々の状況に応じて個別に判断される必要があるため、死体を検案した医師が個別に判断しております。なお、死亡診断書の記入マニュアルにおきましては、死体を検案した結果、「外因による死亡またはその疑いがある場合には、異状死体として二十四時間以内に所轄警察署に届け出が必要」であることとしておりまして、死体検案書の様式におきましては、外因死の内容として、交通事故、転倒、転落等の不慮の事故死、自殺等を挙げているところでございます。」
  • 平成18年05月10日衆議院厚生労働委員会
    厚生労働副大臣 赤松 正雄:「なお、異状死の届け出の判断基準をお示しすることにつきましては、異状死は個々の状況に応じて個別に判断されるべきものであり、一律に基準を示すことは困難である、また、仮に一定の考え方で届け出対象となる異状死の範囲を限定した場合、その範囲に含まれるか否かの判断を行う必要があるが、その判断の公正さをどのように担保するかといった問題があり、委員十分御承知だと思いますが、現時点では困難であると考えているわけであります。」

そもそも、どこまでの範囲を異状死として届け出るか、について各学会でガイドラインが示されていますが、それぞれまちまちではっきりしていません。それどころか、厚生労働大臣や警察署にいたっては、「はっきりしない」とコメントしています。だから、この件に関しても「はっきりしない」というのが正解でしょう。なぜこんなに異常死の範囲を決められないかと言いますと、異常死の件数が多すぎるからです。調査によると、病院で死ぬ人の1%は異状死といわれていて、その計算で行くと、年間約8万人が、病院で異状死していることになります。これをすべて届け出れば、それだけで警察の機能が麻痺してしまうことが明らかです。だから、実際のところ、異状死の届出制度は機能していないのが実情である、との評価があります。


「検案」とは

都立広尾病院事件(最判平成16年4月13日)
「医師法21条にいう死体の「検案」とは,医師が死因等を判定するために死体の外表を検査することをいい,当該死体が自己の診療していた患者のものであるか否かを問わないと解するのが相当であり,これと同旨の原判断は正当として是認できる」

黙秘権(自己負罪拒否特権。憲法38条1項)を侵害しないか

都立広尾病院事件(最判平成16年4月13日)
「本件届出義務は,医師が,死体を検案して死因等に異状があると認めたときは,そのことを警察署に届け出るものであって,これにより,届出人と死体とのかかわり等,犯罪行為を構成する事項の供述までも強制されるものではない。また,医師免許は,人の生命を直接左右する診療行為を行う資格を付与するとともに,それに伴う社会的責務を課するものである。このような本件届出義務の性質,内容・程度及び医師という資格の特質と,本件届出義務に関する前記のような公益上の高度の必要性に照らすと,医師が,同義務の履行により,捜査機関に対し自己の犯罪が発覚する端緒を与えることにもなり得るなどの点で,一定の不利益を負う可能性があっても,それは,医師免許に付随する合理的根拠のある負担として許容されるもの」である
死体を検案して異状を認めた医師は,自己がその死因等につき診療行為における業務上過失致死等の罪責を問われるおそれがある場合にも,医師法21条の届出義務を負うとすることは,憲法38条1項に違反しない。

類似する事件として――道路交通法では、交通事故があったとき、運転者等に対し、直ちに警察に事故が発生した日時・場所、死傷者の数・負傷者の負傷の程度並びに損壊した物の程度・措置等を報告することを義務付けており、違反した場合には3か月以下の懲役又は5万円以下の罰金に処するとされております。交通事故の報告義務について、やはりかつて憲法38条1項の黙秘権保障に違反するのではと争われたことがあり、昭和37年に最高裁判所は違反しないと判断しています。こうした行政手続(本来憲法が予定しているのは司法手続です)と黙秘権の関係については、上記判決の前には麻薬取締法の帳簿記帳義務について争われ、上記判決の後には税務署の質問検査権に基づく調査について争われ、いずれも最高裁は憲法違反ではないとしています。こうしたことから、「医師は、死体または妊娠4か月以上の死産児を検案して、異常があると認められたときは、24時間以内に所轄警察署に届け出なければならない」という医師法の届出義務が、憲法38条に違反すると最高裁が判断することはないだろうということは、判決前から多くの法律家には予想できました。

参照
病院側弁護士の報告
http://www.jmari.med.or.jp/research/dl.php?no=257