医療裁判は医療機関に不利なのか


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 医療の結果が悪かった。その結果が悪いのを、どうにかして、救済してあげたい。医療機関はお金を持っているし、医師も保険に入っている。だから、医療機関と医師にお金を出させる救済方法を無理やり考えましたというのが、司法の答えなのでは?という指摘があります。
 しかし、報道されるのは病院側敗訴のケースが殆どなので、裁判所が病院に辛いような印象をお持ちのかたも多いかも知れませんが、あれは「珍しく病院側が負けたからニュースになる」という意味合いも強いようです。実際には、医療過誤訴訟は数ある損害賠償請求訴訟の中で、最も原告(=患者)敗訴率の高い類型の一つです(-地裁民事第一審通常訴訟事件の認容率 平成19年は通常訴訟(医事関係訴訟以外も含む):83.5%(うち人証調べ実施:63.8%) これに対し医事関係訴訟:37.8%)


  • 司法統計上の「認容」という項目は、必ずしも原告の全面勝訴を意味するものではなく、「一部認容」を含む数字のはずです。要するに、1億円の請求に対して10万円の判決でも統計上は「認容」と扱われるわけで、実際には一部認容のケースが圧倒的多数です。もっとも、その中には5%しか認容しないものもあれば、90%認めたものもあるはずで、認容率の詳細な内訳までは分かりません。ただ、裁判実務に携わる者の実感としては、医療関係訴訟の認容率は他の類型に比べて有意に低い、ということが言えると思います。これは、実務家であればまず異論のないところではないかと・・・・(その認容率自体が良いとか悪いとかいうことは別問題として)。
  • 高瀬浩造東京医科歯科大学教授(以下、高瀬)「従来は医療訴訟が医療機関側に不利だという先入観があり、医療訴訟の現場を見ればそうじゃないことがわかるわけですが、実際には傍聴の経験もほとんどありませんので、知らないわけですよね。たまたま出てきた話というのは、自分たちに不利な話しかないわけですから、医療機関側は現実問題として自分たちに有利な話というものを経験するチャンスはありません。例えば自分がここで正しい、非常にニュートラルな意見を言ったとしても、医療機関側に不利になるのではという先入観だけが残るわけです。」
    前田順司東京地方裁判所判事(以下、前田)「今の高瀬さんの話は非常に面白いですね。医療訴訟は医療機関にとって不利だという先入観がある。一方、患者側弁護士とお話をすると、裁判所は医療機関側に有利な判断を下しがちであるといわれている(笑)。」
    高瀬「ああ、そうなんですか(笑)。」
    前田「裁判所は、公正中立な判断を心掛けているのですが、お互いの当事者にはそう思われていないということは大変不幸な話ですね(笑)。」
    高瀬「いや、ですから、それは裁判の現実を知らないからなんですね。私は最近、医療訴訟の現場を見せていただくチャンスが増えましたが、本当にニュートラルだと思っています。正直言うと、私も医療機関に不利と思い込んでいましたから。思っていたよりは有利なのだと思いました。決して患者に有利な進行がされているとは思いませんし、医療機関に不利なことも行われているわけではないことはわかりました。多分、どの医師も現場を見れば、それは理解すると思いますね。」(「座談会・医療訴訟と専門情報(1)」判例タイムズ1119号13頁~14頁より抜粋)

 これに対して、医療訴訟の終局区分(平成19年は和解:52.2%)をもとに、和解を含めると医療関係者に不利ではないか、と言う批判があります。
 しかし、和解による解決は通常訴訟でも同様にありますし、和解にはさまざまな内容があり、勝訴的和解から敗訴的和解まで、いろいろなケースがあります。金銭請求はしないという和解もあります。それを十把一絡げにして、医療者側勝訴の判決以外は、全て患者が勝ったとみなすというのは、数字のマジック、不当な印象操作であり、科学的な分析ではありません。


 以上のように患者救済のために医療機関を敗訴させることはありません。しかし、裁判官の内心に一種の偏見や、患者救済の必要性に対する懸念があり、それが判決に影響されているのではないか、とも言われているのは事実です。
 また、証拠の偏在や医療知識の格差を理由に、武器対等を実現させるために、立証責任を転換したり、患者の期待権を認めるなどの法解釈が模索されており、この点も医療関係者の懸念を増幅させています。

誤判については別項目で