日医医賠責制度


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  • 患者側からみれば「結論を出すのが遅い」「患者側の言い分をほとんど聴いてくれない」「判断結果に至った理由がほとんど明らかにならない」などといった不満があり、医師側からみれば「レトロスペクティブな観点に基づく判断がなされることがある」といった不満が生じてもおかしくない、ということのようですから、その審査方法や判定結果の公表のあり方についてはまだまだ検討の余地があるようです。ただ、審査会のありようは措いたといたしましても、元行政先生が指摘されておられたように「紛争当事者となった医師が交渉の矢面に立たなくて済む」ということであれば、日医医賠責制度は医師にとって相当なメリットであるように思われます。もちろん、交渉の代理人となる医事紛争処理担当理事や弁護士とは事案の詳細を伝えるためにコミュニケーションを継続してとる必要があるわけですが、それでも先鋭に対立している相手方と面と向かって話をするよりずっと気分的に楽なのではないかと思います(ある保険会社のサイトをみてみましたが、個人向け医師賠償責任保険の紹介ページには「ご契約者にかわって保険会社は、示談交渉は行いません」と記載されていました)。
  • 調査を行うのは保険会社が委嘱する事案に対応した診療科目を専門とする医師及び弁護士によって構成された調査委員会、判定を行うのは医学関係者6名と法律関係者4名の賠償責任審査会とのことでしたから、最終的判断を行なうのは医師6 名と法律家4名によって構成された合議体であると理解していただいてもよいと思います。
  • 日医医師賠償責任保険の賠償責任審査会(この審査会は医師主体で構成されています)における過去10年の付託事例のうち約6割が医療側有責となっていること(藤村伸「医療安全と医療事故」日医雑誌第134巻11号別冊51頁)に照らせば、判決における原告勝訴率約4割、和解も含めた有償解決率約7割というのは、それほどおかしな数字ではないように思われます。
  • 前掲論文によると「日医医賠責における解決方式では、裁判判決が16%であり、そのうち医療側勝訴が約70%、患者認容率が約30%である」とのことです(この16%には、過失や因果関係の認定をめぐって日医医賠責と患者の見解が相違した場合だけでなく、過失や因果関係の認定に争いはないが賠償額に見解の相違がある場合も含まれます)。したがって、「医賠責で医療側にミスなしとされた約4割のうち、7割が裁判で患者側の主張が通る」というのは正しくありません。
  • まず、全医師のうち医師会非加入者(約4割)がかかわった医事紛争については、日医医賠責の審査会にかかりませんから、解決のために第三者機関の介入を必要とした紛争のうち、ざっと4割の紛争は日医医賠責審査会のスクリーニングを受けません。次に、日医医賠責審査会にかかった事案のうち、約6割が同審査会によって「医師側有責」とされます。また、日医医賠責制度に乗っかった事案のうち約 84%はそこで紛争が終結し、残りの約16%が訴訟に向かいます。この16%には、「何らかの理由で同審査会の審査を待てなかったもの」や、「同審査会の結論のうち賠償額にのみ不服がある場合」なども含まれていますが、圧倒的多数は整形A先生ご指摘のとおり「同審査会の過失認定に不服があったもの」であろうと推察できます。そして、その16%のうち約70%が裁判所によって改めて「医師側無責」とされ、残りの30%について裁判所が「医師側有責」と判決します。
  • 医療過誤に基づく医師、病院の損害賠償責任発生を保険事故とする医療過誤賠償責任保険と結び付いた「医事紛争処理委員会・・この名称は都道府県により異なる。例えば京都府医師会は医療事故対策室」を置いている。 上記医療過誤責任保険は日本医師会が保険契約者として保険会社と締結する日本医師会医師賠償責任保険が代表的なものであり、被保険者は会員医師であり、保険料は日本医師会の会費から支払われている。 医療過誤が発生すると、医師の所属する市などの医師会を通じて都道府県医師会に「事故報告書」が提出され、同医師会は「医事紛争処理委員会」で審査し、請求額が大きい場合は日本医師会の賠償責任審査会が審査し、委員会、審査会の決定に従って医師は患者側との紛争解決に当たることになっている。 医師会に入会しない病院は別の医師賠償責任保険に加入するが、この保険金支払いにつても都道府県医師会の審査会が審査することになっている。 上記医療事故処理委員会は賠償責任保険制度を背景にするものであるから、患者側からの申立は原則的には認めておらず、増加する医療過誤紛争の民間処理機構としては限界がある。また委員の大多数は医師会の会員、すなわち医師であり、公平感に欠けよう(医師会の医療過誤紛争処理機構については藤田康幸編「医療事故対処マニュアル現代人文社164頁以下、小海正勝「医師会の医事紛争処理機構」裁判実務大系17医療過誤訴訟法529頁以下、同「医師会の医事紛争処理機構の概要」現代裁判法大系7医療過誤新日本法規325頁以下参照)。